入居によって状態の改善や在宅復帰を叶えた事例 ホーム、法人の取り組みや事例

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特集 | ご入居によってご状態の改善や在宅復帰を叶えた事例 ホーム、法人それぞれの取り組みや事例についてご紹介します。

 老人ホーム入居のご相談動機は様々です。ご病気や老化によるご状態の低下、介護者の疲弊、そして在宅生活の限界など、多くの方が現状へのあきらめとともに、住み替えを余儀なく検討されているのが、実状ではあります。しかしはたして、老人ホームに住まいを変えた暮らしは、さらにあきらめの連続となるのでしょうか。
 「みんかい」がご紹介している老人ホームの多くは、ご入居される方に最大限の幸福を感じていただきたい、という思いとともに、介護のあり方や人としての生き方について、真摯に向き合い取り組んでいます。
 集団生活による「暮らし方」の変化は多少あるかもしれませんが、ご入居された方やご家族の「願い」や「生き方」に対して、出来得る限りのサポートが行われています。
 ご入居者様やご家族様が抱くその願いとは、いままであきらめていたことへの再挑戦でもあるかもしれません。再び、食事を口から食べたい、自力で歩行したい、家族や友人とコミュニケーションがとれるようになりたい。
 そのような願いに対し、独自の理論や方法論を用いて、実践するホームがあります。
 24時間365日見守られる環境だからこそ、実践できるケアがあり、サポートがあるのです。
 そして、もちろんすべての方にあてはまるわけではありませんが、結果として、ご状態の回復や介護度の低減化、さらに、在宅への復帰さえも叶える実績を持ったホームが出現しています。
 「終の棲家」として暮らして続けていくことだけが、有料老人ホームの目的ではなく、ご入居者お一人おひとりの願う生き方に寄り添い、叶えることを運営の最大の目的とするホームも増えています。
 福祉でなく、老健でもない。有料老人ホームならではの住まい方、ご利用のしかたがあることをぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。
 今号では、ご入居によってご状態の改善や在宅復帰を叶えたホーム法人それぞれの取り組みや事例について、ご紹介します。

事例1 『自立支援介護』の取り組み
株式会社 サンケイビルウェルケア

 サンケイビルウェルケアが運営するウェルケアガーデン・テラスシリーズでは、『自立支援介護』を全施設で取り組んでいます。『自立支援介護』とは、国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授が提唱する「水分、食事、排泄、運動」の重要性に着目し、普段の体調を整え、できることを取り戻す介護です。

普段の体調を整えて身体機能と意欲を取り戻す

 例えば、ご入居前は頑固な便秘で下剤を服用されていた方に、起床時など十分な水分を摂っていただくことで、薬剤を服用しない気持ちのよい排泄ができるようになったケースがあります。
 「水分、食事、排泄、運動」の基本ケアを行うことで「最近、調子がいいな」と実感し、気分もよくなります。水分が摂れることで排泄がスムーズになり、運動機能も向上します。運動機能が向上し活動量が増えれば、お腹もすき、しっかり栄養が摂れ、さらに意欲もわいてくる。そういった好循環のサイクルを生み出します。
 人は一度失った能力を再獲得することで「まだまだ出来る」と自信を取り戻し、外食や外泊など今後の生活に対する意欲がわいてきます。基本ケアの取り組みによって、次の改善ステップへと移行できるのです。

在宅生活に限界を感じた原因を改善する それが在宅復帰の第一歩

 当社が運営する介護付きホームは、「住まい」と「通過施設」の二つの機能があります。住み慣れた自宅での生活を望まれるお客様には、要介護状態を改善するための通過施設としてご利用いただいています。
 在宅生活が困難となる主な原因は、おむつ、車いす、夜間の尿失禁、認知症、胃ろうやミキサー食などの食事です。私たちはお客様が在宅生活困難となった原因を探り、根本原因の改善に注力します。尿便失禁を改善し、歩行を可能にし、認知症状を消失させ、ご家族と同じ常食が食べられるようにケアを行うことで、自宅に戻られるご本人にとってだけでなく、ご家族にとっても介護負担が軽減された、より良い生活となることを目指します。

寝たきり・閉じこもりにさせない 老人ホームでの社会生活の再建

 介護状態が重度化する主要因に「閉じこもり」があります。家や居室から出ない生活は日々の活動量を減らし、いずれ要介護状態を悪化させます。老人ホームでの暮らしは身の回りのことを全てスタッフが行い、何もしなくてもよい生活になります。何もやることのない生活、受動的なイベントしかない単調な生活は、居室から出ることの少ない閉じこもり生活を作ります。折角、要介護状態が改善されても、何もすることがなければまた寝たきりの状態に戻ってしまうのです。
 私達はお客様の閉じこもり生活を予防するとともに、お客様の社会生活を広げる取り組みとして、地域の老人会や地域活動に積極的に参加していただいています。またホーム内でも、役割と生きがいを持っていただくために、リハビリテーション室スタッフとして、他のお客様の誘い出しや水分提供を担っていただいています。さらにお元気な方には、パワーリハビリテーション基礎研修を受けていただき、リハビリ指導員として活躍していただいています。
 このようなお客様の活躍の場はさらに発展し、ウェルケアガーデン馬事公苑では、ご入居されているお客様と数名の地域住民の方が主体となり住民主体型デイサービス事業を始められました。
 普段の体調を整え、要介護状態を改善し生活に対し意欲を持つ。そして、社会とつながることで生活は再建され、生き生きとした豊かな生活が作られます。
 医療・福祉に関わる生活は、一日でも早く離れたほうが、お客様にとって幸福であるという考え方は、サンケイビルウェルケアのスタッフ全員が共有しています。極力短期間でお元気になっていただき、自由気ままな生活を送っていただく。それが私たちの仕事です。

事例2 『生涯活躍』に向けた アクティビティ・ケアの実践
株式会社 共立メンテナンス

エビデンスに基づいた介護

 ドーミーシニアシリーズでは、お客様が『生涯活躍』できる環境をつくることを使命に、アクティビティ・ケアに取り組んでいます。
 アクティビティ・ケアとは、「芸術・遊び」「仕事」「自然との触れ合い」などを通じて、五感への刺激を大切に、意欲を持った生活をお過ごしいただけるようサポートするケアです。
 身体機能の維持・向上には、「全館リハビリ」という概念で、お客様の生活の様々な場面を機能訓練の場としています。例えば、当館は食堂が1階にあり、居室のある2階、3階から必ず1階へ移動することが必要ですが、この日々のタテ移動はお客様の残存機能の維持・向上を促す訓練となります。
 また、ドーミーときわ台ではテストケースとして、今まで介護職員の主観に頼っていたお客様の変化を数値による定量測定に置き換え共有しています。
 アクティビティにお誘いした時、最中、終わってからのお客様の表情や反応などを数値で記録し、振り返りを行い、食事量や睡眠などに支障が出ていないか検証します。昼夜逆転など、十分な睡眠がとれていない方には、PTが夕方リハビリにはいり、心地よい疲れと睡眠に導くよう改善策をアプローチします。これによって、睡眠薬や下剤を使用されていた方の使用率が飛躍的に下降しました。
 『活動量の増加』『食事率の増加』『良質な睡眠』の基本サイクルを良好に保たせることで、本来の健康を取り戻します。そしてこの基本サイクルを向上させるには、お客様自身が心を動かして主体的に活動していただかなければなりません。この心を動かす原動力となるのが、アクティビティ・ケアに他ならないのです。

リハビリ病院からの転居、そして在宅復帰 日帰り・一時外泊の在宅復帰もブーム

 ご入居時ほとんど言葉のなかった80代女性の方に、お好きな生花にふれる華道にお誘いしたところ言葉が出るようになり、今ではご家族やお客様同士とコミュニケーションが取れるようになりました。認知症状で「食べること」を忘れた90歳女性の方には、 口腔マッサージと「嗅覚」を刺激する取り組みで食への興味を取り戻していただきました。リハビリ病院退院後ご入居された88歳の男性は「いずれは自宅での生活」とのご希望に全職員が取り組み、ご入居中も時々自宅に戻る生活を繰り返すことで自宅での生活の勘を取り戻され、自信もつき、見事在宅復帰を叶えられました。
 ドーミーときわ台では日中や週末、ご自宅に外出・外泊されるお客様が増えています。身体の改善から活動性を広げ、さらに精神的にも意欲と自信を取り戻していただくことで、外泊・在宅へと進展しています。

活躍の場を社会へ 『生涯活躍』で豊かな時間を

 お客様のアクティビティ活動は、活躍の場をホーム内にとどまらず、地域社会に広げています。街のギャラリーでの共同展や、市民音楽祭・地域の夏祭りの参加など、“本物”にふれ、主体的に地域とつながることで、社会性をも取り戻されています。このようなお客様のご活躍は、ご家族様にとって、また我々職員にとっても、驚きとともに大きな喜びでした。
“信じましょう可能性を。”私たちはお客様が生涯活躍される環境づくりに、これからも挑んで参ります。

事例3 ご入居者様の声にお応えする環境づくり
株式会社 明昭

医療法人グループの強みと充実のリハビリ環境

 大宮明生苑では個別リハビリ・集団リハビリを週に5回、松戸めいせいでは毎日行っています。これはご入居者様からのご要望にお応えして今の回数になりました。
 また、リハビリの一環として、医療法人社団 苑田会グループの治療院が医療保険適応のマッサージを月最大15回ご提供しています。ご高齢の方特有のむくみや関節拘縮をほぐすことが目的ですが、個室で行われる1対1での対応にご入居者様もリラックスされ、世間話なども盛り上がるようで、反響の大きい取り組みのひとつですね。
 ご家族はもちろん、ご入居者様はリハビリに意欲的な方々が多く、リハビリの時間以外にも自主的な訓練を希望される方もいらっしゃいます。そういった方々の為に、リハビリ機材などはご自由にお使いいただけるよう配置しています。個別リハビリ、集団リハビリ、マッサージ、自主訓練などを重ねられますから、ご入居後とてもお元気になれる方が多くいらっしゃいます。

お客様の痛みに寄り添い気遣う NOを言わない対応が功を奏する

 脊椎圧迫骨折のため他法人ホームにご入居中の方のご家族から、ご相談を受けたことがあります。痛みのためか、暴言暴力が強く出てしまうということで、精神科の受診を勧められていらっしゃいました。ご相談を受けたその日の夕方にお迎えに行きました。
 たしかに表情が険しい方でしたが、座っているだけでもつらい、とおっしゃる程に、痛みを耐えていらっしゃいました。移動はゆっくり、時に車を止めて休憩をはさみながら半日かけてホームに到着すると、初日から暴言暴力がみられることはありませんでした。やがてリハビリを続けることで、自立歩行できるところまで回復され、今では当ホームのムードメーカー的立場で、他のご入居者様を励まされていらっしゃいます。
 大切なのは、ご入居者様に我慢を強いらないことです。また、フランクなコミュニケーションを望まれる方でしたので、全職員でそのように対応しました。もちろん、馴れ馴れしさを嫌われる方も多くいらっしゃいます。人それぞれ、望まれる対応は違います。現場職員がともに情報を共有し、お客様のご要望や変化に対し、どんな些細なことでもともに報告しあう、風通しの良い職場作りが大切だと痛感しています。

選んでいただいた喜びを胸に、ご入居者様のご要望に最大限取り組む

 大腿骨骨折による治療から退院されて、松戸めいせいにてリハビリに励んでいただき、3ヶ月間で在宅に復帰された方がいらっしゃいます。
 ご入居時は車いすを使用されていましたが、個別機能訓練計画を基に、全職員が一丸となって取り組みました。
 有料老人ホームの基本は、最期まで安心してお過ごしいただける「終の棲家」ですが、お客様が望まれたことのお手伝いをするのが私たちの役割だと思っています。
 意欲もおありの方で、ご退去時の別れの寂しさはありますが、ご入居先に当ホームを選んでいただいたことが私たちの喜びです。在宅復帰を望まれ、末永くお元気にお過ごしいただくことを願っています。

 

事例4 『夢ケア』で、最期の一時帰宅を支援
株式会社 ツクイ

 以前、ご入居されたお客様に画家のT様がいらっしゃいました。脳卒中で左半身にマヒが残り、歩くことと食べ物をのみ込むことが困難になってのご入居でした。
 口からの食事は難しい状態でしたが、麺類が食べたいとのご希望から、蕎麦つゆをゼリー状にしたゼリー食を作り、まずはつゆを味わっていただくところから始めました。嚥下の機能訓練と並行して少しずつ食形態を上げていき、最終的にはそうめんをくるりとひと口大にまとめたものを、ご自分でひと口分ずつ食べられるまでに嚥下機能が回復しました。
 食べられるようになり、だいぶお元気になられた頃、ふと「アトリエはどうなったかな」と口にされました。ご自宅2階のアトリエに思いを馳せつつも「階段があるから、もう僕には行けないよ」と言葉をつづけたT様でしたが、私たちは「絶対にアトリエに連れていってあげたい」と強く思いました。
 T様は体格の良い方で、大型の車イスを使用されていました。さすがに大型車イスごと階段を運び上げるのは無理なので、普通の車イスなら職員二人で抱えられると判断し、私と男性職員、ご本人を交えて施設の非常階段を上り下りする訓練を何回も行いました。T様は「うちの階段はこんなに広くないよ」と心配してくださいましたが、「大丈夫です。絶対にお連れしますよ」と約束しました。
 いよいよ当日、車で1時間のご自宅へ。1年半ぶりの帰宅でした。車移動でお疲れだったので、ご自分のベッドで天井のシミを懐かしみつつ横になり、お目覚めの後、いよいよアトリエへ。訓練の甲斐もあり無事階段を上りきり念願の場所に到着。描きかけの絵があるイーゼルの前に座ると、にこやかないつものお顔から、きりっとした表情に変わりました。同行の娘さんご夫妻は口をそろえて「画家の顔に変わったなぁ…」。その時アトリエにあったのが『どこまでも続く道の絵』です。その日はアトリエで大好物のお寿司とお庭になっていた蜜柑で昼食。ご近所の方も会いに来てくださり、久しぶりの自宅を満喫した1日でした。
 それから1年後、T様は「もう一度アトリエに連れていって欲しい」と言われました。あまり体調の良くないT様に「もう少し陽気が良くなってからにしたら?」と娘さんが提案すると「それまで自分はもたないと思うから、今行きたい」。その言葉に、急きょ2回目の一時帰宅を決行しましたが、前回とは違い看護師の同行が必要な状態でした。
 その年の暮れ、T様は最愛の娘さんに看取られて静かに旅立たれました。ホームに泊まり込んで3日3晩付き添った娘さんは、お父さんの最後の呼吸を見届けたあと、私たちをナースコールで呼び「親孝行ができた瞬間でした」とおっしゃいました。
 今では施設のエントランスに飾られている「どこまでも続く道の絵」。いつでもT様がそっと私たちを見守ってくれているような気がします。
 ツクイ・サンシャインでは、お客様のささやかな夢を叶える『夢ケア』に取り組んでいます。有料老人ホームは、日々を通してお客様と深く関わりお世話させていただける、幸せな仕事だと思います。お客様の様々な思いに寄り添い、お応えしていきたいと思います。

入居によって状態の改善や在宅復帰を叶えた事例 ホーム、法人の取り組みや事例についてご紹介します。


次号「『老人ホームの終活』最良の最期とは何かを考える- 有料老人ホームの「看取り介護」