『老人ホームの終活』最良の最期とは何かを考える- 有料老人ホームの「看取り介護」

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特集 |  『老人ホームの終活』最良の最期とは何かを考える- 有料老人ホームの「看取り介護」

看取り介護の広がり


 平成18年に特別養護老人ホームで終末期のケアを行う報酬として「看取り介護加算」が新設されました。その後、介護老人保健施設に「ターミナルケア加算」、さらにグループホームに「看取り介護加算」が認められるようになり、施設でご逝去される利用者が増えつつあります。
 厚生労働省が平成27年に発表した調査結果によると、特別養護老人ホームと介護老人保健施設では、すでに約7割の施設が「看取り介護」を実施していることが明らかになっています。
 有料老人ホームにおいても、ご入居者がご逝去された場所についての報告によると、介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホームともに4割以上がホームでのご逝去であり、それ以外については病院・診療所となっています。(平成25年度調査)

 介護付有料老人ホームについては、平成24年度から「看取り介護加算」の創設によって看取り介護を積極的に取り組むホームが増えてきました。住宅型有料老人ホームと比較してもホーム内でご逝去される方の実績に大きな差は見られていません。


高齢者の看取り 病院と有料老人ホームの違い


 病院での看取りと、自宅または特別養護老人ホームや有料老人ホームなどといった介護施設での看取りにはとのような違いがあるのでしょうか。
 がん末期や難病などといった余命宣告を受けられた方が、最期を迎える場所としてイメージされるのは、『ホスピス』とよばれている緩和ケア病棟が一般的かと思います。ただし、緩和ケア病棟は満床のところが多く、また、入院には様々な条件や判定会議があり、症状の重い方が優先される傾向にあります。一方で、有料老人ホームは基本的に『在宅』なので、看取り対応も当然可能です。
 訪問診療や訪問看護(またはホーム常勤の看護師によるケア)を利用しながら、痛みや不安を和らげ、穏やかに余命を過ごすためのケアが行われます。
 また、数はそう多くはありませんが、24時間看護師が常駐し、専門の往診医と提携した医療依存度の高い方のお受入れを可能にしているホームなどでは、緩和ケア病棟に近いケアを行えるところが登場してきています。


有料老人ホームでの看取りとは


 病院での看取りと、自宅または特別養護老人ホームや有料老人ホームなどといった介護施設での看取りにはとのような違いがあるのでしょうか。
 がん末期や難病などといった余命宣告を受けられた方が、最期を迎える場所としてイメージされるのは、『ホスピス』とよばれている緩和ケア病棟が一般的かと思います。「終の棲家」と謳う有料老人ホームが増えるなか、実際どのような対応がなされるのでしょうか。
 有料老人ホームでは主に、2週間に1度の往診医による診察、日勤帯または夜間の看護職員による服薬ケアや医療的ケアが行われます。
 ただし『老人ホームは病院ではない』ため、転倒による事故や急病の際には協力医療機関や救急搬送の形でクリニック・病院にご入居者をお連れすることになります。
 入院加療が必要となった際は、ご入居されているお部屋はそのままに、食費以外の家賃・管理費などの支払いを継続し、ホームにもよりますが、入院3か月くらいを目途にホーム運営会社とご家族との話し合いを行い、3か月以上入院が続くとなれば退去勧告を受けるケースもあります。
しかし在宅と同じように、高齢による衰弱や往診医の診療で可能な範囲であり、加療や延命を希望しないとするご本人・ご家族の同意があれば、入居するホームで最期の時まで介護を受けながら住み続けることができます。
 看取り介護は、基本的には日常介護の延長としており、特殊な介護を行うことはありません。身体的・精神的負担を和らげ、ご本人やそのご家族の意思を尊重しつつ最期まで安らかに過ごせるようなケアを行います。


ご家族に対するケア


 ご容態の急変などにより、医師の宣告や説明がないままお看取りになるケースもあります。 また、死に場所に対するご本人とご家族の意見が一致しなかったり、急変時にご家族の考えが変わって病院への搬送を望んだりすることもあります。
 ご家族の気持ちや決断が揺らぐことは、しごく当然のことでしょう。その為にも、終焉に近づきつつあるご入居者の看取りに関して、ホームとご家族が何度も話し合いを重ねたり、ホーム職員がご家族の方々に対するケアを行ったりします。
 ご家族が不安に思う心うちを傾聴し、24時間付き添うことのできない家族に代わり、ご入居者の状態変化をこまめに報告するなど、コミュニケーションを密に取ります。
 また、ご入居者のお好きな音楽を居室内に流したり、入浴がお好きな方には身体の負担がかからない特殊浴などで清潔にしたり、お好きな食事を口から食べやすく形態を変える工夫を凝らすなど、ご入居者が望まれること、喜ばれることに尽力し、ご本人やそのご家族の身体的・精神的負担を軽減しています。

 これまで、看取り介護の難しさは、終末期にあるご本人とご家族の意見が一致しないことの他に、『看取り介護』がホームの介護スタッフにとって大きなストレスであることも、一つの要因でした。
 ご入居者が亡くなるとき、家族の悲しみと共に、実際にケアに携わった介護スタッフも大きな喪失感を抱きます。経験の浅い職員にとっては、それが過度なストレスになることもあります。
 看取りを行う有料老人ホームでは、看取り計画の指針を明確にし、看取りに関する職員研修を重ね、十分な対応スキルと環境を整えることに努めています。


旅立たれたその後も


 やがて、ご入居者が息を引き取り、ご家族や介護スタッフに見守られながら旅立たれます。
 最近のホームでは、死後処置であるエンゼルケアを行うところもあります。排泄物の処理、口腔ケア、全身の清拭、装束へのお着替え、櫛を入れて髪を整え、女性には死化粧をほどこします。通夜や告別式などにホーム職員が参列することもあり、最後のお別れをします。また、亡くなられたご入居者のお別れ会や葬儀をホーム館内で行うところも増えてきています。仲良くされていた他のご入居者がお別れの挨拶をされるなど、長くお住まいであったご入居者にとっては、本当に有料老人ホームがご自分の家となっています。
 病院で亡くなることが一般的である現代において、ホームで看取られ天寿を全うすることについて、「自宅で看取られ自宅で葬儀を行っていた、古き良き時代に立ち返ったようで、崇高な気持ちになります」と、あるご入居者のご家族は仰っていました。
 お盆の迎え火、送り火の季節、元ご入居者のご家族が再びホームに足を運ばれるなど、ご逝去後も故人を偲んでホームとご家族が交流を重ねているホームもあります。
 最良の最期を考える。有料老人ホームでのお看取り介護は、穏やかに、そして心を込めたサポートが最後までなされています。


『老人ホームの終活』最良の最期とは何かを考える- 有料老人ホームの「看取り介護」


次号「『老人ホームの看取り介護Ⅱ』親の死、私の死について向き合う/2大インタビュー