介食同源

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特集|介食同源

-まず初めに、貴社の概要をお聞かせ下さい。我々介護業界の者は、太平洋シルバーサービスといえば、2000年の介護保険法施行前から老人ホームを運営している老舗ホームと認識し、よく存じ上げている企業様ですが、まだまだ、一般的には知られていない部分も多いのではないかと思います。

奥谷社長/ はい、お陰様で、株式会社太平洋シルバーサービスは来年、2019年に創業35周年を迎えます。弊社の親会社である太平洋興発株式会社は、2020年で創業100周年を迎える三井グループの東証一部上場企業であり、不動産事業・エネルギー事業などを行っています。
 私は、1988年にこの歴史ある太平洋興発株式会社の経理部に入社し、介護保険法施行の2000年に太平洋シルバーサービス社へ異動し、現在に至ってます。弊社は1984(昭和59)年11月に、1号館「シルバーシティ哲学堂」を開設しました。東京都へ届出した弊社の運営指針は、老人福祉法に則り「お年寄りの誇りと尊厳を大切にし、衣・食・住に渡り、心よりおもてなしをする」「都市型の有料老人ホームとして、ご入居者とご家族様との絆を大切に、きめ細かい家族的サービスの提供」「身体に支障をきたした場合、提携医及びヘルパーによるケアの実施」「24時間管理体制による安心サービスの徹底」で、34年目の現在も弊社の原点であり、今も変わりません。

- 今回のテーマである、「介食同源」ですが、それを実現するための客観的根拠の一つにもなるのではないかと思う、介護業界では珍しいISO9001(品質マネジメントシステム)を取得した理由をお聞かせ下さい。

奥谷社長/現在、弊社運営ホームは都内に8ホームございます。各ホームが会社の運営方針に従い、ご入居者様、ご家族様からの様々なニーズにお応えしてまいりました。その中で、社内人事異動の際、ホーム毎の使用帳票や役割の違いなどに戸惑う社員が増え、業務平準化の必要性が出てきました。そこで、サービスの品質向上を顧客満足に繋げる事、介護サービスのプロセスの明確化、業務改善に繋げる事を目標に、ISO9001を導入する事を決定し、2005(平成17)年度に認証を取得しました。

- 介護サービスの質を会社全体の共通品質として全ホームに浸透させる事は大変だったと思いますが、導入前から現在まで、どのように品質マネジメントを運用しているのでしょうか。

奥谷社長/「認証準備段階では、各ホームから「ISO推進員」を選任し、定期的に打合せを行い「この介護サービスはAホームのサービスを採用」など、各種整理を行いました。また、ISO9000シリーズの規格要求事項では内部監査員の配置が定められており、弊社の「品質マニュアル」でも準じています。内部監査員は定期的に各ホーム、本社部署の内部監査にて運用状況を確認し、手順通りでない場合は「不適合」として是正処置を行います。
 その他、我々の介護業界では紙の資料や記録が多いのですが、当社は2006(平成18)年度から「電子記録管理システム」を導入し、各種アクシデント(事故)やインシデント(ヒヤリハット)等を全社で情報共有する等など、効率も考えた運用を行っています。

- 食事の取り組みについて少し具体的に話をお聞かせ下さい。

奥谷社長/弊社では全ての事は企業理念、経営理念、品質方針の3つに沿って実践しています。
 企業理念は「高齢者の多様なニーズに応え、暖かなサービスを提供する事により、心豊かな社会作りに貢献します」、経営理念は「一人一人のニーズに合った木目細かいサービスの提供」、品質方針は「自宅にいる時と同じようなくつろぎの感覚を持って頂く」事です。中でも日常のお食事は、味噌汁の出汁に拘った一汁三菜をベースに、主食、主菜、副菜2品、味噌汁、漬物、デザートの7品目が基本です。旬の食材を中心に、飽きの来ないメニュー作りに努めています。お食事の形態は普通食から、嚥下や咀嚼にご配慮が必要な場合はお召し上がりやすいよう工夫してご提供します。ご提供する食事内容は、各ホームでの「厨房ミーティング」で献立の検証や検食記録の意見を確認し、次の献立に活かすよう取り組んでいます。また、外食のご要望にも最大限お応えしているので、お一人でお出かけ出来ないご入居者様が、ご指定のお店○○のステーキが食べたい、△△蕎麦屋で蕎麦が食べたいとご要望があれば、職員が同行の上ご一緒します。
 ある104歳のご入居者様はケンタッキーフライドチキンが大好物。そのホームはフライドチキンを毎日購入するのが日課で、召し上がりやすいよう加工し、ご提供していました。更に、東京都麺業連合協同組合様のご協力を賜り、蕎麦打ちイベント「新そばの会」を開催し、引き立て・打ち立て・茹で立ての蕎麦をご堪能頂いたり、月1回の郷土料理の日(47都道府県、4年で日本一周)、焼き立てパンの日、セレクトメニューの日、サンドウィッチの日、朝粥の日、駅弁の日、各ホームの料理長が得意とする献立を、敢えてメニューをお知らせせずにご提供する「料理長お任せ料理の日」等、各ホームで様々な工夫をしています。
 又、ナイトラウンジと称して、ご入居者様とご家族、職員が一同に軽食やアルコールなどを楽しむ交流イベントも開催しています。弊社の基本姿勢は、ご入居者様からのご要望とご家族様がこうしてあげたいと思うお気持ちの実現に向け、努力する事です。それを可能にするのが「1.5対1の手厚い介護体制」であり、何より「お客様のこうしたい」を大切にする日々を重ねてきました。

- 最後に奥谷社長の考えや貴社の取り組みをわかりやすく教えて下さい。

奥谷社長/弊社は創業以来、都市型有料老人ホームの黎明期から現在まで、ご高齢者の自立自尊のご生活が、より良いものとなる様サービスを作り上げて参りました。その遺伝子が、介護保険制度施行後に同業他社に広がっている事は紛れもない事実であり、その中でも弊社の強みは、旺盛なサービス精神溢れるスタッフの頑張りと、地に足を付け34年目の現在も、しっかりこの事業を継続している事です。私共は長期滞在型を中心に、前払い金型、期間設定型、月払い型、月払い併用型(セレクトプラン)をご用意して、皆様のご入居をお待ちしております。

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