日本人の平均寿命は年々延びており、世界的に見ても日本は長寿大国としての地位を確立しております。最近、平均寿命と比較して語られるのが「健康寿命」という言葉です。施設へ入居した後もなるべく健康で過ごしたいという方に向け、健康寿命を意識した施設選びについて解説していきます。
私が高齢者向けの住まいの紹介センターの相談員を目指したのは「少子高齢化が進み、お体の不調や認知症等でお住まいに困る高齢者が増える中で、貢献できる仕事をしたい」という理由でしたが、率直に申し上げると「健康でなくなった高齢者の方を助けたい」ということです。この表現だけ見ると高齢者向けの住まいは「健康寿命が終わった方のための場所」になってしまいますが、これは大きな間違いであることが相談員を続けていく中で分かりました。これからの高齢者の住まいの適切な選び方について「健康寿命」という言葉を元に考えて参ります。
厚生労働省が定める健康寿命の定義について
そもそも健康寿命の定義って何でしょう?そう思ったので、健康寿命について調べてみました。日本人の平均寿命は2019年の厚生労働省の調査によると女性は87.45歳、男性は81.41歳です。日本人の健康寿命については、直近で2016年厚生労働省のデータしかございませんが女性が74.79歳、男性が72.14歳です。健康か不健康かの定義は、国民生活調査票(アンケート調査)に生命表を基礎情報として、サリバン法を用いて算出します。
主指標①「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」
→①に対し「ない」と答えた方を「健康」とする
副指標②「あなたの現在の健康状態はいかがですか」
→②に対し、「よい」「まあよい」「ふつう」と答えた方を「健康」とする
①と②を元に割り出されるのが「厚生労働省が定義する健康寿命」です。
※2019年の厚生労働省のレポートでは上記の算出の仕方に課題があるとしているため、今後定義の変更はあるかもしれません。
心の健康寿命という考え方
厚生労働省が定義する健康寿命の物差しで言えば、血液透析が必要な方、糖尿病で食事制限が必要な方、入院している方など、生きていくうえで行動に制限がかかっていると一律で「不健康」と認定されます。もちろんその通りかもしれませんが・・・。違和感を覚えるのは私だけでしょうか?
日常生活に影響する制限がありながら、夢に向かって仕事をし、結果を出して目をキラッキラさせながら生活している方もいれば、何も病気にはかかってはいないが、日常に生きがいを見つけることができずため息をつきながら過ごす方もいます。
身体的に健康か不健康かという物差しだけではなく、心理的に健康か不健康か(言い換えれば幸福に感じているか、不幸に感じているか)という物差しも必要に感じます。厚生労働省が定義する健康寿命を「体の健康寿命」として、「心の健康寿命」という考え方です。
※心の健康に関して言えば、鬱病などの精神的なご病気については厚生労働省定義の健康寿命関わってくるため、表現の方法については精査が必要です。あくまで便宜的な言葉として受け取って頂きたいです。
健康寿命を意識した高齢者向けの住まい探しを。
高齢者向けの住まいの相談の時に、「日常生活を送る上で手伝いが必要になり、自宅で住むことが難しくなったら入居を検討します」という方が多いです。高齢者向けの住まいは“健康寿命が終わってから入居する場所”と考えている方が多いと感じます。はっきり言って勘違いです!もったいないです!!実は高齢者向けの住まいは心身の健康寿命を延ばす可能性を秘めているのです。
具体的な建物やサービス内容とは?
例えばサービス付き高齢者向け住宅は、お部屋の中にキッチンやお風呂、洗濯機置き場もあり外出も自由で、マンションと変わりないような生活を送ることができる物件が多いです。中のサービスとしては、1日1回以上安否確認サービスが付いており、お部屋で何かあった時も駆けつけてくれるスタッフの方が最低日勤帯は常駐しております。
お一人暮らしの高齢者の方がサービス対高齢者向け住宅に入居すれば、お体に何かあった時も住宅のスタッフが発見してくれるため、病気やお怪我の重篤化を予防し「体の健康寿命」を延ばすことができます。またサービス付き高齢者向け住宅にはオプションで食事をつける事ができるため、買い物や料理、片付けに使っていた時間を趣味の時間や住宅の中でのお友達との交流の時間に充てることができます。これで「心の健康寿命」を延ばすことができます。
「でも介護付き有料老人ホームは元気じゃなくなった時に入るところでしょう?」それも勘違いです!もったいないリターンズ!!介護付き有料老人ホームは、介護士と看護師が毎日勤務しており、夜中も含めて24時間体制で見守りとお手伝いが可能です。このサービス内容を見ると「やっぱり健康ではない方のための住まいでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし最近は「健康な方」や「健康になりたい」方向けの介護付きホームも増えてきております。まずイベントごとです。サービス付き高齢者むけ住宅と比較すると介護付き有料老人ホームは、ホームの中でのイベントが多い傾向にあり、お友達が作りやすく、楽しく日々を過ごしたい方はご自宅より楽しみが増える可能性が高いです。コロナ渦で少し自粛傾向ではあるものの、ホーム事で様々な取り組みが行われております。
例えばバーカウンターがあるホームでは、夜にお酒を飲んで語り合う夜レクリエーションや、囲碁将棋などのクラブ活動、ホーム内に人工温泉があるところなど、心の健康寿命を延ばす事ができる内容のホームが増えてきました。また、看護師や往診のお医者様による健康チェックや緊急時の対応は「体の健康寿命」を延ばすことに繋がります。
他にも食事にこだわりがあり、健康的でありながら美味しい食事が提供されるホームもあれば、リハビリが充実しているホームでは集団体操やスタッフが付き添っての散歩、専門家による個別のリハビリが提供されます。食事やリハビリのサービスが充実しているホーム入居することは、「心」と「体」の健康寿命どちらも延ばすことに繋がります。
介護付有料老人ホームは心の健康寿命を延ばせる!?
介護付きホームも「健康寿命」を延ばす可能性を秘めている事がお分かり頂けたかと思いますが、さらに真価を発揮するのは「体の健康寿命が終わってしまった」方に対してだと私は思っております。厚生労働省が定める健康寿命では「要介護2以上」の方は不健康とみなされてしまいますが、介護付きホームに入居すれば、「心の健康寿命」を延ばすことができる可能性があります。
歩行の不安定などお身体が理由で要介護度が出ている方の場合、先にお伝えしたリハビリやマッサージが提供できますし、生活しづらい部分をお手伝いして頂けます。バリアフリーの環境なので、自宅では使えなかった車椅子移動を選ぶことで、痛みから解放されてゆっくり過ごすことができるかもしれません。認知症が理由で介護度が出ている方の場合、ご自宅では認知症の影響による行動で「問題行動」と認識されて家族から怒られる事が多かった方が、認知症の対応に優れている介護付き有料老人ホームに入ることで優しく否定されずお世話をして頂き、ご自宅にいた時より穏やかな気持ちで過ごすことができるケースがあります。
健康的な生活を送る事が出来る施設選びを。
高齢者向けの住まいをどのように探せばいいのか、迷う方が多いですが、健康寿命の観点から考えると住まい探しの指標の一つが見えてまいります。現在ご自身の体の事で心配がある方は「体の健康寿命」を延ばすサービスを提供してくれる住まいを探せばいいです。体はお元気ですが「今の生活が楽しくない」「生きがいをもって過ごしたい」という方は、心の健康寿命を延ばすことができるサービスを提供してくれる住まいを選べばいいのです。
サービス付き住宅であれ、介護付きホームであれ、高齢者向けの住まいには心身の健康寿命を延ばす力があると確信しております。「お手伝いが必要になってから相談に行こう」と思っていらっしゃる方も、一度健康寿命を延ばすための場所として高齢者向けの住まいを探してみませんか?
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