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老人ホームは何歳になったら考えるべき
老人ホームは何歳になったら考えるべき
様々な理由があって老人ホームへの入居を考えたときに、一般的には老人ホームへ入居が可能なのは何歳からだと思いますか?この「何歳から」というのが実は各老人ホームによっても微妙に異なっています。
まず老人ホームへの入居を検討するのは、入院をきっかけに介護が必要となり、退院後の在宅生活に支障がある方や、独居での生活に不安があり、万が一、何かあった時のために安心感を求める方、老後は自分の子供や家族に介護で迷惑をかけたくないという想いや、悠々自適な生活を送りたいという方まで理由は幅広くなっています。
それぞれに異なる事情があり、いたしかたなく老人ホームを検討されたり、お元気なうちから入居して老後の生活を楽しく過ごすために前向きに検討するといったように様々だと思います。
老人ホームは、何歳から入居ができるのか
介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームなど多くのいわゆる「有料老人ホーム」と呼ばれている施設では、入居可能な年齢は原則60歳以上や65歳以上の方となっており、特別養護老人ホームや認知症の診断がある方がご入居できるグループホームなどでは、原則65歳以上の方が入居可能になっています。
特別養護老人ホーム、グループホームには年齢の他に介護度の条件もあります。有料老人ホームには、介護が必要なく要介護認定をお持ちでない「自立」の方から入居できるところもあります。老人ホーム紹介センターでご紹介が可能なのは、有料老人ホーム(介護付き・住宅型)、サービス付き高齢者住宅、高齢者マンション、一部グループホームなどになります。

要介護認定は何歳から?
では、入居する条件で必要となることが多い要介護認定(要支援・要介護)を受けることができるのは何歳から可能なのでしょうか。まず介護保険制度への加入は40歳以上の全ての人が対象となりますが、基本的に介護サービスが受けられるのは65歳以上からとなります。介護保険の被保険者は以下のように分けられます。
- 65歳以上の「第1号被保険者」
- 40歳以上の「第2号被保険者」
65歳を越えると要介護認定が受けられ、それぞれ介護度が決まります。要支援1~2と要介護1~5のいずれかの介護度が出れば、介護サービスを受けることができます。要介護認定については以下の通りです 。
要介護認定とは
○ 介護保険制度では、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護サービスを受けることができる。
○ この要介護状態や要支援状態にあるかどうか、その中でどの程度かの判定を行うのが要介護認定(要支援認定を含む。以下同じ)であり、保険者である市町村に設置される介護認定審査会において判定される。
○ 要介護認定は介護サービスの給付額に結びつくことから、その基準については全国一律に客観的に定める。

要介護認定の流れ
○ 市町村の認定調査員(指定居宅介護支援事業者等に委託可能)による心身の状況調査(認定調査)及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定(一次判定)を行う。
○ 保健・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会により、一次判定結果、主治医意見書等に基づき審査判定(二次判定)を行う。
※出典 厚生労働省HP
特定疾患とは
40歳から65歳未満の第2号被保険者の方の中でも介護が必要で要介護認定を受け、介護サービスを利用したいといったこともあります。このような方が要介護認定を受けるには以下の「特定疾病」が原因によることが条件となります。
特定疾病とは、心身の病的加齢現象との医学的関係があると考えられる疾病であって次のいずれの要件をも満たすものについて総合的に勘案し、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病である。
1) 65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、罹患率や有病率(類似の指標を含む。)等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの。
2) 3~6ヶ月以上継続して要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病。
特定疾病の範囲とは
特定疾病については、その範囲を明確にするとともに、介護保険制度における要介護認定の際の運用を容易にする観点から、個別疾病名を列記している。(介護保険法施行令第二条)
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)※
- 関節リウマチ※
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
【パーキンソン病関連疾患】 - 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症※
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの)
※出典 厚生労働省HP
上記のように、40歳以上65歳未満の方が要介護認定を受けた場合には介護サービスを受けることが出来ますが、老人ホームへの入居となると入居条件である60歳以上や65歳以上には該当しません。それでは、第2号被保険者の方が老人ホームへ入居することは全くできないのでしょうか。
60歳になるまで在宅介護を続けていかなくてはならないのかと途方に暮れる方もいらっしゃると思います。いざ老人ホームを検討し始めると、皆さんはインターネットなどによって情報収集されると思います。始めの方にあるように各老人ホームともに入居可能年齢は60歳以上、65歳以上と書かれています。実際の老人ホーム入居者の平均年齢は80代前後というところが多い状況です 。

高齢にならなくても老人ホームには入居できる
「やはり高齢者でないと難しいのか」と感じるかもしれません。60歳、65歳以上の方であれば、入居のハードルはそれほど高くありませんし、色々なサービスを展開している老人ホームやサービス付き高齢者住宅があります。入居しながらも旅行に出かけたり、外食を楽しんだりすることもその方の身体状況にもよりますが可能なところは多くあります。
ご本人に合った老人ホームを見つけられれば、これまでのような、または今まで以上に生き生きとしたご生活が送れるようになると思います。難易度が高くなるのは、第2号被保険者で要介護認定を受けた方の場合です。要介護認定は出ているが入れる老人ホームはあるのか?入居相談に乗ってもらえる老人ホームもわずかながらあります。当然、その方のご病気や必要な医療、どのような介護が必要であるかによります。
またご本人、ご家族から排泄介助や入浴介助が必要な場合に同性介助を希望されることがあります。一般的な入居対象となる60歳以上だから同性介助の必要はないという事では全くありませんが、老人ホーム側からも配慮はいただけると思いますが完全に同性での介助が約束されるわけではありません。
ご入居する側もある程度目をつぶらなければならないことも出てきますが、在宅介護が困難で要介護認定を受けた方は、老人ホームへの入居検討も選択肢の1つになるのではないでしょうか。
以上
法人事業部 課長 松野健吾
老人ホームの住所地特例制度について
住所地特例制度とは
ご家族が老人ホームに入居する事が決まった際、住民票や住所変更に関連する意外と知られていない制度として『住所地特例制度』というものがあります。今回は、『住所地特例制度』の特徴と、住民票の所在で利用できる施設とそうでない施設についてのお話をさせていただきます。

まず、結論からお伝えしますと、老人ホームに入居が決まったら住民票を移さなければならないかというと、必ず移さなくてはならないということではありません。(一部を除く)。では、なぜ住民票を移さなくても良いのかというと『住所地特例制度』という制度があるからです。
介護保険制度においては、65歳以上の者及び40歳以上65歳未満の医療保険加入者は、住所地の区市町村が実施する介護保険の被保険者となるのが原則ですが、住所地特例対象施設(※1)に入所又は入居し、その施設の所在地に住所を移した者については、例外として施設入所(居)前の住所地の区市町村(保険者)が実施する介護保険の被保険者になります。これを「住所地特例」といい、施設所在地の区市町村の財政負担が集中するのを防ぐ目的で設けられた制度です。(※1)介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)、特定施設、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームに該当するサービス(食事、介護、家事、健康管理)を提供しているサービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム。東京都福祉保健局ホームページより。
この制度を始めて知る方には、内容が分かりにくいかと思いますので、簡潔にお伝えしますと、住民票がある今の住所から他地域の老人ホームに入居する時には、住民票を移動させなくても良いですよ。という制度です。
基本的に、老人ホームへの入居に限らず、現在、住んでいる住所地から別の地域に引っ越す場合は、転出届と転入届を市役所に提出して住民票を移しますよね。「住所地特例制度」とは、老人ホームに入居して新しい住所に住民票を移した後も、もともと住んでいた市町村が継続して保険者となり、介護保険の給付を受けることが出来るのがこの制度です。
地元行政の介護保険報酬の負担を減らすことが目的
介護保険制度は、住民票がある地域に保険料を支払い、介護保険給付を受ける仕組みで成り立っています。しかしその場合、介護施設が多いエリアに介護サービス給付費による財政負担が集中してしまいます。介護施設が多い地域に集中して財政負担がかからないようにするために、このような制度が作られました。
老人ホームに入居した際に、住民票を移すのは任意ですので、ご家族と同居されていたり、自宅の売却をせずに老人ホームに入居される方は、住民票を移さずに引っ越してこられる方も多いです。「住所地特例制度」の対象施設への転居の場合は、「住所地特例適応届」と「転出前の住所が記載されている介護保険被保険者証」が必要になります。市町村によって、住所地特例制度の手続き方法が異なる場合がありますので、市役所の高齢福祉課などの担当窓口や転居先の老人ホームに確認してみてください。

住民票を移すことができない施設もあります
さて、話は少し変わりますが、施設には住民票を移すことが出来る施設と出来ない施設があります。
簡単に分けると長期入居を前提としている施設(特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など)は住民票を移すことが可能です。短期入居を前提としている老人保健施設は、在宅復帰を目指し一時的に入居する施設のため住民票を移すことは出来ません。住民票を移す場合には、保険証なども同時に住所変更をする事を忘れないようにお気をつけください。
話がやや脱線しますが、介護施設の中には地域密着型の施設というものもあります。特別養護老人ホームやグループホーム、小規模多機能型居宅介護の対応施設、一部の有料老人ホームにもあるのですが、こちらは施設がある市町村の住民しか入居が出来ません。
例えば、東京都目黒区の被保険者が、東京都新宿区の特別養護老人ホームに入居することは出来ません。どうしても入居したい施設が地域密着型の老人ホームだった場合、例えば一旦新宿区のマンションなどを借りて、そこに住民票を移し、ある程度生活した後に地域密着型の老人ホームに入居する必要があります。ここで注意が必要なのが、住民票を移しても、即日で地域密着型の老人ホームに申し込む事は出来ないという点です。
必ず、居住実績がどの程度あるかを見られます。各市町村によってこの期間は様々ですが、だいたい半年~1年くらいの期間を見られるところが多いです。短くても3ヵ月くらいは必要です。在宅での介護が難しく必要だから老人ホームを探しているのに、居住実績をつくるために一旦マンションを借りて、訪問介護を入れて、デイサービスに通う等の引っ越す前と同様の生活を送るのは非現実的ですね。地域密着型の老人ホームへ申し込む際は、現在、住民票がある市町村の老人ホームへお申込みください。ただし、特別養護老人ホームやグループホームは低額で待機者数も多いのでご注意ください。
住民票を移すメリットデメリット
住民票の話に戻ります。ここでは、住民票を移すことのメリットとデメリットについて触れていきたいと思います。老人ホームに住民票を移すメリットとしては、市町村からの郵便物も老人ホームに届くようにすることが出来るため。介護保険関係の手続きなどを、老人ホームの職員に直接お任せできることがあります。
例えば、介護保険被保険者証が届いた際に、わざわざその旨を老人ホーム職員に知らせる必要はなく、市町村から送付された段階で開封することを許可しておけば、あとの料金計算は全て行ってくれます。医療保険証なども、わざわざ老人ホームまで届ける必要がなくなります。家族も定期的に実家に戻って郵便物を確認して、必要な書類を老人ホームに届けるという手間が省けます。
老人ホームに住民票を移すデメリットとしては、郵便物が直接老人ホームに届くため、各種の業者や交友関係が老人ホーム側で分かってしまうことです。プライバシーが気になる方は、老人ホームが郵便物をどのように取り扱っているか確認しておくと安心です。
ここまで、住所地特例制度についてと、住民票を移せる施設とそうでない施設について書いてきましたが、最後にまとめて終わりにしようと思います。

まとめ
- 入居先の老人ホームが、「住所地特例制度」の対象施設だった場合は、住民票のない地域への転居でも住民票を移す必要はありません。
- 住民票を移す場合、メリットとデメリットがありますので、ご本人やご家族の状況によって判断も変わってくると思いますので、どちらの方が良いのかよく考えてから判断されることをお勧めします。
首都圏相談室 室長 村上理絵
コロナ禍におけるレクリエーションの現状

コロナ禍で迎える2年目の夏ですが、老人ホームで行っているレクリエーションにも動きが出てきましたので最近の状況をお伝えしていこうと思います。
新型コロナウイルス感染症の終息が見えず、東京では連日1000人を超える感染状況ですが、老人ホームに入居されている方や介護スタッフへのワクチン接種は2回目を終えているところも増えてきました。
可能な限りレクリエーションを開催!?
昨年はこのコロナウイルスの感染力が未知のもので、老人ホーム側も入居者を守るために家族との面会や外部講師を招いたレクリエーションを取りやめていたところも多くありました。現在もほとんどの老人ホームで大なり小なりの制限はありますが、以前と比べてだいぶ活動内容が広がってきたと感じます。
老人ホームのレクリエーションは高齢者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を向上させる目的があるため、老人ホーム側は出来る限りレクリエーションを開催しようと考えてくれています。
老人ホームの入居者は、日常生活においてなんらかの介護サポートが必要な方ですので、もともと外出や趣味活動が少ない傾向にあります。その上、新型コロナウイルス感染症予防によって外出する機会がめっきり減りました。そんなときの気軽な気分転換の手段がレクリエーションです。
楽しみや他の入居者とのコミュニケーションが取れる貴重な機会となっています。体操で大きく体を動かしたり、指先で細かい作業をすることや、脳トレや謎解きで頭を使うなど、心身共に機能維持を果たす重要な役割があります。
それでは、ここからいくつか実例と共に現状のレクリエーション内容を紹介していきたいと思います。
近所の公園や神社に散歩。外出で気分転換
老人ホームのレクリエーションにおいて、入居者やその家族から好評なのが、外出レクリエーションです。初詣やお花見、バスツアーや外食イベントなど、季節ごとのイベントに取り入れている老人ホームは多く、車椅子の方でも安心して参加できるように工夫されており、家族も同行したりと参加率が高いレクリエーションの一つです。しかし、昨今では、屋外であっても人が密集する場所や時間帯に大勢で参加する事が厳しくなってしまいました。入居者と介護スタッフの安全を守るためと分かっていても、やるせない気持ちになります。
ただ、最近は少しずつ変わってきました。近所の公園や神社に少人数で散歩に出かけたり、リハビリの一環で歩行訓練と称して機能訓練指導員と共に老人ホーム周辺を歩くなどしているところも出てきました。理学療法士などの機能訓練専任のスタッフが常駐している老人ホームや、入居の定員数が少ない小規模の老人ホームだからこそ出来ることだと思いますが、少なからず今までの老人ホームの中だけのレクリエーション活動よりも気分転換に繋がり、入居者のリハビリに対するモチベーション維持にも繋がっていると思います。
これを取り入れている、いくつかの老人ホームに話を伺ったところ、外出の機会を設けたことによって、入居者の表情が和らいだと感じているスタッフが多くいるようです。入居者からすれば、散歩をしながら機能訓練にも繋がっているので、普段は機能訓練に消極的な方も参加しやすいのではないでしょうか。もちろん、体調変化や感染予防には細心の注意を払っているので、外出先で飲食をする事や大勢が集まるところへは行けませんが、小人数・短時間・近場の外出という条件化で感染したという事例は今のところ聞きません。

オンラインレクリエーションも!
老人ホームの中で行うレクリエーションにも変化が出てきています。新型コロナウイルスが蔓延してから取り入れるところが多くなったのが、オンラインレクリエーションです。
オンラインレクリエーションとは、離れた場所とオンラインで画面を繋ぎ、音楽の演奏や社交ダンス・フラダンスなどを鑑賞したり、ヨガや体操をしたり、クイズに参加するなどのレクリエーションを指します。新たな取り組みとして、昨年秋ごろから今年の春先までトライアルで検証されていたのが、吉本興業やNTT東日本などが提供した≪笑い≫を届けるオンラインレクリエーションです。
レクリエーションの取り組みの中に≪笑い≫が入ることで、他者とのコミュニケーション力が向上し、脳が活性化され、ADLやQOLの向上にも繋がるのではないかと考えられています。オンラインであれば、映画鑑賞などの一方通行の配信ではなく、双方向のコミュニケーションが取れるのもメリットです。老人ホーム側にとっても、講師やボランティアの方を実際に呼ぶことによる感染リスクが軽減され、安全に楽しんでもらえるレクリエーションを提供できますし、レクリエーションを外部に依頼する事によって、介護スタッフの負担軽減にも繋がります。
レクリエーションは老人ホームの生活の中で大切なものですが、日々のメニューを考え、実行に移すのは介護スタッフですので外部委託が可能であれば、その分介護サービスの提供に専念できるのです。
オンライン観光などを取り入れている老人ホームもありますし、オンラインレクリエーションを提供している企業自体も増えてきていますので、オンラインレクリエーションは、これから活用の幅がどんどん広がっていくと思います。
コロナ禍で今まで普通に行うことができたレクリエーションですが、現状は外出イベントや大勢が密になるものは制限があります。しかし、そんな中でも、老人ホームやレクリエーションを企画している企業は今できるレクリエーションに活気を出そうと試行錯誤しながら取り組んでいます。これから老人ホームをお探しになる方も、すでにご検討されている方も、老人ホームが現在どんなレクリエーション活動を行っているかぜひ聞いてみてください。
首都圏相談室 室長 村上理絵
終活のすすめ その2
終活のすすめ その2

前回お話しした終活のすすめ「ステップ1」では、自分一人でできる終活についてお話しましたが、今回は「ステップ2」として、家族との話し合いが必要な終活、更に「ステップ3」として、専門家のサポートを必要とする終活などについてお話したいと思います。
「ステップ2」の終活は、家族との話し合いが必要なものです。
終末期医療やお葬式、お墓について考えるため、『ステップ2』の取り組みだけを「終活」ととらえるかたも多いのではないかと思います。
家族との話し合いが必要な理由は、万が一のときに実際に動いたり判断したりするのは自分自身ではなく家族だからです。
どうしても家族に直接言いづらいことがあれば、エンディングノート等を利用して自身の希望を書き残しておくと良いと思います。
介護や医療の方針、葬儀や埋葬の方法を決めるだけであれば、ひとりでもできると思います。
介護や終末期医療について話し合う
生きている間であれば、どのような介護や治療を受けたいかの希望を伝えることができます。
しかし、認知症になったり危篤状態になったりすると、自分自身で伝えることはできません。
万が一のときに備えて、どのような介護や治療を受けたいかを家族で話し合っておく必要があると思います。
たとえば、次のようなことを考えてはいかがでしょうか。
- 認知症で意思表示がうまくできなくなった場合。自身の財産で賄える範囲の手厚い介護サービスを受けたいか、介護保険で賄える範囲でよいのか。
- 財産の管理は誰に頼みたいか。
- 病状の回復の見込みがなく死期が迫っている場合(終末期医療について)。本人に意識がなければ、誰の意見を尊重すればよいか。回復の見込みがなくても延命処置をしてほしいのか、延命よりも苦痛を和らげることを優先してほしいのか。
本人に意識がない場合は、延命処置を行うかどうかは家族が決めなければなりません。一度延命処置を始めると、途中でやめることは困難です。延命処置によってかえって苦痛が長引く場合もあり、家族にとっては非常に重い決断になります。終末期医療の方針を話し合っておくことは、家族の負担を和らげることにもつながります。
葬儀について話し合う
葬儀については、いまではさまざまな選択肢があります。
生前お世話になった人を多数招いて盛大に執り行ってほしいのか、家族だけでよいのか、それとも葬儀そのものを行わないかを話し合っておきましょう。
葬儀をしてほしいのであれば、家族に負担をかけないように生前に葬祭業者に相談しておくことも一つの方法です。あわせて、お金(費用)の準備もしておくとよいでしょう。
このほか、万が一のときに知らせてほしい人の一覧表を作成しておくことも必要だと思います。
故人の交友関係を家族が知っていたとしても、連絡先まで把握できているケースは少ないと思います。
親戚同士であっても、改めて連絡するとなると連絡先がわからないこともあります。
埋葬について話し合う
埋葬についても、さまざまな選択肢があります。
多くの場合は、先祖代々のお墓に埋葬してもらうか、新たにお墓を建てて埋葬してもらうかが選択肢となります。
現在は、子供や孫に負担をかけたくないといった理由から、お墓を撤去して納骨堂に改葬する、いわゆる墓仕舞いをする人もいるようです。
これまでの習慣にとらわれない埋葬のあり方として、自然葬や海洋散骨を希望する人もいますが、家族の中には故人を偲ぶ場所があった方がよいと考える人もいます。
埋葬の方法は家族も交えて話し合っておくことが大切だと思います。

「ステップ3」専門家のサポートが必要な終活
「ステップ3」の終活は、遺言書の作成や相続税対策など専門家のサポートが必要と考えられるものです。
遺言書を作成する
遺言書は、遺産を誰にどれだけ渡すかといった財産に関する事項のほか、子供の認知など身分に関する事項を定める法的な書面です。法律で定められた方法で作成しなければ無効になります。遺言書で誰に何を継がせたいか意思表示をしておけば、相続人は遺言書に従って遺産を分け合うことになります。
特に次のようなケースではトラブルが起こりやすいため、遺言書を作成するようおすすめします。
- 子供のいない夫婦の場合
- 相続人になる人がいない場合
- 離婚歴があり前妻(前夫)の子供がいる場合
- 息子の妻や孫などに遺産を継がせたい場合
- 内縁の妻など親族以外の人に遺産を継がせたい場合
- 特定の相続人に多額の遺産を継がせたい場合
- 相続人どうしの仲が悪い場合
遺言書の形式には、自筆で書く自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。自筆証書遺言は自分だけで作成できますが、法的な要件を満たさず無効になる例もあります。紛失や改ざんの恐れもあります。一方、公正証書遺言は作成に費用がかかりますが、無効になることはほとんどありません。
なお、『ステップ1』で触れた、エンディングノートは遺言書の代わりにはなりません。
いくら詳しく記載しても法的な効果はなく、あくまでも生前の気持ちを伝える補助的なものにすぎません。遺言書は書き方によって無効になったり、円満な相続のために遺したつもりが逆に内容によって相続人同士の争いの元となったりするケースもあります。
有効で、かつ争いのない遺言書を作成するために専門家のサポートを受けることをおすすめします。
相続税対策をする
相続税は高額になることもありますが、生前の対策で税額を抑えることができます。
相続税対策は、財産の価値を下げることなく税法上の評価額だけ下げることがポイントです。たとえば、手持ちの現金を不動産に組み替えたり、生命保険に加入したりといったことが考えられます。相続税対策については、多額の財産を動かすことになる、やり方によっては対策のつもりが逆に損をすることや税務調査の対象になりかねないといった点から、専門家である税理士のサポートが必要と言われています。
税務対策は相続税に強い税理士のサポートを受けて進めることを強くおすすめします。
まとめ
終活は定期的な見直しも必要です。終活は、一度しただけで終わるものではありません。人生の終わりを迎えるその時まで、定期的に見直すことも大切です。
一度身の回りのものを整理しても、月日が経てば物は増えてしまいます。財産の内容も変わっているかもしれません。
介護や医療の方針を決めたとしても、時間とともに考えが変わることも十分あり得ます。
たとえば誕生日や年始など、時期を決めてエンディングノートを書きなおすようにしてはいかがでしょうか。必要に応じて遺言書を書き直すことも必要だと思います。尚、遺言書が複数ある場合は、新しい日付のものが有効になります。
総務部 内藤克己
終活のすすめその1
終活のすすめ

終活とは
終活とは、「人生の終わりに向けた活動」を略した言葉です。
自身が亡くなったときの葬儀やお墓の準備をはじめ、遺産相続の対策、身の回りの整理などを行うことを意味しています。
終活という言葉はいまから約10年ほど前に広まり始め、今では、終活は「人生の終わりについて考えることで、今をよりよく生きるための活動」とも位置付けられています。
人生を振り返り、準備することで、更に前向きな人生を歩んでいけると考えています。
かつては、終活で考える介護や葬儀、遺産相続などは親族や地域ぐるみで行われ、遺産は長男がいれば長男がすべて相続する家督相続だったと思います。
その後、相続は相続人全員で分け合う均分相続に変わりましたが、家督相続の考え方も根強く残っていました。
そのため、自身で介護や死後のことを決めたり希望を伝えたりする必要はあまりありませんでした。
しかし、いまでは核家族化や近所づきあいの希薄化、単身世帯の増加などで、介護や葬儀のあり方は変わりました。相続でも、それぞれの相続人が自分の権利を主張する傾向が強くなっているようです。
介護や葬儀、相続のあり方が変わったことで、自身または残された人が決めなければならないことが多くなり、死後のことで家族に迷惑をかけたくないという思いも、終活の広まりを後押ししているのだと考えています。
終活にとりかかるためには、終活をすることのメリットを知るより、終活をしなければ家族にどういった困ったことが起こるかをイメージする方が考えやすく良いのかもしれません。
もし終活をしないままで重度の介護状態や最悪亡くなった場合は・・・。
➀預金通帳のありかがわからない
②預金通帳は見つかったが解約に手間がかかった
③遺品整理で大切なものを捨ててしまった
④遺産相続でもめた
また、重い病気やケガで意思表示ができない状態になったときも、次のような問題が家族に重くのしかかります。
➀保険に入っているかどうかわからない
②延命処置をするかどうかの判断を迫られた
こういった家族の負担を軽減するためにも、ぜひ終活に取り組んでおくことをおすすめします。
終活を始めた人の多くは、身近な人が亡くなったり、自身が介護状態や病気になったりしたことがきっかけになることが多いようです。

まず、終活といえば、葬儀やお墓の手配などに注目が集まりがちですが、認知症になった場合を想定したり、財産の整理や一覧表作成といった生前整理も終活の一部と位置づけられています。
なお、タイミングによっては自身の死後のことや終末期医療、介護状態について考えることがストレスになる場合もあります。
心身の状態がすぐれないときは、あせらず終活は控えるようにしても良いと思います。
なお、終活を手際よく進めるためには、市販のエンディングノート(終活ノート)を使うとスムーズに考えがまとまるかもしれません。
エンディングノートは、家族や関係者に伝えておきたいことが漏れなく書き込めるようになっています。
エンディングノートは全て書き込む必要は無く、書けるところから書いていくことをお勧めします。
エンディングノートに必要事項を書き込むことで、やるべきことや考えるべきことが浮かんでくると思います。
簡単にできる終活ポイント/ステップ1
ひとりでもできるものを列挙してみました。まずはこれらのものの整理から始めてみてはいかがでしょうか。
自身の身の回りのものを整理する
整理というと、「断捨離」という言葉から連想されるように物を捨てていくイメージがありますが、捨てることだけにこだわる必要はありません。
まずは、自身がどれだけの物を持っているかを確認してみましょう。
いわば、身の回りの「もの」の棚卸しだと思ってください。
その上で身の回りのものを、「いるもの」と「いらないもの」に分類し、いらないものは捨ててもよいと思いますが、捨てることに抵抗があればひとまず置いておいても構わないと思います。
お金に関係するものを整理する
預金や保険などお金に関係するものは、日々の生活の中で整理できないまま数が増えてしまいがちです。
預金口座やクレジットカードで使っていないものがあれば、解約手続きをしましょう。
預金口座の解約は近くの店舗で手続きをしますが、電話やインターネットで手続きができる場合もあります。クレジットカードも電話で解約できる場合があります。
重要書類をまとめて保管
万が一のときや病気になった場合に備えて、保険証券や年金手帳、自宅の権利証(登記識別情報)などの重要書類は一か所にまとめておくようにすると良いでしょう。
盗難等が心配で分けておきたい場合は、家族に保管場所を伝えておくと良いでしょう。
毎月引き落としがあるものの一覧表作成
光熱費、通信費、カードの代金や諸会費など、毎月あるいは毎年引き落とされるものがあれば、それらの一覧表も作っておくと良いでしょう。
亡くなったときに遺族が解約手続きをしやすいだけでなく、知らない間に口座から引き落とされるとか、別途請求される恐れもあります。
財産目録の作成
お金に関係するものが一通り整理できたら、「財産目録」の作成をおすすめします。
但し、財産目録をパソコンで入力して作った場合は、必ず印刷しておくようにしましょう。
パソコンがパスワードで保護されていた場合、家族は見ることができません。
次回は<ステップ2>として『家族との話し合いが必要な終活』についてお話しします。
総務部 内藤克己
元気なうちから老人ホームに入居することはアリかナシか?
元気なうちから老人ホームに入居することはアリかナシか?

- 毎日食事を作るのが面倒になってきました。
- 持病を抱えながら一人で生活する不安から解放されたいです。
- 息子や娘に負担をかけたくないのです。
年を重ね、これからの人生設計を考えた時に老人ホームへの入居をひとつの選択肢と考える方も多いかと思います。最近は、老人ホームに入居しながら仕事場に向かう方もいらっしゃるようです。
三度々々の食事が提供され、温泉のような大浴場が好きな時に入れて、スポーツジムが併設されていて、好きなカルチャークラブに参加して仲間を作る事が出来て、場合によっては掃除・洗濯もしてくれる環境が整っているホームもあるため、訳あっておひとり様になっている方にとっては一般的な住宅で暮らすより格段に便利であると考えられているようです。
とはいえ、上記にあるホームは料金も高く、ごく一部の高齢者が利用するような超高級老人ホームに該当します。
それほど至れり尽くせりの高額なホームではなく、温泉のような大浴場やスポーツジムは必要ない・・というお元気な高齢者の方々のために環境が整備されたホームも多くありますので、どうぞご安心ください。
老人ホームへの入居タイミングとは
みなさんは、老人ホームへの入居を「どのタイミング」で考えられますか?
多くの方は「介護が必要になった時」とお考えになることでしょう。
確かにその通りだと思います。私も多くのご相談をお受けしている中で圧倒的に多いタイミングです。ただ「そこにご本人の意思が反映されない」ことが多く、ご家族様もそのことをわかっているため後ろめたさや心苦しさを抱えられていることが多く見受けられます。
- 思いもかけず事故に遭ってしまった
- 急に持病が悪化して普段の生活ができなくなった
- 久しぶりに会ったら認知症が進行してしまっていた
など、状況によりますがご自身の判断ができない状態の場合がタイミングになってしまいます。できることならご自身で納得がゆくホームにご入居したいものですよね。
先日、ご相談をいただいた70歳代の女性(独居:自立)は2年ほど前から十数か所のホームをご見学されていました。ホームに入居したいと思った理由は大きく6つ。
- 食事は作りたいのでキッチン常備は必須。ただし、作らないときもあるのでホームで提供される食事を利用する事もある
- 居室の大きさは現在の部屋にあるものが全てはいるだけの大きさが欲しい(約40㎡)
- せっかくホームに入居するのだから医療体制が整っていて「終の住み家」になるところがいい
- 今住んでいる集合住宅ではゴミ出しが「前日出しは不可、当日の朝6時~8時まで出すこと」になっていて面倒でストレスなので、そこから解放されたい
- これから長生きする事を予想して、出来るだけ安い予算で
- 公共交通機関(電車・バス)の駅が近くにある というものでした。
たくさんのホームを見学したけれど・・・

役所でエリアの老人ホーム一覧を入手され、書店に行って老人ホームの関連書籍をたくさん買い込み、目星を付けたホームに自ら電話して資料を取り寄せて熟読し、さらに興味を持ったところに電話をかけメジャーと方位磁石を持って見学して・・・を繰り返すこと十数件。
まだ見落としているホームがあるのではないか?
もっと希望に叶うホームがあるのではないか?
整理がつかず辿り着いたのが弊社だったようです。
6点のご希望全てが叶うホームが存在するか否かは別にして、まだまだご見学は続きそうですが、色々なホームをご見学されてゆくうちにご自身の頭の中で「絶対に譲れない条件」と「そうだったらいいな・・という条件」の仕分けができるようになったそうです。
不動産取引で言う実需(自らが住む家探し)ではよく言われることですが、家探し(賃貸物件)は「頭の中の整理」=『消去法』です。
あれも欲しい、これも捨てがたい、とすべての希望をかなえようとすると物件はまず見つけられません。
結果的にはその不動産営業マンより『それはもうご自身で建てるしかありませんね』と苦渋の言葉を投げかけられてしまいます。
有料老人ホームの場合、一般的な賃貸住宅より明らかに数が少ない為、選択肢は限られてしまいます。このお客様の場合、多くのホーム見学を通してそのことが多少なりとも理解出来たことはホーム探しをする上で大きな前進だったのではないでしょうか?
ただ、このお客様と関わりを持つうちにはっきりしたことがあります。
このお客様がホームを探すきっかけとなったものは④番目にあります「ゴミ出しの面倒さ」であったことは間違いないようです。
そこが出発点となり、引っ越したい→食事の支度も面倒に感じるし、一人暮らしの不安もあるから有料老人ホームがいいのではないか?→まだ元気だから外出するのに利便性が良いところがいい→せっかく住むのだから見晴らしがよくて陽当りが良くてお部屋もそこそこ大きい方が良い→また引越すのも面倒だし「終の住み家」になるように医療的な連携とか介護が必要になってもしっかりフォローしてくれるところがいい・・と想像が膨らんでゆきました。
この方のように、老人ホームへの入居を選択肢としてお考えになるタイミングは人それぞれのようです。
先に書きましたように、「お元気なうちからホームに入居する」のはとても良いことだと思っています。ただ、ご自身が将来どのような身体状況になっているのか?お金(蓄え)はどのようになっているのか?しっかり吟味することが肝心です。

人生50年とは織田信長の時代です。
今では90歳、100歳のお元気なご高齢者がたくさんいらっしゃる時代です。
よく家族様から『〇〇歳まで生きているという確証があれば予算も立てられやすいのだけれど、こればかりは誰にもわからないから大変なんですよね。』というお言葉をお聞きします。
身体的な変化に対しての問題は、ホームの取り組みやスタイルによって解消されるケースはあります。
あるホームではお元気な方向けの棟(フロア)と介護は必要な方向けの棟(フロア)を同一建物内、もしくは隣同士に建てて住み分けをしています。
お元気な方向けの棟で長年生活をされながら、加齢・身体状況の変化から介護を要するお身体になった時に介護棟に住み替えが可能なる仕組みです。(この場合は住み替えの際の費用など各ホームによって様々ですので確認が必要です)
この場合であれば、将来的な転居・お引越しというストレスが軽減され、住み慣れた地域でおなじみのケアスタッフに囲まれて生活が営めそうです。
ただ、2つ目の金銭的な問題に関しては人それぞれでありとても難しい問題ですね。
それこそ「〇〇歳までお世話になる」と期間限定の話ではない為、このことを考え出したら夜も眠れなくなってしまいそうです。
貯蓄(動産・不動産などの資産)と受給年金額とを照らし合わせライフプランを設計してみてください。
急な体調変化によって入院をすることもあります。
その時はホームの費用(家賃や管理費など)はどのようになるのか?
多額の入居一時金を払ったのに状態によって追い出されることってあるのだろうか?
など、その時々のご事情に照らし合わせた対応方法がホームの重要事項説明書に明記されていることも多くありますので、しっかりした同席者(我々みんかい相談員もその一人として)を立ててお考えいただくことが最善かと思っております。
みんかい事業部 名古屋相談室室長 渡辺大志
有料老人ホームへの道程 ~渡辺家の場合~

プロローグ
私たち「みんかい」は有料老人ホームという“ひとつの選択肢”を専門にご提案しています。
何百件、何千件のご相談をお受けしお手伝いさせていただいても、その責任の重圧に押しつぶされそうになり、この先も慣れることはなさそうです。何故かというと、有料老人ホームという“ひとつの選択肢”に考えが巡り、ご家族が行動を起こすまでには並大抵のことではなかったのだろう、と心の底から思うからです。
それはお客様が有料老人ホーム探しに対して家族内で時間をかけて話合い、時には喧嘩をされ、お悩みになり、ご本人への説得を試み、どのような形であれ“準備”をしてご相談に来られているからであって、私も自身の親を通して有料老人ホームをひとつの選択肢にする大変さは「想像を絶するものである・・」と痛いほど肌で感じています。その“準備”をいつするのか?頭ではわかっていても穏やかな日常の中で考えるのは難しく、たいていのお客様は『なにかしらのアクシデント』を経験した時に“準備”を始められるようです。私の両親の場合も「病気というアクシデント」がきっかけとなり“準備”が始まりました。
母が倒れた!
私も今年で55歳になりました。当然、私を生み育ててくれた両親も歳を取り、今年で85歳です。おかげさまで両親ともに健在ではありますが、85歳ともなりますと当然、この先のことがとても心配になります。まさか、私自身が有料老人ホームを探すことになるとは思いもよりませんでした。とはいえ、父親は『俺はまだまだ元気いっぱいだ。勝手なことをするな』と有料老人ホーム探しを否定していますが・・。
父と母は新潟県の山深い地域で育った同級生だったようです。情熱的な大恋愛?期間をそこで過ごし、ともに横浜にやってきたというような話を父は酔うたびに話してくれます。
母はどちらかというとおとなしく、あまり社交性があるタイプとは言えない人で、何事も父が主導権をもって決定し、それには大きな文句も言わず従ってきたような間柄です。そんな両親ではありますが、今から7年前に「アクシデント」がありました。突然母がトイレで倒れたのです。
すぐ近くに父がいたため発見が早く、救急車を呼んで適切な処置をしてもらったため、母の脳梗塞も大きな後遺症はなかったようですが、その日から母の慣れない入院生活と父の病院通いが始まりました。この時期が渡辺家にとって初めての有料老人ホーム会議となったのです。私は当時から『民間介護施設紹介センターみんかい』の池袋相談室で【有料老人ホーム】の相談員をしており実家からさほど遠くないため、すぐに駆け付けることができました。また、私には3歳年上の姉がいて、すでに結婚してはいるものの両親が住む自宅から車で30分ほどのところに住んでいます。なにかと両親を気にかけながら様子を見てくれていましたので会議に参加できる主要家族メンバーはすぐにそろいました。
そこで思ったこと・・それは「家族の知識があまりにも疎い」ということでした。
仲の良い家族に亀裂が・・・・。

父は私たち子供にいつも見せていた威厳が保てず「どうしよう、どうしたらいいのだろう」とあたふたし、姉は「この家を売って有料老人ホームに2人で入っちゃえば?」と、一家の大黒柱として家族を支え、節約に励み、長年この家のローンを払い続けてきた父を逆なでするようなことを平気で言いだす始末で・・。
自宅で介護をするにしても、父のいままでの生活習慣から身体的に弱まっている母の面倒を見ることができるとは到底思えず、姉は姉でマンションのローン返済、息子2人の学費がありパートやら何やら毎日多忙を極めており、実家に頻繁に介護をしに来てくれる時間が取れそうになく、私に「あんたが長男なんだから、しっかり考えろ!」とキラーパスをしてきます。
そんな2人に私は、今まで通り自宅で生活することや、場合によっては有料老人ホームを選択することも今後は考えなければならないが、まずは退院後に後遺症など身体状態が悪ければ「リハビリ病院」や「老人保健施設(老健)」の選択肢があり、そこで一定期間しっかり身体の回復をおこなってもらえることを伝えました。
そこで大きな問題が・・母は「介護認定を受けたことがない」ことを知らされたのです。
私はこの仕事で多くのご家族様からの相談をお受けしてきていましたが、いざ、自分の家族のこととなると気持ちが落ち着かず冷静な判断や正確な情報発信ができなくなるものだと恥ずかしくなりました。
有料老人ホームの概要
老健への入所は要介護①以上の介護認定が必要です。有料老人ホームに入居するにしても介護認定を受けていないと選択肢は極端に少なくなってしまいます。民間の有料老人ホームの場合、土地は地主さまのものの場合が多く、いわゆる「土地活用」のために地主さまが金融機関から融資を受けて建物を建て、介護事業者に運営を任せ、家賃を取って収入を得ています。その収入が地主さまのローン返済に充てられたり、私設年金となったりしています。
よって、介護事業者の収益は家賃からは見込めず、「お世話をする手間賃(介護保険収入)」が収益の柱となるため、介護保険収入が得られない自立(非該当者)の受け入れをしない、もしくは自立者の利用料金に生活をする上で必要なサービスを自費料金として上乗せされます。その料金は有料老人ホーム運営会社によりによりさまざまですが、1万円~10万円程度まで幅があり、どちらにしても介護認定を受けているご利用者より料金が高くなる傾向があります。
介護認定の重要性
その話から「介護認定はどうしたら取れるのだろう」「すぐに認定してくれるものなのだろうか」「どうしたら・・どうしたら・・」など右往左往する家族。

そんな我々を尻目に、母は3週間ほどの入院期間を経て「ほんの軽度の麻痺」を抱えながら無事退院してきました。
医師からの「今後は在宅で生活しながらリハビリを受けに来てくれれば改善してゆくと思いますよ」という希望の言葉通り、母は若干の言語麻痺を懸命なリハビリを経て日常生活に支障ない程度まで改善させ、現在も父と2人暮らしを継続しています。
私と姉はホッとしながらも「この先のことを考えると、緊急時に備えていろいろ準備しておいたほうがいいね」と意見を合わせ、母に介護認定を取ってもらいました。あれほどの右往左往した経験を持ち、足腰の衰えがはた目からも分かるようになった父にも勧めてはいますが、いまだ「うるさい。俺は大丈夫だ。そんな都合のいいことを言って俺を有料老人ホームにでも押し込もうとしているのだろ!」と頑なに拒絶しています。介護認定は必要な人には「有効な手立て」として、今はそれほどでもない人には「お守り」になるものだと実感した出来事でした。
次回は「渡辺家の第二回有料老人ホーム家族会議~お正月が台無し編~」をお送りします。
(文:みんかい西日本エリア 渡辺相談員)
介護認定の必要性について
介護認定の必要性について

介護認定をご存知ですか?
皆様、はじめまして!相談員6年目の渡邉智美と申します。みんかいの相談員って何をしているかと申しますと、有料老人ホームを生活の場所としてご検討頂いている方に、“どのように探していけばいいのか”“どういった場所にどういった有料老人ホームがあるのか”など民間が運営している有料老人ホームを探すお手伝いをさせて頂いております。
私が6年近く相談員としてお手伝いさせて頂く中で、ご相談にいらっしゃる多くの方が「介護認定」についてご存じでいらっしゃいます。全く不思議に思わなかったのですが、最近になって「これってすごいことなのではないか」と思うようになりました。と言いますのも、私の祖母の事が思い浮かべられるからです。祖母が初めて介護認定を受けた時に下りたのは「要介護3」でした。(「要介護3」=身体状況(ADL)でいうと、車椅子で自分では歩くことが難しくなった状態とお伝えするとおおよそイメージがつきやすいかと思います。
※介護認定の判断基準はさまざまな方面から判断されますので、上記の状態でないと「要介護3」にならないという事ではありません。)
つまり、それまでは介護認定を申請すれば受けられる国のサービスを受けずに歩けない祖母のケアを家族だけで行っておりました。さらに申しますと、同居はしておりましたが平日の日中の時間帯は祖父母以外の家族は仕事をしており、祖父が祖母をケアする「老々介護」に近い状態でした。
どうしてそこまで頑張ったのか不思議ではありませんか?簡単なことです。国が行っている介護のサポート(介護保険サービス)について知らなかったからです。私の祖父母は茨城の山と川しかないところの出身で、父は福島の山に囲まれているところから上京したいわゆる田舎者です。私の知る範囲で私の親戚は家族で介護をしておりました。その他の知識や情報が全くなかったのです。

介護認定は家族を救う!
私たち家族が「介護認定」を知ったきっかけは正直、覚えておりません。ですが、「要介護3」の認定が下りて、担当のケアマネージャーに最初に説明を受けた際はこれだけ手伝ってもらえることがあるのかという感動は今でもはっきりと思い出せます。10時~16時のデイサービスを受けるだけでも「老々介護」状態は週5日から週2日となるのです。
「介護認定」の素晴らしさが少しでも伝わりましたでしょうか?私の経験からも「介護認定」を申請、下りてからさまざまなサービスが受けることができるのは、介護が必要な方や病院、介護施設で働いている人以外に知る機会がないのではないでしょうか。
ご相談にいらっしゃる方が「介護認定」をご存じだと、勝手に介護認定が下りるまでの状況を想像して、尊敬の念を抱くようになった次第です。さて、私たち家族を救ったと言っても過言ではない「介護認定」に興味をお持ちいただけたでしょうか?
簡単に言ってしまうと、国から介護サービスを受けるために「介護認定」が必要ということです。「介護認定」とは、介護保険サービスの利用希望者に対して「どのような介護が、どの程度必要か」を判定するためのものです。
65歳になると、介護保険の加入者であることを証明する「介護保険被保険者証」が交付されます。しかし、介護保険サービスは、この保険証を提示すれば受けられるものではありません。介護保険サービスの利用は、まず介護認定を受けて、「要支援もしくは要介護」の判定をもらう必要があります。
≪65歳以上の方が原則は対象ですが、40~64歳は「第2号被保険者」と呼ばれ、このうち第2号被保険者は、要支援や要介護状態になっている原因が特定疾病にあたる場合に認定を受ける事が可能です。特定疾病とは、末期がん・筋萎縮性側索硬化症・後縦靭帯骨化症・骨折を伴う骨粗しょう症・初老期における認知症などです。対象となる疾病は、介護保険法に列記されています。≫

介護認定は申請しなければ貰えない
重要なことなので何度も言います。「介護認定」の判定をもらわなければ、介護保険サービスは受けられないのです。もう大変!明日から介護サービスを利用したい!と思っても、「介護認定」の申請を行ってなければ、主治医に意見書をもらったり、書類を記入したり、認定調査を受けたりと面倒な手続きをしてからでないと利用できないのです。
では、いつ「介護認定」を申請したらいいのでしょうか。「介護認定」には「要支援1~2、要介護1~5」と7つの区分に分かれています。「要支援」は適切な介護保険サービスを受けることによって、要介護状態を予防できる状態を指します。「要支援1」は日常生活の基本的なことは、ほとんど自分で行うことができ、一部に介助が必要とされる状態です。一部の介助とは、買い物に行くときに一人だと転倒のリスクがあったり、掃除が大変になってきたり、どなたかの見守りや家事のお手伝いなどを言います。
祖父は祖母の経験があったので、立ち上がりの際にふらっとしたところとすり足で歩くようになったところを見つけてすぐに「介護認定」の申請をして、「要支援2」の判定を頂くことができました。嫌がる祖父(祖母の時に1日型のデイサービスを見学して自分にはまだ早いと思っていた)を連れて、リハビリ型のデイサービスに見学に行きました。マシーンを使ったリハビリやウォーターベッド型のマッサージ器に感動、さらには「80歳でこんなにできるなんて、すごい」と若いスタッフからのお褒めの言葉のシャワーで祖父のリハビリ型のデイサービスの参加の意思決定は即決めでございました。
何故ここに来ておちゃめな祖父の話をしたかと言いますと、「介護認定」は介護を必要としている方はもちろん、祖父のように少し体に不調が出てきて将来が不安という方でも受けられるという事です。「介護認定」は元気になる為、今の元気をなるべく持続するための手段でもあります。よく「介護認定」を受けると人生の楽しさがなくなる(終わりと表現される方もいらっしゃいます)と感じる方がいらっしゃいます。そのように考えてしまうと折角いいものが私の祖母のように受けられなくなってしまいます。

有料老人ホームへの入居にも介護認定は必要
また、有料老人ホームでも同じことが言えます。有料老人ホームで提供している介護=介護保険サービスになるので、「介護認定」の判定がない方は、有料老人ホームに入所しても介護が受けられないと複雑な状況になってしまうのです。そのため、明日にでも有料老人ホームに入所したい!と考えても介護保険サービスが受けられない以上、有料老人ホームの入所も「介護認定」を申請してからがスタートです。ただし、有料老人ホームでも種類がございまして、提供しているサービスもさまざまです。
「サービス付き高齢者向け住宅」で提供している24時間に一回の安全確認のように介護保険サービスに含まれない施設のサービスもございます。複雑で難しい話になってまいりましたね。
そこで私たち相談員の出番でございます。冒頭にみんかいの相談員は「民間が運営している有料老人ホームを探すお手伝いをさせて頂いている」と言いました。有料老人ホーム紹介センターの中でもみんかいの相談室は数多くある事が自慢です。また、お越しになることが難しい方には感染対策もしっかりとしてご自宅や病院にも伺います。大切なご家族やご自身にとって、どのように有料老人ホームを検討していけばいいのかをお気軽にご相談ください。
(文:みんかい関東エリア 渡邊相談員)