みんかい | 民間介護施設紹介センター

終活のすすめ その2

終活、それは、はるか向こうの果てしない道のように見えて、実は、すぐに自分の身に降りかかるものでもあります。

前回お話しした終活のすすめ「ステップ1」では、自分一人でできる終活についてお話しましたが、今回は「ステップ2」として、家族との話し合いが必要な終活、更に「ステップ3」として、専門家のサポートを必要とする終活などについてお話したいと思います。

「ステップ2」の終活は、家族との話し合いが必要なものです。

終末期医療やお葬式、お墓について考えるため、『ステップ2』の取り組みだけを「終活」ととらえるかたも多いのではないかと思います。

家族との話し合いが必要な理由は、万が一のときに実際に動いたり判断したりするのは自分自身ではなく家族だからです。

どうしても家族に直接言いづらいことがあれば、エンディングノート等を利用して自身の希望を書き残しておくと良いと思います。

介護や医療の方針、葬儀や埋葬の方法を決めるだけであれば、ひとりでもできると思います。

介護や終末期医療について話し合う

生きている間であれば、どのような介護や治療を受けたいかの希望を伝えることができます。

しかし、認知症になったり危篤状態になったりすると、自分自身で伝えることはできません。

万が一のときに備えて、どのような介護や治療を受けたいかを家族で話し合っておく必要があると思います。

たとえば、次のようなことを考えてはいかがでしょうか。

  1. 認知症で意思表示がうまくできなくなった場合。自身の財産で賄える範囲の手厚い介護サービスを受けたいか、介護保険で賄える範囲でよいのか。
  2. 財産の管理は誰に頼みたいか。
  3. 病状の回復の見込みがなく死期が迫っている場合(終末期医療について)。本人に意識がなければ、誰の意見を尊重すればよいか。回復の見込みがなくても延命処置をしてほしいのか、延命よりも苦痛を和らげることを優先してほしいのか。

本人に意識がない場合は、延命処置を行うかどうかは家族が決めなければなりません。一度延命処置を始めると、途中でやめることは困難です。延命処置によってかえって苦痛が長引く場合もあり、家族にとっては非常に重い決断になります。終末期医療の方針を話し合っておくことは、家族の負担を和らげることにもつながります。

葬儀について話し合う

葬儀については、いまではさまざまな選択肢があります。

生前お世話になった人を多数招いて盛大に執り行ってほしいのか、家族だけでよいのか、それとも葬儀そのものを行わないかを話し合っておきましょう。

葬儀をしてほしいのであれば、家族に負担をかけないように生前に葬祭業者に相談しておくことも一つの方法です。あわせて、お金(費用)の準備もしておくとよいでしょう。

このほか、万が一のときに知らせてほしい人の一覧表を作成しておくことも必要だと思います。

故人の交友関係を家族が知っていたとしても、連絡先まで把握できているケースは少ないと思います。

親戚同士であっても、改めて連絡するとなると連絡先がわからないこともあります。

埋葬について話し合う

埋葬についても、さまざまな選択肢があります。

多くの場合は、先祖代々のお墓に埋葬してもらうか、新たにお墓を建てて埋葬してもらうかが選択肢となります。

現在は、子供や孫に負担をかけたくないといった理由から、お墓を撤去して納骨堂に改葬する、いわゆる墓仕舞いをする人もいるようです。

これまでの習慣にとらわれない埋葬のあり方として、自然葬や海洋散骨を希望する人もいますが、家族の中には故人を偲ぶ場所があった方がよいと考える人もいます。

埋葬の方法は家族も交えて話し合っておくことが大切だと思います。

終活で専門家にお願いしたいこと。それが遺言書の作成や相続手続です。

「ステップ3」専門家のサポートが必要な終活

「ステップ3」の終活は、遺言書の作成や相続税対策など専門家のサポートが必要と考えられるものです。

遺言書を作成する

遺言書は、遺産を誰にどれだけ渡すかといった財産に関する事項のほか、子供の認知など身分に関する事項を定める法的な書面です。法律で定められた方法で作成しなければ無効になります。遺言書で誰に何を継がせたいか意思表示をしておけば、相続人は遺言書に従って遺産を分け合うことになります。

特に次のようなケースではトラブルが起こりやすいため、遺言書を作成するようおすすめします。

  1. 子供のいない夫婦の場合
  2. 相続人になる人がいない場合
  3. 離婚歴があり前妻(前夫)の子供がいる場合
  4. 息子の妻や孫などに遺産を継がせたい場合
  5. 内縁の妻など親族以外の人に遺産を継がせたい場合
  6. 特定の相続人に多額の遺産を継がせたい場合
  7. 相続人どうしの仲が悪い場合

遺言書の形式には、自筆で書く自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。自筆証書遺言は自分だけで作成できますが、法的な要件を満たさず無効になる例もあります。紛失や改ざんの恐れもあります。一方、公正証書遺言は作成に費用がかかりますが、無効になることはほとんどありません。

なお、『ステップ1』で触れた、エンディングノートは遺言書の代わりにはなりません。

いくら詳しく記載しても法的な効果はなく、あくまでも生前の気持ちを伝える補助的なものにすぎません。遺言書は書き方によって無効になったり、円満な相続のために遺したつもりが逆に内容によって相続人同士の争いの元となったりするケースもあります。

有効で、かつ争いのない遺言書を作成するために専門家のサポートを受けることをおすすめします。

相続税対策をする

相続税は高額になることもありますが、生前の対策で税額を抑えることができます。

相続税対策は、財産の価値を下げることなく税法上の評価額だけ下げることがポイントです。たとえば、手持ちの現金を不動産に組み替えたり、生命保険に加入したりといったことが考えられます。相続税対策については、多額の財産を動かすことになる、やり方によっては対策のつもりが逆に損をすることや税務調査の対象になりかねないといった点から、専門家である税理士のサポートが必要と言われています。

税務対策は相続税に強い税理士のサポートを受けて進めることを強くおすすめします。

まとめ

終活は定期的な見直しも必要です。終活は、一度しただけで終わるものではありません。人生の終わりを迎えるその時まで、定期的に見直すことも大切です。

一度身の回りのものを整理しても、月日が経てば物は増えてしまいます。財産の内容も変わっているかもしれません。

介護や医療の方針を決めたとしても、時間とともに考えが変わることも十分あり得ます。

たとえば誕生日や年始など、時期を決めてエンディングノートを書きなおすようにしてはいかがでしょうか。必要に応じて遺言書を書き直すことも必要だと思います。尚、遺言書が複数ある場合は、新しい日付のものが有効になります。

総務部 内藤克己