みんかい | 民間介護施設紹介センター

特養ホームに異変あり。
資産があると、たとえ、収入が少なくても、特養ホームに入れない!?

お金とはてなのおもちゃの写真

8月1日から介護保険施設の食費と居住費(部屋代)の負担限度額が変更になりました。
介護保険施設とは、特別養護老人ホーム(特養)や介護保険老人施設(老健)などの社会福祉法人や医療法人などが運営する施設です。
利用料は入居者の年収や預貯金の金額によって異なり、収入や預貯金が少ない人は利用料が安くなります。何故、収入や預貯金によって利用料が異なるのかと言うと、住民税非課税世帯の人(※)は、負担限度額認定を申請することにより自己負担である居住費と食費の上限額(負担限度額)が定められ、費用負担が軽減される。軽減された分の居住費と食費は、介護保険から施設に支払われるという仕組みだからです。

独居の不安から、施設への入居を決断


さあ、本題に入りましょう。「特養の利用料が安い」と言われているのは、前述した仕組みがあるからです。しかし、今回の負担限度額の改正により特養の入居をあきらめた方のお話しをします。
Aさんは、お一人で団地に住んでいるいわゆる独居老人です。ヘルパーさんやデイサービスを利用して、在宅で生活をされていましたが、持病の腰痛がひどくなり家の中での移動も大変になったことと、独居での生活に大きな不安を感じるようになり施設への入居を決断されました。

椅子と杖の写真


Aさんの年金は1ヶ月約110,000円。ご本人は、介護付有料老人ホームをご希望でしたが、残念ながら、Aさんの年金受給金額内で入居できる介護付有料老人ホームなど首都圏中探しても見つかるはずもありません。

預貯金が多いと、特養の負担が軽減されなくなった


特養は、負担限度額認定の申請をすると、負担段階が第1段階から第4段階までに区分され、負担限度額(施設に支払う1日当たりの金額)が決められるという仕組みがあり、Aさんの場合は第3段階に該当し、居住費と食費の助成対象となります。医療費(受診代や薬代)をプラスすると若干不安はありますが、年金受給金額内で利用料は支払えます。
Aさんにご納得いただき、さあ!特養に空室探しを開始。運よくオープンして数年しかたっていないユニット型の特養に空きがありました。ご本人も気に入っていただき「いざ申し込み!」という所で、今回の負担限度額の見直しにより、Aさんの月々の利用料が大きく変わってしまうことに気が付いたのです。

補足給付預貯金要件見直しの表

見直し前であれば、Aさんは、年金収入等(公的年金等収入金額+その他の合計所得)
120万円超、預貯金単身1,000万円以下、住民税非課税で第3段階でした。しかし、今回の見直しで第3段階の預貯金の金額が変更となり、預貯金単身が500万円以下に引き下げられていたのです。
Aさんの預貯金は850万円。見直しになったことで第3段階から外れ第4段階となっていたのです。第3段階であれば一ヶ月の利用料は約98,000円だったので、Aさんの年金で賄えました。しかし、第4段階になってしまったことで居住費と食費が補助給付から外れるため、一ヶ月の利用料は約160,000円に跳ね上がってしまい、年金の額内では足りません。
 不足分の60,000円を預貯金から補填すれば、約5年後には預貯金が500万円以下となるため、第3段階の対象者になります。その後は貯金から補填しなくても利用料を支払うことができるということをご提案しましたが、Aさんは首を縦に振りません。老後のことを考え必死に貯めてきた大切な貯金でしょう、崩したくない気持ちは良くわかります。

探せば見つかる
特養より安い介護付有料老人ホーム

 
 結局、Aさんは特養の入居をあきらめたのです。
しかし、自宅での生活が厳しいAさん。従来型特養や多床室の特養を探しましたが、残念ながらすべて満床で待機者の数も多くそう簡単に順番が回ってくるとは思えません。
結局、都心からかなり離れた場所にはなりましたが、ユニット型の特養よりは安い利用料の介護付有料老人ホームに入居することになりました。

家の置物を持って眺める高齢女性の写真

数年前までは、世帯分離をすれば年金が安いおばあちゃんは、補足給付の対象となり利用料は安くなりました。しかし、介護保険の改正によりその制度は利用できなくなりました。ユニット型の新型特養は個室であるがゆえに利用料は高く設定されています。
今回の補足給付の預貯金条件の見直しは、「高齢化が進む中で、必要なサービスを必要な方に提供できるようにしつつ、負担の公平性と制度の持続可能性を高める視点から一定以上収入のある方に対して、負担能力に応じた負担を求める見直しを行います」(厚生労働省チラシから抜粋)ということのようです。しかし、Aさんのように、決して多いとは思えない年金の中から、老後のことを考えコツコツと貯金をしてきた人にとっては、厳しい見直しになったと言えるのではないでしょうか。

住民税非課税世帯の条件について

文:介護ライター 黒川玲子(株式会社ケー・アール・プランニング