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新・高齢者住宅入門 簡単!誰にでもわかる高齢者住宅の種類と役割(後編)
新・高齢者住宅入門 簡単!誰にでもわかる高齢者住宅の種類と役割(後編)
文:小嶋勝利
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新・高齢者住宅入門 簡単!誰にでもわかる高齢者住宅の種類と役割(前編)
第3章 高齢者住宅一覧の補足資料
「高齢者住宅一覧」の中で、特にわかりにくい部分の補足説明です。一覧表と合わせてご確認ください。なお、一覧表内の(カタカナ)は以下のカタカナ表記と連動しています。
(ア)看護介護職員の配置基準
高齢者住宅(施設)には、看護介護職員の配置基準が法により定められている高齢者住宅(施設)と定められていない高齢者住宅(施設)とがあります。入居時に重介護状態の高齢者の場合、配置基準の定められている高齢者住宅(施設)に入居するのが一般的です。
(イ)「公立」とは、地方公共団体、社会福祉法人、医療法人などの公共性の高い機関が設置、または運営している高齢者住宅(施設)を指します。「私立」とは、民間の営利法人が運営している高齢者住宅(施設)を指します。
多くの場合、公立の高齢者住宅(施設)は「施設」と呼ばれ、私立の高齢者住宅(施設)は「ホーム」と呼ばれます。さらに、施設は「入所者」、ホームは「入居者」と呼ばれます。公立→施設→入所者、私立→ホーム→入居者です。
(ウ)「包括介護支援体制」とは、毎月負担する料金は「定額制」で、必要な介護支援は、その都度、受けられる介護体制を言います。今、流行りの用語で言うと〝サブスクリプション〞です。
(エ)「必要に応じて在宅サービスを個別に利用できる体制」とは、単なる在宅介護支援のことです。自分の都合に合わせ、必要な介護支援を必要なだけ受けることができます。ただし、サービスは積み上げ方式なので、介護支援を多く求めると支払い額は青天井で膨れ上がる点に注意が必要です。
(オ)「介護付き」と「住宅型」との違いとは何か。自分(親)は、一体、どちらの有料老人ホームが向いているのでしょうか。介護支援体制は、右記(ウ)(エ)で説明したとおりです。一言で言うなら、重介護状態で、多くの介護支援を利用する必要がある高齢者は「介護付き」を選択、それほど介護支援を利用しなくてもよい高齢者は「住宅型」を選択するのが一般的な考え方です。
(カ)「特養ホーム」と「介護付き」との違いとは何か。自分(親)には、どちらが向いているでしょうか。低料金にこだわり、介護支援の内容や質に〝こだわり〞がない高齢者は「特養ホーム」を選択します。理由は、特養ホームの存在意義は、絢爛豪華なホテルライフの提供ではなく、高齢社会のセーフティーネットとして、たとえ低所得者であったとしても、必要かつ十分な介護支援を提供する使命があるからです。
逆に、自分の個性を尊重し、おもてなし的な介護支援を求めたいのであれば、「介護付き」を選択することになります。そしてその場合は、可能な限り、月額利用料金の高い介護付きを選択するべきです。
(キ)「老健」は、どのような施設なのでしょうか。リハビリの施設だという人がいますが、〝私の知人は認知症で終身入所しています〞という声が聞こえてきそうです。
教科書通りに言えば、老健は病院と在宅とを取り持つ中間施設です。中間施設なので、当然、在宅復帰のためにリハビリを行い、数か月間で在宅に帰ります。しかし、中には、特養ホームとまったく同じような運営をしている老健もあります。ようは、経営者の考え方次第です。例えば、うちは「その他」型と言われる類型の老健でよいと経営者が判断すれば、長期間の入居も可能になります。
(ク)「老健」は、医療対応に強いと言われています。老健は、介護職員だけではなく、医師、看護師、セラピスト、薬剤師、管理栄養士などの専門職の配置が義務付けられています。その点では、医療に強いと言えます。
しかし、現実はというと、医療対応が脆弱な老健も少なくありません。
多くのケースでは、病院併設型(病院を運営している医療法人)が運営する老健は医療対応に強く、単体型(病院ではなく診療所を運営している医療法人)が運営する老健は、医療対応に弱いという傾向があります。また、この事実を別の視点で考えると、病院併設型の老健は、入所者の身体状態が〝深刻〞になった場合、同一法人が運営している病院に入院させることが可能なため、医療依存度が高く状態の悪い入所希望者であっても、思い切って受け入れることができる傾向にあるといえます。
(ケ)「住宅型」と「サ高住」は、何が違うの? 細かいことを言えば、多々相違点はありますが、入居者の立場で生活実態を考えた場合、大きな違いはありません。運営形態は、概ね同じ、という理解でよいと思います。しいて言うなら、料金体系と入居における権利形態が違うということになります。
(コ)重介護者が多く入居しているサ高住は、なぜ存在しているのでしょうか。サ高住では、介護はできないと聞いていますが?
確かに、サ高住のスキームでは、重介護の高齢者のケアは難しいという理屈になります。しかし、冷静に考えてみてください。自宅で重介護者の介護は本当にできないのでしょうか?家族の覚悟さえあれば、在宅診療と訪問看護などの医療介護サービスを併用し、自宅で重介護者の介護をしているケースは、けして珍しいことではありません。
特に、身体的な介護ケアは自宅でも十分に対応が可能です。したがって、この理屈で考えれば、サ高住であっても、当然、重介護者の対応は可能です。最近では、特定の疾患に特化したサ高住も登場しています。
(サ)「介護付き」は、自立から入居可能な高齢者住宅(施設)と要介護認定がなければ入居できない高齢者住宅(施設)とがあることに注意ください。例えば、夫婦で入居する場合、どちらかが自立であれば、自立の入居者を可とする介護付きでなければ夫婦で入居はできません。なお、夫婦の場合、一方が自宅、一方が高齢者住宅(施設)の場合、経済的な負担が思った以上にかかるケースもあります。
番外編(その他の補足説明)
●「介護付き」であっても、月額利用料金が、特養ホーム並み、または特養ホームより安い介護付きもあります。この場合、介護支援の内容は、高齢社会のセーフティーネットであると理解してください。
つまり、必要最低限の介護支援か個別性を重んじるおもてなしの介護支援かは、とどのつまり料金次第だということになります。
●個別の事情を考慮してくれる高齢者住宅(施設)は、よい高齢者住宅(施設)ですが、料金も高いということになります。また、この「品質」は、全入居者にとって、必ずしも「よい」というわけではありません。むしろ、この丁寧な個別性に基づく介護支援を「煩わしい」と考える高齢者も少なくありません。
つまり、人が人に求める介護支援は、十人十色です。自分にとって本当に必要な介護支援を提供してくれる高齢者住宅(施設)を探すことが重要なのです。つまり、必要最低限のことさえやってもらえれば〝OK〞という高齢者の場合、仮に支払い能力が高くても、あえて低価格の高齢者住宅(施設)を選択した方が良い場合もあるということに注意ください。
●高齢者住宅(施設)に入居する場合、入居審査、または入居判定があります。つまり、誰でも希望をすれば入居ができるというわけではありません。公立私立を問わず、多くの高齢者住宅(施設)では、入居申し込みに対し、その入居者を受け入れるかどうかの判定を実施しています。そして、その判定に必要な資料として「健康診断書」主治医作成の「診療情報提供書」、入院している場合は「看護介護サマリ」などの提出が求められます。
これらの資料を基に、高齢者住宅(施設)側は、このような高齢者を今の体制(職員と既存入居者との兼ね合い)で受け入れても大丈夫かどうかという検討を行い、「問題なし」と判断した場合は受け入れになります。
ちなみに、高齢者住宅(施設)側の受け入れ体制表に〝胃ろうは「〇」〞などとなっているにもかかわらず、断られるというケースもあります。これは、例えば、今までは看護師が3名いたので、胃ろうの入居者の受け入れは「〇」でしたが、今月末で看護師が1名退職するので、新規の看護師の獲得ができるまでは胃ろうは「×」という部分変更が生じるからです。高齢者住宅(施設)では、このようなことは、日常茶飯事に起きています。
(おわり)
新・高齢者住宅入門 簡単!誰にでもわかる高齢者住宅の種類と役割(前編)
新・高齢者住宅入門 簡単!誰にでもわかる高齢者住宅の種類と役割(前編)
文:小嶋勝利
はじめに
介護業界の専門家であっても、高齢者住宅(施設)の違いは、分かりにくいものです。
それは、高齢者住宅(施設)のルールが入居者や利用者の立場ではなく、事業者や行政など供給側、管理者側の立場で制度設計されているからです。
例えば、特別養護老人ホーム(以下「特養ホーム」という)の中には、「地域密着型」というものがあります。これは、同一の市区町村に居住している人しか入所できない特養ホームのことを言います。
つまり、たとえ空室があっても、他の市区町村の住民では入所することができません。よく考えてみて下さい。日常生活の中では、隣町が自分の生活圏になっているケースは、けして珍しいことではありません。しかし、この部分を制度は無視しています。
また、サービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」という)であるにも関わらず、「特定施設」の指定を受けているサ高住があります。事業者に説明を求めると〝介護付き有料老人ホーム(以下「介護付き」という)と同じルールで運用可能なサ高住です〞と説明されます。だったら、最初から介護付きでいいじゃないか!と言いたくなります。
さらに、一番厄介な話は、有料老人ホームの場合、「介護付き」と「住宅型」の2つの老人ホームが、ほぼ同一機能で並走しています。ちなみに、有料老人ホームには「健康型」という有料老人ホームもありますが、今回は触れません。 本来、「介護付き」は、特養ホームでは満足できない高齢者のために存在します。
さらに「住宅型」は、介護付きでは満足できない高齢者のために存在しているはずです。つまり、各カテゴリーには、各カテゴリーに課せられた使命や役割があり、その役割が求められているはずなのですが、実際の運用はというと、簡単に入所者や入居者を集めることができる機能にすべてのカテゴリーが注目し、その機能しか見ないため、結局、どのカテゴリーでも提供しているサービスは〝同じ〞という現象が起きています。
したがって、特養ホーム、介護付き、住宅型の3つの高齢者住宅(施設)では、運用実態ではなんら大差はなく、料金と立地で区別するしかないのが実際なのです。なお、最近では、立地や料金においても、各カテゴリーが互いの領域を侵食しているため、区別が難しくなりつつあります。
つまり、高齢者住宅(施設)は、運営上、各カテゴリー別の役割や使命が不明確なのです。入居者や入所者の立場で考えた場合、今のような運営では、複数の役割やカテゴリーが本当に必要なのでしょうか?ということになります。
私は、「老人ホームの探し方」をテーマにセミナーをすることもあるのですが、参加者から「今、あなたが説明した住宅型は間違っている。うちの旦那は入居していたので、私はよくわかっているけど、そんなルールじゃなかった」と言われることがしばしばあります。この言い分は、実によくわかります。
なぜなら、多くの住宅型は、事業者側の自助努力で、住宅型の欠点をカバーし、介護付きと同等のサービスを提供するようにしているからです。何度も言います。だったら、最初から介護付きとして開設すればいいではないかと。入居者目線で考えればそうなります。
今回の「新・高齢者住宅入門」は、このわかりにくい高齢者住宅(施設)について、情報を可能な限り限定し、例外はできる限り無視することで、本来の役割やあるべき姿という視点で作成しました。後述の「高齢者住宅一覧」は、この思想に基づき作成しています。したがって、一部の現象は無視しています。さらに、一部の現象だけを切り取って強調もしています。理由は、複数のカテゴリーが存在し、並走している以上、各カテゴリーはカテゴリーに課せられた本来の使命があると考えているからです。
もし、すべての高齢者住宅(施設)が同じ機能や役割でよいということであれば、複数種類の高齢者住宅(施設)など不要です。ひとつに整備し直し、入居者や入所者にとって利用しやすく、わかり易いものにすればよいだけの話だと思います。
第1章 足るを知ることが大切
高齢者が高齢者住宅(施設)に入居するという行為は、はたして、正しい選択と言えるのでしょうか?この問いは、私が、この業界に入ったその日から今日(いま)に至るまで、常に考え続けているテーマでもあります。そして、今だに「これだ!」というすっきりとした回答は見いだせずにいます。
旧知のケアマネジャーが言います。認知症で問題行動がある親を、在宅(自宅)で家族が面倒を見るなど不可能だと。家族にも自分たちの生活があるのだと。また、別の旧知のケアマネジャーは言います。多少、難はあっても、在宅にいる独居や老老世帯の要介護高齢者は、実にたくましく今を生きていると。しかし、高齢者住宅(施設)に入居すると、あっという間にADLが落ち、できないことばかりになってしまいます。油断をするのか、安心するのかは、わかりませんが、結果的に本人のためにはなっていなのではないかと考えます。
前者は、家族を主語にして考え、後者は当事者を主語にして考えた場合の切実な感想です。どちらも「正論」ではないでしょうか。さらに言うと、介護は家族がやるべきものなのか、それともプロの介護事業者に任せるべきものなのか、という問いもあります。
今の私の回答は、介護は、家族と事業者が協業してやるものであり、その時の注意点は、お互いに相手に多くを求めてはいけないということを理解することです。親は、あなたにとっては、唯一無二の存在ですが、介護事業者にとっては、多くの利用者の中の一人に過ぎません。つまり、介護サービスを利用するということは、お互いに〝わきまえる〞そして〝足るを知る〞ことが大切なのです。
第2章 高齢者住宅入門
高齢者住宅(施設)は、大まかに言うと「公立」と「私立」があります。公立は、特養ホームなどの介護保険施設を指します。私立は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などを指します。公立と私立の違いは、高校や大学など学校を例に考えるとわかりやすいと思います。学校には公立学校と私立学校とがあります。
皆さんは、どのような基準で学校を選んでいるでしょうか?よく聞く話としては、「学費の負担が大変なので公立大学に進学して欲しい」とか「子供の個性を伸ばすためには私立の学校へ行かせたい」とか「大学進学に有利だから付属の私立高校がよい」とかという話です。
これを高齢者住宅(施設)に当てはめてみると次のようになります。「年金が少ないので特養ホームを希望したい」とか「うちの親は、我がままで自己中心的な性格なので、職員配置数が手厚く、おもてなしの思想がある私立の有料老人ホームの方が向いている」とか「今は元気だけど、万一、介護状態になったら、系列の介護付き有料老人ホームへの入居が保障されている私立のサ高住を探そう」という具合です。
ちなみに、この話は主に大都市圏に限った話です。学校も同じだと思いますが、地方の場合、公立学校の中にも個性的な有名校や名門校がたくさんあります。理由は、私立の学校がそれほど多くないため、公立学校が私立学校の役割を担っているからです。高齢者住宅(施設)も同じです。地方の場合は、多くの要介護高齢者は、私立の有料老人ホームが少ないため、個性的な公立の特養ホームやグループホームなどを選ぶことになります。
つまり、高齢者住宅(施設)には、それぞれ独自の個性や文化が存在します。多くの場合、経営者の理念であったり、長年の運営で培ってきた体験や気づきを見える化した方針がそれに当たります。私は、これを介護における流儀と流派だと説明していますが、実は、この部分が一番重要な部分なのです。
ここで一つだけわかり易い例を挙げておきます。ここ数年、コロナ過でもあり、多くの高齢者住宅(施設)では、「外出/外泊の禁止」「面会の禁止」にしてきました。しかし、外出も外泊も面会も継続していた高齢者住宅(施設)もあります。この考え方や方針が〝流派〞です。
つまり、コロナに感染することと、ホーム内に一人で閉じこもってフレイルティーになってしまうこととを考え、ある高齢者住宅(施設)は、感染を封じ込めることを最優先し、ある高齢者住宅(施設)は、入居者がフレイル状態になることを感染よりも重要視した、ということです。
どちらが正しいかは、当事者である入居者やその家族が決めるべきものです。皆さんの流儀、流派はどちらでしょうか?
(後編につづく)
新・高齢者住宅入門 簡単!誰にでもわかる高齢者住宅の種類と役割(後編)
新・高齢者住宅入門(特別編)
新・高齢者住宅入門(特別編)
今回は「高齢者住宅(施設)」に関する特集を企画しました。
中でも、みんかいが広く取り扱っている「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」の2つにスポットを当てて解説をしていきたいと思います。さらに、序章では〝通り一辺倒〞の空論に近い解説ではなく、極力、実態に即した内容で問題提起もしていきたいと思います。
序章
本来、高齢者住宅に複数の種類の違うスキームが存在するということは、各々に「役割」があるからです。さらに、その役割の違いを理路整然と説明することは、並大抵のことではありません。今回は、この難解な高齢者住宅(施設)について、わかりやすく実態に即して解説をしていきたいと思います。
「住宅」か「施設」か? そこは本当に重要なのか?
本題に入る前に「住宅」か「施設」かについて、少し論じておきたいと思います。一般的に、「住宅」とは家賃を支払って居住する物件を言い、施設とは利用料を支払って生活する物件を言います。したがって、高齢者系住宅の場合、サービス付き高齢者向け住宅が、唯一の「住宅」であり、それ以外は「施設」(介護施設)であると言うことになります。
しかし、多くの介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームは、自分達のことを「施設」ではなく「住宅」であると主張しています。その証拠に、以前は多くの介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームの管理者は、「施設長」と呼ばれていましたが、今は「ホーム長」と呼ばれています。
さらに、多くの有料老人ホームでは、「住宅(家)」という言い方を奨励しています。これは、「施設」は、入居者の自由が制限され閉鎖的なイメージがあるからだと推察します。
しかし、介護付き有料老人ホームの場合、収益構造が特養ホームや老健施設と似ていることから、そこで「できること」と「できないこと」には、実は大差がありません。
せいぜい、毎月支払うホテルコストと呼ばれる自己負担額の多少によって、例えば、病院受診時に介護職員らに対し送迎や同行をお願いできたり、少し食事が豪華だったり、長期的に入院している場合であっても、月額利用料さえ支払っておけば、居室を確保していくことが可能だったりの違いがあるだけです。
細かいことを言えば、各ホーム毎にできること、できないことも違うため、挙げればキリはありませんが、「住宅」と呼んでいる有料老人ホームは、入居者の自由や尊厳を大切にしているホームである、という印象をアピールしているように思います。
しかし、本当に重要なことは、住宅であろうと、施設であろうと、運営している法人やそこで働いている職員の考え方や品質が、そうであるかということです。したがって、あまりこの「住宅」「施設」という表現の違いに惑わされない方がよいと思います。
介護付き有料老人ホームの本来の役割とは何か?
本来の役割は、「多少経済的に恵まれている要介護高齢者のための住宅(施設)だと思います」。
結論から言えば、介護付き有料老人ホームは、自宅でスムーズな生活が営めない〝要介護高齢者〞のための「住宅(施設)」です。さらに、ある程度、費用の負担が可能な高齢者が対象になる介護系の住宅(施設)であるはずです。
ちなみに、介護報酬の仕組みが似ている社会福祉法人が運営している特別養護老人ホームは、要介護状態で多くの費用負担ができない高齢者が入居する「施設」ということになるはずです。
つまり、要介護高齢者のセーフティネットが特養ホームであり、余計な費用負担を多少してでも、自分らしい生活(ある程度のわがままな生活)をしたいと望む高齢者は、介護付き有料老人ホームという選択になるはずです。これが、正しい役割分担だと思います。
したがって、同じような介護状態である場合、自分らしく日々の生活を送りたいと考え、相応の費用負担が可能な高齢者は、特養ホームではなく介護付き有料老人ホームへの入居を選択するべきだと思います。
ちなみに、名前が似ている住宅型有料老人ホームは、限りなく自宅での生活様式を継続しながら、介護支援サービスを自分にとって必要なだけ受けたいと考える高齢者用の住宅(施設)です。そして、そこには介護支援を受けると言うよりは、より一層、自分らしく生きていくと願う高齢者のための住宅という色合いが強いと思います。
しかし、果たして実際は、そうなっているのでしょうか?実際は、特養ホームよりも低価格な介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームも存在しています。したがって、有料老人ホームは、特養ホームよりも「利用料金が高い」とは一概には言えません。
さらに近年では、特養ホームの高級化が進み、個室で尚且ユニットケア方式と言う高級老人ホームが採用しているケア方式の特養ホームも増え、利用料金の高い高級特養ホームが出現しています。
さらに、有料老人ホームは、月額利用料金が高いため、その分入居者の個別ニーズに対する対応力が高く、わがままを聞いてくれるケースが多いのですが、この構図も、格安有料老人ホームの出現で、必ずしもそうは言い切れなくなってきています。
よく考えなくてはならないことは、建物はお金をかければ限りなく高級になるし、職員配置数を増やせば増やすほど、介護支援として出来る可能性は広がります。しかし、会社組織やそこで働く職員らの考え方や思想が未熟であれば、そこで提供される介護支援の品質も向上しません。
つまり、いくら見えるところを豪華に手厚くしても、これでは誰も幸福にはなれないということだと思います。私も含めた業界関係者は、高齢者住宅の存在価値について、しっかりと考えていく必要があると思います。
高齢者住宅(施設)の現状について
結論から先に申し上げると、各々の住宅や施設の持つ役割が曖昧になりすぎているため、現実の運営状況を直視した場合、表[資料1、資料2]のような役割分担では、綺麗に説明することができないケースが散見されています。
例えば、自立の高齢者が対象であるはずの「サービス付き高齢者向け住宅」で、ホスピスと同じような運営をしている住宅(施設)があったり、逆に、介護付き有料老人ホームであるにもかかわらず、元気で自立した高齢者がたくさん入居している高級老人ホームもあります。
前者は、入居者の〝特定のある状態〞に特化してサービスを提供することで、提供するサービスを狭く深くして専門性の高い高度な対応を可能にしています。後者は、比較的経済的にも余裕がある富裕層が、第2の人生を謳歌するために、自宅では解消することができない日常生活に関する安心安全をお金で買うことが目的になっています。
さらには、要介護高齢者のセーフティーネットであるはずの特別養護老人ホームの多くが、高級化し、地域の要介護高齢者が〝料金が高くて入居できない〞というケースも決して少なくありません。
それでは、なぜ種類が違うにも関わらず、
同じような役割になってしまう高齢者住宅(施設)が
存在してしまうのでしょう?
私の考えは、次のようなものです。多くの高齢者住宅や施設は、介護保険報酬の獲得を目的としています。理由は、介護保険報酬の獲得が経営を安定させるからです。介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームはもとより、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅においても、経営を安定させるためにはどうしても介護保険報酬へ依存しなければなりません。
このため、多くの介護系事業者は、要介護2以上とか、要介護3以上というように介護度を指定し、要介護認定高齢者の獲得に精を出しています。これは、介護保険事業者が安定的に事業所運営をしていくためには、当然の行為だと考えます。
ちなみに、世の中でよく言われている「介護難民」は、単に介護の担い手がいないケースだけではなく、経済力がなく、介護保険報酬も期待できない軽介護認定の高齢者が陥る現象ではないでしょうか。多くの住宅や施設では、多額の介護保険報酬が期待できる中重度以上の要介護認定高齢者を囲い込み、彼らを他住宅(施設)へ流出しないように神経を使っています。
そして、このような理論が大勢を占める介護保険業界では、様々な住宅(施設)の運営事業者は、同じような状態の高齢者を求めているため、どうしても同じような住宅(施設)運営になってしまうのです。この介護保険報酬偏重主義が、そもそも役割が違う住宅(施設)であるにもかかわらず、同じような運営になってしまう原因になっていると私は思います。
さらに、この現象に追い討ちをかけているのが、住宅(施設)の持つ役割よりも「今、困っているこの現実をなんとかして欲しい」という要介護高齢者を抱えている家族のリクエストの存在です。このリクエストに応えるために、多くの高齢者住宅(施設)事業者は、入居者受け入れ態勢の整備を優先して進めています。
ある老人保健施設で支援相談員をしているAさんの話を例にとって考えてみましょう。Aさんは、自分達の使命、役割は、病院と自宅との中間施設であると位置付け、退院する高齢者の在宅復帰のためのリハビリに貢献しようと考えていました。そのために、入居相談時にリハビリの充実を訴えて居宅や病院などを訪問したところ、多くのリクエストは、〝リハビリなんてどうでも良いので、認知症の親を預かって欲しい〞というものだったと言います。
結局、Aさんの老健は、地域のリクエストに応えることを重要視し認知症高齢者の受け入れを積極的に行っています。口の悪い同業者からは「これでは、特養ホームと同じではないか!」と陰口を言われているようです。
さらに、多くのスキームの違う高齢者住宅(施設)の存在を曖昧にしている理由として「転ホームを前提としない入居」という業界常識が挙げられます。
現在の高齢者住宅(施設)は、最初の入り口、つまり、老人ホームへの入居を検討するというところでは多少細かく検討をするのですが、入居後の身体や精神の状態変化に関しては、住宅(施設)側が自助努力で何とか対応してくれるはずだという論が根強く浸透しています。これは、入居者側、住宅(施設)側、双方にあるマインドだと思います。
つまり、現状の高齢者住宅(施設)は、一度入居したら、最後まで当該住宅(施設)で暮らすことを想定しているため、多くの業界関係者は、ワンストップでいつまでもどのような高齢者であっても、追い出さない受け入れ体制を確保していることが重要であるということになっています。したがって、たくさんの種類の違う住宅(施設)があったとしても、この方程式で整理されていくため、どの種類の住宅(施設)も、すべての入居者の受け入れを目指さなければなりません。
結果、どこの住宅(施設)も似たり寄ったりの機能を備えた同じような住宅(施設)になってしまうのです。
私たちが考えなくてはならないことは、様々な形態の高齢者住宅(施設)があるということは、個人別に向き不向きもあり(もちろん、この個人別向き不向きには、お金のあるなしも含まれる)、これらを考えた上で、自分に合った住宅(施設)を選んでいくことが重要だということです。
そして、身体や精神の変化などによって、自分に提供されるサービスが当該ホームでは不十分になった場合は、他のホームに「転ホーム」するという行為が当たり前である、ということを理解することが重要なのです。
ちなみに、比較的多い〝今は空室がないので、有料老人ホームで待機し、特養ホームの空きが出たら特養ホームへ引越したい〞という行動は「転ホーム」だと考えます。
一度入居したら、最後までそのホームに住み続けるという常識。介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームの入居金制度が減少している昨今、その時々の諸事情に合わせて「転ホーム」するということを考えるタイミングにきているのではないかと思います。
高齢者住宅(施設)における介護保険サービス提供の違い
考え方の概略は次の通りです。なお、この概略は法制度を厳密に論じてはいません。現象、実態から考えて、なるべく分かりやすい形で表記表現をしていきたいと考えています。
特養ホームや介護付き有料老人ホームに代表される介護保険事業の場合、提供されるサービスは、その建物に紐づいています。つまり、老人ホームに雇用された職員から介護支援サービスの提供を受けているという理解で良いと思います。
したがって、特養ホームや介護付き有料老人ホームでの介護支援サービスは、建物全体の「丸めのサービス」とか「包括サービス」という表現で説明されます。月極(日割り)の定額制です。今流の言い方で言えば「サブスクリプション」ということになります。
一方、住宅型有料老人ホームやサ高住などは、建物自体(住宅事業)とは別に、訪問介護事業や通所介護事業などといった他の介護保険事業から介護支援サービスが提供されるため、提供された事業者ごとの「出来高払いの介護」になります。
したがって、介護保険サービスを受けるという観点から考えた場合、自宅で生活をしていることと「何ら変りはない」というのが原理です。そして、ここでよく課題として浮上してくる話題は、自宅と変わりがないのであれば、自宅で暮らせばよいのではないか?という問に対し、回答ができないことです。
わかりにくい「住宅型有料老人ホーム」の実態について
しかし、実際には世の中にある住宅型有料老人ホームやサ高住では、[資料4]とは違うスキームで運営しているケースの方がはるかに多いことです。したがって、「実態と違うではないか!」というお叱りの声が聞こえてきます。
少し解説を加えていきます。話をややこしくしているのは次のことが原因です。一つは、要介護高齢者の入居を促進するためには、訪問や通所などの介護保険サービスが入らない時間帯に起きる介護ニーズに対し、どう対処するのか?という課題のクリアです。
多くのケースではその対応のために、ホームによっては〝介護支援費〞などという名目で別途数万円を徴収し、その代わりに隙間時間を埋めるために建物に所属している職員を必要に応じて配置し対応をしています。
さらに、入居者一人ひとりの区分限度額上限一杯まで介護保険サービスの提供可能なケアプランを作成し、同一法人が運営する訪問介護や通所介護などの介護保険サービスを利用させることで、同一法人内に介護保険報酬が落ちる仕組みを作り、その保険報酬の一部を使って、24時間365日にわたり、切れ目のない介護支援体制維持のための職員配置を実現し、隙間時間を埋めています。
平たく言えば、入居者全員が中重度以上の要介護認定を持ち、区分限度額を100%消化した場合、かなりの介護保険報酬を得ることができるため、隙間時間を埋めるための職員の雇用に必要なコストは、十分に用意することが可能だということです。
結果だけを見た場合、住宅型老人ホームやサ高住という「建物」で、実施する介護付有料老人ホームということになります。
考えなければならないことは、区分限度額上限一杯まで、ケアプランを作成すること自体は、何ら問題はありませんが、本人に必要のないケアプランを過剰に作り、サービスを提供していくことは、問題視されても致し方ないことです。
しかし、その一方で、このような運用をすることで、毎月の月額料金を低く抑え、年金金額の少ない要介護高齢者の老人ホーム入居の道が開かれていくということについては、ある意味救われている要介護高齢者や家族が存在しているということも理解しておかなければなりません。
いずれにしても、このように複雑で、そして独自の進化を遂げている住宅型有料老人ホームは、専門家であっても、なかなか正しく実態を把握し、その説明を理路整然とすることが難しいスキームであるということを記しておきたいと思います。
高齢者住宅(介護付き有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅)の居室例
介護付き有料老人ホームをはじめとする介護サービスを主たるサービスとして提供している有料老人ホームの居室は、間取りはシンプルで、面積も20平米前後とコンパクトです。特養ホームや老健などの場合、多床室といって、1室に複数人で病院の病室のような居室や、トイレや洗面所などの水回りが、居室内に設置されていないケースもあります。
しかし、有料老人ホームの場合は、原則個室でトイレと洗面所は居室内に配置されています。また、居室は、寝室や書斎に近い運用なので、食事は食堂で、日中は居室外のホールなどの共用部分で他の入居者や介護職員らと過ごすことができるように運用されています。(コロナ前の平時の対応基準)。
サービス付き高齢者向け住宅の居室は、有料老人ホームよりもさらに広く、25平米から30平米程度になります。もちろん、これ以上に広い居室もあります。そして、特筆することは、浴室が設置されているケースも多く、いわゆるバリアフリーの賃貸マンションという理解で良いのではないかと思います。
文:元気かいみんかい編集部
有料老人ホームに求めるもの
有料老人ホームに求めるもの
現在の有料老人ホームを見ていますと、ベースとなる種別(介護付き有料老人ホーム/住宅型有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅/グループホームなど)を基として更に細分化されているように感じます。
・パーキンソン病の診断を受けられた方のみを対象とした有料老人ホーム
・人工透析をされている方のみを対象とした有料老人ホーム
・リハビリに特化した有料老人ホーム
・医療対応特化型の有料老人ホーム
※特定疾病(16特定疾病)や訪問看護における別表7の疾病(厚生労働大臣の定める疾病等)、また別表8(厚生労働大臣が定める状態等)のみを入居対象としているホーム
・介護認定で『要介護①以上』や『要介護③以上』の対象者のみを入居対象としているホーム
などなど、その方のご状態により細かくなっているのです。
それぞれ運営するホームの思惑があり利用者の欲求と合致したことで成り立っているように思えますが、今回は運営するホームの思惑というより利用者(ご家族)の“欲求”に絞って考えてみたいと思います。
最近のご相談は特に要求が細かくなっているように思えます。
・父は自然の環境が大好きだから山や野原が見渡せるホームを探して欲しい
・昔のように威厳があって元気だったころに戻って欲しいからリハビリを毎日して欲しい
・野菜は一切口にしない偏食だからそのオーダーを叶えてくれるような個別の食事を用意して欲しい
・母は散歩が趣味なのだが認知症で外に出かけたら帰ってこられないので毎日散歩に付き添って欲しい
・定期的に特定の病院に通っているのでしっかり通院同行してくれるホームを探して欲しい(もちろんサービスで)
などに始まり、100個の相談があれば100通りの欲求があります。
ホームへの依存が強くなっているのは理解できるのですが、ホームの都合も考えなければなりません。お金で解決できる欲求もあれば、そうでない場合も多分にあるからです。
介護を任せる側、介護を受ける側、双方の立場を尊重しながらコミュニケーションを図って譲歩し合うことが望ましいと思っています。
人の欲求は5段階のピラミッドのように構成されているとする心理学理論を唱えたアメリカのアブラハム・マズロー(1908~1970)という心理学者がいます。
人間性心理学の生みの親と称され、今でもビジネス上で当てはめられる理論だそうです。介護の分野でも昔から使われ、介護福祉士の国家試験にも出題されたほどです。
このように書いている私自身が完全な理解をしている訳ではありませんが、私なりに感じ取っている最近のお客様の傾向とマズローさんの『欲求の5段階説』を照らし合わせてみます。
マズローさんは人間の欲求を5段階に分類しピラミッドに見立てて振り分けました。
理屈としては下層の欲求が満たされないとその上層の欲求が生まれないという論を定義づけたものです。
第1階層(最下層)→生理的欲求
生きてゆくための本能的な欲求(食事/睡眠/排泄など)のことです。
人間はどんな時でもまず何よりこの欲求を満たしたいと願うものです。
これをホームで言うところの『有料老人ホームの最低限の生活環境』と言えるのではないでしょうか?昔で言う養老院のように集団で生活するうえで衣食住の確保ができていることで最低限の欲求が確保できる環境です。
第2階層→安全の欲求
危険を回避して、安全で安心した生活がしたいという欲求のことになります。
心身共に健康で経済的にも安定した生活が送りたい・・そこに身を置きたいという欲求です。
私はこれをホームで言う『介護職員の配置』『看護職員の配置』と考えます。
少なくとも独居で生活しているより、何かあった時に手を差し伸べてくれる、適切な対応が得られる安心感がホームの中にはあります。
※この第1階層と第2階層が【物理的欲求】と位置付けられます。
有料老人ホームの最低限のハード/ソフト面にあたるからです。
第3階層→社会的欲求(所属と愛の欲求)
集団に所属したり、仲間を求めようとする欲求です。この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなります。物理的なものでは満足が得られない・・という特徴がある層です。
このホームに入居していると言うステータス感をはじめ、そこで行われているアクティビティ(レクリエーション)を通してできる人との関わりや仲間意識が該当するのではないでしょうか?『リハビリをしたい』『好きな囲碁をしたい』『カラオケ仲間を作りたい』など、入居者同士、若しくはそこで働く職員さんたちとの関わりを通して感じられる満足感です。
第4階層→承認欲求
社会の中で自分の個性を見出したい、所属する集団の中で高い評価を得たり尊重されたいという欲求です。その評価を得ようとするモチベーションや原動力にもなると言われているようです。
ここでふと有名なリハビリ病院のDrの言葉を思い出しました。
「リハビリをさせたいのは家族のエゴであって、本人がやる気にならなければどんなに有能なリハビリ専門職の人が対応したとしても効果は得られない」という言葉です。
私は当時、その言葉に「Drがそんなこと言ったら元もこうも無いでしょ」と思いながら強いショックを受けましたが、その対象者は大腿骨骨折の手術以降は車椅子生活を余儀なくされました。確かに気力が根源に無ければ何をやっても難しいものだな・・と思ったものです。そこに「よし、自力で歩けるようになって好きな旅行に行ってやる!」とか「元気になって周囲の人たちをビックリさせてやる!」「まだまだここで終わるわけにはいかないぞ!」などの気力や目標が欲求となっていればまた違った結果があったのではないかと思いました。
第5階層→自己実現の欲求
これが最上階層の欲求です。1~4階層が満たされた時に自分の心の中に秘めている可能性や使命の達成を目指す欲求になります。自分自身の向上とも言えます。
以上の5段階を今のホームに当てはめると現実的には第3階層である社会的欲求(所属と愛の欲求)までたどり着いているイメージがあります。
その上を目指す場合、今より更に濃密な個別対応が必要となり、介護職員の人員体制で例えると、特定施設(介護付き有料老人ホーム)の基準【3人の利用者に対し1名の看護・介護職員】の配置では間に合わず【1:1】のマンツーマン体制ほどの関わり合いが必要になってきそうですね。
先に書いた『毎日散歩に付き合って欲しい』『好きな病院に行きたいので同行してほしい』『自分の好きな食事だけを調理して欲しい』などの欲求を満たすことは現状ではほとんどの有料老人ホームでは『できる事なら叶えてあげたいのだが実際は難しい』という結論に至ってしまうのではないでしょうか?
介護をする側、介護を任せる側、双方の歩み寄りがあって初めて快適な生活が営めるものだと思っています。
その調整に我々が少しでも関われればと願っております。
高級老人ホームとは? 入居を検討する際にチェックしておきたいポイント
高級老人ホームとは? 入居を検討する際にチェックしておきたいポイント
東京や神奈川の首都圏を始め、大阪、福岡、名古屋、札幌のエリアでは「高級老人ホーム」という施設が数多く展開されています。この記事では、高級老人ホームが提供しているサービス、特徴、費用などについて解説しています。
高級老人ホームは「生きがい」を生み出す快適空間
高級老人ホームは、主に駅近など市街地に建てられており、一般的な老人ホームと比べ、より充実したサービスを受けられるのが特徴で、きれいな建物、充実した設備で、至れり尽くせりのサービスを提供している施設の事です。
・充実した暮らしを支える、手厚いサービスが受けられる
「安心」をこえて、「生きがい」を生み出す居住空間を提案しています。
・交通アクセスがいい
ターミナル駅への交通アクセスが良いなど、大変条件の良い位置にあり、新幹線、空港、地下鉄、バスなど、どのような交通機関の利用も快適に行え、国内各地はもとより国外へのアクセスも良く、大変便利な暮らしを続けることができます。
ホームの周辺にはスーパー、百貨店、病院などがあり、ホーム内では国が定めた基準以上の人員を配置した手厚い介護、看護体制、24時間の見守りや手厚い医療支援が受けられるので安心です。
また、病院と連帯して万全のサポート体制が整えられているホームもあります。
居室は十分なスペースが確保され、快適性と安全性に配慮され、入居者様のお身体状態に合ったフロアとなっています。また、健康サポート設備が備えられ、機能訓練を行えたり、天然温泉での入浴を楽しめたりする施設もあります。
高級老人ホーム6つの特徴、お薦めポイント
ここでは、高級老人ホームの特徴についてご紹介します。立地を含めたすぐれた住環境など、費用対効果を重視する方にお薦めです。
①立地環境と交通の利便性の良さ
高級老人ホームは、交通の利便性が良い所に建てられています。百貨店、スーパー、郵便局、銀行や病院、薬局など、暮らしに必要な施設と近接しているようなエリアに建てられており、本人はもちろん家族にとっても便利です。
映画館や劇場に行ったり、スポーツクラブ通いやスポーツ観戦したりなど、自分が外出をするときはもちろん、家族が遊びに来やすい場所に在ります。一方、リゾート地のような自然があふれる場所で、動・植物園に行ったり、海岸遊びをしたり、大きな公園での散歩や山登り、中には天然温泉が楽しめる場所に建てられている施設があるのも特徴といえます。
②高級感があるホテルのような建物
高級なホテルと言えば豪華な外観を思い浮かべますが、高級老人ホームも同様に、人目を引く美しい外観が特徴です。外観だけではなく、来訪者をゆとりを持っておもてなしができるロビーやラウンジはシックで落ち着いた雰囲気であり、家具や内装などにも高級感があり、採光を意識した間取りでもあって、豪華な気分で住んでいることを誇らしく感じられそうです。
③豪華な共用設備
高級老人ホームに一歩入って、まず豪華さを感じるのがエントランスです。雰囲気のあるロビーとカフェ風のラウンジはゆとりを感じることができます。その先のフロントではコンシェルジュが迎えてくれます。
カラオケや映画鑑賞が楽しめる設備、理美容室はもちろん露天風呂やウォーキングプール、和室や庭園などの豪華な共用設備があるのも高級老人ホームならではでしょう。
卓球やビリヤード、マージャンや音楽活動などのサークル活動もでき、連れ立って行ける場所も提供されていたり、バーなどでお酒を飲みながら新しい情報や刺激を得られたりする居心地のいい環境と設備も用意されています。
そのほか、敷地内のレストラン、カフェ、スーパー、スポーツジム、クリーニングなどを利用できるホームもあります。使いやすさだけではなく、一般的な老人ホームでは見かけないようなレベルの高い設備が整っています。
④こだわりの食事
高級老人ホームのこだわりといえば、食事についても外せません。地元の食材をふんだんに使い四季折々の食事を提供してくれます。味付けや盛り付けはもちろん、器にも工夫があり、毎日の食事を楽しいものにしています。日替わりの食事も選ぶことができますし、アラカルトメニューや記念日の特別メニューも提供されます。
管理栄養士が栄養バランスを考慮した食事になっておりますので、おいしさと健康管理の両方に配慮されたものとなっています。さらに、健康面に配慮した減塩食やカロリー制限などに配慮した個別対応の食事にも対応できます。
食事を提供しているレストランは、ホテルライクな空間です。明るく開放的で、コーヒーブレイクやアルコール、おつまみなども提供されており、色々なシチュエーションで利用が可能になっています。
このようにさまざまなジャンルの料理が提供され、健康を保つための食事というだけではなく、メニューのクオリティーにもこだわっているところは、高級老人ホームの評価すべきポイントだといえます。
⑤独自性の高いイベント・工夫されたレクリエーション
高級老人ホームでは、独自性の高いイベントなどが行われます。イベントは、入居者同士の交流の場所であり、気の合う仲間と楽しむ空間です。
歌手や音楽家などプロを呼んでのイベントが定期的に開催されたりするほか、絵画、コーラス、書道、陶芸、おやつ作り、囲碁、将棋、パソコンなど、さまざまなサークル活動や講座も活発で趣味の時間をより楽しめる環境が整っています。家族の参加や友達を呼んでの参加が可能なイベントもあり、継続的なコミュニケーションを保つことにも役に立っています。
最近では、マシーンを利用して運動し、健康を保つことができるようにもなっています。また、健康維持とその向上を目的としたレクリエーションも工夫されていますので、ホーム入居者にとって、自立した生活を永く楽しめる体制が整えられた環境といえます。
⑥安心できる医療・介護体制
高級と言われる老人ホームの多くは、規定の3:1よりも多くの介護士を配置し、入居されている方を支えています。日中も夜間も看護師と介護スタッフが常駐、体調の変化にも迅速に対応できる体制を整えているところも多いです。
また、平素から健康管理、健康相談、定期健康診断など、安心な医療支援を整えることにより、ご入居者もご家族も安心して生活が送れるサポート環境が整っているのも特徴です。気になる体調のことなどもお気軽にご相談いただけます。また、持病のある方にも安心な環境といえます。
さらに、設備面においても、緊急コールや生活リズムセンサーなどで睡眠状態や健康状態を把握できるよう備えているホームもあります。
このようなわけで、高級老人ホームの生活は、医療・介護態勢が整い、安心な暮らしを送れる環境が備わっているといえます。
高級老人ホームの費用
充実したサポート態勢や設備が整っていることから、必要な費用がかさむと思われる高級老人ホーム。ここでは、どのくらいの費用がかかるのか、ご紹介します。
・入居一時金
入居一時金とは、入居する際に必要な前払い金のことで、多くの老人ホームで取り入れられています。金額は、施設によって異なりますが、最低で1千万円程度から5千万円をこえるものまで、中には8千万円、1億円以上する高級老人ホームもあります。
・月額費用
月額費用とは、家賃や管理費、食費や光熱費など毎月必要になる費用のこと(外部の介護サービス・医療についてのサービスは別途必要)。こちらも金額は施設によって異なりますが、大体毎月15万~40万円ほどです。ただし、施設の立地、環境、居室の広さ、設備など様々な要因によっても変わります。
高級老人ホームに申し込む前に確認しておくべき4条件
老人ホームの入居について、下記4つの事項について確認しておくことが必要です。
①健康状態のチェック
施設ごとに健康状態の基準が設けられており、施設側が入居の受入れが可能かどうかを判断します。自立、要支援・要介護、認知症の有無によっても受入れの可否が施設によって違うため、入居を検討している場合は問い合わせてみましょう。
②身元保証人の確認
多くの老人ホームでは、入居の際に身元引受人や保証人が必要になります。ただし、身元引受人や保証人がいない場合でも成年後見制度などの利用が可能です。
③支払い能力について
高級老人ホームの入居には、一般的な老人ホームよりも支払額が多くなるため、収入や支払い能力の有無を確認されます。ホームごとに審査の基準を設けていますので、候補となる施設があるなら早めに相談をしておきましょう。
④将来にわたっての支払い能力
高級老人ホームは、他の老人ホームよりも支払額が多くなるため、
入居した後も支払いを継続していけるかどうかのシミュレーションも必要になります。
高級老人ホーム を選ぶ際のチェックポイント
シルバーエイジの生活は、きれいな建物、優れた設備、立地条件の良い場所で、安心に楽しく暮らしたいといろいろな希望があるでしょう。しかし、高級老人ホームを選ぶ際に重要なポイントは「費用対効果」です。高級老人ホーム選びを成功させるために、最後にしっかりチェックしておきましょう。
・安心・充実した生活を送ることができるか
入居する本人が、その施設で、その立地で充実した生活を送れるかを考えることが大切です。イベントやレクリエーションが十分に計画、実施されているか? 活動の内容は? 今後も仲間同士での交流が続けられるかは、自立したシニア層にとっては施設を選ぶ際の重要な判断材料になるでしょう。
・サービスや利便性は良いか
買い物に出掛けたり、仲間との交流、投資やビジネスを続けたりしていくためには、主要都市、駅、空港などへの交通アクセスも重要。また、荷物受取代行、来訪者の受付・取次ぎ、共有施設の利用条件などフロントサービスも大切になってきます。そのほかにも、買い物代行、手続き代行、外出や病院への同行も重要なポイントです。
周りの環境も良く、満足のいく生活が続けられるか、十分にチェックしておきましょう。
・医療・介護・健康サポートサービスは充実しているか
安心して楽しく過ごすためには、健康の維持が何よりも重要です。医師による定期的な診療はあるか、看護師による健康管理や介護サービスなど、サポート態勢について把握しておくことも大切です。
高級老人ホーム まとめ
「人生の後半を子供に頼りたくない」「残された人生の方向を決めておく最後の選択かもしれない」と考えられる方もいるでしょう。高級老人ホームは、元気なうちに利用する方が設備やサービスを有効に活用できます。人生を謳歌(おうか)するためのサービスと考え、早い段階での入居もよいかもしれません。
また、資料を検討した後には3カ所程度の施設見学を行うとよいでしょう。コロナ禍の中では施設見学も容易ではありませんが、弊社にてご見学スケジュールの調整も承りますので、ぜひご相談ください。
※の画像はイメージです。実際とは異なる場合があります。
みんかい福岡博多相談室 木村 淳一
<参考にさせていただいた高齢者向けホーム>
・アンリ南福岡(株式会社ケアネット徳洲会)
・ヴィラ梅光(社会福祉法人天寿会)
・ホスピタルメント福岡天神(株式会社桜十字)
・九電ケアタウン(株式会社キューデン・グッドライフ東福岡)
・生の松原ハッピーガーデン(株式会社エス・エス・カンパニー)
<おすすめ みんかいコラム>
・高級老人ホームって何が違うの?
・老人ホーム選びの極意とは?|ランキングは意味がない
・元気なうちから老人ホームに入居することはアリかナシか?
ネット検索でよくある【落とし穴】
ネット検索でよくある【落とし穴】
私どもみんかいは発足から20数年が経ちます。その間に皆様の生活様式は大きくも小さくも何かしらの変化があったことでしょう。でも、私どもは変わらず「有料老人ホーム探しのお手伝い」をさせていただいております。
皆さんは有料老人ホームを探す際に、まず手始めにどのような行動をとられますか?
大抵の方は「パソコンやタブレット、スマホなどを使って検索」をされることと思います。
この20数年の間に、生活に欠かすことができない環境変化といえば、真っ先に思い浮かべるのは「ネット環境の整備」だと思います。
机のスペースの大半を埋めてしまう機械を設置してネット開通の操作をするとピーヒャラララ・・ピーヒャラララ・・と電話回線を伝って数分後にアクセスできた時代から考えると現在のコンマ何秒でネットに接続できるというスピード感は恐ろしいものがあります。
私どもみんかいにご相談に来られるお客様も同様に、当時60歳だった方が80歳、90歳になり、ご自身が有料老人ホームを終の住み家としてお探しになっていらっしゃいます。
そのお子様方も60歳、70歳になっているとはいえ、時代の変化に順応されてきたわけですから、お父様やお母様のための介護施設をご相談に来られる前に幾つかのネット媒体から情報を集めてお越しになる方が増えているように感じます。
このコラムを見ていただいているということは、まさに有料老人ホームを探されているご本人様、若しくはそのご家族様や関係者の方であって、何らかのタイミングでこのコラムにたどり着かれたことと思います。
ただ、私どものホームページは施設を検索することはできません。
それには幾つかの理由があるのですが、ネットに頼った検索をしていてよく目にするお客様の落とし穴を幾つか挙げます。
探されている有料老人ホームの種別のミス
そのお客様は料金ありきで選んでいらっしゃるようで、おおよそ「そのホームではお客様の認知症状に対して対応ができないだろう」というようなホームをプリントアウトしてご面談時に『ここが良いと思っているのですが・・』とご提示されてきました。
種別としては最近多い「介護型のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」ではなく、「箱(居室)だけ貸すようなサ高住」でした。夜間管理人が常駐しているとはいえ、徘徊行動が見られるお客様のご相談に対しては十分なケアが望めそうにないスタイルの施設でした。
聞くと、その施設を検索したページではその施設の紹介欄に【認知症対応◎】のアイコンが貼ってあったそうです。
以前、ある施設にご入居された認知症の方が居室に置いてあった液体洗剤を飲み物と勘違いして誤飲し、倒れているところを施設職員ではなく、隣の住人が発見して救急車を呼んだ・・なんて事故もありましたので、そのお客様には昼夜を問わず見守りが行われている種類の介護施設をお勧めしました。
医療行為の受け入れ表からのミス
そのお客様はネット媒体の「医療行為対応表」にある【胃ろう対応◎】の表記を見て施設に見学に行ったところ、担当者より「いまは受けられません」と断られたそうです。
なぜそのような表記がされていたのでしょうか?掲載ミス?見学者を多く集めるため?
およそ判断できることは、そこの施設では基本的に「胃ろうの対応」は出来るのでしょう。
ただ、対応する看護師さんのキャパシティの問題も考えなければなりません。
例えば50名の利用者を受けられる施設の中で経管栄養の対応ができる看護師のキャパシティは〇〇人まで。という人数を超えてしまっていたことが想像できます。
その辺りの表記はネットには記載されませんので随時確認しなければなりませんが、そのようなことを理解できる人の方が稀だとおもいます。
この人数配分に関しては【生活保護対応◎】や【要支援受入れ◎】などの表記にも当てはまる事が多く見られますので事前に確認することが肝心です。
有料老人ホームランキングを見た
ネットで「有料老人ホームランキング」と検索したらここのホームが出ていた・・・
本屋に行ったら週刊誌に「2021年版老人ホームランキングを一挙掲載」とあったので購入して見たら気になるホームがあった・・・などの問い合わせを始め、私がご相談をさせていただいたお客様から「あなたの親御さんをホームに入れるとしたらどこが良いと思いますか?」とのご質問には正直困ってしまいます。
ランキングに関しては弊社の場合、どの媒体にも参加はしていません。よく「みんかいの相談員として多くのホームをつぶさに見てきたのだから、何処がいいホームなのか?ランキングにしてみて」とある情報誌から話をもらったこともありましたがお断りしました。
その人その人にとって施設に対し何を求めているのか?どうして欲しいのか?困っていることは?現病に対するケアは?地域は?予算は?など十人いたら十人が同じランキングであるはずがありません。
「あなたの親御さんはどこのホームが良い?」というご質問にしては、まだ有料老人ホームに頼る状態になく、私の親が何に困り、何を望み、どのようなケアが必要なのかも明確ではないことからお答えの仕様がありません。予算も解りませんし・・・。
以前、ほかのコラムで書きましたが、今の有料老人ホームは多種多様化しています。
特定施設、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症対応型グループホーム、小規模多機能型、ケアハウス、特養、老健、それに加え、認知症に特化したホーム、医療に特化したホーム、元気な方対象のホームなどなど、その方の状態によって細分化しており、それに付随して【マズローの欲求5段階説】にあるように現在の介護施設利用に関して利用者の欲求も高次元化してきているように思えます。
これらを考えますと、ネットに頼った有料老人ホーム検索には限度があるように考えております。その人に適したホームを考える時には偏った情報だけ、見栄え、都合の良い情報だけではなく、真剣に一緒に考えてくれるブレーンが必要だと思っています。
そして私どもはお客様の良きブレーンでありたいと願っております。
みんかい 渡辺 大志
名古屋の高齢者と老人ホーム事情
名古屋の高齢者と老人ホーム事情
愛知県の人口は7,541,123人。名古屋市に至っては、2,328,431人(令和2年国勢調査結果より)です。内、名古屋市内の高齢者率(65歳以上)は24.9%と高い水準にあり、その65歳以上の中で「要支援認定」もしくは「要介護認定」を受けている方は117,418人(20.1%)にもなります。(NAGOYAかいごネット調べ)
内閣府のホームページでは全国の高齢化率を掲示していますが全国都道府県別でみると、愛知県の高齢化率は47都道県中45位。1位の秋田県43.8%に比べるとまだまだ良い印象はありますが、20年ほど先の2040年には32.4%まで跳ね上がる事が予測(厚生労働省 試算)されています。
それらの事情を考えて名古屋市では様々な福祉事業に取り組んでおり、全国でも有数の【福祉大国】になっています。
・敬老パス
「高齢者が公共交通機関で利用できる助成券等の制度」といい、全国の政令指定都市でも多く活用されている制度ではありますが、ここ名古屋では【65歳以上】の方々が対象となっています。ちなみに、東京都(シルバーパス)や横浜市など多くの自治体が70歳以上であることを考えると、名古屋市は大変手厚いと考えられます。
・福祉給付金制度
これは名古屋市だけではなく、愛知県の多くの市区町村で運用されている制度なのですが、簡単に言うと「医療費が免除される制度」になります。通称【マル福】といい、前提として70歳以上で名古屋市に住所があり、後期高齢医療の被保険者であることが必要なのですが、以下の条件に当てはまれば「お薬代や医療費負担が無くなります。」
1.身体障碍者手帳3級以上をお持ちの方
2.精神障碍者手帳2級以上をお持ちの方
3.「寝たきり」または「重度・中度の認知症が3ヵ月以上継続している方で、本人の所得が一定の範囲の方
※“一定の範囲”という文言の具体的な基準に関しては各役所にお問い合わせください。
4.要介護④、あるいは⑤の方
※私が担当したお客様の場合は要介護②でありながら“マル福”を取得されたというケースもありましたので、まずはかかりつけ医師にご相談ください。
他、詳細は名古屋市ホームページなどでご確認下さい。
この【マル福】を所得されていれば老人ホームに入居した際の負担が軽減されますので、大変ありがたい制度です。
【福祉事業】を数えたらキリがありません。ただ、このような取り組みにより名古屋市在住の高齢者が経済的にも住みやすい環境となっていることは特筆すべき点であると考えます。
介護施設について ~愛知県~
愛知県の県庁所在地・名古屋市にはたくさんの介護施設があります。
調べただけでも県や市が所管する特別養護老人ホームは90施設を超え、民間企業が運営する有料老人ホームに至っては442施設、認知症対応型のグループホームは400施設以上あります。
愛知県全体となると当然もっと増えますが、名古屋市を中心にした近隣エリアに集中している傾向が顕著に表れています。
名古屋市内の有料老人ホーム(民間が運営するホーム)の平均的な相場としては基本料金が15-20万円くらいの所が多いようです。
基本料金とは「家賃」+「管理費(共益費)」+「食費」の3部構成となっている料金を指します。
主にホームのパンフレットに記載されている料金のことです。
※サービス付き高齢者向け住宅の場合は、「食費」を記載していなかったり「状況把握及び生活相談費用」とか「健康管理サービス費」という費用が加えられていたりしますので注意して下さい。
この基本料金に、個別料金(介護保険自己負担分+医療費+おむつ代や趣味嗜好品、生活必需品や光熱費)が加算されますので、介護保険1割負担の要介護①の方の場合、5万円くらいを個別料金として見積もりますと、基本料金/15万円+個別料金/5万円で総額/20万円となります。
よって、名古屋市内の有料老人ホームの場合、20万円~25万円が平均相場となります。
ただ、中には基本料金が12万円~13万円程度の所も各区、各エリアに点在している為、ご予算に合わせたホーム探しが比較的スムーズにできるのではないかと考えております。
有料老人ホームの特徴① ~愛知県~
なかでも、愛知県エリアの特徴として挙げたいのが【家系ホーム】の存在です。
長く関東、近畿エリアでご相談をお受けしてきた私にはとても新鮮なスタイルでした。
勝手に“家系”と呼んでいますが、一軒家やマンションの数室もしくはフロアを改装して認可を取って運営されている有料老人ホームになります。
居室は個室がほとんど無く、2~4人部屋での生活となっていますのでプライバシーの確保は期待できません。でもそのぶん家賃がとても割安なため、基本料金としては月額/6~8万円前後になっています。
これらは関東や近畿圏にはあまり無いのですが、愛知県エリア(名古屋市近隣エリア)では多く運営されています。
これらのホームで“マル福”を取得されている方が生活すると要介護⑤であっても10万円前後で生活ができるようです。
これらのホームの場合、「要介護①以上」などの入居条件がありますので、詳細は弊社にお問い合わせください。
有料老人ホームの特徴② ~愛知県~
もう一つ、名古屋エリアで特徴的なことは【医療系に特化した有料老人ホーム】が大変多いと言うことです。“特定疾病”もしくは“厚生労働大臣が定める疾病等”の診断を受けている方専門のホームがたくさん存在します。
これらは医療費などにて運営を補う仕組みのようで基本料金は10~12万円前後と割安に設定されています。経口摂取(お口から栄養を摂ること)が出来ない方のみを入居条件にしているホームや、要介護④以上の寝たきり状態でなければ入居出来ないホームもあります。
逆に自立されているアクティブシニアの方が日々の生活を謳歌できるような高級ホームや、お食事だけ提供するけれど、あとはご自由に生活して下さい・・というお元気な高齢者が共同生活できる住宅、要介護状態の生活保護受給者がご入居出来るホームまで、その方に合ったニーズにお応えできるホームが数多くあるのが名古屋の特徴と言えるのではないでしょうか。
どちらにしましても、なかなかご自身では探しきれなくなってしまっているのが現在の老人ホーム事情です。そんな時は迷わず弊社までお問い合わせください。
的確なホーム探しのお手伝いをさせていただきます。
みんかい西日本事業部 室長 渡辺大志
有料老人ホームのパンフレットの読み方
有料老人ホームのパンフレットの読み方
「いろんな人から有料老人ホームの費用ってパンフレットに書かれている料金の倍くらい請求されるって聞くのだけれど・・」
今も昔もご相談に来られる方々からよくお聞きします。
お話をお聞きすると、その方の知人は見学した時にちゃんとパンフレットをもらって説明を受けたのに、そのとき聞いた金額とかけ離れた請求が毎月届く・・というのです。
老人ホームの「あるある話」?都市伝説?はたまた詐欺?
いったい何がおこっているのでしょうか・・。
まずはパンフレットの見方をおさらいしてみましょう。
有料老人ホームのパンフレットは、各ホーム(運営会社)で試行錯誤がなされ、見栄えの良い写真をふんだんに掲載していたり涎が出そうなお食事の写真などを取り入れていたり、新築高級マンションの様な冊子になっていたりとさまざまですが、一つ重要なことが統一されています。
それは「介護付き有料老人ホーム(特定施設)」と「その他の介護施設や高齢者住宅」との区分けです。
「介護付き有料老人ホーム(特定施設)」の指定を受けたホームのパンフレットには『介護付き』という文言を入れられますが、そうでないものには『介護付き』や『ケア付き』とは記載が出来ません。
したがって、「この有料老人ホームは介護付き有料老人ホームなのか?それとも住宅型?サ高住?なのか・・」と迷ったら、まずは『介護付き』『ケア付き』という文言が記載されているか確認してみてください。
「基本料金」と「個別料金」
それはさておき、料金の見方に戻ります。
有料老人ホームの利用料金(月額のランニングコスト)は「基本料金」と「個別料金」の合算となります。
パンフレットに記載されている料金は、「基本料金」になります。
この「基本料金」とは大まかに言うと①家賃、②食費、③管理費(共益費)で成り立っています。
※サービス付き高齢者向け住宅などの場合はこの3点の他に「サービス費」や「状況把握および生活相談費用」などが「基本料金」に組み込まれていることがあります。
この金額は、ご入居されたすべての人に必ず支払ってもらう費用に該当します。
その人がそこで生活するうえで最低限必要な金額、それが「基本料金」ということです。
その「基本料金」に加えて必要になるのが「個別料金」です。
「個別料金」とは、入居される『その方その方』にとって費用が変わるものです。
有料老人ホームは「介護を提供する/介護を受けるホーム」です。介護の状況はおひとりおひとり違います。
介護度(自立、要支援①~要介護⑤まで)や既往歴(それに対する医療行為)、オムツの使用頻度(パットやリハビリパンツ、紙おむつなど)、居室内の電気代や水道、ガスといった水光熱費、日用消耗品(トイレットペーパーやティッシュペーパー、歯磨き粉やシャンプー、石鹸など)、そのほかに新聞を定期購読されている方は新聞代、BSなどの娯楽番組を個別で契約している方、携帯電話や固定電話代などが挙げられます。
これらの中でも大きく他者と差が出るのが「介護度別の介護保険料」ではないでしょうか。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の場合、要介護②の方で月間/約20,000円の介護費用(1割負担の場合)がかかります。
※地域によって若干の違いがあります。
2割負担の方の場合ですと、約40,000円。3割負担の方になりますと約60,000円が月にかかる事になりますので、先に書いた「個別料金」はそのご利用者の年収によっても大きく違うことになります。
ただし、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の場合は、基本的に使った介護サービスの分だけ請求されますので、自身が使えるサービス分を超えない範囲であれば料金を抑えることが可能になります。
「個別料金」の請求のされ方に注目!
ここで介護施設の種類によって「個別料金」の請求のされ方が違うことを理解して下さい。
“食べ放題”のメニューがあるお店で例えると、「介護付き有料老人ホーム」は“食べ放題”になります。「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」は食べ放題ではなく“メニュー表から好きな物だけ食べる”スタイルとなります。
いつ何時でも介護度に応じた一定額の料金(自身の介護度に合わせた負担限度額いっぱい)を支払うことで介護サービスを受けられる仕組みである「介護付き有料老人ホーム」に対して、受ける介護サービスの内容や時間によって料金が確定する「住宅型有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅」の仕組みの違いから、選択する介護施設の種類と自身の介護度、負担割合によって月額の「個別料金」に大きな差が生じるのです。
冒頭に書いたお話をされる方々のお話をお聞きしますと、この「個別料金」がどのようなもので、どの程度かかるのか・・をちゃんと認識していなかったケースが多く見られます。
当時は「どうしよう・・どうしよう・・」と親の受け入れ先ホームを探すのが精いっぱいで慌てていたし、見学の時に数十分ほど説明を受けただけで理解なんてできるはずがない!とおっしゃられるのは仕方のないことです。
それだけではなく、ご入居された時期からの加齢やご病状の進行によっての変化も十分考えられます。当然、ご状態が変化すれば今まで使用していたオムツの量も増えてしまうことが考えられますし、往診医にかかる頻度も増えることが想像できます。
あまりに介護費用がかさむようなら、区分変更をしてみることも大事です。
その方の現在の介護度で提供できるサービス範囲と現実とでミスマッチを起こしていることが考えられます。
「受けている介護度」によるサービス限度を超えてしまうと、超えた分のサービス費は10割負担となってしまいますので、介護区分を変えて(介護度を上げて)サービス限度を広げることが得策となります。
お金のことは大事です。「打ち出の小槌」は誰も持っていません。ましてや一昔前の高金利バブル時代のように預金が勝手に増えるご時世でもありませんし、いまの年金だっていつまで受けられるのか心配な世の中です。
仕組みをまずはしっかり理解することが必要です。
そのために我々みんかいの相談員をご活用ください。
みんかい西日本事業部 渡辺大志
老人ホーム探しにおいて「ずっと居られる」場所を求めるのがNGな理由
老人ホーム探しにおいて「ずっと居られる」場所を求めるのがNGな理由
はじめに
老人ホーム探しを始めた方が入居を検討しているご本人であれ、ご本人のご家族であれ、多くの方が頭に浮かぶ希望(理想)の一つが「入居して、最期まで居られる場所がいいな!」というものではないでしょうか?
実はこの希望を叶えることが入居希望者本人にとって100パーセント正解ではありません。「最期まで居られる」に固執し過ぎて老人ホーム探しをしたがために、ミスマッチの施設を選んでしまう方も多くいらっしゃいます。今日このコラムをご覧になった方には「最期まで居られる」という呪縛を解き放って老人ホーム探しを始めて欲しいのです。
老人ホームは終の棲家!?
「そもそも有料老人ホームって、最期までいれるところじゃないの?」という方がいらっしゃるかもしれません。皆様が浮かべる老人ホームという場所は、介護士と看護師が常勤している「特定施設入居者生活介護」の認可が降りている介護付き有料老人ホームという場所だと思います。
この介護付き有料老人ホームにおいて、入居をした後に最期を迎える方の比率は何パーセントだと思います?実は50パーセントです!(少し古いですが、平成25年度の有料老人ホーム・サービス付き高齢者むけ住宅に関する実態調査研究事業報告書が出典)
え!?半分!?残りの半分は!?
実は残りの方は病院に搬送されて病院で最期を迎えております。しかもこの調査は「死亡を理由にした退去者」を対象とした調査ですので、老人ホームから別の老人ホームに転居した人や、在宅に戻った人の人数は含まれておりません。死亡以外の転居まで含めると、実際老人ホームに入居してからそのホームで最期を迎える人の平均は30~40パーセントと推定できます。
じゃあ介護付きホームの中でも病院が併設しているところを探したらいいじゃない!?なんて言う方もいます。確かに探してみると医療法人のグループで同じ敷地内に病院と老人ホームがあるようなところもあります。
しかし、結局聞いてみると「老人ホームのために病院のベッドを空けてはいない」という返事が返ってきました。状況によっては別の病院を探して緊急搬送です。なにより結局病院に行くなら併設しても意味ないと思います。
とはいうもののクリニックが併設しているところや医療の実績が非常に豊富でスタッフが多いところは、通常の老人ホームよりも老人ホームの中でのお看取りの率は高いという事実はあります。
ただ問題点が2点あります。
1点目は費用が高い!です。人件費が高いのでその分利用料が上がります。夜間に看護師が勤務している介護付き老人ホーム自体が実は少数です。(看護師の最低配置基準は日中、9時~18時)夜間の看護師の人件費だけでかなり平均よりも費用は上がります。入居金1000万円を超える所だって平気でございます。
2点目は介護度が高い人が多い!絶え間ない医療や見守りがある老人ホームには、それを求める介助が必要な人が入ります。つまり寝たきりの方、重度の認知症の方です。友達を作りたい、お話し相手が欲しい、という方がなじめる環境でしょうか?
そもそも老人ホームはずっと居られる場所じゃないし、ずっと居られる可能性がある場所は料金が高いし、ミスマッチかもしれない。ということがお分かり頂けたかと思います。それでも老人ホーム探しの相談にお越し頂く本人の方は「ずっと居られる」にこだわってしまう方が多いです。
探しに来られるのがご家族の場合はもう少し柔軟な方も多いですが、「色々住み替えるのは大変なんじゃないか」という方は非常に多いです。データや理屈をお伝えするより、具体的にミスマッチの事例を出した方が分かりやすいかもしれません。
施設選びのミスマッチとは
施設のミスマッチが起こったAさんのケースです。
入居希望者Aさんは、76歳 女性 要支援1、一人暮らしです。
入居までの経緯は、自分の事は自分でできているが、腰が痛くなってきて家事が辛くなってきた。腰痛のせいで外出が減り話し相手がおらず寂しい気持ちもある。息子も仕事が忙しそうなのであまり頼りたくない。将来が不安なので色々老人ホーム探し、昔から気になっていたご自宅近くにある「お看取りまで面倒をみる」と謳っている介護付き有料老人ホームに入居しました。
Aさんは、結果としてどうなったでしょうか。
1か月と持たず退去となり、ご自宅に戻る事になりました。そして、老人ホーム探しは延期となりました。
退去の原因の一つは、介護付き有料老人ホームにおける生活の制限です。介護付き有料老人ホームはお部屋にお風呂がついていない所がほとんどで、共同となります。自分でお風呂に入ることができる方でも、週に2回と回数が決まっている所が多いです。
お風呂は一番事故が起こりやすい場所の一つのため、必ずスタッフが付き添い(手伝いが不必要な方は音を聞くだけでも)が必要なので、あまりにお風呂の回数が多いと人手が回らなくのです。Aさんが普段はお風呂に毎日入っていたため、気になる要素となりました。また、他の方と一緒に洗濯物を洗うため、一つ一つに名前を書かなればなりません。
退去の原因のもう一つは、Aさんが選んだ老人ホームの特徴がAさんに合っていなかった事です。介護付き有料老人ホームというくくりは同じでも、それぞれ様々な特徴があり、強み弱みがあります。Aさんが選んだ老人ホームは昔からある老人ホームで非常に実績が豊富です。
「介護の実績が豊富で、介助が多い方への介護が丁寧」なのが強みですが、「元気な入居者様は少ない」「ご飯にはこだわらない入居者様が多いので、力を入れていない」という弱みがあります。
Aさんが、普段からお風呂には週に2回くらいしか入っておらず、介助量が多くなっているご状況であればこの老人ホームを選んで正解だったかもしれません。しかしAさんはまだ自分の事は自分でできる、食事にも気を使っている、お話し相手が欲しいご状況だったためミスマッチになってしまったのです。
ミスマッチの真因は?
老人ホーム探しにおいて「ずっと居られる」という要素は大事ではありますが、優先事項の上の方にし過ぎると今回のようなミスマッチが起こります。老人ホーム探しで大事なのは「今困っているところを解決してくれるかどうか」という視点です。Aさんの「今」、困っている点は、どこでしょう?今の不安点をまとめると次のようになります。
①腰が痛い
②家事が辛い
③話し相手が居なく寂しい
④息子様が忙しく、頼れない
⑤将来が不安
という具合です。
④や⑤に関しては、「今」困っているところではなく「先々」困るかもしれないところなので、老人ホーム探しの優先度から下げていい部分です。①についても困ってはいますが、自宅でも医療保険のマッサージを使えば緩和ができるので、老人ホームに入って解決できるものでもありません。
絞り込むとAさんの老人ホーム探しの優先順位は②と③が大事です。②については介護付き老人ホームでは家事はお任せできるので、どこでも安心です。となると老人ホーム探しでAさんが注目すべきは③です。介護付き老人ホームの中でも、「元気な方が多い、もしくは元気な方向けのフロアがある」ところ選ぶべきですし、さらに「元気な方同士があつまるイベントを豊富に行っている」ところを選べば、より良いでしょう。
さらに介護付き老人ホームの中でもお部屋にお風呂が付いている所や、元気な方であれば共有のお風呂に自由に入っていい所を探し出せば文句なしと言えます。
今、困っているところを解決することが重要
「ずっと居られる」ではなく、「今困っているところを解決する」という視点を持てば、老人ホーム探しは、もっと幅が広がります。老人ホームでは無く、サービス付き高齢者向け住宅という選択肢です。サービス付き高齢者向け住宅は、スタッフは日中かならず常勤しており、オプションで食事がつくところが多いです。
お部屋にお風呂やキッチンをついているタイプも有料老人ホームより圧倒的に多いです。Aさんの困っている部分である②と③についてはサービス付き高齢者向け住宅で十分解決できる可能性を秘めています。
もちろんサービス付き高齢者向け住宅は介護付き有料老人ホームとくらべると、スタッフは少なく、介護度が上がった場合は、老人ホームに住み替える必要があるかもしれない環境です。でも、ずっとは居られませんが、今困っている点を解決できればそれで良いと思いませんか?
Aさんが今後サービス付き高齢者向け住宅に入った場合、介護度が上がって介護付き有料老人ホームに住み替え、さらに夜間も医療が必要になった場合は、夜間看護師がいる老人ホームか病院に住み替える事になります。大変だと思いますか?私は「その時々で求めている環境が変わる」だけだと思います。
それを面倒に思って「ずっと居られる」老人ホーム探しをすると、かなり高額の老人ホーム探しをする事になるか、Aさんのようなミスマッチが起こるかになる可能性が高いです。
ずっと居られなくたっていいのです!その時々の不安を解決してくれる場所に住み替えていくという視点で老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を探してみてください。
みんかい首都圏相談室 室長 浦口幸大
老人ホーム探し ご夫婦編
老人ホーム探し ご夫婦編
ご自分が夫婦ふたりで老人ホームに入居する事を想像してみて下さい。
皆さんはパートナーと同じ部屋でのご生活を希望されますか、それとも別々の部屋でのご生活を希望されますか。
高齢者の住まいの形態も多種多様化し、ご夫婦で入居できる老人ホームも増えてきました。
・ふたりとも自立されている元気なご夫婦
・どちらかおひとり介護が必要なご夫婦
・ふたりとも介護が必要なご夫婦
老人ホームに入居する時のご夫婦の状況によっては、同じ部屋で生活するか、別々の部屋で生活するかだけではなく、介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など様々な選択肢が出てきます。
また老人ホームにご入居される時の状況だけでなく、先々の心配事を考えなければなりません。介護度や年齢が高い方に合わせて考えておかないと必要な介護を受けられない、直ぐに移り住まなければならいという問題が出てくることもあります。一方で、そこだけ重視しすぎると自立度の高いお元気なパートナーに違う形で負担がかかってしまいます。
種別による基本的な特徴につきましては、こちらを参考に!
みんかいホームページ 「ホーム種別ごとの違い」
今回は、ご夫婦で同じ部屋に入居される場合のメリット・デメリットなどを紹介していきます。
ご夫婦で二人部屋に入るメリット
・長年連れ添ったパートナーとできる限り一緒に暮らせます。
介護が必要になってもプロのサービスを部屋で受けることができる。
・部屋によっては、寝室とリビングが区切れるほどのスペースがあり、水回りの生活設備が充実している場合(トイレ・洗面以外にミニキッチンや浴室付きのタイプあり)、ご自宅の様な空間で夫婦水入らずで過ごせるので、老人ホーム入居への抵抗感が薄れやすい。
・夜間や早朝の安心感自立の方が適切な判断が出来る状況であれば、夜間、早朝も何かあった場合に老人ホームの職員を呼ぶなどの対応が出来る。
・個室×2部屋で1人ずつ入居するより費用が抑えられるケースもある。
この様なメリットもありますが、逆にデメリットになる事も出てきます。
ご夫婦で二人部屋に入るデメリット
・自宅のような距離感で生活ができるとは限らない
部屋が広く、水回り設備が整っている二人部屋だとしても、ほとんどは自宅よりは狭くなります。平均的な二人部屋は、ホテルのツインルームのようなイメージです。よほど広くそれぞれの空間が確保できるような二人部屋は高額になる事も多く、選択肢は少ない。
・介護度が進むと住替えが必要な場合もある
お元気な自立の方向けの有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅によっては、二人部屋でどこまで介護を受けながら生活できるか異なる。将来どの状況まで二人部屋で生活が可能か事前に確認しておくと安心です。
また、パートナーが長期入院やお亡くなりになると二人部屋にひとりで住むことになるので、家賃が割高になります。二人部屋にひとりで住み続けるのか、個室に移るのか、それとも退去するのか決断しなければなりません。ひとりになった場合の住替え費用やルールも老人ホームによって異なる為、契約前に確認しておきましょう。
・生活リズムや必要なケアの違い
ご夫婦で介護度が異なる場合やその差が大きくなると多くの時間を共にする事がストレスの原因になることもある。例えば、自立の方と要介護3の方で二人部屋だった場合、就寝中の巡回などで自立の方の睡眠を妨げる可能性があります。要介護3の方に対して定期的にトイレの誘導やオムツの交換など職員が何度もお部屋を出入りするため、人の気配や話し声でしばしば目が覚めることになるかもしれません。そんな自立の方の様子を見て、介護される側もまた負担になる可能性もあります。
・老人ホームの中で老老介護になってしまうことも
常に一緒にいることで自立の方の負担が増えてくる可能性がある。折角、介護のプロがいる有料老人ホームにお金を払って入居したにも関わらず心配で常に付き添っていることになると心身ともに結局休まる時間が自宅にいた頃と変わらない。
実際に二人部屋から個室へ移られたご夫婦の例
~ 妻が認知症・夫が自立のケース ~
奥様はご主人様がいないと大声で呼ぶため部屋にご夫婦でいることが多く、また部屋を出てもご主人様以外は周りも認知症のご病気の方が多く話し相手もほとんどいない状況でした。
奥様が寝ている時や入浴の日など老人ホームの職員へ任せて外出するも、帰宅時間や外出先を報告しなければいけない窮屈な状況にご主人様は「自宅で老老介護だったので老人ホームに入居したが、自宅にいた時より精神的に辛い為、奥様を連れて自宅へ帰ると家族や老人ホームの方に仰っていました。
確かにご自宅で生活されていた時、奥様が平日デイサービスを利用されていたので、その間は気兼ねなくご主人様は自分の時間をもてる事もありました。とはいえ、ご主人様も夜間の介助は体力的に負担が大きく、ご自身の年齢的にも夫婦で介護が必要な状況になる前にと老人ホームの入居を決めた訳ですから、窮屈だけれどもその安心感は代えがたい事もわかっていらっしゃいます。
このご夫婦のように長く連れ添ったパートナーと同じお部屋をご希望される方もいらっしゃいますが、ご病気や身体状況によっては別々でご生活されることがお二人によって良い場合も多々あります。
介護が多く必要な方・自立の方とフロアや建物で生活空間が分かれているタイプの老人ホームもあります。近年では、同じ敷地内にお元気な自立の方向けのサービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホームの両方そろっているタイプなどもあります。
二人部屋以外の選択肢も
・コネクティングルーム
旅行でホテルを探していると目にする事のあるコネクティングルームですが、有料老人ホームでも非常に稀ですがコネクティングルームがある場合もあります。
隣り合わせの部屋を内側のコネクティングドアでつなげた続き部屋。廊下に出ずにお互いの部屋を行き来できる。それぞれの部屋は独立しているため、単独の部屋としても使用が可能。自立度が高くお元気なうちは2人で過ごせる夫婦部屋として利用し、介護が必要になり、生活スタイルが合わなくなった場合は、個室×2部屋として生活を続けられます。
・お元気なうちから敢えて別々の部屋で入居する
コネクティングドアで続き部屋になっていなくても新規オープンした老人ホームや空室の状況によって、隣同士のお部屋やお向かいのお部屋に入居することも可能。お互いの部屋や共有スペースのリビングで一緒に過ごすこともできます。中には、ご夫婦の身体状況等にもよりますが、個室×2部屋を「1部屋を寝室、もう1部屋をリビング」といったように柔軟な対応をしてもらえることもあります。
最後に
ご夫婦で老人ホーム入居となれば、迷われる点は、この他にもまだまだ出てくると思います。費用面を考え子供もいないし思い切って地方で探すか、子供達の住んでいる近くで探すか、持ち家はどうするのかなど。
近い将来介護が必要になっても建物内・敷地内・運営会社内で居室移動ができるなど自立度の高いお元気なうちから入居を検討しやすいように様々なタイプの有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が選択できるようになってきています。
ご夫婦で入居できる老人ホームも増えてきましたと冒頭でも申し上げましたが、それでも前提として老人ホームは個室(1人部屋)が基本的です。ご夫婦で一緒の部屋に入居できる『二人部屋』は少数です。更に老人ホームは、入居要件があります。介護認定「非該当(自立)~」「要支援~」「要介護以上」によって入居の可否や費用が変わってきます。
急遽老人ホームを探さなくてはいけない状況になると、数が少ない二人部屋でなおかつ自分たちに合った老人ホームを探すまでクリアすべき事が多々あります。やっといいところが見つかっても満室なんてことも。こういった事態を想定し早めに有料老人ホームの検討を始める事をお勧めします。
人事部 常田妙