みんかい | 民間介護施設紹介センター

老人ホーム探しにおいて「ずっと居られる」場所を求めるのがNGな理由

老人ホームで介護を受ける高齢女性と車椅子を押す介護職員
「終の棲家」とよく言いますが…

はじめに

老人ホーム探しを始めた方が入居を検討しているご本人であれ、ご本人のご家族であれ、多くの方が頭に浮かぶ希望(理想)の一つが「入居して、最期まで居られる場所がいいな!」というものではないでしょうか?

実はこの希望を叶えることが入居希望者本人にとって100パーセント正解ではありません。「最期まで居られる」に固執し過ぎて老人ホーム探しをしたがために、ミスマッチの施設を選んでしまう方も多くいらっしゃいます。今日このコラムをご覧になった方には「最期まで居られる」という呪縛を解き放って老人ホーム探しを始めて欲しいのです。

老人ホームは終の棲家!?

「そもそも有料老人ホームって、最期までいれるところじゃないの?」という方がいらっしゃるかもしれません。皆様が浮かべる老人ホームという場所は、介護士と看護師が常勤している「特定施設入居者生活介護」の認可が降りている介護付き有料老人ホームという場所だと思います。

この介護付き有料老人ホームにおいて、入居をした後に最期を迎える方の比率は何パーセントだと思います?実は50パーセントです!(少し古いですが、平成25年度の有料老人ホーム・サービス付き高齢者むけ住宅に関する実態調査研究事業報告書が出典)

驚くシニア夫婦

え!?半分!?残りの半分は!?

実は残りの方は病院に搬送されて病院で最期を迎えております。しかもこの調査は「死亡を理由にした退去者」を対象とした調査ですので、老人ホームから別の老人ホームに転居した人や、在宅に戻った人の人数は含まれておりません。死亡以外の転居まで含めると、実際老人ホームに入居してからそのホームで最期を迎える人の平均は30~40パーセントと推定できます。

じゃあ介護付きホームの中でも病院が併設しているところを探したらいいじゃない!?なんて言う方もいます。確かに探してみると医療法人のグループで同じ敷地内に病院と老人ホームがあるようなところもあります。

しかし、結局聞いてみると「老人ホームのために病院のベッドを空けてはいない」という返事が返ってきました。状況によっては別の病院を探して緊急搬送です。なにより結局病院に行くなら併設しても意味ないと思います。

とはいうもののクリニックが併設しているところや医療の実績が非常に豊富でスタッフが多いところは、通常の老人ホームよりも老人ホームの中でのお看取りの率は高いという事実はあります。

ただ問題点が2点あります。
1点目は費用が高い!です。人件費が高いのでその分利用料が上がります。夜間に看護師が勤務している介護付き老人ホーム自体が実は少数です。(看護師の最低配置基準は日中、9時~18時)夜間の看護師の人件費だけでかなり平均よりも費用は上がります。入居金1000万円を超える所だって平気でございます。

2点目は介護度が高い人が多い!絶え間ない医療や見守りがある老人ホームには、それを求める介助が必要な人が入ります。つまり寝たきりの方、重度の認知症の方です。友達を作りたい、お話し相手が欲しい、という方がなじめる環境でしょうか?

そもそも老人ホームはずっと居られる場所じゃないし、ずっと居られる可能性がある場所は料金が高いし、ミスマッチかもしれない。ということがお分かり頂けたかと思います。それでも老人ホーム探しの相談にお越し頂く本人の方は「ずっと居られる」にこだわってしまう方が多いです。

探しに来られるのがご家族の場合はもう少し柔軟な方も多いですが、「色々住み替えるのは大変なんじゃないか」という方は非常に多いです。データや理屈をお伝えするより、具体的にミスマッチの事例を出した方が分かりやすいかもしれません。

施設選びのミスマッチとは

施設のミスマッチが起こったAさんのケースです。

入居希望者Aさんは、76歳 女性 要支援1、一人暮らしです。
入居までの経緯は、自分の事は自分でできているが、腰が痛くなってきて家事が辛くなってきた。腰痛のせいで外出が減り話し相手がおらず寂しい気持ちもある。息子も仕事が忙しそうなのであまり頼りたくない。将来が不安なので色々老人ホーム探し、昔から気になっていたご自宅近くにある「お看取りまで面倒をみる」と謳っている介護付き有料老人ホームに入居しました。

Aさんは、結果としてどうなったでしょうか。
1か月と持たず退去となり、ご自宅に戻る事になりました。そして、老人ホーム探しは延期となりました。

退去の原因の一つは、介護付き有料老人ホームにおける生活の制限です。介護付き有料老人ホームはお部屋にお風呂がついていない所がほとんどで、共同となります。自分でお風呂に入ることができる方でも、週に2回と回数が決まっている所が多いです。

お風呂は一番事故が起こりやすい場所の一つのため、必ずスタッフが付き添い(手伝いが不必要な方は音を聞くだけでも)が必要なので、あまりにお風呂の回数が多いと人手が回らなくのです。Aさんが普段はお風呂に毎日入っていたため、気になる要素となりました。また、他の方と一緒に洗濯物を洗うため、一つ一つに名前を書かなればなりません。

退去の原因のもう一つは、Aさんが選んだ老人ホームの特徴がAさんに合っていなかった事です。介護付き有料老人ホームというくくりは同じでも、それぞれ様々な特徴があり、強み弱みがあります。Aさんが選んだ老人ホームは昔からある老人ホームで非常に実績が豊富です。

「介護の実績が豊富で、介助が多い方への介護が丁寧」なのが強みですが、「元気な入居者様は少ない」「ご飯にはこだわらない入居者様が多いので、力を入れていない」という弱みがあります。

Aさんが、普段からお風呂には週に2回くらいしか入っておらず、介助量が多くなっているご状況であればこの老人ホームを選んで正解だったかもしれません。しかしAさんはまだ自分の事は自分でできる、食事にも気を使っている、お話し相手が欲しいご状況だったためミスマッチになってしまったのです。

ミスマッチの真因は?

老人ホーム探しにおいて「ずっと居られる」という要素は大事ではありますが、優先事項の上の方にし過ぎると今回のようなミスマッチが起こります。老人ホーム探しで大事なのは「今困っているところを解決してくれるかどうか」という視点です。Aさんの「今」、困っている点は、どこでしょう?今の不安点をまとめると次のようになります。

①腰が痛い
②家事が辛い
③話し相手が居なく寂しい
④息子様が忙しく、頼れない
⑤将来が不安

という具合です。
④や⑤に関しては、「今」困っているところではなく「先々」困るかもしれないところなので、老人ホーム探しの優先度から下げていい部分です。①についても困ってはいますが、自宅でも医療保険のマッサージを使えば緩和ができるので、老人ホームに入って解決できるものでもありません。

絞り込むとAさんの老人ホーム探しの優先順位は②と③が大事です。②については介護付き老人ホームでは家事はお任せできるので、どこでも安心です。となると老人ホーム探しでAさんが注目すべきは③です。介護付き老人ホームの中でも、「元気な方が多い、もしくは元気な方向けのフロアがある」ところ選ぶべきですし、さらに「元気な方同士があつまるイベントを豊富に行っている」ところを選べば、より良いでしょう。

さらに介護付き老人ホームの中でもお部屋にお風呂が付いている所や、元気な方であれば共有のお風呂に自由に入っていい所を探し出せば文句なしと言えます。

楽しそうにお喋りをするご婦人たち

今、困っているところを解決することが重要

「ずっと居られる」ではなく、「今困っているところを解決する」という視点を持てば、老人ホーム探しは、もっと幅が広がります。老人ホームでは無く、サービス付き高齢者向け住宅という選択肢です。サービス付き高齢者向け住宅は、スタッフは日中かならず常勤しており、オプションで食事がつくところが多いです。

お部屋にお風呂やキッチンをついているタイプも有料老人ホームより圧倒的に多いです。Aさんの困っている部分である②と③についてはサービス付き高齢者向け住宅で十分解決できる可能性を秘めています。

もちろんサービス付き高齢者向け住宅は介護付き有料老人ホームとくらべると、スタッフは少なく、介護度が上がった場合は、老人ホームに住み替える必要があるかもしれない環境です。でも、ずっとは居られませんが、今困っている点を解決できればそれで良いと思いませんか? 

Aさんが今後サービス付き高齢者向け住宅に入った場合、介護度が上がって介護付き有料老人ホームに住み替え、さらに夜間も医療が必要になった場合は、夜間看護師がいる老人ホームか病院に住み替える事になります。大変だと思いますか?私は「その時々で求めている環境が変わる」だけだと思います。

それを面倒に思って「ずっと居られる」老人ホーム探しをすると、かなり高額の老人ホーム探しをする事になるか、Aさんのようなミスマッチが起こるかになる可能性が高いです。

ずっと居られなくたっていいのです!その時々の不安を解決してくれる場所に住み替えていくという視点で老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を探してみてください。

みんかい首都圏相談室 室長 浦口幸大