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ペットと共に入居できるホームってありますか?
ペットと共に入居できるホームってありますか?
先日テレビを観ていたら「ペットを飼ったら母の認知症状が無くなりました!」という情報番組が放送されていて、2年ほど前に私が担当したお客様を思い返しました。
そのご家庭の環境は、老夫婦2人暮らしで息子さんが遠方に住んでいました。
ちょうど1年ほど前にお父様が突然の脳溢血で他界されてしまい、その後はお母様の独居生活となっていたそうです。コロナ禍ということもあって息子さんは思うようにお母様と会うこともできず、電話で様子を伺うことが精いっぱいだったようです。
そんな時、近所の方から「お母さんの様子がおかしいから出来たら見に来てあげて欲しい」と連絡をもらい、急遽PCR検査をして「コロナ陰性」の確認をして実家に戻ったところ、ちょっとしたゴミ屋敷になっていました。でもお母様は大喜びで、話をしていても認知症のような言動や行動は見られず、家の中の掃除をはじめたりして息子さんを迎え入れるなどいつものお母様でした。
電話をくれた近所の奥様に話を聞くと「新聞がポストに溜まっているし、たまに顔を合わせて挨拶しても上の空だし・・いつものお母さんと様子が違って心配していたのよ」とのこと。そこで近くの地域包括支援センターに行って相談したところ、「それは話し相手がいなく、いままでお父様が居た時のように食事や掃除、洗濯など気をまわすことが無くなってしまってボーっとする時間が多くなり脳を働かせることがめっきり減ったことが原因なのではないでしょうか?それは認知症の兆候ですよ。」と言われたそうです。
その息子さんからしてみたら、「自分と話をしている時は、全くそんな感じは受けないし、一緒に出掛けても近所の方々にご挨拶も出来ているし・・・何かの間違いなのではないか?」と思うほどだったそうですが、帰省した時のゴミ屋敷のような状態などを振り返ると「やっぱり変だ」という考えに行きついたそうです。
そこで考えたのが犬を飼うことだったそうです。元々お母様は世話焼きだし何より動物が好きで以前も飼っていたことがあったそうです。犬の世話をさせることで「頼られている」「自分が世話をしなくては」という責任感が生まれ何事にも意欲の向上をもたらしてくれる・・とどこかの本に書いてあったそうです。
結果、大成功だったらしく近所の方からも「いつも元気で楽しそうよ」と聞き、毎日のお散歩や食事やお風呂などのお世話で忙しくしているお母様が犬の近況報告を電話で長々とされることが最近は苦痛になってしまって・・と笑っておられました。
そんな中、そのお母様が脚立から足を踏み外して転倒してしまい腰を強打、検査の結果、腰や肩など複数個所の骨折が見つかり入院することになったそうです。
幸い、愛犬の世話は世話焼きの近所の方が請け負ってくれたのですが、そのことへの申し訳ない気持ちと、愛犬に淋しい思いさせてしまっているのでは・・という心配な気持ちが重なって、病院でのリハビリも投げ出して「早く帰りたい、早く帰して欲しい・・」と駄々をこねる始末だそうです。
そこで息子さんが見かねて私どもの所に相談に来られたという経緯でした。
ご要望は「ペットと入居ができる老人ホーム」です。
最近ではアニマルセラピーということを取り入れている有料老人ホームも少なからずあり、定期的にホームのマスコット的な犬や猫がホームを訪れたり、またはホーム内で飼っていたりします。これには
【リハビリ補助】~犬と一緒に散歩がしたい・・など歩行訓練の動機づけになる
【意欲向上】【役割】~この子(犬や猫)の世話を私がしなければ・・という意欲と責任
【精神の安定】~動物に触れることでリラックス状態をもたらす神経を刺激し、心の安定を図る
などに効果があると実証されていて、攻撃的な症状(言動や行動)が見られた人でも、その症状が緩和されたという報告もあるようです。
ただ、今回のケースでは事情が違います。今まで一緒に暮らしていた犬と共に入居できる有料老人ホーム探しです。
このお母様が住む大阪エリアではペット可の有料老人ホームは数か所ありますが、ホーム全体のうちの数パーセントです。
その数少ない「ペット共生可能な有料老人ホーム」の中でも注意しなければならないポイントがありました。
①ペットが楽しく衛生的に生活できる環境は整っているのか?
ドッグランや外出した際の「足洗い場」、「猫用のとまり木」があるのか。
②ホームの中でのペットの行動範囲は?
ペットは飼ってもいいけど部屋の中だけにして下さい・・と言われてしまうのか、それとも共用部分や中庭などに 連れてゆけるのか?
③契約書の規定はどうなっているのか?入居の際の保証金、原状回復費用の取り決めなど。
ホームによっては毎月の管理費(ペット管理料など)が上乗せされることもあります。
そして最大の問題は、
④入居される人(対象者)がペットのお世話をしなくなった時、若しくはお世話することができなくなってしまった時にどうなるのか?ということです。
有料老人ホームによってはお世話をしてくれるところもありますが、かなり少数です。
※お世話をしてくれるが別途料金がかかります。
お世話をしてくれない、若しくはそこまで責任は持てない・・というホームがほとんどですが、ではその際にはどうなるのでしょうか?
①保証人さんが引き取る~これがほとんどです。
②ホーム内で育てる~まず期待できそうにありません。
③ペットシッターに頼む~それなりに費用がかかります。
というように、入居する有料老人ホームによって対応はまちまちですが、どこのホームでも統一する見解として、お世話ができるうちは一緒に住むことができたとしても、身体的な問題、認知症的な問題によりお世話が難しくなった時のことも考えて「その場合はどうするのですか?」という問題を突き付けられることになりますので、考えをまとめておくことが肝心です。
参考
近年、核家族化による需要の高まりから余生はペットと一緒に過ごしたいと願う高齢者は増加しています。しかしながらその受け皿は決して多くありません。
有料老人ホームは他の方々との共同生活です。そこには動物アレルギーを持っている入居者がいるかもしれません。入居者だけではなく、そこで働く職員の方がアレルギーを持っているかもしれません。
また、人手不足が叫ばれている中、職員は入居者の方々へのケアで精一杯なため、ペットのお世話まで手が回らない・・なんてことも考えられるため、いくらニーズがあってもペット可に踏み切れない“大人の事情”があるようです。
余談ですが「犬の認知症」も最近問題視されているようです。
愛犬の歩き方がおかしい・体が傾く・痙攣するなど脳神経系の病気を患うことや、寝てばかり・目や耳の衰え・反応が鈍い、に始まり、次第に・夜鳴き・徘徊・旋回行動などの異常な行動がみられるようになるそうです。
人の「アルツハイマー型認知症」に似た症状だそうです。
私の実家でも今年で14歳になる犬を飼っています。もう立派なお年寄りです。
我が家ではこの子で3代目になるのですが白内障になり家じゅうの壁や物に頭をぶつけてヨタヨタ歩いています。あまり動かず寝ていることも多くなりました。
この子は生まれたばかりの時に母が近所の方からもらい受け、高島屋の紙袋に入れられて我が家にやってきた犬なのですが、ヨークシャーテリアと別種との間にできた子でした。だから顔はテリアそのままでも体は一般的なテリアの2倍ほどあり初めて動物病院に行ったとき先生が書いたカルテを覗き見したのですが「犬種:ヨークシャーテリア」とは書いてもらえず「犬種:お化けテリア」とされていました。
それが可愛いのなんの・・・。とはいえその子も認知症になるかもしれませんし、一緒に生活している母や父も最近物忘れが目立ってきたように感じています。
そうなった時のことを姉としっかり考えておかなければなりません。
余談はさておき、上記のエピソードのお母様の話に戻ります。
お母様はその後、みんかいでご紹介させて頂いた、愛犬と一緒に暮らせるホームに無事ご入居をなさいました。ご相談者様と信頼できる介護スタッフに支えられながら、愛犬のお世話を日課として毎日楽しく過ごされているそうです。
ペット共生型有料老人ホームがもっと世の中に浸透することを願うばかりですが、まだまだ問題は山積みのようです。そのような中で「どうしても!」というニーズにお応えするべく我々は日々情報を集めておりますので、お気軽にご相談いただけたら有難いです。
みんかい 渡辺 大志
特養ホームに異変あり 特別養護老人ホームに「多床室」が増えないわけ
特養ホームに異変あり 特別養護老人ホームに「多床室」が増えないわけ
特養待機者の多くは「多床室」
しかし、新規のほとんどが「個室」
待機者が多いのにも関わらず、「多床室」ができないのはなぜか
平成29年度、「厚生労働省特別養護老人ホーム入居申し込み者の概況」によると、特別養護老人ホーム(以下、特養)の入所申込者は、全国で29万2千人。平成27年に、特養の入居要件が「要介護1以上から要介護3以上」に引き上げられたことにより待機者の数は以前より減少しているものの、相変わらず多くの方が待機をしている状況です。
しかし、巷の特養を取材してみると「ユニット型個室」では「空室」が目立つところもあります。ある自治体が行った調査では、特養の待機者の約50%が「費用の安い多床室」を希望していることが報告されています。にもかかわらず、なぜ従来型の「多床室」が増えないのでしょうか?
ユニット型の利用料は、多床室の約2倍
国は、入居者の尊厳を重視したケアを実現するために全室個室・ユニットケアを推奨し、2025年までにユニット型の割合を70%にするという目標を掲げていまます。しかし、「ユニット型個室」は、「多床室」に比べ居住費が高く費用の負担が大きいため「多床室」限定で待機している人が多いのが実状です。
首都圏の要介護者の受け皿として施設が増えている埼玉県内のある特養の一ヶ月の利用料は、第3段階の要介護5で、ユニット型は129,737円、多床室は68,179円(加算、実費負担は除く)、約2倍ほどの差があります。ユニット型の特養は、ご自身の年金受給額の範囲内で入居できる施設を希望する方や、低所得の方には入居しずらい金額でしょう。
改善策は提示されたものの
東京都では、利用者負担能力への配慮を望む声を受け、平成22年度から新規のユニット型での整備を基本としつつ、定員の3割以内の多床室への補助を打ち出しました。しかし、多床室を整備するための補助を受けるためには、左記の条件を示しています。
【条件1】:地域における特別な事情があり、合理的な理由があること。また、協議書提出時に区市町村長名による意見書の提出が必要。
【条件2】:多床室は増加定員(特養+併設ショート)の3割が上限。ただし、従来型個室は、3割制限の対象外。ただし、基本はユニット型整備。
【条件3】:条件2に加え特養部分の増加定員の3割が上限。
さらに、ユニット型と従来型(多床室)の両方を整備する場合には、別々に認可・指定を受けること。また、地域密着型の特養は都補助の対象外としています。ここだけを見ると、「行政的には『多床室』は作りたくないのかしら?」と思ってしまいます。
多床室が増えないわけは国の方針と介護報酬の安さ?
いくつかの特養に「多床室を増床、または、新規で多床室を作る計画はありますか」と言う質問をしてみました。すると、ほとんどの回答が「計画はありません」でした。その理由を聞いてみたところ
・多床室は介護報酬が低い。
多床室介護報酬基本単価:890単位(要介護3)、ユニット型介護報酬基本単価:903単位(要介護3)。
・自治体の公募が「ユニット型」のみで、従来型(多床室)の公募がないため新規で開設できない。
ほとんどの回答が右記の2点でした。
ほかには、2040年を境に高齢者数が減ることを考えると、数十億の借り入れをして介護報酬の少ない多床室を新設したところで、返済できるかが不安。多床室の入居者は、家族との関係が希薄な方も多く、家族協力が見込めないため、職員の負担が増える。混合型(ユニット型+多床室)で申請を出したが、ユニット型のみにしてほしいと自治体から指示があった。という声もありました。
特養の多床室難民にならないために
国はプライバシーや個人の尊厳を守ることに重点を置いた、ユニット型個室特養の整備を推進しています。プライバシーが保たれた個室という空間は、自宅で生活する快適さには及ばないものの、それに近い環境で生活できるでしょう。しかし、ユニット型は利用料が高く、肝心な利用料が支払えなければ入居することすらできません。
さらに、今年(2021年)の8月から、低所得者への補助給付が軽減され、食費が今までの約2倍となったばかりです。
参考:特養ホームに異変あり 特養入所者が支払う1ヶ月の食費が一気に2倍以上の値上がりに
2000年の介護保険制度のスタート時には、特養の食費と居住費は保険料から支払われていて、自己負担貴は0円でした。しかし、その後2005年には、食費と居住費が全額自己負担(住民税非課税世帯には補助給付)。その後も資産がある人は補助給付の対象外になるなど制度の見直しが行われていて、介護保険制度の改正の度に、特養の補助給付が見直されることになれば、利用者の負担は増すことになります。
セイフティーネットの役割も担っている特養ですが、国の方針が変わらない限り、この先、多床室が増えることは難しそうです。
介護はいつ必要になるか解かりません。多床室難民にならないためにも、元気なうちから老後のライフプランを考えておいた方が良さそうです。
文:介護ライター黒川玲子
株式会社ケー・アール・プランニング:https://kurokawa-reiko.com/
高齢者身元保証サービス ~身元保証って何?~ ご利用事例 (施設入居の場合)
高齢者身元保証サービス ~身元保証って何?~ ご利用事例 (施設入居の場合)
前回は在宅生活の身元保証の事例をご紹介しました。今回は施設入居されている方の事例をご紹介します。その前に、施設に入居する際の身元保証の現状についてお話します。
平成29年にみずほ情報総研(現みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)が行った厚生労働省の調査委託事業によると、高齢者が介護施設に入居する際、身元保証人がいない場合は受け入れを拒否する施設が3割に上ることが分かりました。
この調査では、身元保証人に求める役割として「緊急時(事故等)の連絡先」、「亡くなった場合のご遺体、遺品の引取り」、「入院する場合の入院 手続き(入院契約)」、「施設利用料金の支払、滞納の場合の保証」の回答が多くありました。ご家族がいる場合は、ご家族に身元保証人になってもらうことが一般的ですが、子どもや親族と疎遠、子どもが遠方に住んでいる、高齢で身元保証人になれないなどの場合は、身元保証会社を利用することが多くなっています。
これまでは家族が身元保証人の役割を担ってきましたが、最近は子どもに迷惑をかけたくない、それならお金を払って身元保証人になってくれるところにお願いしたいと考えられる方も増えてきています。またこれから身元保証会社を検討される方でお子さまがいない又は親族と疎遠な場合は、亡くなった後の事も合わせて検討されると良いでしょう。
身元保証だけでは亡くなった後のことはカバー出来ませんので別途備えておく必要があります。ご葬儀やお墓のこと、資産をどうしたいのか(お世話になった人や団体への寄付など)を決め、遺言や死後事務委任契約を締結しておくと安心できます。
身元保証会社のオプションでも用意されている場合があるので担当者に相談したり、弁護士や行政書士などの専門家に相談して、自分はどうしたいのか、その想いを実現する法的手続きを元気なうちに備えておくのが良いでしょう。
■ 身元保証エピソード(施設)
・80代 女性
ご子息は海外勤務の為、施設入居に際し緊急連絡先となる身元保証人をお願いしたいと依頼を受け、身元保証を開始しました。施設入居のきっかけは、今まで住んでいた賃貸住宅が老朽化により建て替えとなったことです。4階の住居はエレベーターがなく高齢者が移動するには大変不便でした。
施設入居の準備は、ケアマネジャーやヘルパーの方が手伝ってくれ無事施設へ入居できましたが、賃貸住宅の退去は管理会社との立合いと書類への署名が必要でした。そこでご本人から委任状を頂き代理で対応しました。
施設に入居して間もなく、施設の担当ケアマネジャーから洋服や下着が全然足りないので、対応してくれないかと連絡がありました。施設の職員や入居前のケアマネジャーに確認したところ、施設入居前にもう必要ないとご本人が捨ててしまったそうです。
施設の職員に必要な衣類や下着、サイズ、好みの色などを確認してもらい、ご子息に相談し代理で購入することにしました。その後自分で洋服は選びたいと希望があったので、現在は高齢者衣類を扱っている通販のカタログを施設の担当ケアマネジャーと一緒に見て相談しながら選んで頂いています。「『こっちの洋服が良いかな?』って話しながら決めたんですよ。」と施設の担当ケアマネジャーは注文の依頼の際にその時のご様子を教えてくれます。その話を伺うと、施設の方の親身な対応にこちらも安心します。
そのご様子などをご子息にもお伝えすると、「母が施設の方にも親切にして頂き、楽しく過ごしているようで感謝しています。」とご子息も安心されているお返事を頂きます。当初、ご子息は事務的な対応でしたが、定期的に私どもからお母様のご様子やサポート状況などをご連絡していたところ、最近はお母様の事を気遣うメールを頂く様になりました。
ご子息が今度訪問の時に母の好きな白い粉の付いた干し柿を差し入れして欲しいと仰っていたので、施設の担当ケアマネジャーに相談し差し入れさせて頂きました。ご本人はなぜ自分の好物を知っているの、と驚いていましたが息子様からお聞きしたことを伝えると、「あの子がそんなことを言っていたの」と顔をほころばされていました。
【施設入居前のサポート】
・賃貸住宅退去立合い
・在宅時ケアマネジャーや施設の担当ケアマネジャーとの連絡・調整
【入居後~現在のサポート】
・緊急連絡先対応
・緊急時対応(緊急受診)
・緊急受診後検査の為、病院同行
・眼科通院同行、薬受け取り
・衣類、日用品の代理購入、施設お届け
・施設の担当ケアマネジャー、ご子息との連絡
【身元保証会社を選ぶ際のポイント】
身元保証には、監督官庁がなく、法的制度がありません。その為、ルールや基準はなく、サービスの内容は千差万別です。会社によりサービスの内容が違う、割高、知らない間に身元保証以外の契約がされていたなど苦情も相次いでいます。
また身元保証の業務の他にも事業を行っている会社が身元保証を行っている場合もあり、高齢者の身元保証についてよく知らない人がサービスを提供していることもあります。
このように身元保証会社が提供するサービスの比較が難しく、契約内容も明確でない場合があります。
家族の代わりに色々サポートしてくれる身元保証ですから、納得して安心できる所にお願いしたいですよね。
身元保証を選ぶ際には、身元保証会社を複数社比較し、それぞれの契約内容を料金、サービスの内容等に分けて何回か説明を受け、十分理解することが重要です。その為には地域包括支援センター又は親族に相談し、ダブルチェックすると良いでしょう。
NPO法人都民シルバーサポートセンター
東京都世田谷区太子堂1丁目12-39 三軒茶屋堀商ビル3階
フリーダイヤル:0800-222-3008
ホームページ:https://tsugusapo.com/
特養ホームに異変あり 特養入所者が支払う1ヶ月の食費が一気に2倍以上の値上がりに
特養ホームに異変あり
特養入所者が支払う1ヶ月の食費が一気に2倍以上の値上がりに
第3段階②の該当者に起きた悲劇
毎月 支払う食費が21,300円も負担増に(30日換算)
「毎月2万円以上も食費が値上げになったなんて。親の年金だけじゃ支払えません!」全国各地の特別養護老人ホーム(以下、特養という)に入所中のご家族から、悲鳴にも似た声が聞こえてきていることをご存じでしょうか?
昨年8月に施行された介護保険制度の見直しにより、特養を含む介護保険施設やショートステイの食費を補助する「補足給付」が見直され、一部の利用者が支払う食費の自己負担額が大幅に増えました。
以前のコラム「特養ホームに異変あり。資産があると、たとえ、収入が少なくても、特養ホームに入れない!?」では、昨年の7月までは補足給付の対象者だった方が、8月の補足給付の資産要件(預貯金等)の見直しにより預貯金額が基準を超えてしまったため、負担限度額の認定対象外となり、特養への入所を諦めた方の事例を取り上げました。
国は、「在宅で介護生活をしている方との負担の公平性をさらに高めるため」と理解を求めていますが、対象となった家族からは、困惑の声や支払いに関する相談が上がっています。今回は、毎月の食費が一気に2倍以上に増えたことで、特養の現場で何が起こっているのかをリサーチしました。
1ヶ月の食費が一気に2倍に!
今回、食費の補助給付の見直しの対象となったのは新設された所得区分「第3段階②」に該当する方です。世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+その他の合計所得金額が120万円超。資産が単身で500万円以下、夫婦で1,500万円以下の要件を満たす方です。厚生労働省によると対象者は全国で約27万人と発表しています。
では、実際にどのくらいの負担増になるのでしょうか。昨年7月までは、特養に支払う食費は1日あたり650円でしたが、8月からは1,360円と約2・1倍になりました。これを1ヶ月(30日)で計算すると40,800円。毎月支払う食費は21,300円も跳ね上がり、年間で換算すると約26万円。第3段階②の該当者の2ヶ月分の年金に相当する金額です。
ショートステイにおいては、第2段階、第3段階①も食費の値上げの対象となりました。第2段階は390円から600円。第3段階①は650円から1,000円。第3段階②は650円から1,300円に変更となりました。特養に併設されているショートステイは民間が運営するショートステイより滞在費が安いため、在宅で介護をしている家族にとっては利用しやすいサービスでした。
昨年の4月には、多くのデイサービスで食費の値上げが行われたばかりで、8月にはショートステイの食費まで値上げになり、在宅で介護を受けている人も負担増となりました。
ちなみに。補足給付対象外の第4段階の食費・居住費については、各施設で設定する金額になりますが、食費の基準金額についても、1日あたり1,392円から1,445円に引き上げられました。
入所者からは悲鳴の声、現場では混乱と困惑
「親の年金だけでは支払えません。どうしたらいいのでしょうか?」施設には、補足給付見直しの対象となった入所者の家族から、多くの相談が寄せられたそうです。
なかには、「いきなり1ヶ月の食費が2万円以上も値上がりするってどうゆうことですか!」と、大変険しい口調で問い合わせる方や、事前に、食費の値上げになることを口頭で説明をし、ご理解いただいたはずだったにも関わらず、「今月の利用料間違っていませんか?」と請求書を見て連絡をしてくるご家族もいたそうです。
ある特養では、
―今回の食費の値上げの対象となったご家族からは、「どうして?」「なぜ?」というお問い合わせをいただきました。介護保険の改正に伴う値上げであり、施設が決めたことではないことをご説明すると、ほとんどの方が「仕方がないですね」とご納得いただくことができましたが、ある方は「母はもともと少食で、いつも食事は残していると聞いています。食事の量を半分にして、その分食費も半分にしてほしい」というご意見もありました。
また、別のご家族からは、「支払いを分割にしてほしい」というご相談もありましたが、どちらも丁寧にご説明し、ご納得いただきました。改正直後は、多くの特養事務担当者は電話対応に追われていたようです。
利用料の支払いが厳しくなった入所者は?
では、食費の値上げにより支払いが厳しくなった入所者はどうしたのでしょうか?
年金額だけでは支払えず預貯金もないため「退去します」と連絡あったご家族のケースです。入居していた特養が、「利用者負担軽減制度事業」(※)を実施していたため、役所へ相談へ行くようにすすめたところ、要件を満たし制度の対象者と認められたため退去せずに、特養での生活を続けられることになりました。
また、ユニット型と多床室を運営している特養では、支払いが厳しいと申し出た入所者へ多床室への移動を提案したそうです。ご家族から了解をいただいた入所者に対しては、多床室への移動までの期間、食費の請求額は変更せず、差額分は施設が負担しているそうです。
(※)社会福祉法人等による生計困難者等に対する介護保険サービスに係る利用者負担額軽減事業。決められた要件をすべて満たす者のうち、生活が困難な者として市区町村が認める者に対して軽減措置を行う事業。
家族がどこまで理解できているかという不安も
従来型個室と多床室を運営している特養ではこんな事例もありました。
第3段階②に該当した方のほかに、資産要件の変更に該当した方がいらっしゃいました。今までは第3段階で負担限度額の対象者でしたが、預貯金額が1,500万円を超えていたため第4段階に変更になり負担限度額の対象から外れてしまいました。該当した方は、居住費、食費の補足給付が受けられなくなったことで、月額利用料は約55,000円の負担増となりました。
特養の担当者は「対象となった方のご家族は、独居で生活されている配偶者の方のみです。ご説明はいたしましたが、今回の値上げをどこまでご理解できているか不安です」と、利用料が増えたことで、在宅で生活をされている配偶者のことも心配していました。
私が取材したかぎりでは、退去された入所者はいませんでしたが、多くのご家族が新たに多床室への申し込みをしていました。しかし、いつ入居の順番が回ってくるかはわかりません。増額分を預貯金を取り崩して支払っているご家族からは、「いつまで貯金がもつか不安」という声が多く聞かれました。
どこまで増える?介護保険の負担増
2000年、介護保険が発足した当初、特養入所者の食費と居住費は介護保険の給付に含まれていました。つまり、実質0円でした。ところが、2005年「ホテル宿泊時には食費と部屋代も支払うのだから同じように支払うべき」との考え方から、全額自己負担となりました。しかし、「負担額が大きすぎる」ということから、低所得者(住民税非課税世帯)への負担を軽減するために導入されたのが「補足給付」です。
その後、2014年には「資産要件」が加わり、負担限度額認定申請時(更新時も含む)には、銀行の預貯金額がわかる通帳のコピーや有価証券のコピー、タンス預金の額までを提出しなくてはならなくなりました。タンス預金の額を申請したら、補足給付から外れてしまう方が、正直にタンス預金の金額を提出するとは思えませんが、資産要件にはタンス預金まで含まれています。
さらに、改正前までは世帯分離をすることで、夫婦どちらかの年金額の低い方は補足給付が受けられていました。当時、多くの入所者がこの制度を利用するために、世帯分離をして特養に住所を移していました。「特養の利用料を安くする裏技」と呼ばれていたほどです。しかし、2014年の改正により課税世帯であれば補足給付の対象から外されました。
例えば、入所者の年金収入額の合計が80万円以下だとしても、配偶者の年金収入額が155万円以上で課税世帯であれば、補足給付は受けられなくなったのです。このように改正のたびに、入所者の負担は増えているのです。
2021年の介護保険改正概要には「ケアマネジメント有料化」「訪問介護における生活援助を介護報酬からはずす」「介護保険料の負担年齢を40歳から30歳以上に引き下げ」などが含まれていました。しかし、新型コロナウイルスの影響を鑑み先送りされましたが、次回は改正されることになるかもしれません。
今後も高齢者の数は増え続け、増大する介護事業費の抑制のため、利用者の負担が増えてくるでしょう。今年の4月からは一定以上の年収のある高齢者の病院の窓口負担の引き上げが決定しています。
「金の切れ目が介護の切れ目」にならないよう。自助努力が必要な時代になったようです。
文:介護ライター黒川玲子
株式会社ケー・アール・プランニング
新型コロナウイルス(COVID-19)における現場感
新型コロナウイルス(COVID-19)における現場感
現在、猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)により、世の中は大混乱に陥っています。
当然、高齢者を支える介護業界でも大きな問題となっており至る場所、至る状況において支障をきたしていることが伺えます。
我々がご紹介する「有料老人ホーム」でも例外ではなく、状況は毎日、猫の目のようにめまぐるしく変化していますが、その対応は各ホームの運営会社の考え方によって違いがあるようです。
「どのような対応をしているのか?」というのも今の時期にご入居を選択される方々の有料老人ホーム選びの指標になっているようです。
そこで少しまとめてみました。
新型コロナウイルス対策 老人ホームの傾向
【ご入居の制限】
・完全に新規の受け入れを停止しているところもあります(数は少ないようです)
・新規の受け入れを行っていますが、入居2週間ほど前から検温を行い、入居直前にはPCR検査を実施し陰性証明が必須のところもあります(大手企業が運営する有料老人ホームで多く見受けられます)
・特に制限なし
などが挙げられます。
【ご家族の面会】
・最少人数にて短時間での面会が可能(1組/約15~20分程度)~介護付き/住宅型/サービス付き高齢者向け住宅など「全種別」に共通
※ワクチン接種を2回行ったご家族様に限る
・ご家族様はエントランス(外側)迄。館内のエントランス(内側)ガラス越しにてご本人様と面会~全種別共通
・有料老人ホームが用意するタブレットにてオンライン面会(10~15分程度)~全種別共通
・完全に面会禁止~介護付き有料老人ホームに多く見られます
・外で会う分には制限なし。ただし、帰館後の検温と消毒(うがい/手洗い)の徹底~サービス付き高齢者向け住宅に多いようです。
など、ホームによって様々です。
【入居中のご対象者様の外出】
・行かなければならない病院への通院時のみ可能~介護付き有料老人ホームに多いようです
・完全禁止、若しくはできる限り自粛を促される~全種別共通
・特に制限はかかりませんが、帰館後の検温と消毒(うがい/手洗い)の徹底~サービス付き高齢者向け住宅に多く見られます。
・ご家族が迎えに来るなどにより、少人数での外出と人混みの多い場所に行かないことのルールを順守してもらえれば可能~サービス付き高齢者向け住宅で見られます。
【施設内でのレクリエーション】
・館内であっても人との交流を極力避けるため、今までのように毎日行わず、週/1~2回程度に圧縮~全種別共通
・いままでボランティアの方をお迎えして開催していたレクリエーションを中止している
・デイサービスやデイケアに行くことができなくなった~住宅型/サービス付き高齢者向け住宅に見られます。
・小規模/短時間ながら毎日何かしらのレクリエーションを考え実施してくれている~全種別共通
・極力お部屋で過ごしてもらっている~全種別共通ですが少数
というように幾つかのシチュエーションに分けて羅列してみましたが、制限が全くかかっていないホームを探すことのほうが難しいようです。
ご相談に来られるお客様のご要望は様々です。どのようなことをご希望されているのか?それがこのコロナ禍で対応が可能なお話であるのか否か・・各ホーム、各運営会社の考えと対応の仕方をしっかり把握することが必要になります。
ただ、【まん延防止等重点措置】の状態時、【緊急事態宣言】発令の際の対応など状況は猫の目のように目まぐるしく変化します。昨日まで面会可能だったのに、今日からは全面禁止!というようなことも想定しておかなければなりません。
「残りの時間を一緒に過ごしたい」とホーム入居を決意
ここで、先日ご相談をいただいたお客様のお話をさせていただきます。
有料老人ホーム入居希望のご対象者様は98歳の女性で、ご主人様は7年前に他界、そのあたりから物忘れや妄想症状が出始めたため自宅近くのグループホームにご入所されていました。
そのご対象者様には2人の娘様がいます。一人はご対象者様のご自宅からそれほど遠くない場所に住んでいますが、もう一人の娘様は車で2時間ほどかかる場所にお住まいです。
また他にキーパーソンとなる人としてご対象者様のご長男(他界)のお嫁様がいて、実娘2人のちょうど中間距離あたりにお住まいになっている・・という地理的な関係性です。
いままでご対象者様の近くに住む娘様が定期的にホームに行き様子を見ていたのですが、
今年の頭にホームの自室ベッドから落下し骨折してしまいました。ご高齢という事もあり手術はせず保存治療を選択していたところ、入院中に誤嚥性肺炎を発症されました。
肺炎は改善したものの食事の摂取量が極端に少なくなり医師からは『このまま老衰の可能性もあります』との診断を受けてしまいました。ご対象者様は以前より経管栄養を希望されておらず、『病院としてもなす術がない、退院してもらって在宅で最後の介護をすることも良いのではないでしょうか?』と言われたそうです。
また、最大の懸念は現在の病院ではコロナの影響で『完全面会禁止』の号令が敷かれており、このようなご状態であるにもかかわらずお母様(ご対象者様)と面会もできない状況だという事でした。
ご家族様の選択された結論は『いまの病院でお母さんと会うことができないままお別れしてしまうことは耐えられない。必ず後悔が残ると思う。だったら、無理は承知でどこかの有料老人ホームで手を握ってあげながら残りの時間を一緒に過ごしたい』というものでした。
そして、その有料老人ホームは実娘が住む場所から極力近いところで・・と、2人の中間地点である他界したご長男の嫁(義娘)が住むエリアでのご希望でした。
とはいっても、ご予算の問題もあります。限られたエリアでご予算に合った有料老人ホームで、しかもこのようなご事情に理解を示してくれるところはあるのだろうか・・・と思いながらも十数か所ある有料老人ホームに片っ端から連絡を取りご事情を説明してゆくことでしか私どもが役に立てることはありません。
そしてその中で『事情はよくわかりました。でも、入居してすぐにご状態が変化して最悪の結果になってしまうかもしれません。また、その病院からうちの施設まで介護タクシーで来てもらっても1時間ほどかかります。その車中で・・・ということも想像しなければなりません。そのことをご家族様にご理解をいただけるのであれば、やれることをやりましょう!』と言っていただけました。
その話をご家族様に説明したところ覚悟をもって大変お喜びになられたように感じました。
また、病院にも事情を説明しアセスメント(ご対象者面談)もできない環境ながら担当医や看護師と打ち合わせを重ねてもらい、有料老人ホームへお引越しする段取りを数日で整え、無事にご入居することができました。
これらも全てコロナ禍での弊害、それによる新しい対応の仕方だと認識しています。
こんな状況でなければもっとほかの対応の仕方があった事でしょう。
でも、このような状況の中でご家族様の要望に理解を示して実行してくれた介護施設があり、難しい判断の中、できる限りの対応をしてくれた病院のスタッフがいてくださったことが何よりでした。
これが『昨年のコロナ禍』だったらどうなのか?『緊急事態宣言下』だったらどうだったのか?いろいろ考えさせられますが、どのような状況下でも有料老人ホームの対応は変化し運営されてゆきます。
どのような状況でも一人(ご家族だけ)で考え込まず、まずはいろいろな方面にご相談をいただけますことを切に願います。
みんかい 渡辺大志
老人ホームでの食事
老人ホームでの食事
「食事」は生きていくために、欠かせないものです。どんな人でも、健康であれば、お腹がすきます。好きなものを食べている時は幸せ以外のなにものでもありません。今回のコラムは、『生きる活力』『生きる源』である「食事」について話を進めていきます。
2つの食事役割りとは。
食事には、2つの役割が備わっていることが必要です。その1つは、その食事を食べる人の健康を維持・増進し、また疾病の予防・治療に必要な栄養素を過不足なく提供するという栄養学的側面の役割です。もう1つは、その食事が食べる人の食習慣や食文化をみたし、おいしく食べることで心の豊かさや満足感をもたらすとともに、人間関係やコミュニケーションの形成に役立つなど、食べる人のQOLや社会性を高める側面の役割です。高齢者にとって食事とは、必要な栄養を摂取するだけでなく、生きがいや生活リズムを感じるための重要な行動です。
食べるメカニズムとは
そもそも「食べる」という行為そのものは、「食べ物を認知する」→「食べたいと思う」→「食べ物を口に運ぶ」→「咀嚼する」→「飲み込む」といった連続の動作から成り立っています。しかしながら「食べる」ことは、単に経口的に「食物を摂取する」あるいは「栄養を摂る」という意味だけには留まりません。
「食べる」ことは、精神的健康感にも大きく影響し、美味しい、楽しいといった充足感、あるいは食事を介しての家族や社会とのつながり等により、自分自身を大切にしたい、自分自身が大切にされている、という自尊感情を得ることもできます。このことは幼児期・学童期等では健全な発育の基本となり、高齢期では活動的な日常生活を支える生きがい感ともなり、活動的な高齢期を過ごすことが可能となります。
高齢になると加齢に伴い、食事をするための身体機能である嚥下機能(飲み込む力)、咀嚼機能(嚙み砕く力)の低下が見られます。そのため、食事がうまく取れなくなり、食事量が徐々に減り、身体を動かすために必要なエネルギーや、筋肉、皮膚、内臓などを作る栄養が不足していきます。体力も減少するので、運動量が減り、さらに食欲低下となり低栄養となる悪循環を繰り返します。低栄養を予防するためには、
- 1日3食、食べること。
- 栄養バランスの良い食事を取ること。
- 楽しく、美味しく食べることが大事になります。
老人ホームの食事とは
老人ホームでの食事は、そのような事を踏まえ、常に工夫されて提供されています。美味しく、安全に食事をするために、その方の嚥下や咀嚼機能に合わせた介護食を提供します。主な介護食をわかりやすくご説明します。
- きざみ食とは、通常のお食事を小さく刻んで食べやすくしたもの。
- 軟菜食とは、固形のまま軟らかく調理したもの
- ソフト食(ムース食)とは、食べ物を柔らかく煮込み、一度ミキサーにかけてから元の形状に仕立てたもの
- ミキサー食とは、ミキサーにかけて液体状にし、飲み込みやすくしたもの
など、その方の嚥下や咀嚼機能に合わせた介護食の他、ご病気などによる栄養制限に対応した食事の提供もします。
月毎に、献立表が作成され、栄養管理士により栄養バランスが計算されています。実にバランスよく作成されています。主食に副菜、汁物。老人ホームの食事は味が薄い、美味しくないと思われがちですが、そんなことはありません。もちろん塩分は控え目に作られていますが、出汁をしっかり取るなど工夫をしているため物足りなさをさほど感じません。季節毎の旬な食材を使用し、食事で季節を感じ、食事を楽しんでいただけるように工夫しています。私たちの普段の食事にも参考にできるような、バラエティーに富んだ食事になっています。
食事は、老人ホームを探しているお客様がこだわる一番のポイント
老人ホームをお探しのお客様が、こだわるポイント第1位は食事です。老人ホームに入ると、唯一の楽しみは食事といっても過言ではありません。食事にこだわる老人ホームは、ホーム内に厨房を構え、調理をし、提供します。時にはイベントとして入居者の前でマグロ解体ショーを行ったり、お寿司を握ったり、天婦羅を揚げたりします。温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいまま提供するようにオペレーションを考えます。レストランで注文するように、メインを選べる選択食を導入している老人ホームもあります。病気による禁止食材の不提供、多少の好き嫌いによる代替え食に対応してくれる老人ホームもあります。
また、食事を美味しいと判断する要素には視覚も重要と言われています。人は美味しいと感じるために味覚、嗅覚、視覚、触覚、聴覚をフル活用しています。その中でも視覚から美味しいと感じる割合は80%を占めているともいわれます。そのため、食事にこだわる老人ホームは盛り付けにこだわるのはもちろんの事、料理をより美味しく見せるために食器にも気を配っています。
介護施設で使われる食器は、破損する可能性のないメラミンなどの食器が使われることが多いです。軽いため握力が低下した入居者様でも持ちやすいためです。また、落としても割れにくく怪我の心配もありません。使用している食器から、その老人ホームの食事へのこだわり度合いを確認することもできます。
食事の際は誤嚥を予防することが大事です。誤嚥は死亡につながりかねません。いつまでもご自身の口から食事を摂っていただけるように、食事の前に老人ホームでは多くの施設が口腔体操を取り入れています。舌や口周りの筋肉を動かすことにより、唾液の分泌を促します。唾液が良く出るようになると飲み込みがスムーズになり、誤嚥予防に繋がるのです。
口腔体操の代表的なものに「パタカラ体操」というものがあります。「パ」「タ」「カ」「ラ」の4文字を発声しながら口を動かします。舌や唇を大きく動かしながら発声するため嚥下機能の他、発声機能の向上効果にも期待が持てます。また大きな声を出すことで腹圧が高まり、誤嚥したときに咳き込む力が強くなります。
他にも、唾液腺を刺激するマッサージなどを取り入れてみるといいです。唾液は口の中をうるおすだけでなく、口内の細菌の増殖を抑え、口臭、虫歯、歯周病などさまざまなトラブルを防いでくれます。唾液は、99%以上が水分、残りの1%ほどに抗菌、免疫、消化などに関わる重要な成分を含んでいます。
生きる活力。それが食事です。
誤嚥を防ぐためには食べるときの姿勢も大事です。食べ物をしっかり飲み込んで食道に送るためには、首の角度が重要です。上半身を起こして背中を少し丸め、やや首を前屈させる必要があります。この姿勢ならば、飲み込んだどきに、のどが自然に上下に動きます。リクライニングで上体が反り返った姿勢や、介護者が上から介助する姿勢は、首が伸びているのでうまく飲み込むことができません。座位を保てる方であれば、車いすではなく通常の椅子に座って食べるのが好ましいでしょう。
生きる活力となる食事です。老人ホームも入居者様に満足いただけるよう努力しています。見学の際はお食事を試食させてもらうことをお勧めします。また、お食事の風景なども見学してください。どのように食事のサポートをしてくれるか、入居している方が美味しそうにお食事しているかをご自身の目で見てみて下さい。
高齢者の食事は、自分の口で美味しさを感じながら食べることが大事です。それが楽しみとなり、生きる意欲を高め、若々しい生活をもたらしてくれるのです。
株式会社ASFON CALLCENTER 室長 二見 幸恵
老人ホームの住所地特例制度について
住所地特例制度とは
ご家族が老人ホームに入居する事が決まった際、住民票や住所変更に関連する意外と知られていない制度として『住所地特例制度』というものがあります。今回は、『住所地特例制度』の特徴と、住民票の所在で利用できる施設とそうでない施設についてのお話をさせていただきます。
まず、結論からお伝えしますと、老人ホームに入居が決まったら住民票を移さなければならないかというと、必ず移さなくてはならないということではありません。(一部を除く)。では、なぜ住民票を移さなくても良いのかというと『住所地特例制度』という制度があるからです。
介護保険制度においては、65歳以上の者及び40歳以上65歳未満の医療保険加入者は、住所地の区市町村が実施する介護保険の被保険者となるのが原則ですが、住所地特例対象施設(※1)に入所又は入居し、その施設の所在地に住所を移した者については、例外として施設入所(居)前の住所地の区市町村(保険者)が実施する介護保険の被保険者になります。これを「住所地特例」といい、施設所在地の区市町村の財政負担が集中するのを防ぐ目的で設けられた制度です。(※1)介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)、特定施設、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームに該当するサービス(食事、介護、家事、健康管理)を提供しているサービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム。東京都福祉保健局ホームページより。
この制度を始めて知る方には、内容が分かりにくいかと思いますので、簡潔にお伝えしますと、住民票がある今の住所から他地域の老人ホームに入居する時には、住民票を移動させなくても良いですよ。という制度です。
基本的に、老人ホームへの入居に限らず、現在、住んでいる住所地から別の地域に引っ越す場合は、転出届と転入届を市役所に提出して住民票を移しますよね。「住所地特例制度」とは、老人ホームに入居して新しい住所に住民票を移した後も、もともと住んでいた市町村が継続して保険者となり、介護保険の給付を受けることが出来るのがこの制度です。
地元行政の介護保険報酬の負担を減らすことが目的
介護保険制度は、住民票がある地域に保険料を支払い、介護保険給付を受ける仕組みで成り立っています。しかしその場合、介護施設が多いエリアに介護サービス給付費による財政負担が集中してしまいます。介護施設が多い地域に集中して財政負担がかからないようにするために、このような制度が作られました。
老人ホームに入居した際に、住民票を移すのは任意ですので、ご家族と同居されていたり、自宅の売却をせずに老人ホームに入居される方は、住民票を移さずに引っ越してこられる方も多いです。「住所地特例制度」の対象施設への転居の場合は、「住所地特例適応届」と「転出前の住所が記載されている介護保険被保険者証」が必要になります。市町村によって、住所地特例制度の手続き方法が異なる場合がありますので、市役所の高齢福祉課などの担当窓口や転居先の老人ホームに確認してみてください。
住民票を移すことができない施設もあります
さて、話は少し変わりますが、施設には住民票を移すことが出来る施設と出来ない施設があります。
簡単に分けると長期入居を前提としている施設(特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など)は住民票を移すことが可能です。短期入居を前提としている老人保健施設は、在宅復帰を目指し一時的に入居する施設のため住民票を移すことは出来ません。住民票を移す場合には、保険証なども同時に住所変更をする事を忘れないようにお気をつけください。
話がやや脱線しますが、介護施設の中には地域密着型の施設というものもあります。特別養護老人ホームやグループホーム、小規模多機能型居宅介護の対応施設、一部の有料老人ホームにもあるのですが、こちらは施設がある市町村の住民しか入居が出来ません。
例えば、東京都目黒区の被保険者が、東京都新宿区の特別養護老人ホームに入居することは出来ません。どうしても入居したい施設が地域密着型の老人ホームだった場合、例えば一旦新宿区のマンションなどを借りて、そこに住民票を移し、ある程度生活した後に地域密着型の老人ホームに入居する必要があります。ここで注意が必要なのが、住民票を移しても、即日で地域密着型の老人ホームに申し込む事は出来ないという点です。
必ず、居住実績がどの程度あるかを見られます。各市町村によってこの期間は様々ですが、だいたい半年~1年くらいの期間を見られるところが多いです。短くても3ヵ月くらいは必要です。在宅での介護が難しく必要だから老人ホームを探しているのに、居住実績をつくるために一旦マンションを借りて、訪問介護を入れて、デイサービスに通う等の引っ越す前と同様の生活を送るのは非現実的ですね。地域密着型の老人ホームへ申し込む際は、現在、住民票がある市町村の老人ホームへお申込みください。ただし、特別養護老人ホームやグループホームは低額で待機者数も多いのでご注意ください。
住民票を移すメリットデメリット
住民票の話に戻ります。ここでは、住民票を移すことのメリットとデメリットについて触れていきたいと思います。老人ホームに住民票を移すメリットとしては、市町村からの郵便物も老人ホームに届くようにすることが出来るため。介護保険関係の手続きなどを、老人ホームの職員に直接お任せできることがあります。
例えば、介護保険被保険者証が届いた際に、わざわざその旨を老人ホーム職員に知らせる必要はなく、市町村から送付された段階で開封することを許可しておけば、あとの料金計算は全て行ってくれます。医療保険証なども、わざわざ老人ホームまで届ける必要がなくなります。家族も定期的に実家に戻って郵便物を確認して、必要な書類を老人ホームに届けるという手間が省けます。
老人ホームに住民票を移すデメリットとしては、郵便物が直接老人ホームに届くため、各種の業者や交友関係が老人ホーム側で分かってしまうことです。プライバシーが気になる方は、老人ホームが郵便物をどのように取り扱っているか確認しておくと安心です。
ここまで、住所地特例制度についてと、住民票を移せる施設とそうでない施設について書いてきましたが、最後にまとめて終わりにしようと思います。
まとめ
- 入居先の老人ホームが、「住所地特例制度」の対象施設だった場合は、住民票のない地域への転居でも住民票を移す必要はありません。
- 住民票を移す場合、メリットとデメリットがありますので、ご本人やご家族の状況によって判断も変わってくると思いますので、どちらの方が良いのかよく考えてから判断されることをお勧めします。
首都圏相談室 室長 村上理絵
ホームを探す際に大事なこととは・・・。身元保証、引越し、不用品処分、不動産売却などなど。
様々な業者とタイアップ
老人ホームへの入居は、人生の中でも大きな決断となります。ご対象となる方に合う、合わない・・をしっかり見定めて、いざご契約といっても、それだけでは済まないことがあります。
例えば・・。
「今住んでいる家はどうしたらいいのだろう?」「ホームへ引越しをするのに誰が手伝ってくれるのかしら?」「いざといったときに、駆け付けることができないけど、保証人にサインしても良いのだろうか?」などなど・・。ホームに入居することと同じくらい大事な手続きが幾つもありますが、後になってあれもしなきゃ、これもしなくては、とあたふたすることがないように事前の準備もしっかり認識できていたらいいですね。
ご相談に来られるお客様の中にも、ホーム探しをしながら手探りするかのように同時並行で行われる方が多く、大変な思いをされていることが見受けられます。そんな時、『この準備をしておいたらいいですよ』と事前に手を差し伸べたいと願っております。
私たち「みんかい」では、そのようなニーズにお応えできるように色々な業者とタイアップしております。
タイアップ・・・私たちがやれば済む話と言われればそうかも知れませんが、『餅は餅屋』という諺があるように、専門の業者に任せたほうがより安心です
後見業務を行う士業の方々、引越しを行う大手から中小の事業所、不用品回収を行う業者、不動産の売却や買取を専門に行う不動産会社など、長くご相談を承ってきた経験から「こんな業者とタイアップ出来たらお客様の手を煩わせずに的確なアドバイスができるだろうな・・」と考え、業務提携をしております。
ただ、その過程の中で一番大事にしていることがあります。それは「お客様はご高齢の方なのでちゃんとお客様に向き合って、急かすことなく、丁寧な説明と安心できる作業を提供してくれる業者であること」をしっかり見定めなければなりません。
業者を紹介するだけなら、誰にでもできます。でも、そこに「紹介する」という責任を持たなければならないと考えているからです。そこで今回は、ホーム探し(ご入居)の際に必要と思われる事柄に沿ってご紹介してゆきます。
身元保証
ホームに入居(契約)する際には、ほぼ間違いなく「保証人」の欄にサインを求められます。ホームが言う保証人とは大きく3点です。
- 金銭的な援助
- 緊急時の入院や手術の際の手続き
- 身柄の引き取り
これらをしっかり誰かがサポートします!と言ってくれないと、ホームは戸惑ってしまいます。それらをフォローするために最近では、株式会社、NPO法人、士業の先生方が身元の保証をしてくれることがあります。なお、保証人なしでもご入居できるホームも少なからずございます。
身元保証の契約金は、0円から数万円、ケースによっては数百万円と様々です。月額費用は、数千円から数万円になります。業務内容は、金銭の管理だけから通院同行や医療同意のサイン、死後事務委任契約までさまざま(オプション料金として課金などの場合あり)です。身寄りがなく、年金が少なく、ずっと独居だった方などに合わせた業者から、豊富な資産がある方まで、その方に合った保証内容をご提示できるよう、多くの業者・士業の方をご紹介できます。
引越し
ホームが決まり、ご入居の契約を結んだはいいけれど、どうやって引越すか?基本的には、ホームは引越しの手伝いはしてくれません。以前「当日、ホームさんが迎えに来てくれて、お部屋のレイアウトなんかも考えてくれているんでしょ」と考えている方もおられましたが、ホームの職員は「なんでも屋さん」ではありません。ご入居されている方々のお世話で精一杯の状態です。そうなりますと、ご自身で引越し業者を探さなければならない為、弊社では沢山の引越し業者とタイアップしています。
作業費は、数万円~十数万円(転居するホームへの距離や持ってゆくものの量により軽トラックなのか?大型トラックなのか?と料金が違ってきます)。事前に見積もりが必要なため完全予約制になっています。なお、生活保護受給者の場合、行政(生活保護担)より2~3社からの見積提示を求められますが、それにも対応できる複数の業者をご紹介できます。
引越しに伴う処分品の回収
上記にあるように引越しだけでは済まないことが多々見られます。ホームに引越しをするという事は、今まで住んでいた家が不要になる・・ということです。持ち家ならともかく、賃貸の場合ですと、お部屋を解約する際には、お部屋の中身を全て移動させなければなりません。とはいえ、ホームの居室面積は平均18㎡から大きくても25㎡です。
今まで、1DK~2LDKなどにお住まいだった荷物を、そっくりそのままホームに移動させることはできません。よって、必要最低限のもの(テレビや小さなタンス、座椅子やテーブル、掛布団やお洋服を少々)に制限されてしまいますので、その他のものは全て処分対象となります。処分品の回収や買取には、資格が必要です。引越し業者とはいえ、全ての業者が資格を持っているとは限りません。また、エアコンなどの取り外しにも資格が必要になります。自治体などが回収する粗大ごみ回収センターなどの場合は、かなりお安く済みますが、回収日時に指定された場所まで荷物を運ばなければならず高齢者にとっては高いハードルになっているようです。処分業者に頼んだ場合の料金は、処分品の量などによります。数万円~数十万円です。気軽に頼める中小~大手企業まで、幅広くご紹介しています。
不動産
今までお住まいだった家の形態によりますが、売買をする、解約をするなどの手続きが必要になります。持ち家の場合、ホームでの生活に馴染めるのか?など不安がある方が多く、平均すると、ホーム入居から3か月以降に持ち家の処分を考える方が多いようです。
売買には大きく分けて「仲介」と「買取」があります。「仲介」とは、「私はこの金額で売りたいのだけれど、買ってくれる人いませんか?」と不動産会社を通して依頼するものです。そのためご希望に近い金額で売却されるケースが多いのですが、数カ月を要するなど時間がかかることがあります。
「買取」は、一旦不動産会社がその物件を買い取り、その後にリフォームなどをして売りに出したりする方法です。よって、換金性が高く、中には即日現金で買い取る業者もありますが、希望価格より相当ディスカウントされてしまいます。売却をせず、人に貸すなどする事で『家賃をホームの支払に回す』ことも、提案してくれる業者もあります。また、定期的に持ち家を訪問して窓を開けて『風を入れてくれる』業者もあります。
借家の場合は、ホームに入居が決まったら現在お住いの家は解約しなければ、ホームの費用とその家の家賃の支払いでダブルパンチになってしまいますので、早めに賃貸の解約をすることが望ましいです。ただ、家賃の支払いは、前家賃(前月に次月の家賃を払う事)になりますし、解約の手続きは、1カ月前に・・とか、3か月間前に通告するよう契約書に記載されているケースがありますので、解約前にしっかり契約書を読み返してください。3か月前通知であれば、少なからず以降3ヶ月分の家賃は自動的に支払わなければならないからです。公団住宅、団地の場合は1カ月前通知が多いようです。
どちらにしても、ホーム入居を進めるうえで重要なことですので、契約書の読み返し、または大家さんに確認することが賢明です。また、引越しをするという事で、電気、ガス、水道などを止める手続きも必要になります。
それは各エリアの事業者に「いつまでに引越しするので止めてください」と伝達しなければ基本料金が請求されてしまいますので、しっかり対応することが必要です。
生活支援や法律相談
生活支援は「明日、かかりつけの病院に受診に行きたいのだけれど一人ではいけない。でも明日は家族が用事があるらしく同行できないと言ってきた・・」という場合などに適しています。ホーム職員ではなく、外部のヘルパー資格を持つ登録従業員にお願いすることも可能です。家の風通しをお願いする、草刈りをお願いする、買い物に付き合ってもらう、などお困りごとに対応してもらえます。
法律相談は、相続や贈与など、これからの法律にまつわるお悩み事に対応してもらえます。まだまだ、色々な「ホーム入居に関わる準備」がありますが、主だった説明は、以上になります。先にも書きました通り、私どもに関りがある業者には、「お客様に急かすような態度を取らず、じっくりお話をお聞きしながら、お客様のペースに合わせて進めて」もらえるよう、私どもからもしっかりフォローしております。もちろん、ご希望があれば私たちが同席させていただきます。
みんかい西日本相談室 室長 渡辺大志
老人ホームと生活保護
生活保護受給者と老人ホームの暮らし
老人ホームのお金の話
老人ホームに入居して生活を送るにはお金がかかります。一体どのぐらいの費用がかかるのでしょうか。老人ホームで生活するには、月々支払う月額費用というものがあります。家賃や管理費といった居住費のほかに食費などの基本料金、ティッシュペーパーや歯ブラシなどの日用品やおやつなどの嗜好品、さまざまな費用がかかります。また、介護に関しては介護度に応じた介護サービス費の自己負担額が必要です。ほかにも医療費やオムツなどの雑費も必要となってきます。
民間企業が運営する老人ホームなどは、そのホームを運営する運営会社が建築費用やホームが建っている地域の家賃相場、人件費などを試算して月々の基本料金を決めます。駅からアクセスしやすい環境や、周辺に公園などがあり環境のいい場所は当然土地の価格も高くなるため、月額の家賃も高く設定されます。入居の際には、その家賃を前払いする前払いプランなどもあり、数十万円から数千万円のお金が最初に必要になることもあります。
また、老人ホームには、介護保険法により入居定員に対する必要な介護職員・看護職員の配置数の基準が定められており、入居者3名に対しての常駐の総数が1名という「3対1」の人員配置基準というものがありますが、運営会社の方針でその基準を上回って介護職員・看護職員を多く配置させれば、その分の人件費が必要となります。その分の人件費は、月々の基本料金の中の管理費に含めたり、「上乗せ介護費用」という名目で月額基本料金に上乗せとなります。また食事にこだわっている有料老人ホームでは、食材費が高くなります。
それに対して、特別養護老人ホームなど公的な介護保険施設では料金形態が異なります。公的な介護保険施設では、入居する際に必要な入居一時金などは必要ありません。毎月必要となる料金は介護サービス費、居住費、食費、日常生活費となりますが、居住費と食費については、法令により入居者の世帯収入に応じて負担限度額が決められています。所得が少ない方でも施設を利用できるように費用の軽減処置が行われており、所得に応じて第1段階から第4段階の区分が適用されます。
特別養護老人ホームの4段階の人の属性の話
第1段階は、生活保護を受給している方や、世帯全員が市町村民税非課税で老齢福祉年金を受給している方です。
第2段階は、世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円以下の方です。
第3段階は、世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円以上の方です。
第4段階は、市区町村民税課税世帯の方です。
特別養護老人ホームは「従来型」と「ユニット型」と呼ばれる2つのタイプがあり、昔からある従来型は4人部屋などの多床室の居室が中心で、施設全体で介護を行います。ユニット型は、全て個室で10人程度を1つのユニット(集団)として少人数の介護を行います。そうしたタイプや居室によっての違いはありますが、上記でご説明した第1段階から第4段階に応じて居住費も定められており、低所得の方でも利用しやすいよう配慮がされています。
例えば、食費に関しても、基準金額は1日1,380円となりますが、第1段階の方は300円、第2段階は390円、第3段階では650円で済むという仕組みです。
このように民間企業が運営する有料老人ホームなどに比べて特別養護老人ホームなど公的な施設は低所得の方でも入居しやすいというメリットがあります。ただ、入居を希望したときに、すぐに入居できるわけではないというデメリットもあります。厳しい入居要件があり、入居を待つ待機者も非常に多く、地域によっては数百名とも言われています。
特別養護老人ホームの入居基準
まず、特別養護老人ホームへの入居要件は、
原則として
- 在宅生活が困難になった状況で要介護3以上、65歳以上の高齢者。
- 40〜64歳でも特定疾病が認められ要介護3の方となります。要介護1〜2の方も、特例により入居が認められる場合がありますが、単身世帯であったり、同居家族が高齢や病弱であることなどにより、介護の支援が期待できず、また地域における介護サービスや生活支援の供給が不十分であること、あるいは家族などによる深刻な虐待が疑われるなどの条件があります。
そのため、特別養護老人ホームへの入居を待つ間に民間の有料老人ホームを利用したいという方は大勢います。半年、1年、2年と民間の有料老人ホームで特別養護老人ホームを待機するのです。ただし、前述したように、民間の有料老人ホームの場合は、運営会社が定める月額基本料金を支払う必要があり、その費用に対して国や市区町村などの行政から補助はありません。あくまでもご本人や家族の収入などに合わせ、支払い能力に見合ったホームを選ぶということになります。
生活保護受給者の場合は
生活保護を受給している方はどうなるのでしょうか。介護が必要な状況であっても、すぐに要介護3とはなりません。公的な介護保険施設に入居できない場合、どうすればいいのでしょうか。どんなに大変な状況だとしても、民間の有料老人ホームに入居することは不可能なのでしょうか。
決してそんなことはありません。民間企業が運営する有料老人ホームでも、家賃などを比較的安く抑えた低所得者向けのホームや、生活保護の方を受け入れてくれるホームがあります。もちろん、数は非常に限られています。場所も、電車バスなどの交通の便が悪いこともあります。当然、入居要件というものもありますので、必ずどんな方でも入居させてくれるというわけでもありません。
入居要件は、公的な介護保険施設のように一律ではなく、各運営会社の方針により定められていますが、一般的には65歳以上で要介護1以上の方という要件が多いです。あくまでも、運営会社が定める要件を満たしている方が入居対象となりますが、その要件を満たしてさえいれば、特別養護老人ホームとは違い、基本的には申し込みをした順番で入居ができます。空室があればすぐに入居することもできます。
まず、生活保護受給者の場合は、介護サービスの費用については自治体から老人ホーム側に直接支払われます。入居されるご本人が直接支払うということはありません。ただ、家賃は生活保護の住宅扶助で定められた上限額内であること、他の食費など生活費は生活扶助と年金収入を合わせてやりくりすることになりますので、そうした対応をしてくれるホームを探す必要があります。
生活保護の住宅扶助や生活扶助の上限額は、居住地の市区町村によっても異なります。そのため、元の居住地から上限額が高くなる市区町村のホームへは移り住むことができない場合もあります。例えば、子供が親の生活を心配して近くに呼び寄せたいと考えても、親の居住地より子供の居住地の住宅扶助の上限額が高くなる場合、生活保護を支給している市区町村から認められないことがあります。市区町村によって、民間の有料老人ホームへの入居に対しての考え方にも違いがありますので、まずは生活保護受給担当のケースワーカーに相談をしてみましょう。
インターネットなどで老人ホームを検索して、探す方もいらっしゃいますが、間違った情報であることも多いです。私のご相談者様にも、インターネットでご自宅の近くの有料老人ホームが生活保護の方の受入れをしていると、見たので問い合わせをしたところ、生活保護の方の受入れはしていませんと、冷たく言われてしまい、とても困ってご相談に来られた方がいらっしゃいます。
前述した入居要件は、1つの老人ホームに対して生活保護受給者の受け入れ人数に制限がある場合や、そのホームの抱える事情によって変わることがあります。また、入居を希望するご本人の希望やご状態によって合う、合わないといった問題も当然あります。
まずは老人ホーム紹介センターに相談することが一番の近道になるかもしれません。お気軽にご相談ください。
みんかい首都圏相談室 室長代理 入江 佳代
コロナ禍におけるレクリエーションの現状
コロナ禍で迎える2年目の夏ですが、老人ホームで行っているレクリエーションにも動きが出てきましたので最近の状況をお伝えしていこうと思います。
新型コロナウイルス感染症の終息が見えず、東京では連日1000人を超える感染状況ですが、老人ホームに入居されている方や介護スタッフへのワクチン接種は2回目を終えているところも増えてきました。
可能な限りレクリエーションを開催!?
昨年はこのコロナウイルスの感染力が未知のもので、老人ホーム側も入居者を守るために家族との面会や外部講師を招いたレクリエーションを取りやめていたところも多くありました。現在もほとんどの老人ホームで大なり小なりの制限はありますが、以前と比べてだいぶ活動内容が広がってきたと感じます。
老人ホームのレクリエーションは高齢者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を向上させる目的があるため、老人ホーム側は出来る限りレクリエーションを開催しようと考えてくれています。
老人ホームの入居者は、日常生活においてなんらかの介護サポートが必要な方ですので、もともと外出や趣味活動が少ない傾向にあります。その上、新型コロナウイルス感染症予防によって外出する機会がめっきり減りました。そんなときの気軽な気分転換の手段がレクリエーションです。
楽しみや他の入居者とのコミュニケーションが取れる貴重な機会となっています。体操で大きく体を動かしたり、指先で細かい作業をすることや、脳トレや謎解きで頭を使うなど、心身共に機能維持を果たす重要な役割があります。
それでは、ここからいくつか実例と共に現状のレクリエーション内容を紹介していきたいと思います。
近所の公園や神社に散歩。外出で気分転換
老人ホームのレクリエーションにおいて、入居者やその家族から好評なのが、外出レクリエーションです。初詣やお花見、バスツアーや外食イベントなど、季節ごとのイベントに取り入れている老人ホームは多く、車椅子の方でも安心して参加できるように工夫されており、家族も同行したりと参加率が高いレクリエーションの一つです。しかし、昨今では、屋外であっても人が密集する場所や時間帯に大勢で参加する事が厳しくなってしまいました。入居者と介護スタッフの安全を守るためと分かっていても、やるせない気持ちになります。
ただ、最近は少しずつ変わってきました。近所の公園や神社に少人数で散歩に出かけたり、リハビリの一環で歩行訓練と称して機能訓練指導員と共に老人ホーム周辺を歩くなどしているところも出てきました。理学療法士などの機能訓練専任のスタッフが常駐している老人ホームや、入居の定員数が少ない小規模の老人ホームだからこそ出来ることだと思いますが、少なからず今までの老人ホームの中だけのレクリエーション活動よりも気分転換に繋がり、入居者のリハビリに対するモチベーション維持にも繋がっていると思います。
これを取り入れている、いくつかの老人ホームに話を伺ったところ、外出の機会を設けたことによって、入居者の表情が和らいだと感じているスタッフが多くいるようです。入居者からすれば、散歩をしながら機能訓練にも繋がっているので、普段は機能訓練に消極的な方も参加しやすいのではないでしょうか。もちろん、体調変化や感染予防には細心の注意を払っているので、外出先で飲食をする事や大勢が集まるところへは行けませんが、小人数・短時間・近場の外出という条件化で感染したという事例は今のところ聞きません。
オンラインレクリエーションも!
老人ホームの中で行うレクリエーションにも変化が出てきています。新型コロナウイルスが蔓延してから取り入れるところが多くなったのが、オンラインレクリエーションです。
オンラインレクリエーションとは、離れた場所とオンラインで画面を繋ぎ、音楽の演奏や社交ダンス・フラダンスなどを鑑賞したり、ヨガや体操をしたり、クイズに参加するなどのレクリエーションを指します。新たな取り組みとして、昨年秋ごろから今年の春先までトライアルで検証されていたのが、吉本興業やNTT東日本などが提供した≪笑い≫を届けるオンラインレクリエーションです。
レクリエーションの取り組みの中に≪笑い≫が入ることで、他者とのコミュニケーション力が向上し、脳が活性化され、ADLやQOLの向上にも繋がるのではないかと考えられています。オンラインであれば、映画鑑賞などの一方通行の配信ではなく、双方向のコミュニケーションが取れるのもメリットです。老人ホーム側にとっても、講師やボランティアの方を実際に呼ぶことによる感染リスクが軽減され、安全に楽しんでもらえるレクリエーションを提供できますし、レクリエーションを外部に依頼する事によって、介護スタッフの負担軽減にも繋がります。
レクリエーションは老人ホームの生活の中で大切なものですが、日々のメニューを考え、実行に移すのは介護スタッフですので外部委託が可能であれば、その分介護サービスの提供に専念できるのです。
オンライン観光などを取り入れている老人ホームもありますし、オンラインレクリエーションを提供している企業自体も増えてきていますので、オンラインレクリエーションは、これから活用の幅がどんどん広がっていくと思います。
コロナ禍で今まで普通に行うことができたレクリエーションですが、現状は外出イベントや大勢が密になるものは制限があります。しかし、そんな中でも、老人ホームやレクリエーションを企画している企業は今できるレクリエーションに活気を出そうと試行錯誤しながら取り組んでいます。これから老人ホームをお探しになる方も、すでにご検討されている方も、老人ホームが現在どんなレクリエーション活動を行っているかぜひ聞いてみてください。
首都圏相談室 室長 村上理絵