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老人ホーム探しの勘所とは!?
老人ホーム探しの勘所とは!?
老人ホーム探しのタイミングはそれぞれです
- 離れて暮らす親の様子が変わり、心配になってきたとき。
- 転倒による骨折などで入院したとき。
- 火の始末の心配がでてきたとき。
- 食事を取らなくなったとき。
- 1人でのトイレが難しくなったとき。
- 外出先から帰宅できなくなったとき。
- 介護者が入院したとき。
- 介護者が限界と感じたとき。
家族(兄弟・父・母・叔父・叔母)間で話し合う時のポイントとは!?
老人ホーム探しを始めるとき、他に相談者がいないと1人で決断しなければならないという苦悩もあります。がしかし、家族内に複数の相談先がある場合も注意が必要です。有料老人ホーム探しの相談員として家族間で考え方が大きく事なるケースを何度もみてきました。
最も介護に関わってきた子世代により、ホーム入居検討は開始されますが、その際に、他の家族に相談なく入居を決めてしまうと、「施設を検討する経緯に至った理由」ではなく、「施設入居」を決めた、という結果のみが大きくクローズアップされてしまいます。
事後報告を受けて「施設に入れるなんてかわいそう」「費用はどうするんだ」等のトラブルに発展しがちです。早めに相談することで施設を探す必要性を共有することができます。後のトラブル防止のためにも、見解を統一する話合いが必要となってきます。
資金の把握の重要性
入居理由にあるような、入院などによる急な入居が必要となった場合、親の資金を把握できてないことで、費用の目途が立たない、銀行から引き出せない、一旦、子が負担するなど予期せぬ展開が待っています。資金計画を立てるためにもお金事情の把握は大切です。以下に費用の主となるものを列記します。
- 月々の収入(公的年金・個人年金など)
- 資産(預貯金・不動産・保険など)
- その他収入(家賃収入など)
- 家族からの支援
2つの有料老人ホームの支払い設定
ちなみに、入居一時金には、返還制度があります。想定入居期間を償却期間として、償却期間内に退去した場合は、未償却分が返金される仕組みです。
例:月払い方式
入居金を納めず、家賃・食費・管理費などの必要費用をすべて月払いにする方法
入居金0円/月額費用22.5万円
内訳/家賃6.5万円、管理費10万円、食費6万円
例:入居一時金方式
家賃の一部、または全額を数年分(想定入居期間)先に支払う事で、月々の費用を軽減。家賃(一部)以外の費用を月払いにする方法
入居金650万円/月額費用16万円
内訳/家賃0円、管理費10万円、食費6万円
資金を把握した上で重要なのは、いくらかかるかではなく、いくらかけられるかの視点での話し合いです。お手元にまとまった資産がある場合は、入居一時金を設定して月額費用を年金内でおさめるなどの選択も考えられます。また、予定外の出費(入院など)にも対応できるようにギリギリではなく、少しゆとりのある資金計画を立てることも大切です。子どもが支援する場合も、自身の生活設計を練った上で、できる範囲で行うことも必要です。
入居の目的を明確にする
有料老人ホームといえば、費用がかかるというイメージが強いですが、高い安いで料金のことばかり先行して考えがちです。費用も外せない大切なポイントですが、なぜ施設なのか、その目的を明確にして、検討されるとホームの種類を含め入居の目的の方向性が見えてきます。
- 家族による介護が困難になったため
- 介護する家族がいないため
- 施設・医療機関から退所・退院する必要があるため
- 医療的ケアが必要なため
- 認知症の対応が困難になったため
- 1人暮らしが不安になったため
- 家事が負担になったため
- 食事の提供が必要になったため
介護が目的であれば、介護力のある施設を探す必要があります。医療的ケアが必要であれば、それに対応できるホーム、1人暮らしの不安が課題なのであれば、夜間の職員がゼロになるような施設では入居目的の解消にならないかもしれません。大は小を兼ねる訳でもありませんので、自立している親が介護力の高いホームに入居して、あれこれ制限されるのも快適な生活とは言えないかもしれません。介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなど入居の目的によって、選択するホームの種類も変わってきます。
譲れない条件とは
費用、場所、立地、個室、夫婦部屋、居室内トイレ有無、個浴(1人用浴槽)有無、認知ケア、医療ケア、小規模施設、ホームの雰囲気、リハビリ、食事の内容、レクリレーション充実、手厚い人員体制、看取り可否、外出自由、通院送迎可否、喫煙・アルコールの可否、ペット可能など
入居の目的にも通じますが、有料老人ホームに入居する理由をもとに、どのように暮らしたいか、また暮らしてほしいのか、何がして欲しいことで、何がやりたいことなのか、施設に入居することは、至れり尽くせりで、介護がなされ、職員マンツーマンのような快適な暮らしが約束される訳ではありません。(逆に、職員が何でもかんでもやってしまうことは、自分で、できることをできなくしてしまうことにもつながりかねません)。ただ、すべては、かなえられなくとも、ここだけは外せないポイント(条件)が明確であればよりホームが選択しやすくなります。因みに、ホームでは、必要なケアが提供できない心配よりも、必要なケアを受けてくれない心配の方が多いと聞きます。
身元引受人の選択
老人ホーム探しにおいて、実際に入居となった際は身元引受人が求められます。(見元保証人となっているところもあります)。見元引受人の役割とは、以下の通りです。
- 入院時の対応協力、医療処置判断。
- 支払いが滞った場合の金銭保証。
- 緊急連絡対応、契約解除などの対応。
- 遺品、遺体の引き取りなど。
注意事項として、対応が、長期にわたる可能性もありますので、家族の中で、誰が見元引受人に適任なのかの相談も必要です。
みんかい首都圏相談室室長 高峰ゆう子
認知症と共に生きる~認知症の種類を知る~
認知症と共に生きる~認知症の種類を知る~
認知症概論
総務省統計局から発表される日本の高齢者人口は、2020年10月の高齢者白書によると全人口の28.8%が65歳以上の高齢者という割合です。65歳以上人口は、団塊の世代が65歳以上 となった平成27年に3,347万人となり、団塊の世代が75歳以上となる令和7年には3,677 万人に達すると見込まれています。 その後も65歳以上人口は増加傾向が続き、 令和24年に3,935万人でピークを迎え、その後 は減少に転じると推計されています。
総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、令和18年に33.3%で3人に1人となります。令和24年以 降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、令和47年には38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されています。総人口に占める75歳以上人口の割合は、令和47年には25.5%となり、約3.9人に1人が75歳以上の者となると推計されています。
先進諸国の高齢化率と比較してみても最も高い高齢化率です。高齢化は世界規模でもこれから各国で課題となり、その中で日本は世界に先駆けて超高齢社会となった国です。
日本の平均寿命は1990年から2019年までの約30年間で約5年以上伸びています。令和元年の男性平均寿命は81.41歳、女性87.45歳です。令和47年には男性84.95歳、女性は90歳を超えると見込まれています。厚生労働省統計では平成28年に認知症が初めて脳卒中に代わって要介護原因の1位となりました。 認知症に対しては 少し進行を遅らせる薬はあるものの、いまだに特効薬は存在していません。認知症には幾つか種類があります。それぞれの特徴を簡単に説明いたします。
アルツハイマー型認知症
記憶障害が主な症状です。脳の海馬に委縮が見られ、神経細胞の障害がおこります。日本人の多く、認知症患者の60%はアルツハイマー型といわれています。物忘れが多くなり気付かれることが多い認知症です。同じことを何度も話す、家に帰れなくなる、同じものを買ってしまう、日付や時間がわからなくなる、金銭管理や家事が出来なくなる、記憶障害に基づく妄想などの特徴があります。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血が原因となり発症する認知症です。脳梗塞で見られるような歩行障害や手足のしびれ、パーキンソン症状、呂律が回らないなどの言語障害、嚥下障害、意欲低下や感情失禁の症状も出ることがあります。突然症状が出たり、急に悪化したりするのが特徴です。ある分野の事はよくできるのに他の事は全くできないため、まだら認知といわれる事があります。
レビー小体型認知症
自律神経系にレビー小体という異常な物質が多く現れます。比較的男性多く発症すると言われます。主な症状として、実際にはないものが見える幻視、聞こえないはずの音が聞こえる幻聴が現れます。寝ているときに大声を上げる、夢を見て暴れるなどの睡眠時の異常行動も見られます。パーキンソン症状、便秘、尿失禁などの症状も現れます。
前頭側頭変性症
前頭葉と側頭葉の委縮が徐々に進行し、理性的な行動が出来なくなる、言葉が出にくくなります。ピック病は前頭側頭型認知症の一つです。ルールが守れない、他人に配慮できない、暴力的になる、こだわりが強くなる、情緒不安定になるなどの症状があります。40~60代の比較的若い世代に発症する「初老期認知症」の代表的疾患です。症状が出ていても認知症である事に気付かれず診断が遅れる場合があります。
認知症を甘く見るべきではない
認知症は、種類により特徴がある事を説明しましたが、共通するのは物忘れなどの認知力低下です。人によっては複数の型を診断されることもあります。症状は人それぞれなのです。認知症は誰もが成り得るものなのです。2020年の厚生労働省が発表した「認知症の人の将来推計について」によると、2025年には認知症有病率は20%になると推計されています。これは5人に1人の割合で認知症を患うという事です。決して他人事ではありません。自分にも、自分の家族にも起こりうる事なのです。
もし家族が認知症を発症したら、どうしますか?有料老人ホームなどの介護施設に入るきっかけの多くは認知症です。薬を飲み忘れ持病が悪化、買い物に出かけて帰ってこられない、火にかけたお鍋を忘れてボヤを起こす、誰かにお金を渡してしまう、など様々です。有料老人ホームなどの介護施設では認知症だからといって入居を拒まれる事はありません。
暴力行為はホームから入居を拒絶される可能性大
しかし、沢山の人との生活になるので、問題行動といわれる行為があると入居できない事があります。主には暴力などです。以前、弊社に相談に来られたお客様に暴力行為の症状がある方がいました。その方は、前頭側頭変性症の診断受けています。常にだれかに暴力を振るうというわけではなく、極たまに症状が出ます。ご自宅の近くで探していましたが幾つもの有料老人ホームに断られました。やはり暴力行為があるという事実を知ると、受入側も慎重になります。
やっと入居先が見つかり体験入居という形で入居を開始しました。ご家族も私共も何事もなければいいと願うばかりでした。入居後1週間、何事もなく本入居に向けて準備をしていたところ、ホームから連絡がありました。朝方、巡回に来たスタッフに暴力を振るってしまったそうです。また、一からホーム探しをすることとなりました。暴力行為がある事を言わない方が良いのではないか?言わずに入居をし、ありとあらゆる有料ホームを体験入居という形で渡り歩けば、私たちは少しでも時間が出来るのではないか?と。
しかしそれは何の解決にもなりません。環境が変わる事は認知症を患うご本人様には苦痛でしかないのです。新しい事を覚えられないのです。私たちでも、引っ越しは大変ですよね。その街で生活に必要なお店や病院を探したり、ゴミ出しのルールを覚えたり、家と駅までの効率的な道順を考えたり。病気ではない私たちでさえストレスを感じるのです。認知症患者には相当なストレスとなり、認知症が進行し、今までになかった症状が出る事もあります。ご自宅の近くに入居したいという希望を少し我慢していただき、エリアを広げて根気よく探し、新たな受入先を見つけました。
幾つもの有料老人ホームを運営し、介護保険法施行直後から有料老人ホームを運営する老舗有料老人ホームです。そのホームは認知症への取り組みに力を入れています。認知症介護の専門的な研修を受けたスタッフが勤務しています。他のスタッフにおいても介護福祉士などの資格を有したスタッフが多く勤務しているうえ、有料老人ホームを運営するための人員基準を上回る介護スタッフを雇用して介護を行っています。
受け入れる前に、その方の生活リズムや、性格、仕事の事、家族の事を聞き取り受入の準備をしてくれました。受入前の聞き取りで分かった事は、暴力行為がある時の共通点です。時間は明け方であること、夜間専門スタッフが介護している時でした。専任の居室担当を決め、あまり多くのスタッフが関わらないようにした結果、落ち着いて、一週間、一ヵ月、一年と過ごしています。なぜ、明け方に暴力行為をしてしまっていたのか?それは、泥棒と勘違いしていたようです。聞けば以前、ご自宅で泥棒被害に遇われた事があったそうです。
共生社会を目指して
問題行動といわれるものには、何かしら理由がある事が多いものです。認知症介護においては特に、その人を知ることが大切なのです。認知症患者を抱えるご家族は大変だと思います。また、認知症である本人も苦痛である事は間違いありません。認知症は恥ずかしい事ではありません。誰もが成り得る病気です。国も超高齢化社会を迎えるにあたり認知症施策に力を入れています。
『認知症の人やその家族が地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるためには、認知症への社会の理解を深め、地域共生社会を目指す中で、認知症があってもなくても、同じ社会の一員として地域をともに創っていくことが必要である。』と考え介護サービスの見直しを行っています。
もし、今、ご家族が認知症を発症し悩まれている方がいらっしゃいましたら、かかりつけ医や地域包括支援センターに是非ご相談ください。認知症の進行を少しでも遅らせることが可能です。色々な選択肢があるはずです。是非ご検討下さい。
㈱ASFON CALLCENTER 二見 幸恵
老人ホームの食事パート2
高齢者にとって、もう一つの重要な食事があります。
今までは、老人ホームでの食事の楽しさについて伝えてきましたが、次に高齢によってみられる「飲み込む」動作の低下から起こる「嚥下障害」に対応した安心を考えた老人ホームの食事ついてお伝えします。
「嚥下」とは、口の中にある食べ物を飲み込み、胃の中に送る一連の動作を指す言葉です。何らかの要因によって嚥下が上手く行なえなくなる状態を「嚥下障害」と呼びます。「嚥下状態」になると、食べ物を口にしたときは、最後までうまく飲み込むことができず途中でむせるようになります。そうなると、あまり噛まずに食べる麺類の食事などを好んでたべるようになるため、栄養が偏り咬合力(噛む力)が衰えます。やがて苦痛を避けるために食事量が減り、十分な栄養が摂れなくなるというスパイラルが起こります。
老人ホームの食事には「普通食」「きざみ食」「軟菜食」「ソフト食」「ミキサー食」「ゼリー食」など複数の段階に分けられ、ご本人の食べやすい段階でそれぞれの口腔状態に対応した食事を提供しています。本人の咀嚼力や嚥下機能が低下しているときは、その状態に合わせた形態の食事(嚥下食)に変える必要があります。
嚥下食とは、普通の食事を食べやすい形に加工したものを指します。この嚥下食は、それぞれの機能の状態に合わせて変化させます。
老人ホームの食事には様々な食事形態がある
「きざみ食」とは
飲み込む力があるものの、噛むことが難しくなっているという状態向き。一般的には野菜や肉などの食材をおよそ2ミリから3ミリ程度まで刻んで飲み込みやすくします。
「ソフト食」とは
歯がない方や噛む力が著しく低下した場合、舌でつぶせる硬さの食事。食材を一度ミキサーにかけたあと、食べ物本来の形に似せて固めるため、できるだけ通常の食事の見た目に近づけているのが特徴。
「ミキサー食」とは
噛むことが難しく、飲み込む力が弱くても食べやすいように食事をミキサーにかけてペースト状にした食事。ミキサー食は水分が多く、液体状は誤嚥をしやすい為、とろみ剤でとろみをつけ食べやすい状態にします。
「ゼリー食」とは
飲み込む力がかなり低下した状態に合わせて口内でつぶさなくても飲み込めるのが特徴。普通食やソフト食などをペースト状にしてからゼラチンや寒天などでゼリー状に固めたもの。誤嚥性肺炎(※飲み込みに関する嚥下機能が弱まって食べ物を飲み込むときに誤って気管に入ってしまうこと)を防ぐためにも入居者が美味しく安全に食べやすい食事形態に工夫されています。
「嚥下食」とは
何より大切な食べる意欲が湧く為に、食べやすさだけでなく見た目にも食べたくなる食事になるように工夫が施されています。見た目と味の両立が大切です。
さらに「糖尿病」や「腎臓病」「脳血管疾患」などご病気に合わせた治療食も用意されています。エネルギーや栄養素など制限のある食事で、ご病気に応じた食事療法を必要とする食事の治療食にも対応します。
例:エネルギー制限、たんぱく質制限、塩分制限、糖質制限など。
糖尿病の方にはエネルギーを制限した糖尿病食が腎臓病の方にはたんぱく質やカリウムなどを制限した腎臓病食などの提供が可能です。
ただ、治療食で厳密な食事制限を必要とするときは、対応できないホームもありますので、事前に確認をさせていただきます。
最後にお酒の話です
最後に老人ホームの食事に伴う「飲酒」についてです。晩酌程度に、食事のときに1杯だけでも、お酒の好きな方にとっては(そのご家族は)今までの生活同様に飲酒ができるかどうかはホーム選択の際の優先順位の高い位置にあがります。
ホームは病院ではないので、なるべく今までのご生活を主軸に過ごしていただきたい場所ですが、同時に共同生活の場でもあるため、他の入居者に「ドクターストップがかかってアルコールが好きなのに飲めない人がいる」「度を越して飲む人がいると周りに迷惑がかかる」という観点から、各ホームによって飲める場所に制限があったり、飲みすぎを防ぐためにもホーム内で本数を管理させていただくなど考えは様々です。
例えば、ダイニングでは透明なコップではなく、銅などの見えないグラスに変えて飲んでいただくとか、共用部では匂いで分かる方もいるため、ご自身の居室内でのみ楽しんでいただくとかです。
中には、飲酒は全面不可というホームもありますが、お酒は活力、最大の楽しみという方に飲んでいただけるように、周囲に配慮しながらもできる限りの中で楽しんでいただけるようになっているホームもたくさんあります。
老人ホームの食事がホーム選びのポイントの1つになることは十分あります。
ご見学時に試食ができるホームがほとんどですので、ご家族も1度召し上がっていただくことをオススメします。
老人ホームの食事パート1
老人ホームの食事パート1
老人ホームの食事といわれてみなさんはどのようなものをイメージされますか?
正直、私自身もホームの試食会で(実際のメニュー)食事をいただくまでは、「薄味」「味気ない」「病院食」のようなという少しマイナスなものをイメージしていました。
老人ホーム探しにおいて、相談者の方から
「毎日の生活で楽しみといったら3食の食事ですよね」。
「今、入院中で病院の食事は合わないのかほとんど食べないです」。
「1人暮らしで美味しくないと食べないので食べる量が減っていて」。
「なぜか最近食べたがらない・・・」。
などの心配から老人ホームの食事に関するご希望やご質問を多くいただきます。そこで今回は老人ホームの食事についてお伝えしていきます。
老人ホームの食事提供の運用方法とは
- 自社で厨房を運営して食材の仕入れまで行っているホーム。
- 外部の給食会社に委託して厨房で調理してもらうホーム。
- 外部に調理を委託しているホーム。
に大きく分かれます。
中でも特に食事に力を入れているホームでは、様々な特徴を打ち出し、入居者の方にホームでの食事が楽しみになるような工夫が施されています。
具体的な取り組みの1つには「セレクト食」があります。朝食は和食、洋食から選べ
昼食、夕食では肉料理、魚料理から選択できるホームもあります。 また、決まったメニュー以外に数種類(そば、うどん、カレー、親子丼、サンドイッチ、パスタ、ラーメン、オムライスなど)の食に対応ができ、その日の気分や好み、今日は暑いから、などの食欲に合わせた選べるメニューを用意しているホームもあります。
イベント食
食事のマンネリ化を防ぎ、季節を感じられる老人ホームの食事として「イベント食」を企画しているホームも数多くあります。お正月、節分、ひな祭り、七夕、お誕生日会、敬老の日、クリスマスなどの行事に合わせたイベント時には、特別メニューを用意して豪華なお膳やステーキ、寿司バイキング・うな重などで楽しんでもらいます。
また、食のイベントとして「蕎麦打ち」や「まぐろの解体ショー」などをホーム内で行い、実体験の楽しさと美味しさを同時に感じてもらう機会を設けているホームもあります。
更に、ホームによっては「外食レクリエーション」と称して、近所の喫茶店、レストラン、お寿司屋さんなどへ出向き食事の楽しみの幅を広げています。
栄養バランスを考えた食事の提供
老人ホームの食事は、見た目の彩りとしっかりカロリー計算のされた栄養バランスの良い食事が提供されています。バランスの良い食事とはたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の必要量を満たしている食事のことを指します。一例としては、朝食は パン、オムレツ、野菜のコンソメスープ、大根サラダ。昼食は、ご飯、味噌汁、豚肉と蓮根煮、豆腐の蟹あんかけ、フルーツ。夕食は、ご飯、味噌汁、鰆の柚子胡椒焼き、里芋のそぼろあんかけ、胡瓜とワカメの酢の物。という具合で、1日1500cal前後の栄養となります。丁寧に対応しているホームでは、温かいものはちゃんと温かく、冷たいものは、冷たい状態で提供されます。
このように各ホームでは、生活の中の楽しみである食事について、様々な工夫がされ日々提供されておりますが、背景には、食欲増進を意図としています。食事に関心を持ち、放っておくと食べる意欲の低下による栄養不足が進み、機能低下を招くなどの状態を防ぐためにも、老人ホームの食事を食べたくなるような食事にするには、栄養管理はもちろんですが、意欲持って美味しく楽しんで食べられる目線で各ホームは特徴を出されています。
食事の効用、オープンキッチンの老人ホームも
実際に、1人暮らしで食事のバランスが取れていなかった方がホーム入居され半年程
経った頃、ご家族の方が面会に訪れた際、お孫さんが「おばあちゃん肌ツヤが1人暮らしの時より良くなったね」と声をかけられたそうです。色々な要因があると思いますが、食事が美味しいとご本人が仰られていると聞きました。
私たち相談員もお客様の見学に同行させていただく際やホームの食事試食会の場で実際の食事をいただける機会が多いのですが、老人ホームの食事について、数あるホームの中でも特に印象深かったホームの食事があります。
そこは神奈川県内の西に位置する40人規模の小さなホームなのですが、こちらでは入居者の食事の様子が見られるように、また入居者からも調理の様子が分かるようにオープンキッチンの体制をとっています。食事は、各ホーム通常2時間位(例:朝食7時30分~9時30分)の決まった時間の中で召し上がっていただくのですが、皆さん時間差でバラバラに着席されます。そんな中で、こちらのホームでは入居者のご様子が一目瞭然な事もあり、天ぷらなどのメニューのときは、お1人お1人が席に着かれてから天ぷらを1つ1つ揚げ始め、まさに揚げたてを個別に運ぶので温かいだけでなく、作り立てを美味しく召し上がっていただく配慮がされていました。
さらに自社農園を持っており、レクリエーションの中で、入居者が一緒に畑仕事をして収穫したとれたての新鮮な野菜もその日の食卓に並びます。ドレッシング(試食させていただいた日は人参ドレッシング)も手作りで、その日の取れたてを厨房で調理したものを提供していただいたので人参本来の甘みを感じる程の美味しさでした。
お話しを伺う中で、最も驚いたことは、ある入居者の方が短期間入院をされ、ホームに戻った際に食欲が低下しているのをみた料理長が、通常のメニューではなく、普段からご存じだったその方の大好物である“おはぎ”を急遽特別に手作りして出したそうです。その方は、とても喜んで完食されたそうでした。
厨房で働く調理スタッフも日常の食事時間の中で、誰が何をお好きかまでご家族のようにひとり一人の嗜好を把握されているとの事でした。
また別のホームでは、ご家族と会えない(中にはご自宅に帰られる方もいます)お正月をホームで過ごす入居者ひとり一人に三段重ねの手作りの「おせち」が用意されていました。ホーム長のご家庭に引き継がれたおせちの味を再現されて、少しでもご家庭の味を感じていただきたいとの心配りからでした。
老人ホームの食事パート2に続く。
気になる老人ホームの過ごし方
老人ホームの一日の説明です。早朝から深夜に至るまで、老人ホームでは、一体、何が行なわれているのか?ということを説明させていただきます。分かっているようでわかっていない老人ホームの実態。この機会にぜひ、老人ホームの1日をご理解ください。
1日の過ごし方の流れ
★モーニングケア 6:30~7:00
起床からの準備をお手伝いいたします。起床の時間が必ずしも皆様一緒ではありませんが、朝食が始まる前にお声がけをいたします。着替えや洗顔等、その方のお身体の状況に合わせてお手伝いもさせて頂きます。
認知症の症状として日にちや時間の感覚が薄れるものがあります。スタッフの「おはようございます」の朝の挨拶やパジャマ(寝巻き)から普段着に着替えることで一日の始まりを意識ができるようになります。今は寝る時間ではないと覚醒して頂く事によって認知症予防にも繋がります。
★朝食 7:00~
基本的には食堂で食事を提供いたします。食堂までお一人でお越しになる方や、介護士が付き添ったり、車椅子でサポートしたりとその方に合わせてケアを行ないます。(体調が優れない日はお部屋でお召し上がり頂くケースもございます。誤嚥等のリスクがある為、特別なケース以外でお部屋での食事は難しい施設が多いです)また、施設によって時間は多少異なります。
食品衛生法上、2時間以内の廃棄をしなければならないため、自由に食事時間を設けている施設でもある程度の時間は決まってきます。食事前には唾液を増やす運動等も行っている施設があり、誤嚥の予防にも気を付けています。施設によっては和食と洋食が選べたり、パンにできたりと、今までの食生活を大きく変えずにできるところもあります。
食堂での食事のメリット
食事をするためには食堂に行かなければなりません。ということは、歩ける方は最低でも1日3回はお部屋から食堂までの移動が発生いたします。車椅子の方でもベッドから移動して起きている姿勢を保つ時間が長くなったりと、自然と運動量が増えていきます。
最近はお一人で食事を摂る高齢者が増えています。1人で食べると簡素になったり、同じもの(自身の好きなもの)ばかりになったり、美味しさが感じられなくて食事が進まなかったりとマイナス面が多いと言われています。施設ではご性格やお身体の状態で、なるべく合いそうな方と一緒に食事が出来るようにサポートいたします。お話しする中で自然と箸が進み、お一人で食べるより食事量が上がる方が非常に多いです。食べる量が増えると筋肉や内臓への刺激に繋がり、有料老人ホームに入居されて顔色が良くなる方が非常に多いです。
★お茶の時間 10:00~
ご高齢の方は喉の渇きや気温に対して、気付く事が遅れる場合があります。また、外出先でトイレに行くことを嫌って水分をあえて控える方もいらっしゃいます。熱中症、脱水症が高齢の方に多いのはこのような原因が考えられます。
一定の水分量の確保が認知症予防にも効果があると言われています。施設では決まった時間に水分補給を行ない、飲んだ量も記録しています。この時間にラジオ体操のような簡単な体操を行なったり、入浴を行なったり、施設によって異なります。
★昼食 12:00~
有料老人ホームでは活動量が一番多いお昼の時間の食事が一番豪華な施設が多いです。外に出られない方が多いので、季節を感じて頂くために、お正月はおせちや端午の節句、敬老の日など、イベント食と言われる食事が月1回程度提供されます。
★レクリエーション 14:00~
体操や生け花、カラオケ、書道、日々のレクリエーションに加えて、運動会やお花見などの大きなイベントも行います。レクリエーションが施設の特徴が比較的わかりやすいかもしれません。お身体の状態でフロアごとに異なったレクリエーションを行なったり、競争意識を高めるためにゲーム性のあるレクリエーションを行なったり、入居されてる方に運動がお好きな方が少ないところですと書道や生け花・ネイル教室など文化的なレクリエーションを多く行なっていたりしています。
どうしても大人数と過ごすことが苦手な方や参加したくないレクリエーションの日はお部屋でお休みになったり、別の場所で静かに過ごしたりすることも可能です。
レクリエーションのメリット
音楽や人との会話など脳への刺激は認知症予防に効果的で、レクリエーションがその代表と言えます。認知症状がある方も比較的不安になる事が多い夕方の時間に入居者様やスタッフといることで安心される方も多いです。
食事の時もお部屋から食堂まで移動しますが、レクリエーションの時も食堂で行なう事が多く移動が伴います。またレクリエーション時にも体を動かして頂くので、楽しみながら運動量がアップします。高齢になると様々な理由で夜お休みに慣れない事が多くなります。レクリエーションを行なう事で体を疲れさせて、睡眠薬になるべく頼らない自然な睡眠を促します。また、質の良い睡眠は認知症予防にも効果が実証されています。夜に良くお休みになって、日中はまた活動的に過ごす、良いサイクルでの生活が可能になります。
★おやつ 15:00~
レクリエーションの前後でおやつタイムがあります。施設によってはおやつを選べたり、またはレクリエーションとして入居者様でホットケーキなどのおやつを作ることもあります。イベントではデザートビュッフェを行なっている施設もあります。この時に水分補給も忘れずに行います。
★夕食 17:30~
朝・昼食と同じく食堂で召し上がっていただきます。
★ナイトケア 20:00~
モーニングケアと同じく、パジャマ(寝巻き)の着替えなどをその方のお身体の状況に合わせてお手伝いもさせて頂きます。廊下の照明は暗くなりますが、お部屋での過ごし方は自由になりますので、テレビを見たり本を読んだり、その方に合ったタイミングでお休み頂きます。このスケジュールの間に口腔ケア(歯磨き)や入浴(介護付有料老人ホームは週2回が基準)などの生活のお手伝いや、訪問診療、訪問理美容もあります。
老人ホームの生活にどんなイメージをお持ちでしたか?
介護付有料老人ホームの一日はどこの施設も基本的には同じスケジュールでのご生活になります。私たちのご相談頂く方には「老人ホームに入所すると認知症が進行する・身体機能が低下する」と不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。
介護付有料老人ホームの生活はかなり活動的で刺激のある生活になるかと思いませんか?生活スケジュールとして行う事で、入居されてる方も「やらされている感」なく自然に運動量や食事量が上がることは非常に良い面かと思います。また、「今まで一人で暮らしてきたから共同生活は難しいと思う」という不安を抱えてる方もいらっしゃいます。
今回は介護付有料老人ホームの一日の流れをご紹介いたしましたが、スケジュールに縛られずに自由に過ごせて、今までのライフスタイルをあまり変えないで生活頂ける施設もございます。食事やレクリエーション、他にも介護や医療のサポート等、施設の特色は多種多様です。しっかりと比較してホーム選びをして頂ければと思いますし、その際は是非有料老人ホーム紹介センターをご利用くださいませ。
(文:みんかい関東エリア 渡邊相談員)
老人ホームの暮らしの中で行うレクリエーションの効果とは?
老人ホームの暮らしの中で行うレクリエーションの効果とは?
老人ホームやデイサービスでレクリエーションを行っている理由をご存じでしょうか。初めて老人ホームやデイサービスを探されるお客様は、気分転換のために取り入れられているだけだと思われている方が多いと感じています。
もちろん、気分転換を図ることも理由に上がりますが、レクリエーションを取り入れるのには他にも以下の理由があります。
1、身体の機能を維持するため。
2、脳の機能を維持するため。
3、他者との交流の機会をつくるため。
こうやって言われてみれば、「当たり前ね。」と思われるかもしれませんが、今回はそれぞれの目的と実際にどんな事が行われているのか、1つずつ見ていきたいと思います。
身体の機能を維持するため
老人ホームやデイサービスで行われるレクリエーションの1つ目の理由は、身体の機能を維持するためです。高齢者の体をしっかりと動かすことで、体に残っている機能を長期的に維持することを目指します。また、レクリエーションにも上半身や下半身などに焦点を当てて体を動かすものもあれば、足や体幹のバランスを使って体を動かすものもあります。
例えば・・・。よく取り入れられる老人ホームのレクリエーションの1つに椅子に座ったまま出来る体操があります。足腰が弱くなってきた方でも椅子に座りながら腕上げ運動や、太もも上げ・つま先上げ運動が行えるので安全性もあります。運動不足になると、筋力が低下するだけでなく、脳への刺激が減り、認知症を発生させてしまうと言われています。体操を取り入れる事で、身体機能の維持だけでなく脳の機能維持にも繋がっていきます。
老人ホームの内覧会に行くと、体験レクリエーションがある為、何度か、参加させてもらったことがありますが、しっかりと筋力を使うので、続けていると汗をかいてきます。日頃の運動不足を痛感します。また、足腰がしっかりしている方には、散歩を取り入れたり、麻痺が残る方には補助具を使って拘縮を予防する動きを取り入れたりなど老人ホームによってもレクリエーションメニューは様々あります。
リハビリと何が違うの?身体の機能を維持するためなら、リハビリをすれば良いのでは?と思われる方が多いと思います。確かにリハビリは機能回復・維持のためのものですが、老人ホームやデイサービスで行われているリハビリは機能維持を目的としているものが多く、リハビリテーション病院のように回復を目的として毎日1日何時間も1人だけに専門の職員を配置するわけにはいきせん。
特に老人ホームの場合は入居者の定員が60名前後のところが多いので、リハビリをうたっていても、個別に換算すると1週間のうち1~2回が限度です。そこで、日常生活の中の居室から食堂までの移動の時や、レクリエーションメニューの中に取り入れて身体の機能維持に努めています。個別対応では、限界があるものも、レクリエーションを通して大勢で行えれば、高齢者のやる気やモチベーション維持にも繋がっていきます。
脳の機能を維持するため
老人ホームやデイサービスで行われるレクリエーションの2つ目の理由は、脳の機能を維持するためです。身体機能維持の為のレクリエーションとは違い、計算力や記憶力などの脳の機能を活性化させることを目指します。
例えば・・・。よく取り入れられる老人ホームのレクリエーションの1つに脳トレがあります。脳トレと言っても計算ドリルや漢字ドリルなどの勉強のようなものだけではありません。脳を使うトレーニング全般を表します。身体を動かすのにも、記憶をたどるのにも脳は使います。また、自分の考えを言葉にしたり、他の人とコミュニケーションをとるのも非常に脳を使います。もう少し細かく「頭を使う脳トレ」「体を使う脳トレ」「言葉を使う脳トレ」に分けて説明していきます。
「頭を使う脳トレ」は、先にも上げた、計算ドリルや漢字ドリルを使って問題を解いていく形式のレクリエーションです。大勢の方と一緒に何かをするのが得意でない方も一人で集中して取り組めるため人気があります。最近では、教科ごとのテキストで、老人ホームの施設長が先生となってホワイトボードを使って授業をするというようなところも増えてきました。レクリエーションに参加するというより、学校に通っている頃を思い出せて楽しいとおっしゃる方が多く、参加率が良いそうです。ただ、“問題を解く”という作業だけという意味では、内容を変えてもやっていることは同じなので、レクリエーションとしてマンネリ化しやすく、活動量も低いので身体機能の維持としては使いにくいということがあります。
「体を使う脳トレ」は、考えながら体を動かすことで体と脳の両方を活性化させる形式のレクリエーションです。例を挙げると、右手と左手で違う動作をする体操です。これについては、テレビ番組でも“グーパー体操”等と取り上げられることもあるので、実際にチャレンジしてみた方も多いのではないでしょうか。
前に出した手はパー、胸に近づけた手はグーにし、リズムに合わせて交互に入れ替えるという単純作業なのですが、難易度が上がる“じゃんけん体操”等になると一気に難しくなります。右手は常に左手に勝たなければなりません。レクリエーションスタッフの合図で左右逆になったり、足の動きがついたりします。老人ホームのレクリエーション体験でもやりましたが、最初は順調にスタートしても、最終的に動きが一緒になっていくのは何なのでしょうか。静かに落ち込みます。
「言葉を使う脳トレ」は、しりとりや回想を使ったゲーム等、集団で何かに取り組む事で利用者同士のコミュニケーションが生まれ、脳の活性化を助けてくれる効果があるとされています。声に出す事が大切で、ゲーム以外にもカラオケをレクリエーションメニューの中に入れている老人ホームやデイサービスは非常に多いと思います。
他者との交流の機会をつくるため
老人ホームやデイサービスで行われるレクリエーションの3つ目の理由は、他者との交流の機会が持てることです。介護が必要になると、今まで通りに友人や知人と会う機会が減り、レクリエーション活動を楽しめなくなってしまう方がたくさんいます。家族と同居していない方は特に他者との交流が減ります。同居していても、家族が日中仕事で外に出ていて一人になる時間が多ければ同じですね。そのような方にとっては、レクリエーションによって他の老人ホーム入居者やデイサービス利用者とコミュニケーションをとる機会が生まれることになります。レクリエーションを通じて仲良くなり、自宅で1人孤独感を感じていた方も生活の中に刺激が生まれ、楽しみに変わっていくことも多いです。
老人ホームでは、入居者同士で仲良くなった方が声を掛け合って一緒にレクリエーションに参加する方もいますが、大勢の方と一緒に何かをするのが得意でない方も介護スタッフとコミュニケーションを取るので、レクリエーションへの参加の声掛けは大事にされているそうです。他者との交流という点では、最近では地域との交流の機会や場所を設ける老人ホームも増えてきました。新規オープンの老人ホームですと、平面図に「地域交流スペース」と明記されているところもあります。1ヶ月のイベントを記載したレクリエーションメニューにも「地域交流」などと記されています。地域の高齢者の方向けに開かれた生け花教室や囲碁将棋クラブなどに入居者も参加して交流を図り、老人ホームという限られたコミュニティだけではなく広いコミュニティを提供してより刺激のある生活を送ってもらうためです。残念ながら昨今は新型コロナウイルスの影響でそういった場を開く事が困難となってしまったので、この状況が少しでも早く落ち着いてほしいと願うばかりです。
このように、老人ホームやデイサービスで行っているレクリエーションには気分転換以外の理由があります。介護現場で働くスタッフの方にとって日々のレクリエーションメニューを考えることは、飽きがこないように考えたり、新型コロナウイルスのような感染症予防の観点から安全なレクリエーションは何かを考えたりと大変なことではあるのですが、老人ホーム入居者やデイサービス利用者の身体や脳機能の維持、他者との交流で刺激のある生活を送ってもらうために考えられています。
レクリエーション有益情報
昨今コロナ禍で外出イベントや外部からの講師を呼んだレクリエーションが出来ない中、老人ホームが実施していて「これは良いな」と感じたレクリエーションを紹介したいと思います。
そのレクリエーションの明確な名称ではありませんが、表現するとすれば「ウォーキングチャレンジ」です。
出発地点を老人ホーム(東京)とし、ゴール地点(箱根)を決め、そこまで歩いていきましょうというものです。とは言っても実際に箱根まで歩くわけではありません。スタートからゴールまでの距離を計算して、チェックポイントをいくつか置き、参加者には万歩計を渡して歩数によってすごろくのように進んでいきます。コロナ禍でも身体機能の低下を防ぐこと、家族との面会にも制限がかけられて刺激のない生活から何かモチベーションになるものをとしてスタートしたそうなのですが、想定より参加者が多いそうです。そしてあっという間に箱根まで到達してしまった方もいるそうです。みなさん日頃の運動不足を解消したいという気持ちと、ゴールを目指すというモチベーションで頑張っていらっしゃるのだそうです。その老人ホームでは、東海道五十三次コースも作っていました。
老人ホームやデイサービスのレクリエーションはどれも同じでしょうと思われることも多いですが、何か皆さんの気持ちを盛り上げられるものをやりたいという老人ホーム側の想いが見えて、改めてレクリエーションの大切さを学びました。
これから実際に老人ホームやデイサービスを検討しようと考えている方には、ここまで挙げたレクリエーションを行っている理由を念頭に、ぜひどんなレクリエーションを行っているのか、どんな思いでレクリエーションメニューを考えているのか聞いてみてもらいたいと思っています。
(文:みんかい関東エリア 村上相談員)
意外とできることも多い!有料老人ホームのくらし
皆様は有料老人ホームの生活にどんなイメージをお持ちですか?
相談員が家族や本人にお会いした時、はじめに有料老人ホームに対する印象について伺うと
「ルールや制限が多そう」
「何もしなくなる(できなくなる)のでは」
「なんか暗そう、気が滅入っちゃいそう」
という声を聞くことがあり、昔の老人ホームのイメージが今も根強く残っていると感じます。
最近の有料老人ホームでは、≪ありのまま、自分らしい生活≫に趣を置いているところも多く存在します。
例えば、「父親はたばこを毎日吸っているが、施設に入居したら禁煙しなければいけないのか。」
という相談で、実際に探してみると、喫煙可能な有料老人ホームは多く、中にはホーム内に喫煙ルームを
設けているところもありました。
自宅ではごく自然で本人にとっては当たり前の生活ですが、家族にお話しすると
「え!老人ホームでも続けてもいいのですね。」と驚かれていました。
ここでは、このようにお客様が実際に驚かれた、イメージとは異なった
有料老人ホームの対応に関していくつかご紹介させていただきます。
と、その前に・・・
なぜ老人ホームはイメージが悪いのか? (イメージと現状に差があるのか?)
まず、多床室で暗い場所などの印象をお持ちの方は、直近で介護施設に携わったことがなく、
自身が若い頃に家族や親戚が入っていた病院のような昔の施設の印象がずっと残っていると考えられます。
また、実際に公的施設を利用された経験のある方にはその時の印象が強い方もいます。
例えば、特別養護老人ホームは要介護度が高い方しかご入居できないため介護職員の人手がいくらあっても足りず、
介護をするのに精一杯で柔軟に一人一人の要望を聞くのは難しい状況です。
老人保健施設やショートステイのような短期入居を目的としているところも同じで、食べ物の持ち込みの禁止、
持ち物や酒たばこの制限など、入居者と施設側の安全を守るために制限をしっかりと設けているところが多いです。
その一方で民間施設である有料老人ホームは、競争が激しく競合他社と差別化が必要なため、
厚生労働省で決められた基準を満たした上で様々なサービス内容の工夫をしています。
例えば、
・入居条件が自立や支援から可能であったり、
・介護職員の人員配置の手厚さや
・設備、医療体制など、
運営会社が経営方針の基、幅広くサービスを展開することができます。
そのため、有料老人ホームでは≪ありのまま、自分らしい生活≫ができるホーム探しを実現できます。
実際にお客様からご要望があった質問をまとめてみました。
老人ホームってどんなところ?
1、老人ホームってどんなところ?自由に外出・外泊したい!
許可をしているホームは多いです。
(自身で外に出ることが難しい場合は家族の協力が必要です。)
入居者の中には、家族が面会に来た際に外食へ行ったり、友達とおでかけに行ったり、
年末年始は家族と自宅で過ごされる方や、家財整理のため毎週自宅に帰る方もいらっしゃいました。
老人ホームに入居したからと言って家に帰れない、外に出られないわけではありません。
2、老人ホームってどんなところ?お気に入りの家具や好きなものを持ち込みたい!
火が出るものや刃物以外は大体お持ち込みができます。仏壇を持ち込みたい(ろうそくや線香は電子タイプを使用)、
お気に入りの絵画を飾りたい、マッサージ機を置きたい、毎日お化粧をしたいから化粧品を・・・など、
様々な方がいらっしゃいます。
冷蔵庫を居室内に置き、ごはんのお供に梅干しやふりかけを持ち込まれる方や好きな時にジュースや
お菓子を召し上がる方もいらっしゃいました。自分の部屋ですから、自分らしい生活をするために
こだわりの物がございましたら是非遠慮せずホームに相談を!
3、老人ホームってどんなところ?毎日お酒を飲みたい!
入居者の中には病気で禁酒している方がいる場合もあるので配慮も必要ですが、
例えば、夕食時に缶ビールでお出しするのではなくコップに注ぐ、部屋の中だけで飲んでもらう、
酒類はすべてスタッフがお預かりをするなど、あれやこれやと色んな方法を考え飲酒を可能にしている
老人ホームは多々あります。バーカウンターを設けている老人ホームでは、夜にお酒好きな入居者達が
集まり日々利用しているところもあります。
4、老人ホームってどんなところ?長年通っていた病院に通い続けたい!
特に高齢者の方ですと、何年もこの病院、この先生に診てもらっている・信頼していると話される方は多いです。
有料老人ホームには、往診医がついているところがほとんどで、主に内科の先生が月2回の定期受診と24時間
緊急対応をします。
しかし、こだわりの病院を変えたくないという方は、老人ホームと話し合いの元、通い続けることもできますし、
特定の病気によってはむしろそれが必要になることもあります。病院への通院は家族の協力が必要になるケースが多いですが、
老人ホームの中には、有料で通院をサポートしたり、協力医療機関の病院なら無料で送迎同行をしてくださるところもございます。
(文:みんかい 平野晃子)