老人ホームの食事パート1
老人ホームの食事といわれてみなさんはどのようなものをイメージされますか?
正直、私自身もホームの試食会で(実際のメニュー)食事をいただくまでは、「薄味」「味気ない」「病院食」のようなという少しマイナスなものをイメージしていました。
老人ホーム探しにおいて、相談者の方から
「毎日の生活で楽しみといったら3食の食事ですよね」。
「今、入院中で病院の食事は合わないのかほとんど食べないです」。
「1人暮らしで美味しくないと食べないので食べる量が減っていて」。
「なぜか最近食べたがらない・・・」。
などの心配から老人ホームの食事に関するご希望やご質問を多くいただきます。そこで今回は老人ホームの食事についてお伝えしていきます。
老人ホームの食事提供の運用方法とは
- 自社で厨房を運営して食材の仕入れまで行っているホーム。
- 外部の給食会社に委託して厨房で調理してもらうホーム。
- 外部に調理を委託しているホーム。
に大きく分かれます。
中でも特に食事に力を入れているホームでは、様々な特徴を打ち出し、入居者の方にホームでの食事が楽しみになるような工夫が施されています。
具体的な取り組みの1つには「セレクト食」があります。朝食は和食、洋食から選べ
昼食、夕食では肉料理、魚料理から選択できるホームもあります。 また、決まったメニュー以外に数種類(そば、うどん、カレー、親子丼、サンドイッチ、パスタ、ラーメン、オムライスなど)の食に対応ができ、その日の気分や好み、今日は暑いから、などの食欲に合わせた選べるメニューを用意しているホームもあります。
イベント食
食事のマンネリ化を防ぎ、季節を感じられる老人ホームの食事として「イベント食」を企画しているホームも数多くあります。お正月、節分、ひな祭り、七夕、お誕生日会、敬老の日、クリスマスなどの行事に合わせたイベント時には、特別メニューを用意して豪華なお膳やステーキ、寿司バイキング・うな重などで楽しんでもらいます。
また、食のイベントとして「蕎麦打ち」や「まぐろの解体ショー」などをホーム内で行い、実体験の楽しさと美味しさを同時に感じてもらう機会を設けているホームもあります。
更に、ホームによっては「外食レクリエーション」と称して、近所の喫茶店、レストラン、お寿司屋さんなどへ出向き食事の楽しみの幅を広げています。
栄養バランスを考えた食事の提供
老人ホームの食事は、見た目の彩りとしっかりカロリー計算のされた栄養バランスの良い食事が提供されています。バランスの良い食事とはたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の必要量を満たしている食事のことを指します。一例としては、朝食は パン、オムレツ、野菜のコンソメスープ、大根サラダ。昼食は、ご飯、味噌汁、豚肉と蓮根煮、豆腐の蟹あんかけ、フルーツ。夕食は、ご飯、味噌汁、鰆の柚子胡椒焼き、里芋のそぼろあんかけ、胡瓜とワカメの酢の物。という具合で、1日1500cal前後の栄養となります。丁寧に対応しているホームでは、温かいものはちゃんと温かく、冷たいものは、冷たい状態で提供されます。
このように各ホームでは、生活の中の楽しみである食事について、様々な工夫がされ日々提供されておりますが、背景には、食欲増進を意図としています。食事に関心を持ち、放っておくと食べる意欲の低下による栄養不足が進み、機能低下を招くなどの状態を防ぐためにも、老人ホームの食事を食べたくなるような食事にするには、栄養管理はもちろんですが、意欲持って美味しく楽しんで食べられる目線で各ホームは特徴を出されています。
食事の効用、オープンキッチンの老人ホームも
実際に、1人暮らしで食事のバランスが取れていなかった方がホーム入居され半年程
経った頃、ご家族の方が面会に訪れた際、お孫さんが「おばあちゃん肌ツヤが1人暮らしの時より良くなったね」と声をかけられたそうです。色々な要因があると思いますが、食事が美味しいとご本人が仰られていると聞きました。
私たち相談員もお客様の見学に同行させていただく際やホームの食事試食会の場で実際の食事をいただける機会が多いのですが、老人ホームの食事について、数あるホームの中でも特に印象深かったホームの食事があります。
そこは神奈川県内の西に位置する40人規模の小さなホームなのですが、こちらでは入居者の食事の様子が見られるように、また入居者からも調理の様子が分かるようにオープンキッチンの体制をとっています。食事は、各ホーム通常2時間位(例:朝食7時30分~9時30分)の決まった時間の中で召し上がっていただくのですが、皆さん時間差でバラバラに着席されます。そんな中で、こちらのホームでは入居者のご様子が一目瞭然な事もあり、天ぷらなどのメニューのときは、お1人お1人が席に着かれてから天ぷらを1つ1つ揚げ始め、まさに揚げたてを個別に運ぶので温かいだけでなく、作り立てを美味しく召し上がっていただく配慮がされていました。
さらに自社農園を持っており、レクリエーションの中で、入居者が一緒に畑仕事をして収穫したとれたての新鮮な野菜もその日の食卓に並びます。ドレッシング(試食させていただいた日は人参ドレッシング)も手作りで、その日の取れたてを厨房で調理したものを提供していただいたので人参本来の甘みを感じる程の美味しさでした。
お話しを伺う中で、最も驚いたことは、ある入居者の方が短期間入院をされ、ホームに戻った際に食欲が低下しているのをみた料理長が、通常のメニューではなく、普段からご存じだったその方の大好物である“おはぎ”を急遽特別に手作りして出したそうです。その方は、とても喜んで完食されたそうでした。
厨房で働く調理スタッフも日常の食事時間の中で、誰が何をお好きかまでご家族のようにひとり一人の嗜好を把握されているとの事でした。
また別のホームでは、ご家族と会えない(中にはご自宅に帰られる方もいます)お正月をホームで過ごす入居者ひとり一人に三段重ねの手作りの「おせち」が用意されていました。ホーム長のご家庭に引き継がれたおせちの味を再現されて、少しでもご家庭の味を感じていただきたいとの心配りからでした。
老人ホームの食事パート2に続く。
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