みんかい | 民間介護施設紹介センター

認知症と共に生きる~認知症の種類を知る~

万一、認知症になっても、自分らしく生きていくためには・・・・。

認知症概論

総務省統計局から発表される日本の高齢者人口は、2020年10月の高齢者白書によると全人口の28.8%が65歳以上の高齢者という割合です。65歳以上人口は、団塊の世代が65歳以上 となった平成27年に3,347万人となり、団塊の世代が75歳以上となる令和7年には3,677 万人に達すると見込まれています。 その後も65歳以上人口は増加傾向が続き、 令和24年に3,935万人でピークを迎え、その後 は減少に転じると推計されています。

総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、令和18年に33.3%で3人に1人となります。令和24年以 降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、令和47年には38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されています。総人口に占める75歳以上人口の割合は、令和47年には25.5%となり、約3.9人に1人が75歳以上の者となると推計されています。

先進諸国の高齢化率と比較してみても最も高い高齢化率です。高齢化は世界規模でもこれから各国で課題となり、その中で日本は世界に先駆けて超高齢社会となった国です。

日本の平均寿命は1990年から2019年までの約30年間で約5年以上伸びています。令和元年の男性平均寿命は81.41歳、女性87.45歳です。令和47年には男性84.95歳、女性は90歳を超えると見込まれています。厚生労働省統計では平成28年に認知症が初めて脳卒中に代わって要介護原因の1位となりました。 認知症に対しては 少し進行を遅らせる薬はあるものの、いまだに特効薬は存在していません。認知症には幾つか種類があります。それぞれの特徴を簡単に説明いたします。

徘徊、物忘れ、そして暴力行為、自傷行為、認知症の様々な現象が、自分だけではなく、周囲を困惑させていきます。

アルツハイマー型認知症

記憶障害が主な症状です。脳の海馬に委縮が見られ、神経細胞の障害がおこります。日本人の多く、認知症患者の60%はアルツハイマー型といわれています。物忘れが多くなり気付かれることが多い認知症です。同じことを何度も話す、家に帰れなくなる、同じものを買ってしまう、日付や時間がわからなくなる、金銭管理や家事が出来なくなる、記憶障害に基づく妄想などの特徴があります。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血、くも膜下出血が原因となり発症する認知症です。脳梗塞で見られるような歩行障害や手足のしびれ、パーキンソン症状、呂律が回らないなどの言語障害、嚥下障害、意欲低下や感情失禁の症状も出ることがあります。突然症状が出たり、急に悪化したりするのが特徴です。ある分野の事はよくできるのに他の事は全くできないため、まだら認知といわれる事があります。

レビー小体型認知症

自律神経系にレビー小体という異常な物質が多く現れます。比較的男性多く発症すると言われます。主な症状として、実際にはないものが見える幻視、聞こえないはずの音が聞こえる幻聴が現れます。寝ているときに大声を上げる、夢を見て暴れるなどの睡眠時の異常行動も見られます。パーキンソン症状、便秘、尿失禁などの症状も現れます。

前頭側頭変性症

前頭葉と側頭葉の委縮が徐々に進行し、理性的な行動が出来なくなる、言葉が出にくくなります。ピック病は前頭側頭型認知症の一つです。ルールが守れない、他人に配慮できない、暴力的になる、こだわりが強くなる、情緒不安定になるなどの症状があります。40~60代の比較的若い世代に発症する「初老期認知症」の代表的疾患です。症状が出ていても認知症である事に気付かれず診断が遅れる場合があります。

認知症を甘く見るべきではない

認知症は、種類により特徴がある事を説明しましたが、共通するのは物忘れなどの認知力低下です。人によっては複数の型を診断されることもあります。症状は人それぞれなのです。認知症は誰もが成り得るものなのです。2020年の厚生労働省が発表した「認知症の人の将来推計について」によると、2025年には認知症有病率は20%になると推計されています。これは5人に1人の割合で認知症を患うという事です。決して他人事ではありません。自分にも、自分の家族にも起こりうる事なのです。

もし家族が認知症を発症したら、どうしますか?有料老人ホームなどの介護施設に入るきっかけの多くは認知症です。薬を飲み忘れ持病が悪化、買い物に出かけて帰ってこられない、火にかけたお鍋を忘れてボヤを起こす、誰かにお金を渡してしまう、など様々です。有料老人ホームなどの介護施設では認知症だからといって入居を拒まれる事はありません。

暴力行為はホームから入居を拒絶される可能性大

しかし、沢山の人との生活になるので、問題行動といわれる行為があると入居できない事があります。主には暴力などです。以前、弊社に相談に来られたお客様に暴力行為の症状がある方がいました。その方は、前頭側頭変性症の診断受けています。常にだれかに暴力を振るうというわけではなく、極たまに症状が出ます。ご自宅の近くで探していましたが幾つもの有料老人ホームに断られました。やはり暴力行為があるという事実を知ると、受入側も慎重になります。

やっと入居先が見つかり体験入居という形で入居を開始しました。ご家族も私共も何事もなければいいと願うばかりでした。入居後1週間、何事もなく本入居に向けて準備をしていたところ、ホームから連絡がありました。朝方、巡回に来たスタッフに暴力を振るってしまったそうです。また、一からホーム探しをすることとなりました。暴力行為がある事を言わない方が良いのではないか?言わずに入居をし、ありとあらゆる有料ホームを体験入居という形で渡り歩けば、私たちは少しでも時間が出来るのではないか?と。

しかしそれは何の解決にもなりません。環境が変わる事は認知症を患うご本人様には苦痛でしかないのです。新しい事を覚えられないのです。私たちでも、引っ越しは大変ですよね。その街で生活に必要なお店や病院を探したり、ゴミ出しのルールを覚えたり、家と駅までの効率的な道順を考えたり。病気ではない私たちでさえストレスを感じるのです。認知症患者には相当なストレスとなり、認知症が進行し、今までになかった症状が出る事もあります。ご自宅の近くに入居したいという希望を少し我慢していただき、エリアを広げて根気よく探し、新たな受入先を見つけました。

ああ・・。また、みんなを困らせてしまった。こんな状態で生きていたって仕方がない、という「やるせなさ」だけが募っていきます。

幾つもの有料老人ホームを運営し、介護保険法施行直後から有料老人ホームを運営する老舗有料老人ホームです。そのホームは認知症への取り組みに力を入れています。認知症介護の専門的な研修を受けたスタッフが勤務しています。他のスタッフにおいても介護福祉士などの資格を有したスタッフが多く勤務しているうえ、有料老人ホームを運営するための人員基準を上回る介護スタッフを雇用して介護を行っています。

受け入れる前に、その方の生活リズムや、性格、仕事の事、家族の事を聞き取り受入の準備をしてくれました。受入前の聞き取りで分かった事は、暴力行為がある時の共通点です。時間は明け方であること、夜間専門スタッフが介護している時でした。専任の居室担当を決め、あまり多くのスタッフが関わらないようにした結果、落ち着いて、一週間、一ヵ月、一年と過ごしています。なぜ、明け方に暴力行為をしてしまっていたのか?それは、泥棒と勘違いしていたようです。聞けば以前、ご自宅で泥棒被害に遇われた事があったそうです。

共生社会を目指して

問題行動といわれるものには、何かしら理由がある事が多いものです。認知症介護においては特に、その人を知ることが大切なのです。認知症患者を抱えるご家族は大変だと思います。また、認知症である本人も苦痛である事は間違いありません。認知症は恥ずかしい事ではありません。誰もが成り得る病気です。国も超高齢化社会を迎えるにあたり認知症施策に力を入れています。

『認知症の人やその家族が地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるためには、認知症への社会の理解を深め、地域共生社会を目指す中で、認知症があってもなくても、同じ社会の一員として地域をともに創っていくことが必要である。』と考え介護サービスの見直しを行っています。

もし、今、ご家族が認知症を発症し悩まれている方がいらっしゃいましたら、かかりつけ医や地域包括支援センターに是非ご相談ください。認知症の進行を少しでも遅らせることが可能です。色々な選択肢があるはずです。是非ご検討下さい。

㈱ASFON CALLCENTER 二見 幸恵