みんかい | 民間介護施設紹介センター

老人ホームでのレクリエーション

老人ホームの暮らしの中で行うレクリエーションの効果とは?

老人ホームやデイサービスでレクリエーションを行っている理由をご存じでしょうか。初めて老人ホームやデイサービスを探されるお客様は、気分転換のために取り入れられているだけだと思われている方が多いと感じています。

もちろん、気分転換を図ることも理由に上がりますが、レクリエーションを取り入れるのには他にも以下の理由があります。

1、身体の機能を維持するため。

2、脳の機能を維持するため。

3、他者との交流の機会をつくるため。

こうやって言われてみれば、「当たり前ね。」と思われるかもしれませんが、今回はそれぞれの目的と実際にどんな事が行われているのか、1つずつ見ていきたいと思います。

身体の機能を維持するため

身体の機能を維持する

老人ホームやデイサービスで行われるレクリエーションの1つ目の理由は、身体の機能を維持するためです。高齢者の体をしっかりと動かすことで、体に残っている機能を長期的に維持することを目指します。また、レクリエーションにも上半身や下半身などに焦点を当てて体を動かすものもあれば、足や体幹のバランスを使って体を動かすものもあります。

例えば・・・。よく取り入れられる老人ホームのレクリエーションの1つに椅子に座ったまま出来る体操があります。足腰が弱くなってきた方でも椅子に座りながら腕上げ運動や、太もも上げ・つま先上げ運動が行えるので安全性もあります。運動不足になると、筋力が低下するだけでなく、脳への刺激が減り、認知症を発生させてしまうと言われています。体操を取り入れる事で、身体機能の維持だけでなく脳の機能維持にも繋がっていきます。

老人ホームの内覧会に行くと、体験レクリエーションがある為、何度か、参加させてもらったことがありますが、しっかりと筋力を使うので、続けていると汗をかいてきます。日頃の運動不足を痛感します。また、足腰がしっかりしている方には、散歩を取り入れたり、麻痺が残る方には補助具を使って拘縮を予防する動きを取り入れたりなど老人ホームによってもレクリエーションメニューは様々あります。

リハビリと何が違うの?身体の機能を維持するためなら、リハビリをすれば良いのでは?と思われる方が多いと思います。確かにリハビリは機能回復・維持のためのものですが、老人ホームやデイサービスで行われているリハビリは機能維持を目的としているものが多く、リハビリテーション病院のように回復を目的として毎日1日何時間も1人だけに専門の職員を配置するわけにはいきせん。

特に老人ホームの場合は入居者の定員が60名前後のところが多いので、リハビリをうたっていても、個別に換算すると1週間のうち1~2回が限度です。そこで、日常生活の中の居室から食堂までの移動の時や、レクリエーションメニューの中に取り入れて身体の機能維持に努めています。個別対応では、限界があるものも、レクリエーションを通して大勢で行えれば、高齢者のやる気やモチベーション維持にも繋がっていきます。

脳の機能を維持するため

計算ドリル

老人ホームやデイサービスで行われるレクリエーションの2つ目の理由は、脳の機能を維持するためです。身体機能維持の為のレクリエーションとは違い、計算力や記憶力などの脳の機能を活性化させることを目指します。

例えば・・・。よく取り入れられる老人ホームのレクリエーションの1つに脳トレがあります。脳トレと言っても計算ドリルや漢字ドリルなどの勉強のようなものだけではありません。脳を使うトレーニング全般を表します。身体を動かすのにも、記憶をたどるのにも脳は使います。また、自分の考えを言葉にしたり、他の人とコミュニケーションをとるのも非常に脳を使います。もう少し細かく「頭を使う脳トレ」「体を使う脳トレ」「言葉を使う脳トレ」に分けて説明していきます。

「頭を使う脳トレ」は、先にも上げた、計算ドリルや漢字ドリルを使って問題を解いていく形式のレクリエーションです。大勢の方と一緒に何かをするのが得意でない方も一人で集中して取り組めるため人気があります。最近では、教科ごとのテキストで、老人ホームの施設長が先生となってホワイトボードを使って授業をするというようなところも増えてきました。レクリエーションに参加するというより、学校に通っている頃を思い出せて楽しいとおっしゃる方が多く、参加率が良いそうです。ただ、“問題を解く”という作業だけという意味では、内容を変えてもやっていることは同じなので、レクリエーションとしてマンネリ化しやすく、活動量も低いので身体機能の維持としては使いにくいということがあります。

「体を使う脳トレ」は、考えながら体を動かすことで体と脳の両方を活性化させる形式のレクリエーションです。例を挙げると、右手と左手で違う動作をする体操です。これについては、テレビ番組でも“グーパー体操”等と取り上げられることもあるので、実際にチャレンジしてみた方も多いのではないでしょうか。

グーパー体操

前に出した手はパー、胸に近づけた手はグーにし、リズムに合わせて交互に入れ替えるという単純作業なのですが、難易度が上がる“じゃんけん体操”等になると一気に難しくなります。右手は常に左手に勝たなければなりません。レクリエーションスタッフの合図で左右逆になったり、足の動きがついたりします。老人ホームのレクリエーション体験でもやりましたが、最初は順調にスタートしても、最終的に動きが一緒になっていくのは何なのでしょうか。静かに落ち込みます。

「言葉を使う脳トレ」は、しりとりや回想を使ったゲーム等、集団で何かに取り組む事で利用者同士のコミュニケーションが生まれ、脳の活性化を助けてくれる効果があるとされています。声に出す事が大切で、ゲーム以外にもカラオケをレクリエーションメニューの中に入れている老人ホームやデイサービスは非常に多いと思います。

他者との交流の機会をつくるため

老人ホームやデイサービスで行われるレクリエーションの3つ目の理由は、他者との交流の機会が持てることです。介護が必要になると、今まで通りに友人や知人と会う機会が減り、レクリエーション活動を楽しめなくなってしまう方がたくさんいます。家族と同居していない方は特に他者との交流が減ります。同居していても、家族が日中仕事で外に出ていて一人になる時間が多ければ同じですね。そのような方にとっては、レクリエーションによって他の老人ホーム入居者やデイサービス利用者とコミュニケーションをとる機会が生まれることになります。レクリエーションを通じて仲良くなり、自宅で1人孤独感を感じていた方も生活の中に刺激が生まれ、楽しみに変わっていくことも多いです。

老人ホームでは、入居者同士で仲良くなった方が声を掛け合って一緒にレクリエーションに参加する方もいますが、大勢の方と一緒に何かをするのが得意でない方も介護スタッフとコミュニケーションを取るので、レクリエーションへの参加の声掛けは大事にされているそうです。他者との交流という点では、最近では地域との交流の機会や場所を設ける老人ホームも増えてきました。新規オープンの老人ホームですと、平面図に「地域交流スペース」と明記されているところもあります。1ヶ月のイベントを記載したレクリエーションメニューにも「地域交流」などと記されています。地域の高齢者の方向けに開かれた生け花教室や囲碁将棋クラブなどに入居者も参加して交流を図り、老人ホームという限られたコミュニティだけではなく広いコミュニティを提供してより刺激のある生活を送ってもらうためです。残念ながら昨今は新型コロナウイルスの影響でそういった場を開く事が困難となってしまったので、この状況が少しでも早く落ち着いてほしいと願うばかりです。

このように、老人ホームやデイサービスで行っているレクリエーションには気分転換以外の理由があります。介護現場で働くスタッフの方にとって日々のレクリエーションメニューを考えることは、飽きがこないように考えたり、新型コロナウイルスのような感染症予防の観点から安全なレクリエーションは何かを考えたりと大変なことではあるのですが、老人ホーム入居者やデイサービス利用者の身体や脳機能の維持、他者との交流で刺激のある生活を送ってもらうために考えられています。

レクリエーション有益情報

ウォーキング

昨今コロナ禍で外出イベントや外部からの講師を呼んだレクリエーションが出来ない中、老人ホームが実施していて「これは良いな」と感じたレクリエーションを紹介したいと思います。

そのレクリエーションの明確な名称ではありませんが、表現するとすれば「ウォーキングチャレンジ」です。
 出発地点を老人ホーム(東京)とし、ゴール地点(箱根)を決め、そこまで歩いていきましょうというものです。とは言っても実際に箱根まで歩くわけではありません。スタートからゴールまでの距離を計算して、チェックポイントをいくつか置き、参加者には万歩計を渡して歩数によってすごろくのように進んでいきます。コロナ禍でも身体機能の低下を防ぐこと、家族との面会にも制限がかけられて刺激のない生活から何かモチベーションになるものをとしてスタートしたそうなのですが、想定より参加者が多いそうです。そしてあっという間に箱根まで到達してしまった方もいるそうです。みなさん日頃の運動不足を解消したいという気持ちと、ゴールを目指すというモチベーションで頑張っていらっしゃるのだそうです。その老人ホームでは、東海道五十三次コースも作っていました。

老人ホームやデイサービスのレクリエーションはどれも同じでしょうと思われることも多いですが、何か皆さんの気持ちを盛り上げられるものをやりたいという老人ホーム側の想いが見えて、改めてレクリエーションの大切さを学びました。

これから実際に老人ホームやデイサービスを検討しようと考えている方には、ここまで挙げたレクリエーションを行っている理由を念頭に、ぜひどんなレクリエーションを行っているのか、どんな思いでレクリエーションメニューを考えているのか聞いてみてもらいたいと思っています。

(文:みんかい関東エリア 村上相談員