ペットと共に入居できるホームってありますか?
先日テレビを観ていたら「ペットを飼ったら母の認知症状が無くなりました!」という情報番組が放送されていて、2年ほど前に私が担当したお客様を思い返しました。
そのご家庭の環境は、老夫婦2人暮らしで息子さんが遠方に住んでいました。
ちょうど1年ほど前にお父様が突然の脳溢血で他界されてしまい、その後はお母様の独居生活となっていたそうです。コロナ禍ということもあって息子さんは思うようにお母様と会うこともできず、電話で様子を伺うことが精いっぱいだったようです。
そんな時、近所の方から「お母さんの様子がおかしいから出来たら見に来てあげて欲しい」と連絡をもらい、急遽PCR検査をして「コロナ陰性」の確認をして実家に戻ったところ、ちょっとしたゴミ屋敷になっていました。でもお母様は大喜びで、話をしていても認知症のような言動や行動は見られず、家の中の掃除をはじめたりして息子さんを迎え入れるなどいつものお母様でした。
電話をくれた近所の奥様に話を聞くと「新聞がポストに溜まっているし、たまに顔を合わせて挨拶しても上の空だし・・いつものお母さんと様子が違って心配していたのよ」とのこと。そこで近くの地域包括支援センターに行って相談したところ、「それは話し相手がいなく、いままでお父様が居た時のように食事や掃除、洗濯など気をまわすことが無くなってしまってボーっとする時間が多くなり脳を働かせることがめっきり減ったことが原因なのではないでしょうか?それは認知症の兆候ですよ。」と言われたそうです。
その息子さんからしてみたら、「自分と話をしている時は、全くそんな感じは受けないし、一緒に出掛けても近所の方々にご挨拶も出来ているし・・・何かの間違いなのではないか?」と思うほどだったそうですが、帰省した時のゴミ屋敷のような状態などを振り返ると「やっぱり変だ」という考えに行きついたそうです。
そこで考えたのが犬を飼うことだったそうです。元々お母様は世話焼きだし何より動物が好きで以前も飼っていたことがあったそうです。犬の世話をさせることで「頼られている」「自分が世話をしなくては」という責任感が生まれ何事にも意欲の向上をもたらしてくれる・・とどこかの本に書いてあったそうです。
結果、大成功だったらしく近所の方からも「いつも元気で楽しそうよ」と聞き、毎日のお散歩や食事やお風呂などのお世話で忙しくしているお母様が犬の近況報告を電話で長々とされることが最近は苦痛になってしまって・・と笑っておられました。
そんな中、そのお母様が脚立から足を踏み外して転倒してしまい腰を強打、検査の結果、腰や肩など複数個所の骨折が見つかり入院することになったそうです。
幸い、愛犬の世話は世話焼きの近所の方が請け負ってくれたのですが、そのことへの申し訳ない気持ちと、愛犬に淋しい思いさせてしまっているのでは・・という心配な気持ちが重なって、病院でのリハビリも投げ出して「早く帰りたい、早く帰して欲しい・・」と駄々をこねる始末だそうです。
そこで息子さんが見かねて私どもの所に相談に来られたという経緯でした。
ご要望は「ペットと入居ができる老人ホーム」です。
最近ではアニマルセラピーということを取り入れている有料老人ホームも少なからずあり、定期的にホームのマスコット的な犬や猫がホームを訪れたり、またはホーム内で飼っていたりします。これには
【リハビリ補助】~犬と一緒に散歩がしたい・・など歩行訓練の動機づけになる
【意欲向上】【役割】~この子(犬や猫)の世話を私がしなければ・・という意欲と責任
【精神の安定】~動物に触れることでリラックス状態をもたらす神経を刺激し、心の安定を図る
などに効果があると実証されていて、攻撃的な症状(言動や行動)が見られた人でも、その症状が緩和されたという報告もあるようです。
ただ、今回のケースでは事情が違います。今まで一緒に暮らしていた犬と共に入居できる有料老人ホーム探しです。
このお母様が住む大阪エリアではペット可の有料老人ホームは数か所ありますが、ホーム全体のうちの数パーセントです。
その数少ない「ペット共生可能な有料老人ホーム」の中でも注意しなければならないポイントがありました。
①ペットが楽しく衛生的に生活できる環境は整っているのか?
ドッグランや外出した際の「足洗い場」、「猫用のとまり木」があるのか。
②ホームの中でのペットの行動範囲は?
ペットは飼ってもいいけど部屋の中だけにして下さい・・と言われてしまうのか、それとも共用部分や中庭などに 連れてゆけるのか?
③契約書の規定はどうなっているのか?入居の際の保証金、原状回復費用の取り決めなど。
ホームによっては毎月の管理費(ペット管理料など)が上乗せされることもあります。
そして最大の問題は、
④入居される人(対象者)がペットのお世話をしなくなった時、若しくはお世話することができなくなってしまった時にどうなるのか?ということです。
有料老人ホームによってはお世話をしてくれるところもありますが、かなり少数です。
※お世話をしてくれるが別途料金がかかります。
お世話をしてくれない、若しくはそこまで責任は持てない・・というホームがほとんどですが、ではその際にはどうなるのでしょうか?
①保証人さんが引き取る~これがほとんどです。
②ホーム内で育てる~まず期待できそうにありません。
③ペットシッターに頼む~それなりに費用がかかります。
というように、入居する有料老人ホームによって対応はまちまちですが、どこのホームでも統一する見解として、お世話ができるうちは一緒に住むことができたとしても、身体的な問題、認知症的な問題によりお世話が難しくなった時のことも考えて「その場合はどうするのですか?」という問題を突き付けられることになりますので、考えをまとめておくことが肝心です。
参考
近年、核家族化による需要の高まりから余生はペットと一緒に過ごしたいと願う高齢者は増加しています。しかしながらその受け皿は決して多くありません。
有料老人ホームは他の方々との共同生活です。そこには動物アレルギーを持っている入居者がいるかもしれません。入居者だけではなく、そこで働く職員の方がアレルギーを持っているかもしれません。
また、人手不足が叫ばれている中、職員は入居者の方々へのケアで精一杯なため、ペットのお世話まで手が回らない・・なんてことも考えられるため、いくらニーズがあってもペット可に踏み切れない“大人の事情”があるようです。
余談ですが「犬の認知症」も最近問題視されているようです。
愛犬の歩き方がおかしい・体が傾く・痙攣するなど脳神経系の病気を患うことや、寝てばかり・目や耳の衰え・反応が鈍い、に始まり、次第に・夜鳴き・徘徊・旋回行動などの異常な行動がみられるようになるそうです。
人の「アルツハイマー型認知症」に似た症状だそうです。
私の実家でも今年で14歳になる犬を飼っています。もう立派なお年寄りです。
我が家ではこの子で3代目になるのですが白内障になり家じゅうの壁や物に頭をぶつけてヨタヨタ歩いています。あまり動かず寝ていることも多くなりました。
この子は生まれたばかりの時に母が近所の方からもらい受け、高島屋の紙袋に入れられて我が家にやってきた犬なのですが、ヨークシャーテリアと別種との間にできた子でした。だから顔はテリアそのままでも体は一般的なテリアの2倍ほどあり初めて動物病院に行ったとき先生が書いたカルテを覗き見したのですが「犬種:ヨークシャーテリア」とは書いてもらえず「犬種:お化けテリア」とされていました。
それが可愛いのなんの・・・。とはいえその子も認知症になるかもしれませんし、一緒に生活している母や父も最近物忘れが目立ってきたように感じています。
そうなった時のことを姉としっかり考えておかなければなりません。
余談はさておき、上記のエピソードのお母様の話に戻ります。
お母様はその後、みんかいでご紹介させて頂いた、愛犬と一緒に暮らせるホームに無事ご入居をなさいました。ご相談者様と信頼できる介護スタッフに支えられながら、愛犬のお世話を日課として毎日楽しく過ごされているそうです。
ペット共生型有料老人ホームがもっと世の中に浸透することを願うばかりですが、まだまだ問題は山積みのようです。そのような中で「どうしても!」というニーズにお応えするべく我々は日々情報を集めておりますので、お気軽にご相談いただけたら有難いです。
みんかい 渡辺 大志
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