みんかい | 民間介護施設紹介センター

元気なうちから自分で選ぶ「老人ホーム 早めの引っ越し」のススメ

おもちゃの家の写真とタイトル

老人ホームを子世代から取り戻せ!
高齢者の高齢者による高齢者の為の住まい。
これが本来の老人ホームの在り方ではないでしょうか!

まず、今の老人ホームの運用実態を認識しましょう!


 巷で老人ホーム(含むサ高住)と言われているホームの多くの入居者は、要介護高齢者です。
そして、老人ホームの入居相談に奔走している人たちは、入居者本人ではなく、多くは子世代です。

 つまり、子供たちは、要介護状態になった自分の親を“これからどうしよう”と悩み、老人ホームに預けるという決断をしています。これが、多くの老人ホームの今の現実であり実態です。
 すなわち、今の老人ホームの主役は、入居者本人ではなく、家族、多くは子供たちなのです。

 多くの要介護高齢者は、費用負担は自分でするものの、老人ホーム選びには、一切関与せず子供たちが探してきた老人ホームに、半ば自動的に入居させられています。

 今回は、子世代が主役になってしまった老人ホームを、高齢者の手に取り戻しませんかという提案です。多くのケースでは、親が要介護状態になり、子供たちに具体的な迷惑をかけはじめると、子供たちは親の預入先を探し始めます。

 私の経験では、多くの親世代は、子供たちから老人ホーム送りを申し渡されると「なんで自分の家を追い出されなければならないのか!」と抵抗します。親の立場に立って考えれば、ある意味「ごもっとも」な主張です。
 しかし、子世代の立場に立って考えた場合、子供世代の行動も理解することができます。

 だとするなら、どうすればいいのでしょうか?

 老人ホームの専門家を自任する私でも、この問いかけに対する回答は持ちあわせていません。

 しかし、老人ホームを単に自宅にいると迷惑な親の収容先ということではなく、高齢者が快適に楽しく暮らしていくことができる場所として、発展させていかなければならないと思っています。

笑顔の高齢者夫婦の写真

自分の「終活」に向き合う為にも、元気なうちから老人ホーム入居を検討するべきである。


 元気な高齢者に対し、老人ホーム入居を進めると、決まって次のことが課題になります。

 それは、“今の自宅での生活に、不自由はしていないのに、なぜ、老人ホームに入居しなければならないのでしょうか?”ということです。読者の皆さんも、きっと同じ考えではないでしょうか?
 それは、前記したように、多くの高齢者やその子世代が「老人ホームとは、自宅での生活がままならなくなった高齢者が入居する介護施設である」と認識しているからに他なりません。

 しかし、この考え方は、本来の老人ホームの役割からすると、正しくはありません。

 確かに、介護保険法施行によって要介護高齢者向けの老人ホームが爆発的に増え、さらに、サ高住など高齢者用住宅に至っても要介護高齢者をターゲットしているばかりなので、すべての国民が『老人ホーム=介護施設』と勘違いするようになってしまいました。

 さらに、マスメディアらの「要介護」「認知症」など高齢者の陥りやすい状況に対し、あたかも全高齢者が、もれなく要介護状態になったり、認知症になるという誤解を与えるような風潮も、これらの認識に対し拍車をかけています。

 数値から見た実態は、多くの日本国民は要介護状態にならないし、認知症にもなりません。癌をはじめとする疾患や事故で亡くなっているはずです。もし、全国民が高齢期に要介護状態や認知症にもれなく“なる”のであれば、それはもう、新型コロナの比ではないぐらい深刻な社会問題になっているはずだからです。

 人の死亡率は100%です。だとするなら、私たちは、何を考えなければならないのでしょうか?

 最近、「終活」というキーワードが生活の中に定着してきましたが、この「終活」を私は60歳を超えたあたりから、しっかりと考えるべきだと考えています。そして、その第1弾として、私が提案したいのが、巷でよく言われている「断捨離」です。

 自分にとって、本当に必要な物だけを残し、余計なものは処分していくこと。その為には、まず、住んでいるスペースのダウンサイジングが重要になってくると思っています。そして、このダウンサイジングにぴったりなのが老人ホームなのです。

家具家電の写真



 老人ホームの多くは、居室スペースは、20㎡から40㎡程度です。つまり、自宅環境では、片付けようとは思わない荷物であっても、老人ホーム入居を検討するという動機があれば、強制的に荷物を「不要」「必要」に仕分けし、断捨離について考えなくてはならなくなるのです。 

 私は、次のように考えます。自分が死ぬまでの間、本当に今の荷物は必要なのでしょうかと?もっと言うと、自分が死ぬまでの間に、今の荷物を使い切ることができるのでしょうかと。

 もちろん高齢者は、失う体験の実践者なので、ものを減らしていくことに対し抵抗感が強いと思います。
さらに、長年一緒に連れ添ったものを処分するという行為は、思い出まで処分するような気持になり、抵抗感が生まれるということも理解できます。

 しかしです。自分が死んだ後は、相続人の手によって、その多くは、無慈悲に捨てられます。このような話をすると、多くの方から次のような声が聞こえてきます。自分が死んだ後の話など、どうでもよいのではと。今が重要なのだと。確かにそうかもしれません。

 私は、「終活」は、持ち物の「断捨離」から始めるべきだと考えています。
 そして、そのためには、老人ホーム(含むサ高住)への早めの引越しの検討が最善ではないかと思っています。理由は、老人ホームの限られたスペースの中に、最後まで自分と連れ添う「お気に入り」は何か、を考えることが、高齢期の残りの人生時間を有意義に過ごす方法だと考えるからです。

たかが荷物。されど荷物です


 たかが荷物と侮るなかれです。
 60年以上生きていると、自宅や自家用車をはじめ、洋服、家具、調度品、書籍、写真などなど多くのものを保有します。断捨離は、これらの荷物と向き合うことで、今までの自分の人生を振り返る機会を与えてくれます。
 つまり、身軽になって、セカンドフライトを飛びませんか?という提案が、自宅を離れて老人ホームに引っ越しませんか?という提案につながっていくのです。

 多くの元気な高齢者が、この「断捨離」の効用を支持し、有意義なセカンドフライトを飛ぶことを考えることで、老人ホームは、今の要介護高齢者中心から元気な高齢者の為の老人ホームへとシフトしていくはずです。これで、老人ホームは高齢者の手に取り返すことができるのです。
 高齢者の高齢者による高齢者の為のホーム。これが本来の老人ホームの姿です。

 長年、持ち続けてきた多くの荷物を降ろし、必要なものだけを持って、セカンドフライトに羽ばたくこと。
 老人ホームへ引っ越すことを考えることで、最終期の人生を充実させるための動機づけになればよいのではないでしょうか?


株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
公益社団法人全国有料老人ホーム協会 業務アドバイザー
小嶋 勝利