みんかい | 民間介護施設紹介センター

ケアマネジャーに聞く!在宅介護の現状

ケアマネジャーに聞く!在宅介護の現状

住み慣れた地域での生活が継続できるように支援します

医療生協さいたま生活協同組合
ケアセンターたかしな

 困難な事例を抱えながらも日々、地域の要介護高齢者の生活を守るために奮闘されているケアマネジャー。

 今回は、「人が人として大切にされる社会をめざし、保健・医療・介護の事業と運動を通して、様々な人たちと手をつなぎあい、平和とくらしを守り、健康で笑顔あるまちをつくります」を基本理念に、地域の安心の窓口として活躍されている医療生協さいたま生活協同組合「ケアセンターたかしな」の山本基子所長にお話しをお伺いしました。

ケアセンターたかしな山本所長_写真

極度の潔癖症とご本人が作ったルールに困惑するヘルパー

編:様々なご利用者様と関わってこられたと思いますが、今までで困難だった事例はありますか?

――85歳で要介護5、独居のA様の事例です。介護保険と障害の両方のサービスを活用し、朝・昼・夜に訪問介護をご利用されていました。早朝や夜遅くの時間帯にもサービスをご希望されるため、サービスを引き受けてくれる事業所があまりなく、ヘルパーステーションだけで、数十件の事業所と契約をしていました。

 どのご利用者様にも、「こうして欲しい」というご要望はありますが、A様とご家族のご要望はかなり多く、しかも、A様とご家族が決めたルールに従ってほしいというというものでした。

 極度の潔癖症で、室内でもマスクを2重に重ねて着用されていました。そして、ヘルパーがサービスに入る際には「玄関の外で、ほこりと花粉は入念に払い落したうえで、粘着テープですべてのほこりを落とし、手はアルコール消毒をすること」を望まれました。コロナ禍の今でこそ、サービスに入る前の手指消毒はあたり前ですが、コロナ禍前の頃でしたので、ヘルパーからは、手洗いだけではいけないのか?と、困惑の声が上がっていました。

 また、エアコンの温度設定にもこだわりがあり、室内の温度と湿度に合わせての微調整をご希望されるため、エアコンの温度設定を何度も変更しなくてはならないケースもありました。しかし、娘様がサービス提供中に入室されると、「設定温度を変更するように」とA様とは違う指示を出されるのです。

 もちろん介護保険のサービスをご利用いただいるのは、A様ですから、ヘルパーも私も、ご本人のご希望通りに温度設定をいたしますが、娘様は、ご自身の希望が通らないので暴言を吐くこともありました。

サービス提供中にはベランダの窓越しから娘様が監視


 アパートにお一人で生活されていますが、同じアパートの隣のお部屋には娘様が住んでいます。お身体の調子が悪いようで、毎日お仕事はされていないご様子でした。娘様は大変、細かいところにまで気が付く方で、お母様以上に「こうして欲しい」のマイルールをお持ちの方です。過剰なほどの要求も多く、できることとできない事のご説明をさせていただきますが、なかなかご納得いただけない状況でした。

 過剰な要求やマイルールの他に、ヘルパーが一番困ったことが、ヘルパーがサービスに入ると、娘様がベランダの窓越しからその様子を見ていることでした。そして、ご本人と娘様が決めた方法で行わないと、ヘルパーに対し暴言を吐くこともしばしばありました。

 サービス提供中に娘様から監視されているような状況でしたので、「このままではサービスには入れない」と私に相談が入ることも度々ありました。こだわりが強く、どこまでもご自身が作ったルールに沿った支援方法でないと暴言を吐くご家族のため、ヘルパーも困惑する事例でした。

コスモスのイラスト

奥様の入院をきっかけに認知症を発症


 奥様の入院がきっかけで、家族とも関係が疎遠になったB様の事例です。

 B様の担当になったきかっけは「ヘルパーの資格を持っているので働かせてくれないか」と事業所を訪ねてこられたことでした。B様はヘルパーの資格をお持ちではありませんでしたが、お話し好きでちょっとお茶目な方でした。

 当時B様は奥様とお二人で生活をされていましたが、奥様の入院をきっかけに独居となりましたので、洗濯、掃除などの生活援助のサービスを利用していただくことにいたしました。しかし、ヘルパーが入る時間にB様は外出されていることが多く、ほとんどサービスを利用されません。しかし、何か用事があると、「ちょっときてくれないか?」と連絡をしてくるのですが、お伺いすると昼間からビールを飲みほろ酔い状態です。

 水の変わりにビールをのまれているようで、脱水になることが心配で「お水も飲みましょう」と机の上にご用意しても飲んではくださいません。お食事もきちんと召し上がっていないらしく、だんだん、歩行がおぼつかなくなり、認知症の症状も現れ始めてきました。

息子様と娘様が音信不通に
借家の更新時に必要な保証人が見つからない


 このころからほとんど毎日外出されるようになりました。ヘルパーが来る日などをカレンダーに記載したり、「今日はヘルパーさんが来る日ですよ」と伝えても、出かけてしまいます。歩行がおぼつかないため、路上で転倒し救急搬送されることが何度もありました。

 また、近隣の家の柿やみかんを無断で食べるため苦情が入る。ある時には、家のトイレが壊れたからとホテルに泊まり、お部屋で転倒し、起き上がれないから助けてくれと連絡があるなど、1日に何十回も連絡が入るようになりました。

 このままお一人で生活を続けていくのは難しいと思い、ホームへの入居をおすすめいたしました。最初は拒否されていましたが、最終的には納得していただくことができました。しかし、また別の問題が発生したのです。これまで連絡が取れていた、息子様と娘様と連絡が取れなくなったのです。

 その後、B様の知人の方を会し、やっと連絡がとれたものの、お父様とは一切関わりたくないとの返答でした。遠方に住むご親戚にも相談をいたしましたが、返事はNOでした。身元保証人がいなければホームに入居することはできません。

 そして、同時期にお住いになっているマンションの契約更新がありましたが、保証人になってくださる方が見つかりません。このままではB様の生活する場所がなくなります。

 そこで、緊急避難的に身元保証人がいなくても入居できるホームにご入居いただき、その間に成年後見人の手続きをすることにいたしました。

 今後、独居で保証人になってくださる身内がいない高齢者は増えていくと思います。このような事例に素早く対応できるよう、今まで以上に様々な機関との連携を強化し、住み慣れた地域での生活が継続できるように支援いたします。

ケアセンターたかしな建物写真_連絡先

文:黒川 玲子
株式会社ケー・アール・プランニング:https://kurokawa-reiko.com/