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老人ホーム入居にまつわるお金のトラブル3選

老人ホーム入居にまつわるお金のトラブル3選

老人ホーム入居時の予算を考える場合、入居する本人(親)の年金・貯蓄で支払える範囲内でホームを探す子世代(家族)が多いと思います。しかし「親のお金(資産)を施設入居に充てる」ということが、スムーズにいかず、トラブルになることがあります。

今回は、そのようなトラブルになった事例をご紹介し、読者の皆さんと情報共有をしたいと思います。また、事例に対するアドバイスを専門家にお願いしました。

今回、アドバイスをいただいた専門家は、司法書士法人オーシャン オーシャングループの司法書士でもある嶋津和寿子先生です。なお、嶋津先生のプロフィールは後記を参照にしてください。

事例1
親の年金や貯蓄が全く分からなかった場合に起きたトラブル事例


 相談当初は、入居対象者である母親本人の資産で入居費用を支払う予定で施設を検討していました。しかし、しばらく会わないうちに、一人暮らしの母親は、認知症になり金銭管理もできず、通帳も紛失していました。

通帳を探す女性のイラスト

 これまで、親子間では、お金に関する話は避けてきたこともあり、年金額やその振込先、預貯金口座などは、本人以外に誰も把握していませんでした。つまり、入居ホームの予算設定ができなくなりました。

 とはいえ、認知症の母親をこれ以上、自宅で一人にしておくこともできず、ひとまず、子ども3人で老人ホームへの入居費用を立替えて入居することにしました。

 なお、子ども達にも、それぞれの家庭があるため、親の老人ホーム入居に必要な〝お金を自分たちで立て替える〞ということについては、多くの議論を必要としましたが、最終的には母親の自宅を売却し、その利益で自分たちが建て替えたお金を回収するという方針となり、母親はホームへ入居することができました。

専門家からのアドバイスです

 今回の事例では、お母様とお子様で銀行に行き、通帳を再発行する必要があります。最低限そちらから引き落としができるようになるかと思います。しかし、誰も面倒を見る方がいない場合ですと、成年後見の申し立てを行い、後見人が財産管理し、お母様の施設の費用を捻出するような形になるでしょう。

 しかし、ここで注意すべきなのは、施設に入居される前に成年後見の申し立てを行ってしまった場合、後見人の役割として、出来るだけお母様の財産を使わないように最低限の面倒を見る方向に移行してしまうので、どんなに財産がある場合でも最低限の施設に入居することになってしまうので、お母様やご家族の希望として所得に合った施設に入ってほしいのであれば、しっかりとご家族が関わった方が良いでしょう。

事例2
親の銀行口座が凍結されたトラブル事例 ※1

 認知症の父親の銀行口座が「社会的な判断力低下」との判断により、口座凍結されてしまいました。口座凍結されてしまうと、子どもであることを証明しても、親名義の口座から預金を引き出すことはできません。したがって、父親の老人ホームへの費用支払いができません。

 やむをえず、預金を動かすために後見人をつけることにしましたが、すでに判断力低下後だったため、法定後見制度を利用することになります。

 徘徊などもあり、早めの入居をご希望でしたが、法定後見人の選任手続きには、数ヶ月の時間がかかるため、ホーム入居は、その手続きが完了した後まで延期してのご入居となってしまいました。

専門家からのアドバイスです

 今回の事例のようにならないためには、「任意後見制度」の活用を検討しましょう。

 将来、何かあった際の後見人として、お元気なうちに自分自身で、信頼できる任意後見人を決めておくことができます。任意後見人は、法定後見とは違って赤の他人が家庭裁判所から選任されて3〜4ヶ月くらいの長い時間をかけて後見人につくということではなく、後見監督人の選任申し立てを行い、1ヶ月半〜2ヶ月程度で、監督人が付き、後見が開始されます。

 信頼できる家族に後見人を依頼できる任意後見制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

事例3
親が詐欺にあって認知症に気が付いたトラブル事例

詐欺師のイラスト


 一人暮らしをしている母親が詐欺の被害にあったことをきっかけに、認知症であることに気が付いて、老人ホーム検討を始めた事例です。

 数百万円をだまし取られ、ご家族は「認知症にもっと早く気づけていれば、被害金額を老人ホーム入居に使うこともできたのに!」という後悔をしています。また、同様の相談は、増加傾向にあるように感じています。

専門家からのアドバイスです

 こちらの事例の場合では、後見人の申し立てを行いましょう。相手が常識的な相手であれば、相手が認知症であったことをもとに契約が無効であることを伝えることができます。


 なお、これら3つの事例に共通して言えることは、「親が元気な内に、お金に関する話を十分にできていなかった」ということです。親が子どもに自分の金銭事情を話したがらない、聞いても教えてくれない、という家庭は多いのではないでしょうか。「その時になったら話し合おう」と先延ばしにしていると、後々大変な思いをすることになるかもしれません。

 認知症になっても、自分が認知症だと認められる方は稀です。まして子どもから指摘されても、ムキになって喧嘩になることが多いと思います。こういった状況で困りたくない方は、任意後見制度や家族信託を勉強し、親が元気な内に話し合っておくと安心だと思います。

※1 一般社団法人全国銀行協会が取りまとめた『金融機関の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体、社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について』を参照。

アドバイザー:嶋津和寿子(オーシャングループ)
/企画・編集:小嶋勝利(みんかい)

アドバイザープロフィール

司法書士_嶋津和寿子先生

嶋津 和寿子(司法書士業務歴23年)
オーシャングループ所属の司法書士
年間に成年後見、家族信託などを十数件受任。お客様に寄り添ったご相談対応を行うことをモットーに、日々、遺言・相続・生前対策に関するご相談をお受けしています。

相続遺言相談センターHP:https://ocean-souzoku.com/