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有料老人ホームのお金の話①

有料老人ホームのお金の話①


有料老人ホームのお金の話
有料老人ホームに入居するとき、いったいいくら必要なのか?

(弊社発行冊子「元気かい!!みんかい」2022年VOL.10より)

 今回の「元気かい!!みんかい」では、「お金の話」に焦点を当てました。中でも有料老人ホームへの入居に関するお金の話には、ページを割いて特集記事にしました。特集記事を読んでいただければ、有料老人ホームへ入居を考えている方にとっては、かなり具体的な費用イメージができるのではないかと思います。

 老後2,000万円問題で高齢者は、ざわついています。その理由は、本当に2,000万円あれば、自分の老後はなんとかなるのか。または、2,000万円を用意することができない自分は、一体どうなるのだろうと言うことです。

 私は、「介護の沙汰は金次第」だと主張していますが、そこには、次のような前提条件が存在しています。高齢者が要介護状態になった場合は「お金」がかかり、またお金次第で提供される介護サービスの質が変わります。

 つまり、私たちが考えなければならないことは、どうすれば要介護状態の高齢者にならないで済むのか。または、なるべく要介護状態を先送りすることができるのか?と言うことです。健康であれば、実はそれほどお金はかかりません。

 つぎに重要なことは、人間関係です。家族や親戚、友人、知人、近所の人たちとの人間関係です。人間関係が良好であれば、誰かが助けてくれます。誰かに頼ることで、リスクをヘッジすることが可能になります。この視点で、特集記事を読んで欲しいと思います。

 例えば、有料老人ホームに入居する場合、原則として身元引受人が必要になります。そして、この身元引受人は、子供など親族(遺産を受け取る権利のある人)が就任するのが普通です。

 また、身元引受人が選任できないケースでは、身元保証会社にお金を払って委託をすることができます。費用は概ね200万円ぐらいです。子供らに頼めば、一応無料なので、やはり余計なお金がかかります。これ以外にも、家族信託をはじめとする「信託」などを専門家に委託するとやはりお金がかかります。

 自分を取り巻く人間関係がギクシャクしたり、子供たちのことを信用することができないと、お金がかかるようにできています。誤解を恐れずに言うのであれば、昭和の時代は、家族がやるのが当たり前だったことに対し、今の時代は、わざわざ余計なお金を払って他人にやってもらう時代になった、ということだと思います。言い換えれば、家族システム、家族の在り方が、変ってきたと言うことではないでしょうか?

 「健康」「人間関係」そして「お金(資産)」。これが、高齢期における3種の神器ではないでしょうか?今回は、お金に焦点を当てましたが、今後は、健康にも、人間関係にも、焦点を当てていきたいと思っております。

お金と通帳の写真

はじめに


 これから話すお金の話は、万一、有料老人ホームに入居することになった場合、一体、どのくらいの費用がかかるのか?というお金の話です。もし、あなたの親が有料老人ホームに入居することになった場合、この程度の価格帯の有料老人ホームに入居した場合、次のようなお金と書類などが必要になります。

 ちなみに、有料老人ホームの大きな特徴の一つとして、入居一時金(入居金)があります。これは、入居時に一定の金額を先払いすることで、毎月の利用料金を低く抑えるための仕組みです。

ある介護付き有料老人ホームの前提条件は以下の通りです。


①所在地:首都圏某所。私鉄沿線普通電車停車駅。
②入居金:1,000万円。
③償却期間:60か月。ただし、初期償却30%。

※当該ホームは、入居金が0円の場合と入居金が1,000万円の場合の2種類の料金プランがあります。なお。「償却」については、後記「退去後にかかる費用の概要」を参照にしてください。

④【月額利用料金:230,000円。】ただし、入居金の支払いがない場合の【月額利用料金は380,000円。】
⑤居室面積:15平米。
⑥建物規模:鉄筋コンクリート造3階建。
⑦看護師配置は、毎日、9時から18時までの日勤帯のみ。
⑧介護看護職員の配置基準は、常勤換算にて「3:1」基準(法に基づく配置)。

それでは、当該ホームに入居した場合、具体的にかかる費用について詳しくみていきましょう。

まずは、入居前にかかるお金の概算です。

 入居前(契約時)にかかる費用は入居金を除くと、250,750円(②から⑦までの合計)です
(ただし、身元保証会社を利用しなかった場合)。

①入居金プランを利用して入居する場合は、【入居金として1,000万円。】
②健康診断書作成費用【20,000円】前後(ただし、レントゲン等の必要な検査項目により変動あり)。

※入居審査に必要な書類です。感染症など特定の疾患、病状があると、入居ができないケースもあります。事前に希望ホームに確認要。なお、健康診断書の作成は、おおむね2週間程度の時間がかかります。早めにかかりつけ医に相談を。

③診療情報提供書作成費用【750円】程度(医療保険により1〜3割の自己負担)
※かかりつけ医、主治医から有料老人ホームの協力医療機関の医師や看護師に対する入居者の今の診療に関する情報を提供する書類です。また、これ以外にも、入院時の介護看護サマリなど、有料老人ホーム側の介護職員に宛てた書類も必要になります。

 有料老人ホームが、単なる高齢者向けの賃貸住宅と違う最大の点がこの部分になります。医療介護従事者をホーム内に配置し、彼らによる専門的なケアや支援を行うことを目的としているため、どのような入居者なのかを細かく把握しなければなりません。

 そのためには、従前のかかりつけ医療機関や病院や介護施設からの情報提供は当たり前に求められてきます。また、この書類に不備があると、入居がスムーズに進まないこともあります。

④衣服、寝具一部、洗面用具、その他生活用品(衣類、カーテン、室内履き)、家具(テレビとチェストなど)。
当該ホームでは入居者側にて用意します。合計【150,000円】程度。

 入居する老人ホームによっては、有料(月極契約)にてレンタルできるケースもあります。また、多くの有料老人ホームは、ホーム内は土足厳禁で上履きに履き替えるホームが多いです。老人ホームの場合、たくさんの衣類を収納するスペースはありません(高級ホームは除く)。常識的な洋服ダンス1竿に1年間の衣類を収納するイメージです。入居者の中には、季節ごとに、自宅とホームとで衣類を入れ替えている人もいます。

 入浴時の石鹸やシャンプーなどは、ホーム側で用意していますが、自分の好みがある方は自己購入で対応することも可能です。家電製品は、テレビなどの他に「加湿器」「空気清浄機」などを購入する入居者が多くなっています。カーテンは、防炎用をホームにて販売しているケースもあります。もちろん、レンタルもあります。

⑤介護用品【50,000円】程度(車いすなどの購入の場合)。
 住宅型有料老人ホームは、車椅子などの福祉用具は介護保険を利用して1割から3割の自己負担で貸与が可能です。が、介護付き有料老人ホームの場合は、ホーム側による無償提供(主に退去入居者が置いていったもの)、または、全額自費による購入になります。

 理由は、介護付き有料老人ホームの場合、介護サービスを包括的にホーム側が実施するため、入居者の介護保険区分限度額は、すべてホームによって消化されてしまうからです。なお、介護用ベッドは、多くの介護付き有料老人ホームでは、居室に標準装備されているのが普通です。

⑥引越費用【30,000円】程度
 単身者パックなど、軽微な荷物移動のみ。当該ホームは、居室の広さは15平米です。畳で言うと約10畳程度です。したがって、多くの荷物を収納することはできません。原則、居室に収納しきれない荷物をホーム側が預かることはありません。

⑦身元引受人費用【0円】
 ホーム入居には、「身元(引受人)保証人」が必要です。多くのケースでは、家族、特に子供が引受人に就任します。何らかの事情で身元引受人を選任できないケース(例えば、家族がいない、又はいても高齢、あるいは家族には頼みたくないなど)の場合、身元保証会社に委託することで入居が可能となります。

身元保証会社を利用した場合の料金とサービスは以下の通りです。


 なお、身元保証会社は、多数存在し、微妙にそのサービス内容が違います。したがって、提供されるサービス内容を確認の上、自身の都合に合った保証会社を選び契約することになります。
 ある身元保証会社A社に依頼をした場合の費用。【初期費用は1,821,000円、月額費用5,500円】です。
 基本的な利用料金とそのサービス内容に関する説明です。

年金手帳を眺める高齢男性の写真

料金の説明です。
①身元保証サービス費用(身元保証委託手数料
【616,000円、月額費用5,500円】)。

②エンディングサポート費用(契約事務手数料【220,000円】、預託金【1,000,000円〜】)。

 ただし、預託金は、執行報酬【385,000円】、予備清算費【150,000円】、葬儀・納骨費は【465,000円】(直葬の場合)です。ただし、葬儀、納骨費用は、執り行い方法(家族葬、一般葬、散骨など)の内容等により料金は変動します。また、遺品整理費は、入居ホームが決定した後、改めて決定していくのが普通です。

 多くの有料老人ホームでは、この身元保証契約内容を提示することにより、家族などがいなくても入居が可能になります。ただし、一部の有料老人ホームでは、身元保証契約に加え「遺言書作成」や「成年後見」「財産管理」の契約等の締結までが入居条件となっているケースもあります。

 参考までに、これらのサービスに関する料金も記しておきます。上記の基本的なサービス内容に、以下のサービスが加わります。

①月額費用【〜38,500円】(契約後に認知症を発症した場合)
②遺言書作成サポート費用【204,000円】(手数料【165,000円】、公証役場の手数料【39,000円】、ただし、財産3,000万〜5,000万円未満の場合)
③遺言執行報酬【330,000円〜】。
④成年後見・財産管理のための任意後見契約【154,000円】。

身元保証の具体的なサービス内容の説明です。


①連帯保証人として、本人のホームに対する費用支払いが滞った際に、代わりに弁済する。
②退去時の原状回復費用の補償。
③退去時の身柄引き受け。
④退去時の施設内の残留物撤去。
⑤救急搬送や手術時の医療同意。
⑥生活サポート(入院事務手続き、入退院の付き添い、住所変更手続きなど)
(1時間あたり4,000〜10,000円程度の別途費用要)

エンディングサポートの具体的なサービス内容です。


①各種連絡(葬儀社手配、駆けつけ、希望の親族や友人への連絡)。
②葬儀。
③納骨・永代供養(希望の墓地や納骨堂への納骨、海洋散骨や樹木葬など)。
④遺品整理/退去手続き(業者手配、指定の方に遺品を渡すなど)。
⑤債務弁済(施設や病院への未払い金があれば支払い)。
⑥行政官庁の手続(健康保険証などの返還手続き、税金未納があれば納税)

遺言作成サポートの具体的なサービス内容です。

①必要書類の取得。
②遺言内容に関するアドバイス。
③公証役場とのやりとり(公正証書遺言)。
④立会人対応(2名)。
⑤遺言執行。

成年後見の具体的な内容です。


 判断能力が衰えた際に備えて、代理権内容(財産管理や身上監護の事務をどこまで委任するか)を決めて公正証書を作成する。契約の効力発生は、将来本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所により任意後見監督人が選任されてからになります。

財産管理の具体的な内容です。


 高齢者の方で、判断能力は充分だが、身体の自由が効かなくなった場合などに有効。財産管理や生活における事務手続きを代行します。

①預貯金引き出しなどの金融機関手続き。
②入所施設や入院の毎月の支払。
③毎月の入出金管理など。

ただし、判断能力が衰えた場合は、上記成年後見に移行します。
※依頼者からの預かり金は、第3者である信託会社に預けているため、保証会社が自由に引き出すことはできません。
※依頼者が死亡した後、資産が残っている場合は、相続人に相続されます。

(有料老人ホームのお金の話②につづく)
次回は入居中に毎月かかる費用、退去後にかかる費用についてご説明します。
また、入居金方式と入居金0円方式の一体どちらが「お得」なのか?
例を出して計算してみます。

元気かいみんかい編集部