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相続の基礎知識

相続手続きは人生において何度も経験することではありませんので、相続手続きの知識がないとご不安になられるのは当然です。
法律と関わりの多い相続手続きでは、正しい知識を持って行うことが重要です。相続の基礎知識について事前に触れておくことで、実際の手続きの場において勘違いや誤った解釈のまま相続手続きを進めることなく、また “もしもの時”に慌てず対処できます。

相続はいつ始まるのか

相続では、亡くなった方のことを被相続人といい、被相続人の財産を相続できる権利を持つ人を相続人といいます。そして、「相続は、死亡によって開始する」(民法882条)の条文をうけ、被相続人が亡くなった日を相続が開始された日とし、相続人は、被相続人の死亡をもって財産を受け継ぐ権利を有することになります。

相続財産とは

相続が開始されると被相続人が生前所有していた財産は相続人の共有財産となり、相続人へとその権利が移ります。
相続財産には、主に下記のようなものがあります。

不動産(自宅などの土地や建物、マンション、駐車場等)

金融資産(現金、預貯金、証券・株や投資信託などの有価証券)

その他(自動車、貴金属や美術品等)

相続方法を決定する

相続が発生したら、相続人は相続財産を相続するかどうかの判断を行わなければなりません。遺産には、預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含まれるため、被相続人の財産を慎重に調査して決める必要があります。

遺産を相続するという意思表示に手続きは必要ありませんが、相続をしないとする場合には、家庭裁判所にて相続放棄(相続する権利自体を放棄する)の申述が必要になります。この相続放棄の申述には期限があり、相続が発生したことを知った日(通常は死亡日)から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。この期限に間に合わないと原則、相続人は借金を含んだ全財産を相続し、借金返済の義務をも背負うことになります。なお、期限内であっても被相続人の不動産を売却して資金を自分のものにしたなど単純承認とみなされる行為をしてしまうと、原則相続放棄はできませんのでご注意ください。

相続方法の中には、プラス財産の範囲内でマイナス財産も相続する限定承認という方法もありますが、相続人全員が共同して行う必要があるうえ、申述の準備にも手間がかかるため、検討をされる際はご相談ください。

家の模型と電卓の写真

遺産分割について

被相続人が遺言書を残していた場合は原則、その内容に沿って相続手続きを進める必要がありますが、遺言書のない相続では遺産配分を決めるための話し合いである“遺産分割協議”を行うことにより遺産の分割を決定します。この遺産分割協議は、法定相続人が全員参加して遺産の分割方法について話し合わなければならず、相続人が一人でも欠けていた場合は、話し合いがまとまっていたとしてもその内容は無効です。なお、遺産分割の期限について現在のところ民法の規定はありませんが、2024年に相続登記の義務化が施行され明確な期間および罰則が設けられるため、長期化させず早めに行わなければなりません。 遺産分割を始めるにあたり、まずは被相続人が所有していた全財産について調査し、相続人全員で遺産の種類および金額を把握する必要があります。遺産分割後に別の財産が発見されるといったトラブルを避けるためにも、相続財産について漏れがないよう念入りに調査して遺産分割協議に臨みましょう。

遺産分割協議で決定した内容を書面にまとめ、合意の証明として相続人全員の署名と押印(手続き上実印)をしたものを遺産分割協議書と言います。この遺産分割協議書は、不動産の名義変更、金融機関での預金の解約などの際に提出必須の書類であり、合意内容の確認の際にも必要となるものなので、きちんと保管しておきます。

説明している人の手元の写真

相続税申告が必要となるケース

相続税は被相続人が残した財産を、相続もしくは遺贈により取得した人に課せられる税金です。相続税は全ての人に課せられる税金ではなく、遺産総額等より計算する課税価格が相続税の基礎控除額以下であれば納税義務はありません。

相続税の基礎控除額

3,000万円 + 法定相続人の人数 × 600万円

上記計算式に、相続人の人数を当てはめて基礎控除額を算出し、課税価格の合計額がこの金額を超えている場合は相続税の申告を行わなければなりません。

相続税の申告は納税対象者が自ら税金を計算し、指定された税務署において申告納税をします。特例措置や控除など納税額を減らすことに繋がる様々なルールが相続税には設けられており、一般の方が行うには負担が大きいでしょう。相続税の申告は専門的な知識をもって行うことで最終的な納税額が変わるといっても過言ではないため、相続税を専門とする税理士へ依頼されることをおすすめします。

書類の上に印鑑とペンが置かれている写真

相続財産の名義変更

遺産分割協議が完了したら被相続人名義の遺産を相続人の名義へと変更します。

不動産の名義変更

不動産の相続時に必要な名義変更手続きのことを相続登記(所有権移転の登記申請)といいます。戸籍謄本や遺産分割協議書等の必要な書類をそろえて法務局に提出します。2024年には相続登記の義務化が始まり、明確な期間が定められるため速やかに行いましょう。ご自身で行うことも可能ですが、ケースによっては添付書類の取得が複雑になることもあるため司法書士へご相談されることをおすすめします。

金融資産の名義変更

金融資産とは、現金および銀行等の金融機関に預けている預貯金、株式、債権、投資信託などをいいます。遺産分割協議書ないし、金融機関等に名義変更に必要な書類を提出することで名義変更や解約による払い戻しが可能となります。名義変更の手続き方法は金融資産の種類により異なりますので各契約先に問い合わせてから準備を進めましょう。なお、名義変更を行うには基本的に戸籍による相続人の確定および、被相続人の財産調査、相続人全員の参加による遺産分割協議を終わらせておかなければなりません。

相続トラブル

相続は、多額の金銭が突然相続人の手に入る機会となります。相続人は自己主張できる間柄である場合が多く、必ずしも円滑に話し合いがまとまるケースばかりではありません。遺産分割協議は、相続に関する考えや主張を赤裸々に主張する場となる可能性があり、仲の良かった親族同士でトラブルが起こり、仲たがいしてしまうケースも多く見受けられます。相続が複雑になると予めわかっている場合には、話し合いがこじれてしまう前に専門家に頼りましょう。

<執筆者>

行政書士法人オーシャン
相続遺言相談センター
行政書士 岡田 大地