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有料老人ホームのお金の話②

有料老人ホームのお金の話②


「有料老人ホームのお金の話①」 はこちら

入居中、毎月、かかる費用の概要です。


入居中、月々かかる月額利用料以外の費用は、64,000円(②〜⑫、ただし、⑥と⑪は除く)です。
おおむね月額利用料金プラス50,000円〜60,000円程度と理解ください。
つまり、36ヶ月間の入居期間の合計は2,304,000円です。

①月額利用料金【230,000円】。(入居金の支払いのない場合は380,000円)
②レクリエーション費用→月額【1,000円】。多くのホームで0円から2,000円程度の実費負担あり。

なお、低額ホームの場合は、参加の有無に関わらず定額徴収のところも。
③居室電気代【3,000円】程度(個別電気メーターによる)
④居室水道【1,000円(定額制)】
※低額ホームは、水光熱費が別料金、比較的高額ホームは、月額利用料金の中に含まれている(水光熱費込み)になっているケースが多い。

⑤介護保険自己負担金【22,000円】(要介護3、1割負担の場合)。
⑥生活サポート費【30,000円】
(入居後の区分変更で要支援、自立となった場合のみ対象。買物代行、入浴介助、服薬管理、リネン交換、居室清掃、洗濯などの代行料)

※生活サポート費の名称は、ホームによって様々ですが、介護保険報酬を受け取ることができない自立高齢者や要支援高齢者が、ホーム内に混在している場合、介護看護職員らは、これらの高齢者に対し、「介護保険報酬をいただいていないから世話をしなくても良い」と言うわけにはいきません。
したがって、生活サポート費の存在理由は、看護介護職員の配置を維持するための負担分という理解で良いと思います。

⑦協力医療機関以外への通院および外出付き添い料金。【6,000円】(1,500円/30分)。
※高級ホームの場合、これらの送迎は、すべて無料(月額利用料金に含む)になっているケースもあります。また、病院受診は無料でも、買い物や歌劇、スポーツ観戦などは有料になっているケースもあります。

⑧医療費【8,000円】程度
(訪問診療2回/月、薬代など)。医師、薬剤師による入居者の診療に対する総合管理料。

※医療機関に入院した場合、別途医療保険の自己負担分が発生します。なお、有料老人ホームの場合、特養や老健などとは違い、家賃相当額を支払っていれば、原則、ホーム側から退去を言い渡されることはありません。ただし、介護保険報酬に過度に依存している低額ホームの場合は、この限りではありません。

⑨おむつ費用【10,000円】程度
(市区町村によって助成あり。〈例〉要介護③以上に限り毎月7,000円を支給、または相当する現物を支給。※杉並区の場合など)
※各地域の行政(保険者)に要確認。在宅では支給していても、ホーム入居の場合は、支給の対象外としている行政もあります。

⑩訪問理美容費用【3,000円】程度(カットのみの場合)
※多くのホームで採用されているサービスです。
⑪健康診断 年間【20,000円】程度(約10,000円/回、年2回)
原則、ホームに医療機関が訪問して健康診断実施。
⑫遊興費用【10,000円】程度。酒、タバコ、菓子、ジュースなどの購入費用。
⑬自宅の固定資産税等↓各行政における固定資産税、都市計画税による。

※自宅が空き家になっている場合、維持するためには、税金はもとより修繕費などもかかります。
とくに、昨今の異常気象の場合、想定外の雨、風、により、植木が倒れたり、屋根が壊れたりと、様々なメンテナンス費用がかかります。

車椅子の高齢女性と介護ヘルパー女性の写真

退去後にかかる費用の概要です。


退去時にかかる費用は、530,000円です。また、返還金は2,800,024円になるため、退去後にかかる費用は、2,270,024円のプラスになります。

①居室原状回復費用(通常の使用による損耗を超えた破損等があった場合)【30,000円】
(簡単な居室のクリーニング費用などの小修繕費)
国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を準拠することになります。詳細は、ガイドラインを確認ください。

 ポイントは、原状回復とは、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化している点です。例えば、新築未入居で入居した場合、退去時には新築未入居の状態に戻す必要はないと言うことです。

②葬儀および埋葬費用↓家族葬・埋葬費用【500,000円】
(規模、流儀により数十万円から数百万円)。
 有料老人ホームにおける現在の運用状況を考えた場合、その多くは、退去イコール死去です。したがって、葬儀や告別式、更には寺院等に埋葬する費用が必要になります。昨今、コロナ禍でもあり、大規模な葬儀は実施しないケースも多く、家族葬や事実上葬儀をしない直葬方式も多いようです。さらに、近年の傾向では、寺院などへの埋葬も、共同墓などの形式も普及しています。

 なお、多くの有料老人ホームの入居者の場合、いざ、本人が亡くなった場合、葬儀をするかしないかに関わらず、故人のことに関し、誰に連絡をすれば良いのかが「家族ではわからない」と言うケースも増えています。家族が老人ホームで故人宛にきている年賀状などを物色するケースもあります。

生前に、しっかりとそうなった場合には、誰に連絡をするのかを確認しておくことをお勧めします。
とくに、高齢者の場合、縁者も減っているはずです。

③入居金未償却分の返金(償却期間中の退去に限る)【2,800,024円】の返還。
計算例:入居金1,000万円、3年(36か月)で退去する場合
1,000万円×30%=300万円(初期償却分)
700万円÷60ヶ月=116,666円(1ヶ月分の償却分)
116,666円×36ヶ月=4,199,976円
700万円-4,199,976円=2,800,024円

 なお、退去による入居金未償却分の返還は、契約終了日(居室明け渡し日)の1ヶ月後の月末に返還する。契約を解除し退去した時点で返還金算定式により返還金が算定されます。返還金の返還期日はホームによって違います。

 精算以外にも入居金に関するいろいろを補足します。75歳未満の入居者に対する入居金が〝割増し〞になる有料老人ホームがあります。さらに、85歳以上の入居者が〝割安〞になる有料老人ホームもあります。また、入居金を自主的に上乗せすることで、月額利用料金を下げることができる有料老人ホームもあります。

 また、「ミドル金額プラン」や「年齢別プラン」など個別の事情に即した柔軟性のあるプランを用意しているホームもあります。

最後に、入居金方式と入居金0円方式の一体どちらが「お得」なのでしょうか?


 本来、介護保険サービスに「得」も「損」もありませんが、あえてこの課題に回答を出してみます。

①入居金プランの場合は以下の通りです。
入居金:1,000万円
月額利用料:230,000円
その他の月額費用:64,000円

②入居金0円プランの場合は以下の通りです。
入居金:0円
月額利用料:380,000円
その他の月額費用:64,000円

③入居期間
60ヶ月で死亡退去した場合の総額比較
 入居金方式の場合の費用総額は、入居金償却分1,000万円、月額費用17,640,000円、退去後費用530,000円、費用総額:【28,170,000円】
 入居金0円方式の場合の費用総額は、月額費用【26,640,000円】、退去後費用530,000円、費用総額: 【27,170,000円】

 つまり、5年間の入居では、入居金0円プランの方が安い(得)ということになります。
それでは、入居期間が6年間だった場合はどうでしょうか?

上記の金額に、各々【3,528,000円、5,328,000円】が加わります。結果、入居金ありのプランでは、【31,698,000円】、入居金0円プランは【32,498,000円】となり、0円プランの方が逆に高くなります。

 入居金プランと入居金0円プラン、どちらが得なのか?という問い掛け対する回答は、短期決戦であれば、0円プランの方が得、長期戦であれば入居金プランの方が得だ、ということになります。

 しかし、多くのケースでは、人の人生の終わりを正確に把握することなどできません。かといって、この部分を無頓着にしてよいはずもありません。相談者の中には、途中で資金が行き詰まり、退去を余儀なくされるケースもあります。

 重要なことは、平素からのマネーリテラシーです。日頃から、お金、特に親子間では、嫌がらずお金の話をしておくことが、結果として、最善の得策だと思います。この機会に、ぜひ、親子間でお金の話をしてみてはいかがでしょうか?

元気かいみんかい編集部