身体低下と共に変わる生活~老人ホームが必要となる具体的な実例も紹介
皆様、高齢者やその家族が老人ホームへの入居を考え始めるタイミングは、どんな時でしょうか。そして、数ある中からどのように入居する老人ホームを決めるのでしょうか。老人ホーム紹介センターに相談にいらっしゃる方に多いのは、ご自身の親についてお悩みを抱えているケースです。
例えば、
① 相談者の親御さんが、ある日、自宅内あるいは買い物などの外出時にバランスを崩して転倒してしまい、大腿骨頸部や大腿骨転子部を骨折、つまり太ももの骨の股関節部分を骨折してしまったという相談。
② 入院して手術をしたばかりなのに2週間後に退院してほしいと病院側から言われ、非常に切羽詰まった状況での相談。
骨折してしまうことで変わる生活
高齢者の骨折はADLの低下を招きます。ADLとは、日常生活動作のことを指します。具体適には「歩くこと」「着替えをすること」「入浴すること」など、日常生活を送るうえで欠かせない基本的な動作のことです。特に大腿骨など下肢の怪我は生活に大きく支障をきたし、特に高齢者は一人で生活を送ることが困難になり、場合によっては寝たきりになってしまう危険性もあります。
そのため、骨折で入院した後は、できるだけ早く骨折した部分を金属で固定する手術や、股関節部分そのものを人工骨頭に置き換える手術を行います。しかし、ご年齢や体調が優れない場合、麻酔の負担に耐え得る体力がないなどの理由によって手術が行えない場合もあります。その場合は骨がくっつくまで長期間ベッドで安静にしていなければいけないので、その間に筋力、特に下肢筋力が衰えてしまい寝たきりになってしまうことがあります。
また、毎日ベッドの上で過ごすうちに時間や曜日の感覚が薄れ、認知機能も低下してしまい認知症を発症する方もいます。運良く手術を行えた場合は、できるだけ早くリハビリをはじめて寝た切りを予防しますが、それでも骨折前と同じようには歩くことができなくなり、杖や歩行器や車椅子が必要となる場合があります。
自宅まで階段を使う生活環境の方は注意
最近はバリアフリー住宅も随分と普及していますが、高齢者の生活環境はまだまだ大小さまざまな段差に囲まれています。エレベーターが設置されていない集合住宅で生活されている方もいて、スーパーなどへの買い物や病院への通院、何をするにも階段や道路の段差が障害となって負担を感じ、せっかくリハビリを頑張って退院してもだんだんと外出自体が億劫となり引きこもるようになってしまった結果、さらにADL・日常生活動作の機能を低下させていきます。
子供達が近くに住んでいれば手助けをしてくれることもあるでしょうが、子供達にも日々仕事があり、それぞれの家庭、それぞれの生活があるため、今の時代「同居」という選択肢を選ぶことは難しく、また毎日通って親の生活の支援をするというのも現実的に難しいでしょう。
老人ホームを探すこと
一言で老人ホームといっても、介護付有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどの種類があり、身体の状態や、認知症がある方、ない方などで、合う、合わないといった問題もあります。かかる費用やヘルパーなどスタッフの人数、レクリエーションが多いとか、少ないとかなどの違いもあります。
老人ホームの費用はどのぐらいかかるのだろうか、親の年金の範囲でおさまるのだろうか、さまざまな不安を抱えて老人ホーム紹介センターに足を運んでくださるのです。老人ホームに入居されるご本人様が、「終活」と称して自宅で生活できなくなった時を想定して事前に老人ホームを探すということもございますが、何かあったらここにしようとしっかり決められている方は少ないです。
そもそも、事前に目星をつけて気に入った有料老人ホームをみつけていても、いざというとき空室があるのか、実際に入居ができるのか、その時になってみなければわからないのです。なぜなら、有料老人ホームには「入居要件」がございます。
基本的に65歳以上という年齢や介護認定を受けていることなどが挙げられます。怪我をしてADLが低下してから、どのような身体介護が必要になっているのか、看護師による医療的な処置が必要なのかなどは事前にはわかりません。多くの方は自分の親が喜んでくれるような老人ホームを探したいというお気持ちを強くお持ちですが、一体何を重視して老人ホームを探せばいいのでしょうか。
具体的な事例
「皆さん、一体どうやって老人ホームを決めているのですか?」と、ご相談に来られる方は質問されますが、答えは1つではありません。人によって、家族によっても有料老人ホームに求める大切な点はそれぞれ違います。
例えば、「うちの母親は認知症もない、ちょっとした転倒から骨折してしまって歩行器が必要となったけど買い物が負担になっているだけだから、まだまだ今と同じように元気で自立した生活を送ってほしいので、何でもかんでもやってくれるところだと返ってよくないのでは」。そうおっしゃるご相談者ですが、話を聞いていくと入居対象となるお母様の年齢は90歳を過ぎており、以前は多趣味でいろいろなサークル活動に参加するため毎日外出していたのに、最近はお惣菜を買いに行くのが精一杯で、家にいるときはずっとソファに座りっぱなし。テレビをつけてはいるものの本当に観ているかどうかはわからず、時々おトイレに行くのも間に合わなく失敗してしまう。昼夜問わずに毎日息子様に電話して、あれがない、これがないと失くし物の相談をされているご状況でした。
果たして、この方の自立した生活を支援とは、どのようなポイントが大切になってくるのか。息子様が認識しているお母様のご状況は、本当に元気で自立した生活といえるのか。老人ホームへの入居を考えるとき、入居費用や月額費用、場所などもとても大切です 。ただ、それ以上に今どのような手助けを必要としているのか、今後どのような手助けが必要となってくるのか、いま目の前にいる親が何を必要としているのかをできる限り知ることも大切です。正確に認識することが大切です。
介護付有料老人ホームで過ごす生活とは
介護付有料老人ホームは、24時間介護資格を持ったヘルパーが常駐し、掃除や洗濯、食事も上げ膳据え膳でお手伝いしてくださいます。かわりに、今まで自分のペースで送っていたご生活は、食事の時間や入浴の時間・回数をホームの都合に合わせた時間割りに添って過ごすことになります。
しかし、有料老人ホームには24時間ヘルパーがいるので、昼でも夜でも不安なことがあれば話を聞いてくれる人が近くにいます。もちろん、ヘルパーは介護という多忙な仕事をしているわけですから、常に話し相手をできるわけではないです。しかし、「部屋の中にあれがないの、誰かに盗られてしまった」と言えば、「では、後で一緒に探しましょうね」。と言うことができます。
毎日、朝昼晩の食事の前に「お手洗いは大丈夫ですか? 一緒におトイレに行きましょう」。と声をかけてくれる人がいるから、間に合わなくて失敗してしまうということも減っていく可能性があります。食事以外にも、「今日は皆さんで絵葉書を作ってみませんか?」、「今日は皆さんで体操を頑張りましょう!」と、ただソファやベッドの上で座っているだけの時間に声をかけてくれる人がいます。
本人としっかり向き合うことの大切さ
いま、自分の親が何を本当に必要としているのか、本当は何を求めているのか。そのことに気づいてあげること、理解してあげることがとても大切なことだと思います。その気づきや理解の深さが納得のいく老人ホーム探しの大きなポイントです。ご両親やご家族様の老人ホームへの入居を考えるとき、まずは入居を必要とする方の状況をよく知ってください。そこからがスタートです。そして、老人ホーム紹介センターにぜひともご相談ください。お母様、お父様が何を必要とされているかをお伺いし、どのような老人ホームがご希望に合っているのか、納得のいくホーム探しをお手伝いさせていただきます。
(文:みんかい関東エリア 入江相談員)
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