有料老人ホームの費用はいくらなのか?
有料老人ホーム選びの指標となるのは、大きく分けると「場所」「内容」「費用」ではないでしょうか。今回はそのうちの「費用」にクローズアップしてみようと思います。ピンからキリまでとはよく言いますが、その差は一体何なのか。相場、また、最低ラインはどのくらいなのか。何にいくらくらい費用が掛かっているのか。実際の費用も例に挙げながら見ていきます。
まずはともかく基本料金
まず、パンフレットやホームページにも記載されている基本料金についてです。入居時費用と月額費用が記載されていると思います。今回は、この「月額費用」についてお話しさせていただきます。
ほとんどのホームでは
- 家賃
- 管理費
- 食費 の合計を、基本料金として定義しています。
家賃とは?
費用の差が出る大きな要因の一つが家賃です。不動産物件と同じく、都心の地価の高い場所や駅近など便利な場所にあるホームの家賃と、地方や不便な立地のホームの家賃とを比べると、大きく差が出てきます。
比べてみよう!
同じ会社が運営しており、サービス内容も同じホームの家賃を比較してみます。
目黒区内 :45万8,000円
さいたま市内:13万5,000円
「場所」「内容」「費用」のすべてが合致する施設はなかなか無い中で、「同じ内容なら安い方が」と少し離れた地方を選ぶ方もいらっしゃいます。とはいっても、緊急時にかけつけられる足があるかどうかも大事なポイントです。また、面会時などの交通費が、近隣の少し高い施設との差額分だけ、結局かかってしまう、といった場合もあります。
比べてみよう!
家賃の差が出る立地以外の要因としては、もともとあった建物(社員寮や病院など)を改装している為、費用が抑えられるケースがございます。
同じ会社が運営しているホームで、新築型と改装型の家賃を、同じさいたま市内で比較してみます。
新築型(北区):86,250円
改装型(中央区):67,000円
改装型は、建物は古いですが、提供サービスは同じです。窓が少ない、廊下が狭い、部屋が狭い、なんとなく暗い、といった、古いことによるマイナス面もあります。しかし、建物が介護をするわけではありません、あくまでも、「人」「内容」です。中には、新築でホーム用に建築していますが、年季が入ってきてしまったため、価格改定で費用を下げるホームもあります。
ハード面で費用が下がるケースとして、もう一つ挙げられるのが、個室ではなく相部屋、病院のような多床室であることで、家賃を抑えられるホームです。ただ、最近では基準が変わり、多床室は新設することができなくなっています。その為、民間のホームで多床室のものは、首都圏では数えるほどしかありません。
他にも、リハビリルームやカフェスペース、シネマルーム、カラオケルームなど、共用スペースが多く、敷地の広いホームは家賃が高い傾向にあります。家賃の最大値はまさにキリがありませんが、最低値は、個室で7万円前後、多床室で5万円前後になります。
管理費とは?
この金額は、ホームによって表記や内容が変わります。
例えば、水光熱費。個室と共用部を併せて一律で請求しているホームもあれば、基本料金には共用部のみが含まれており、個室の水光熱費は個別でメーターでの請求としているホームもあります。共用スペースが多いと、その分水光熱費も上がりますし、維持費も多くかかります。
運営のためのスタッフの人件費も含んでいる場合があります。例えば、送迎や掃除など、専門のスタッフを別途配置している施設では、管理費が高い傾向にあります。
また、後述の食費のお話にも関わってきますが、厨房管理費を「管理費」に含むか「食費」に含むかについても、施設によってまちまちです。厨房管理費は2万円前後が平均ですが、管理費と食費のどちらに含まれているかによって、料金表の見た目の費用差は感じられると思います。
内訳は、殆どのホームが料金表に記載がありますので、入居検討前には必ずチェックしてみてください。
ホームごとの表記と内容によって幅がありますが、低価格帯のホームで3万円前後、高めのホームで10万円前後です。
食費とは?
大体平均で1食500円前後、3食30日で月5~6万円のホームがほとんどです。食材費は地域問わず大きな差がなく、高級ホームであったとしても食材費に関しては同じくらいです。先ほどもお話した厨房管理費の有無によって見た目の差は出てきますが、食材費の実質の差はそこまでありません。
ホームによっては定期的に、特別食、イベント食といった、別料金を徴収し希望者に特別な食事を提供しているところもあります。これは基本料金には含まれていません。頻度や費用は確認が必要です。また、アラカルトメニューといって、毎日決まっている献立以外に、選択可能なメニューを常設しているホームもあります。カレーやうどんなど、簡単なものは基本料金内の場合もあれば、特別メニューなどは差額を頂いて提供している場合もあります。
その他に掛かる費用とは何か?
月額を計算するうえで、基本料金以外にかかる費用があります。それは、介護度によって金額が前後する「介護保険の自己負担分」です。問合せの中には、基本料金の中には、介護費用が含まれていると考えているお客様も多くいます。介護度によって、お手伝いの量や内容が変わってくる為、基本料金とは別に負担は必要です。
ご自宅で、訪問ヘルパーやデイサービスなどを利用する際は、サービスごとに単位数が決められている為、介護度に応じた単位数の上限内で収まるよう、ケアマネージャーにケアプランを立ててもらいます。ケアプランで組み立てた時間ごとに、スポットでサービスを行ないます。
住宅型老人ホームやサ高住と介護付き老人ホームとの料金の違いとは
「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」では、在宅時と同じように、サービスを単品で組み合わせて利用をしていきますが、『介護付き有料老人ホーム』は少し異なります。サービスの利用の有無を問わず、介護度に応じた上限の単位数全てをお支払することで、スポットで時間ごとのサービスではなく、臨機応変に介護を行なえます。
掃除、洗濯、入浴介助、食事の提供や介助、お着換えやお手洗いの誘導といった、生活を送るうえで必要なサービスは、この自己負担分の金額の中に含まれています。
在宅同様にケアプランは作成し、それに沿ってお手洗いの誘導や食事介助など、時間をある程度決めて行なっていますが、プランとプランの間の空白の時間をカバーできるのが介護付き有料老人ホームです。
介護付き有料老人ホームの自己負担分の費用は、施設によってサービスの内容により加算の制度があります。例えば、看護師の夜間の配置やリハビリの実施など、サービスの内容によって加算されるため、施設によっては数千円前後することもありますが、平均では下記のとおりです。
要介護① | 要介護② | 要介護③ | 要介護④ | 要介護⑤ |
16,355円 | 18,362円 | 20,490円 | 22,435円 | 24,533円 |
(厚生労働省「第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料」:資料2「介護報酬の算定構造」より)
上乗せ介護費用とは
ホームによっては、基本料金の中に「上乗せ介護費用」を頂いている施設がございます。これは、基準の3:1の人員配置以上に、手厚くスタッフを配置している際の、人件費です。
消耗品費とは
また、オムツやトイレットペーパー、ティッシュ、歯磨き粉など、消耗品は別途使った分だけの請求になります。施設によってオムツ代が固定費の所もあれば、行政の支給を受けられる場合もあります。
自費サービス
介護保険の自己負担分でできるサービス以上に、何か個別でサービスをご利用されたい場合、施設独自の自費のサービスを行なっている場合があります。
例えば、通院時の付き添い送迎に関して。中には基本料金内に含まれるので、無料で行なっていることを売りにしている施設もあれば、時間ごとに費用を徴収する施設、またはそもそも通院の付き添い送迎を行なっていない施設もあります。
また、お風呂の回数に関しても、施設毎に異なります。基準で定められているのは、週2回ですが、基本料金内で週3回のところもあれば、有料で回数を増やせるところ、2回以上はできないところ、などがあります。マッサージやリハビリなども同様に、基本料金内、有料、実施無しと、施設によって様々です。
国で定められた基準以内の介護サービスに関しては、自己負担分が原則ですが、+αのサービスは、同じ「基本料金」の表記でも、そこに含まれるサービスは細かく異なります。
最後に
条件を入力すると、それに合致したホームが一覧で出てくる検索サイトがたくさんあるかと思います。しかし、その絞り込んだご予算、これはあくまでも、料金表に記載されている「基本料金」に過ぎません。施設によって、その他に掛かる金額や、基本料金内に含まれているサービス内容は様々です。絞り込みで選択肢を狭めてしまう前に、求めるサービスが叶う施設をお探しの際は、専門の相談員に聞いてみるのも、施設探しの方法の一つだと思います。
相談サポート室 室長代理 浅間 勝之
古い記事へ 新しい記事へ