老人ホームの入居金について
老人ホームに関して皆様どういったイメージを持っていらっしゃいますか?「料金が高い」「入居金がかかる」というイメージはございませんか?もっとネガティブな印象の方は「とんでもなく高い入居金がかかり、途中退去しても戻ってこない!」なんて方もいらっしゃいます。本日は入居金の意味をしっかり説明させて頂き、老人ホームにまつわるネガティブな「入居金」のイメージを少しでも払拭したいと思っております。
老人ホームにおける入居金の本当の意味とは!?
①入居金の歴史
入居金は1973年当時、「相互扶助」という発想から生まれました。しかし入居金に関する返還義務や償却の細かいルール付けが無かったため、入居してすぐに退去した時の返還金に関するトラブルが多発しました。おそらくこの時代のニュースを見た方が、入居金に関してネガティブな印象をもってしまったと推測できます。
入居金の返還に関するトラブルへの対処として、ようやく2006年に入居金の保全措置が義務付けられました。保全措置とは入居金のうち、あらかじめ契約で定めた予定償却期間のうち、残存する期間にかかる額、または500万円のいずれか低い方の金額は戻ってくるよう義務付けるルールです。
さらに2012年には厚生労働省令第11号により、入居金の算定根拠(償却含め)が明確化されました。若干時間はかかりましたが、入居金についてはしっかりルールができておりますのでご安心頂きたいです。なお、保全措置については2006年以前に開設されたホームは「努力義務」になっております。そこまで多くはないですが、2006年以前開設ホームをご検討される場合はお気をつけ下さいませ!!
現状の首都圏の老人ホームにおける入居金の状況
入居金のルール化が徹底化されるまでは、民間の老人ホームは入居金が必須ところが多かったですが、現状は入居金0円のホームが非常に多いです。入居金が完全に0円のプランしかないホームもありますし、入居金を設定しているホームでも入居金0円の設定のプランも設けているところが非常に多いです。
一般的に説明される入居金の意味とは
入居金には、そもそもどういう意味があるでしょうか?よく言われるのは、長期的に見た時に費用負担を抑えるという意味合いです。家賃相当額を入居金として最初に一括で支払い、月々は年金に近しいくらいの額に抑えることで、長生きされた場合でも費用負担の心配が減るという意味(メリット)があります。具体例申し上げます。
老人ホームAの場合
入居金0円のプラン:月額30万円
入居金600万円のプラン:月額20万円
老人ホームAは、上記のように2つの料金プランを設定しております。ぱっと見ですと、入居金0円で入るほうが楽なのでは?という方もいらっしゃるかもしれません。実はこのホームに5年間入居した場合、総支払額はどちらも1800万円となり全く同じです。入居金の真価が発揮するのはこの5年以降で、いったん入居金600万円を支払うと払い直す必要もなく、月額料金が30万円に戻ることもないので、5年以降の支払いでかなり格差が出ます。
仮に10年間住んだとすると、入居金なしのプランでは支払い総額3600万円、入居金ありのプランでは支払総額3,000万円と、なんと600万円も差が出てくるのです。ただ、100パーセント入居金を払うことが正しいというわけではりません。気を付けなければいけないのが償却の方法です。都道府県によるところもあるのですが、初期償却という仕組みを作っているホームが多いです。
5年償却、初期償却30パーセントというホームが平均的です。この仕組みですと、入居金600万円を支払うと30パーセントの180万円は、入居して3か月後には戻ってこないお金となります(3か月とお伝えしたのは、クーリングオフの仕組みがあるからです。3か月未満での退去でしたら、入居したわずかな期間分を差し引いて入居金は殆ど戻ってきます)。残りの70パーセント分の420万円を5年かけて償却します。有料老人ホームAの入居金に初期償却がある場合、5年以内にもし退去した場合は、入居金無しのほうが総支払額は少なくなります。
何年入居するかが、入居金有り、無しどちらを選ぶかの基準になってくるところです。なかなか難しい判断基準ではございますが、ご病歴が少ない方で5年以上の入居が十分に考えられる方は「入居金有り」のプランを選んだ方が良いと思います。逆に内臓的な病歴が多い方や重篤な病気を抱える方、特別養護老人ホームの順番待ちをしており5年以内の転居もあり得る方は「入居金無し」のプランを選んだほうがいいかもしれません。
先々の支払いの事を考えると、ご状況によっては入居金を選ぶ意味は非常にあります。昔のイメージでは入居金は「払わなきゃいけないもの」「危険なもの」ですが、現在は「先々の事を考え、活用するもの」という風に考えて頂ければ幸いです。
本当に大事な入居金の意味について
先にお伝えした入居金の意味(メリット)は、「ホームに入居した時の支払い総額を抑える」という観点です。この観点で入居金の意味を説明するホームページやコラムが圧倒的に多いのですが、私が相談員として様々有料老人ホームを見てきた中で、もう一つの大事な意味があることを感じました。
「ホームを探す方にとっての、ホームの価値を表すもの」という観点です。老人ホームの現状でお伝えしましたが最近は入居金0円のプランのみのホームも増えてきており、一口に老人ホームといっても価格差が非常にあります。下記をご覧ください。
同一区内に建っている老人ホームの価格差
介護付き有料老人ホームB:入居金1000万円 月額20万円
介護付き有料老人ホームC:入居金0円 月額20万円
東京都のとある区内にあるBとCは、どちらも「介護付き有料老人ホーム」としての指定が下りておりますので、入居者様3人に対して1人以上の介護士および看護師が常勤しているという点は共通しております。どちらも部屋は個室ですし、隔週で主治医の往診もあります。それでいて、Bは入居金1000万を払う事で月額20万円になるのが、Cでは一切入居金が不要で同じ月額です。
この1000万円の差はなんでしょうか?この1000万円は、有料老人ホームBが、介護付き有料老人ホームの基準以上のサービスを提供している事で設定している価値の料金という見方ができるのです。介護付き有料老人ホームは株式会社が運営している事が多く、価値として提供するサービスは様々で、「基準よりもスタッフの人数が多い」「リハビリ専門のスタッフが勤務している」「食事が美味しい」「建物が豪華で共有部分が充実している」等、ホームによって多彩です。今回のケースでいうと、有料老人ホームBは、基準よりスタッフが多く、リハビリの専門スタッフが勤務しており、建物も新築なため有料老人ホームCよりも料金を高く設定しております。この1000万の差が、Cと比較したときのBの価値なのです。
この話だけ聞くと「やっぱり良い老人ホームに入るには入居金が必要ってことじゃないの!?」という事になってしまいそうですが、そうでもありません。今回のケースでいうと、有料老人ホームCは、介護付きの指定が下りているため、もちろん基準通りのスタッフが勤務しております。建物は古くなっていますが、実はその分、老人ホームCは実績が豊富で、経験豊富なスタッフも多く、重介護の方や認知症の方への対応実績は、Bより豊富です。
ホームを検討している対象の方が、認知症が無くしっかりとされており、お食事や雰囲気を気にする方で、なおかつ骨折して間もない状況でリハビリを求めていらっしゃるのであれば、有料老人ホームBにかかる「1000万円」は非常に支払う価値があるものです。ただし、対象の方が重度の認知症で、体はお元気ですが自分のご状況が分からず絶えず歩き回ってしまい、見守りが必要な方の場合、老人ホームBを選んで正解でしょうか?
この方にとって必要なのは、綺麗な建物や美味しい食事ではなく、しっかりとした介護、認知症の方への対応力である事を考えると、むしろ老人ホームCの方を選んだ方が良いのではと思います。この重介護の方が入居金を設定しているホームを選ぶ場合、建物や食事のおいしさの価値で入居金を設定しているホームではなく、スタッフの数が基準より多いところや認知症に関する資格を持っているスタッフが多いという価値で入居金を設定しているホームだと思います。老人ホームの特徴と基準よりも優れている点を確認し、どういう価値があって入居金を設定しているのか、その価値が入居を検討している方にとってメリットとなるのかどうか、見極める必要があります。
入居金の意味を見極めるための、みんかい利用のススメ
入居金を設定している意味、入居金無しで同じ月額で入ることが出来るホームとの差、これを見極めるためには様々なホームの知識が必要で、簡単にインターネットで調べて分かるものではございません。ではどうすればいいでしょう?そんな時こそ是非みんかいにご連絡ください!相対的なホームの特徴の差、それによる価格の差、現在のお客様にとって価値があるのかどうか、お客様の声に耳を傾け、各ホームの評判やご案内実績をもとに適切にアドバイスさせて頂きます。ご相談お待ちしております!
みんかい首都圏相談室 浦口幸大
古い記事へ 新しい記事へ