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遺言書の種類

一般的に広く知られている遺言書(普通方式)には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言という3つの種類があります。いずれも作成するにあたってのメリット・デメリットがありますので、しっかりと確認したうえで、ご自分に適した遺言方法を選択することをおすすめいたします。

財産目録の写真

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者自身が自筆で作成する遺言方法です。作成する際の書式等に決まりはありませんが、作成日と署名、押印は必須となります。遺言者が保有している全財産を明記する「財産目録」についてはパソコンでの作成や通帳等のコピーの添付が認められており、ご家族が代行することも可能です。

自筆証書遺言は遺言者自身で作成するため、費用をかけることなくいつでも手軽に作成できるのがメリットです。しかしながら方式の不備により遺言書が無効となるリスクが高く、遺言者自身で保管することから紛失や内容の改ざん等の心配もあります。

遺言書は相続において何よりも優先される書類ですので、法律によって定められた形式にもとづいて作成されていなければ法的効力を持ちません。生前に遺言書を作成したとしても相続が発生した際に不備が発覚した場合には、残念ながらその遺言書は無効となってしまいます。

また、遺言者自身で保管する自筆証書遺言は、保管場所によっては発見されない可能性も考えられます。とはいえ、わかりやすい場所に保管していると相続人や利害関係人等に発見され、遺言内容によっては改ざんや処分等をされてしまう恐れがあります。

さらに遺言者の相続が発生した場合、封印のされた自筆証書遺言を開封するには家庭裁判所の検認手続きを行わなければなりません。検認手続きを完了する前に開封した場合には5万円以下の過料に処されてしまうため、ご家族や相続人であっても勝手に開封しないよう注意しましょう。

なお、2020年7月に「自筆証書保管制度」が施行され、遺言者自身で作成した自筆証書遺言を法務局にて適正に管理・保管してもらえるようになりました。この制度によって保管された自筆証書遺言書については、家庭裁判所の検認手続きは不要です。

書類を見る男性の手元写真

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証役場において公証人が作成する遺言方法です。公証人は遺言者が口述した遺言内容をもとに公正証書にて遺言書を作成します。作成に際しては2名以上の証人を用意する必要があり、遺言者は証人とともに遺言内容に相違がないかどうかを確認します。相違がない場合には遺言者と証人とで署名・押印し、完成した遺言書の原本はその場で保管されます。

作成時に用意する2名以上の証人には、推定相続人や受遺者、これらの配偶者および直系血族、公証人の関係者、未成年者がなることはできません。上記に該当しなければ友人や知人はもちろんのこと、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。

遺言内容については公証人と証人に知られることになりますが両者ともに守秘義務があるため、推定相続人や受遺者などの関係者に遺言内容が漏れる心配はありません。

自筆証書遺言と比較した場合、作成する費用や証人を用意する手間がかかる点がネックになるかもしれません。しかしながら公証人が作成に関わるため方式の不備により無効となるリスクがなく、遺言書はその場で保管されることから紛失や改ざん等の心配もありません。また、家庭裁判所の検認手続きも不要ですので、相続の開始とともに各種手続きを進められる点もメリットのひとつです。

無効になることのない確実な遺言書を残したいとお考えの際は、公正証書遺言で作成することをおすすめいたします。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴を兼ね備えた遺言方法です。遺言者自身が遺言書を作成し、公証人と2名以上の証人が公証役場にてその存在を証明します。

遺言者自身が作成する点は自筆証書遺言と同様ですが、秘密証書遺言はパソコンで作成することも認められています(署名は除く)。

公証人と証人はあくまでも遺言書の存在を証明するだけなので、両者に遺言内容が知られることはありません。その反面、方式の不備により無効となるリスクや紛失・改ざん等の恐れがあるため、実際に秘密証書遺言を利用している方はほとんどいないのが現状です。

なお、秘密証書遺言も開封する際には家庭裁判所の検認手続きが必要です。

書類を見る男性の後ろ姿の写真

その他の遺言方法

上記で説明した普通方式に加え、「危急時遺言」という特別方式の遺言方法があります。

危急時遺言とは病気やケガ等で死亡の危急が迫った時に行う遺言方法であり、認められるのは遺言者が署名・押印できない状態にある場合に限ります。

作成には3名以上の証人が立ち会い、口頭で残された遺言内容を証人のひとりが書面化します。その場で遺言書を作成する必要はなく、遺言の日から20日以内に証人もしくは利害関係者が家庭裁判所に請求し、確認を得ることで遺言書としての効力を有します。

実際に利用されることはほとんどない遺言方法ですが、知識として覚えておくと良いでしょう。

遺言書はご自身が保有する財産の行く末について自由に決定できる、最後の意思表示ともいえる法的な書類です。ご自身のためはもちろんのこと、残されたご家族が相続財産について困ることがないように最善となる遺言方法を選択し、お元気なうちに遺言書を作成しておくことをおすすめいたします。

<執筆者>

行政書士法人オーシャン

行政書士 岡田 大地

https://ocean-souzoku.com/