みんかい | 民間介護施設紹介センター

身元保証と医療保護入院

身元保証人としてサポートしていた方が認知症等を発症し、高齢者施設等では対応しきれなくなってしまった場合、精神科等への入院を検討する必要があります。精神科には「任意入院」「医療保護入院」「措置入院」という3つの入院形態が存在し、患者の状態によって適用できる形態は異なります。

任意入院…患者自身の意思で入退院できる形態

 患者の行動を病院側が制限することは基本的にできませんが、病状によっては精神保健指定医の診察によって72時間以内の退院の制限が設けられる場合があります。

医療保護入院…治療のためにやむを得ず入院させる形態

 患者自身が入院を望まない場合でも、精神保健指定医の判断と保護者の同意により入院させることができます。退院できるのは入院の必要性がないと判断された、または保護者が退院を要求した場合です。

措置入院…患者自身や他の方を傷つける恐れがある場合の形態

 患者の医療および保護を行うために精神保健指定医2名が診察し、ともに措置入院に該当すると判断した場合に入院させることができます。

ここでは3つの入院形態のなかから医療保護入院に絞って、詳しくご説明させていただきます。

医療保護入院について

入院しているシニア女性の写真

病状的な問題により入院治療契約を締結するうえで必要な理解力・同意能力を患者自身が有していない場合に限り、家族等の同意によって成立する入院形態が「医療保護入院」です。

この入院形態において病院側と入院治療契約を締結するのは家族等であり、場合によっては患者の意思に背いて強制的に入院治療をさせることになります。それゆえ、医療保護入院をさせる際は精神疾患のために患者が入院する必要はあるのか、本当に契約を締結できる理解力・同意能力はないのかという、精神保健指定医の診断を受けなくてはなりません。

また、医療保護入院を成立させるには以下に挙げる条件をすべて満たす必要があります。

・精神疾患を患っており、入院治療が必要な状態にあること

・その時点で患者に自身の病状や入院治療が必要であることを理解し、契約に同意する能力がないこと

・精神保健指定医の診察により上記2点を確認した結果、医療保護入院が確かに必要であるという診断を受けること

・書面において家族等の同意が得られること

このように、認知症等を患ってしまった患者を医療保護入院させるには、精神保健指定医の診察において「入院が必要である」と判断され、家族等による同意を得たうえで患者に告知する、という手続きを確実に踏まなければなりません。

医療保護入院では患者の意思に背いた治療を一定期間行うことも少なくなく、その際には閉鎖病棟を使用したり、行動制限として隔離・拘束等をしたり、病状によっては通信手段の制限を設けることもあります。それゆえ、厳密なルールに沿って医療保護入院の手続きを進める必要があるというわけです。

医療保護入院におけるご家族等の同意

同意書にサインする手元の写真

くり返しになりますが、医療保護入院を成立させるにはご家族等の同意が必須となります。同意できる者として定められているのは下記の通りです。

・患者の配偶者

・患者の親権者

・患者の扶養義務者(直系血族、兄弟姉妹、三親等以内の親族)

・患者の後見人もしくは保佐人

※上記の者がいない場合や所在地不明等で全員が意思表示できない場合には、市町村長の同意による入院が可能

ここで一点注意しなければならないのが、上記にある後見人とは家庭裁判所が選任する「法定後見人」のことであり、患者自身で指定する「任意後見人」は同意できる者に該当しないということです。

高齢者施設や病院への入居・入院に際しては身元保証契約とともに、もしもの備えとして任意後見契約を締結しておくのが一般的だといえます。しかしながら任意後見人がついている患者を医療保護入院させる場合には、新たに法定後見の申立てを家庭裁判所で行う必要があるというわけです。

利益相反にあたることから身元保証人と任意後見人を同一人物が担うことはできませんが、実際の現場では近しい関係にある方々が身元保証業務と後見業務を協力しながら進めているケースが大半だと思われます。そうした関係にある任意後見人が医療保護入院において解任され、代わりに関係性の薄い法定後見人が就任するとなれば、以前に比べて業務が進めづらくなることは明らかです。

また、財産管理についても行うのは関係性の薄い法定後見人であり、身元保証人はその責任だけを負担することになるため、身元保証人にとっても後見人の交代はデリケートな問題だといえます。

身元保証人となる方は身元保証業務を進めるうえで、医療保護入院が必要となる可能性も念頭に置くことが重要です。一対一で向き合う身元保証業務ではさまざまな問題が起こりますが、情報収集や各専門家との連携体制を整備しておけば問題が起きた際も適正な対処が行えるようになります。

身元保証をお願いする方も身元保証人にはこのような業務や責任等が生じることを理解したうえで、誰にお願いするべきかについて検討されることをおすすめいたします。

身元保証を頼める方がいない場合

超高齢化社会といわれる昨今、高齢者の単身世帯は増加傾向にあります。
身寄りがいない、頼れるご家族やご親族がいないという方が高齢者施設や病院で身元保証人の用意を求められた場合、どうすることもできないと諦めてしまう方もいらっしゃることでしょう。

女性相談員に相談するシニア女性

しかしながら、身寄りがいないとおひとりで悩む時代ではすでにありません。身元保証人のことでお困りの際は、身元保証業務に精通した「身元保証相談士協会」に相談してみてはいかがでしょうか。
身元保証相談士協会では身元保証業務だけでなく、日常生活における財産管理やケアプランの確認、診察支援など、幅広いサポートを行っています。

無料相談会も実施しているので、安心した老後を過ごすためにもまずは相談だけでもしてみると良いでしょう。

<執筆者>

一般社団法人身元保証相談士協会

身元保証相談士 星野 尚子

HP:https://www.mimotohosho.jp/