みんかい | 民間介護施設紹介センター

相談に来られるご家族が不安に感じていること その①

悩むシニア夫婦のイラスト

私どもの様に常日頃から多くのご相談をお受けしていて、その方その方の症状を老人ホームに問い合わせしていると『ごく当たり前の様に』感じていることが、相談者様から見るととても重要で、大変不安に感じられていることがよくあります。

その代表的なお話が「認知症の症状」です。
つい先日もこのようなことがありました。

ご相談者様は対象者(女性)の娘様にあたります。
お話をお聞きしますと、現在同居をされているのですが、お母様の認知症状が進んでしまって、時間や曜日の感覚が判らなくなってしまった。夜中にガサゴソと箪笥中のものを出しては仕舞って、出しては仕舞って・・繰り返している。とても可愛がっていた孫の名前を忘れてしまい他人だと思っているようだ。トイレに行ってウンチを壁に擦り付けてしまうことがある。何でこんなことをするの!と問い詰めると大声を張り上げて癇癪をおこす。
年末年始にかけてヘトヘトになってしまいました。

『このような母ですが、有料老人ホームで受け付けてくれるものなのでしょうか?もし入れなければ一生この様な生活を送って行くしかないのでしょうか?』と疲労困憊の表情で心配されていました。

私どもにご相談に来られるご家族様は、そのご対象者様(今回のケースではお母様)の認知症状がこの世の中で一番大変な状態であるとお考えになっているようです。そんな症状の母親を“老人ホームで働いている赤の他人に任せられるわけがない、これほど大変な状態を受け入れてくれるわけがない”と思ってしまっていることがよくあります。

ここで私が『大丈夫ですよ!そんなこと何でもありませんよ。』と言うのは有料老人ホーム(現場)で働かれている職員の皆様に大変失礼な話ですので断言は控えさせていただきますが、有料老人ホームで働く介護職員の皆様はプロです。

笑顔で入居者の手をとる女性介護職員の写真



いろいろな統計データがありますが、2020年では65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約6人に1人が認知症のようです。これが2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人になるそうですが、介護施設(有料老人ホーム)で働く友人たちに話を聞くと、ほとんどすべての入居者が症状は様々ですが認知症の症状をお持ちだと言っています。

そんな環境の中ではいろいろなトラブルや問題は日常茶飯事で、それをどのように対処してゆくのか、が都度のミーティングの議題だそうです。
ホーム運営会社によっては、毎年『事例発表会』『事例研究会』を開催し「うちのホームではこのような取り組みをして、介護拒否をしていた入居者が穏やかになりました!」「うちのホームでは〇〇さんの帰宅願望に対してこのような事をやっています。今では“家に帰りたい”ということを言う機会が激減しています!」と意見交換を行って各ホームが成功事例に沿った取り組みを行っているようです。

また、ホームによっては少人数制のグループケアをおこない見守りの強化を図ったり、“重度認知症フロア”を作って介護職員を多めに配置したりして対策を練っています。
有料老人ホームで働く介護職員の皆様が“プロ(仕事)”である所以です。

また、一旦は有料老人ホームに入居できたとしても、すぐに帰されてしまうのではないか、契約を解除されてしまうのではないか・・との心配をされる方も多くいらっしゃいます。
『ほかの人より手がかかるはず』とか『うちの母は頑固な性格だから、ホームに馴染めず迷惑をかけてしまう』とか言ったご心配からくるようです。

ここでホームが考える「退居を促される理由」をチェックしておきましょう。
介護施設(有料老人ホーム)にご入居される際には、ほぼ必ずと言って良いように「重要事項説明書」の読み合わせが行われます。簡単に言うとそのホームで生活する上での決まり事などが書面で書かれているのです。

それを確認し合ってホーム側と利用者様と双方合意の上サイン、押印をして保管する、契約書とセットの書類になるのですが、そこに「事業者からの契約解除」という項目があって細かに記載されています。ご入居者様がご逝去された時なども当然ではありますが、それ以外でザックリ言いますと、

1. 入居者が利用料金、その他の支払いを〇ヵ月以上滞納した場合
2. 入居者の言動が、入居者自身または他の入居者あるいは従業員の心身または生命に危害を及ぼす恐れがあるとき、
3. 身元引受人の言動または入居者もしくは身元引受人の家族の言動が、入居者自身または他の入居者へのサービスの提供に著しく悪影響を及ぼすとき
4. 入居者が入居中にホームで対応困難な医療行為が必要になり、かつ関係法令に基づくホームでの人員配置では対応が困難であると判断した場合
5. 前各号の他、入居者、その家族または身元引受人とホームとの信頼関係に支障をきたし、その回復が困難であり、ホームが適切なサービスの提供を継続できないと判断した場合

となっていることが多いです。

不機嫌そうな高齢者男性の写真



逆を言いますと、大声を出す、徘徊する、便を塗り付ける、人の言う事が理解出来ないなど『認知症状が大変だから出て行ってください』とはなりにくいのですが、2項目にあるように自分で自分を傷つけてしまう「自傷行為」や、他の入居者や職員に対して暴力を振う「他害行為」まで認知症状が進んでしまうとホームとの話し合いが行われます。
そこでは、程度にもよりますが専門機関などで診てもらうなどの対応が協議されます。

私の肌感覚ではありますが、最近では入居されているご本人の問題というより「金を払っているのだから、もっと良いサービスをしろ」などといったご家族様の無理なサービス要求や言動などが原因になってホームとの関係性が失われていることがあるように感じることがあります。

たまにホーム側が家族に無理難題を要求し、家族が疲弊してしまう事例も見受けられますが、『クレーム社会』が介護業界にも浸透してきていると思われます。
託す側、受ける側、双方の歩み寄りがとても重要なことだと感じています。

みんかい 渡辺 大志