相続における遺産分割
遺言書が残されていない相続が発生した場合に、相続人全員の共有財産となっている被相続人の財産を具体的に分配することを「遺産分割」といいます。遺産分割を行うには相続人全員で話し合う必要があり、期限はとくに定められていませんが、相続税の申告が必要となる場合には申告・納税期限に注意しなければなりません。
※2023年度より、相続不動産の名義変更には期限が設けられます。
被相続人の財産を相続人全員で共有したまま相続することも可能ですが、相続財産に不動産が含まれている場合の分割方法は困難だといえるでしょう。また、共有で相続したことで後にトラブルとなる可能性も十分考えられるため、その場合の対処法についてもあらかじめ確認しておくと安心です。
遺産分割の進め方について
遺産分割を行う際の順番等に決まりはありませんが、順を追って進めることによりスムーズな遺産分割が可能となります。流れについては下記でご説明いたします。
(1)遺言書の有無の確認
相続が発生したら、まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。相続では遺言書の内容が最も優先されるため、遺言書がある場合には遺産分割協議は不要です。
また、遺言書の内容が法的に有効なものであるかについても忘れずに確認します。
(2)相続人の確定
遺産分割には相続人全員の同意が必須であり、相続人が一人でも欠けていた場合には遺産分割を行ったとしても無効となります。それゆえ被相続人の戸籍をもとに、すべての相続人(代襲相続等も含む)を確定します。
相続人のなかに行方不明者が含まれている場合も、法的な手段を用いたうえで相続人全員の同意を得なければなりません。
(3)相続財産の調査
遺言書の有無と相続人の確定が済んだら、被相続人が所有していた財産の全容を把握するために財産調査を行います。財産にはプラス財産(預貯金や不動産等)だけでなく、マイナス財産(借金やローン等)も含まれるため、漏れがないように十分注意しましょう。
ご自宅などの不動産については固定資産税評価額を用いますが、相続税申告がある場合などは適切な評価額を算出する必要があるため、ご自身で調査を行うのは困難だと思われる際は速やかに相続の専門家に相談することをおすすめいたします。
(4)相続人全員での遺産分割協議
遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、全員の合意を得なければ遺産分割を行うことはできません。ただし全員がその場に集まる必要はなく、電話やメール、手紙でのやり取りであっても、全員の合意があれば問題ありません。
遺産分割は基本的に相続人間の話し合い(遺産分割協議)によって行われますが、話し合いがまとまらない場合には遺産分割調停、遺産分割審判の申し立てをすることも可能です。
それぞれの内容については、以下でご説明いたします。
・遺産分割協議
被相続人が遺言書を残していなかった場合に行うことになるのが遺産分割協議であり、遺産分割について相続人全員で話し合うことをいいます。遺産分割協議では誰が、何を相続するかを協議します。
・遺産分割調停
遺産分割協議において相続人同士の話し合いがまとまらなかった場合などに利用できる遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員を介した話し合いにより、遺産分割の合意を目指す方法です。
調停委員は各相続人から聴取した事情や希望する分割方法・分配の割合などをもとに、全員の合意を得るための解決案の提示や助言を行います。
・遺産分割審判
遺産分割調停を利用しても遺産分割がまとまらなかった場合に、自動的に移行されるのが遺産分割審判です。調停委員の指示に従うことになるため、申し立て等を行う必要はありません。
遺産分割協議をせずに調停や審判を申し立てることも可能ですが、審判の前にまずは調停を行い、話し合いによる円満解決を目指すよう促されるケースがほとんどです。
(5)遺産分割協議書の作成
遺産分割協議において合意に至った内容をとりまとめ、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は必ずしも作成しなければならないものではありませんが、後々起こりうる相続人同士のトラブルを回避するためにも作成しておいたほうが安心・確実です。
しかしながら、不動産の名義変更等の手続きにおいては必須となる書類ですので、相続財産に不動産が含まれている場合には必ず作成することになります。
上記すべてを完了したら、遺産分割協議書の内容にもとづいて名義変更の手続きを行います。
遺産分割協議は良好な関係を築いているご家族・ご親族であっても揉めるといわれており、場合によっては長期化してしまう恐れもあります。相続税申告が必要な場合には期限内に申告・納税を完了しなければならないため、遺産分割が難航するようであれば早い段階で専門家に相談しましょう。
<執筆者>
行政書士法人オーシャン
行政書士 岡田 大地
〇相続遺言相談センター