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有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その3)

タイトル 有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書その3

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有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その1)
有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その2)

親の引き寄せ現象と海外からの帰国案件の存在

表6 入居対象者居住地
表6(再掲)

 さらに、入居対象者が地方に居住しているケースが25件ありました。これは、首都圏に住んでいる子世代が、地方に住んでいる親を自分の近くに「引き寄せ」、自宅近くの老人ホームに入居させるという行動の表れだと推察することができます。比較的元気な親との同居は「NO」ですが、いざという時に、すぐに駆け付けることができる距離に親を置いておきたいという子世代の考えによるところだと思います。

 うち、入居対象者が海外にいるケースも1件ありました。これは、若い頃、海外移住をした人が、高
齢者になって祖国に帰国したいというニーズだと推察できます。特に、米国西海岸から東海岸に至る
地域には、移住し永住権を持つ日本人が多いと聞きますが、この中には、高齢期に伴侶とも死に別れ、
やはり「最後は祖国で」と言う気持ちになる方がいることの現れではないかと考えます。

 したがって、首都圏に多くの子世代が住んでいる間は、地方の親の「引き寄せ」による首都圏への高
齢者の流入が、続くのではないでしょうか。

 今後、ますます、首都圏の高齢化が進むのではないかと危惧するところです。2025年、地域包括ケアシステムが始動します。その時、このような「引き寄せ」現象がどうなっていくのか、大変興味のあるところです。

6. 入居対象者の住宅事情について

表7 入居対象者の住宅状況

 持家率は、戸建て、マンションを合わせると、70%を超えています。つまり、ある程度、資産がないと有料老人ホームへ入居をしようとは考えない、ということだと推察します。しかしながら、国税調査(2005年)による高齢者(65歳以上)の持家率は86%を超えている為、アンケート数値だけ見た場合、必ずしも老人ホーム入居対象者の持家率は高い、とは言えません。

 特筆することは、「介護施設」として分類されている「サ高住」「老人ホーム」など高齢者用住宅に住んでいるケースでの相談が3%程度あることです。これは、身体の状態が変化し、既存の高齢者向け住宅では対応が難しくなったために発生している「転ホーム」の現象だと推察できます。

 老人ホームは「終の住処」である、という表現を多くの方が好んで使いますが、本当に、老人ホームは、終の住処という言い方で良いのでしょうか?よく考えなくてはなりません。

 今後、このようなケースも含め、多くの高齢者が私たちと同じように、自分の都合や事情、そしてライフスタイルに合わせて、何度でも高齢者住宅の引越しを繰り返す「転ホーム」をすることが当たり前になるような気がします。むしろ、転ホームが恒常化することで、高齢者住宅の質が向上し、本当の意味での高齢者の住まいが充実するように感じます。

7.入居対象者の直近生活状況について

表8 入居対象者の世帯状況


 独居と老々世帯で全体の53%になります。やはり、高齢期の老人ホーム入居の動機には、独居や老々世帯は、重要なキーワードになると考えられます。ただし、内閣府の2016年高齢者調査データーによると、老々世帯は全体の31%です。これに、独居が27%、家族との同居が21%、その他が21%となっています。内閣府の調査とアンケート結果とを比較した場合、アンケートの方が、独居世帯割合が12ポイント多く、逆に老々世帯の割合は、17ポイント程度低いということがわかります。

 つまり、老人ホームへの入居動機は、老々世帯ではなく、独居になった時から強く起きるのでは?ということが推測できます。多くの場合、入居対象者が80歳以上であることから、また、入居対象者の過半数は女性であることから、寿命を迎え、夫を亡くした女性が、独居になり、さらに、何らかの事情で独居を維持することができなくなったことをきっかけに、老人ホームへの入居を、周囲(子世代)が検討するというストーリーを容易に想像することができます。

 また、直近の住宅事情では、老人ホームへの本入居を決断する場合、その前工程として「ショートステイ施設」や「老健施設」などの介護施設を一時的に利用するケースがあることがわかります。その過程を経て、老人ホームへの入居を検討していくというプロセスが存在しています。

 なお、病院に入院していたケースが45人います。高齢者が、何らかの疾患で、病院に入院した場合、自宅に帰らず、そのまま老人ホームへ直行してしまうケースも多いということがわかります。

8. 入居対象者の要介護度について

表9 入居対象者の介護度
グラフ2 対象者世帯の形態と介護度構成比

 全体の43%は要介護1、2が占めています。要介護3まで広げると、全体の56%です。つまり、老人ホームへ入居を検討している入居対象者の要介護度は、思ったほど、高くはないということがわかります。また、要介護認定において、認知症は、身体が自立しているケースも多いため、要介護2程度でも問題行動が出現し周囲が困惑するというケースも珍しくありません。

 本アンケート結果では、入居対象者の要介護度が、「自立」から「要介護3」までの方で70%以上を占めています。この結果からわかることは、老人ホームへの入居を検討する家族の心情は、単に対象者の身体状況(要介護状況)だけではなく、置かれている環境、立場や関係性なども加味して考えていかなければならないことだということがわかります。

 さらに、特別養護老人ホームの入居条件が、現在、原則として「要介護3」以上となっている為、要介護1、2までの要介護高齢者は、特別養護老人ホームには入居することは、原則、できません。逆に、要介護3以上の場合、積極的に特別養護老人ホームが受け入れ活動をしているように感じます。
 したがって、高齢者の場合、入居ニーズが出現した場合、ひとまず民間の有料老人ホームへの入居を検討し、その後、要介護度が進んだ場合、特別養護老人ホームへ転ホームするという現象が起きていると考えます。その意味でも、要介護1又は2の入居対象者が多いということだと考えます。

(つづく)

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