ケアマネジャーに聞く!在宅介護の現状
「あけぼしケアプラン」
感謝の心で、地域と共に笑顔を支えます
あけぼしケアプラン
在宅での生活を希望する利用者
「私が最期まで面倒を見ます」そう言い切るヘルパー
在宅で生活を続ける地域の高齢者のために、困難な事例であっても、ご本人のご希望をくみ取りながら日々業務にあたるケアマネジャー。
今月号では、さいたま市浦和区にある「あけぼしケアプラン」の、社会福祉士、主任介護支援員で管理者の奈良淳史さんにお話しを伺いました。
路上でうずくまり警察に保護
度重なる夜間の救急車の要請
身寄りがいなく独居で生活をされているA様の事例です。
90歳を超えるA様は、デイサービスと訪問介護を利用しながら生活をされています。最低限の身の回りのことはできますが、最近では1日中ベッドで寝ていることが多くなりました。
もともと外出がお好きなA様は、体調が良い日には外出をされます。しかし、必ずと言っていいほど途中で体力が尽き、道端に座りこんで動けなくなるため、何度も警察に保護されています。
また、様は心疾患をお持ちのため息苦しさを訴えることも多く、夜間息苦しくなると救急車を呼ぶことが多くありますが、いざ入院となると、病室で大声を出し暴れるため強制退院させられるという状況です。A様は身よりがいないため、警察に保護された場合も、駆け付けた救急隊からも私のところに連絡が入るような状況です。
独居での生活は難しい状況なのですが、A様は「どうしても家で生活をしたい」という強いご要望があります。しかし、最近ではお一人でかかりつけのクリニックに行くものの、「腰が痛い」と訴え待合室の床に寝ころび、クリニックからは苦情が入るほどです。
デイサービスの利用日ではない日に、タクシーを使ってデイサービスに行く、訪問診療や薬を届けてくれる日にいない、など周囲の方々にご迷惑をおかけする行動が増えています。
そこで、担当者会議を開き、各担当者とA様の今後について話し合い、このまま自宅での生活は危険が伴うことから「施設への入居」を目標にしました。しかし、ここで大きな壁が立ちはだかったのです。
「私が最期まで面倒を見ます」
そう言い切るヘルパーに周囲は困惑
A様には長年同じヘルパーがサービスに入っていて、そのヘルパーをとても信頼しています。
信頼関係が構築されていることは良いことなのですが、担当者会議で決めた「施設への入居」の目標に対し、後日ヘルパーから「私が最期まで責任をもって面倒を見ます。ですから、A様の在宅での生活を続けさせてほしい」という意見が出されたのです。
ヘルパーはこれまでにも、無料で通院の付き添いをする、サービスのない日にもA様の様子を見に行くなど、ケアプランにないことを行っていました。また、ヘルパーが体調がすぐれず、A様のご様子を見に行けないときには、ご自身の友人にお願いするほどです。
A様のお気持ちを尊重するヘルパーの気持ちは理解できます。しかし、ヘルパーは家族ではありませんし、家族にはなれません。無償とはいえ、介護保険では提供できないサービスまで行ってしまうことには疑問を感じます。もし、そのヘルパーが病気になりサービスに入れなくなった場合には、後任のヘルパーが同じことをできるはずもありません。
一度、ヘルパーステーションを変更し、他のヘルパーがサービスに入ったことがありましたが、新しいヘルパーをかたくなに拒否されました。ヘルパーのサービスが入らないと、A様は生活することができないため、やむなく、現在も元のヘルパーが入っています。
未だに解決策が見つかってはおりませんが、これからも、ご本人と各サービスの担当者と検討を重ねて良い方策を考えているところです。
キーパーソンが認知症になったことを受け入れられず、
暴力的になる
脳梗塞による麻痺があり、お母様と2人暮らしの50代B様の事例です。
これまで、B様の身の回りの世話はキーパーソンであるお母様がされていましたが、そのお母様が認知症を発症されたのです。
B様もお母様の様子が以前と違うことに気が付いてはいましたが、母親が認知症になったことを理解しようとはしてくださいません。以前からご自身の想い通りに事が運ばないと、暴言を吐く方でしたが、お母様の認知症を期にさらに暴言はエスカレートしていきました。
同じことを何度も言うお母様にイライラが募るB様は、レンタルしている4点杖で壁を叩くようになり、家中の壁は穴だらけになりました。数ヶ月の間に4点杖を14回も交換したほどです。次第にイライラは、お母様にも向けられるようになり、大声をだし暴力をふるうため警察が介入するほどになりました。
しばらく別々に生活していただくことをご提案
このままでは、お母様の身に危険が及ぶ可能性もあるため、日中だけでもお母様と離れる時間を作るためデイサービスをご提案しましたが、「あんな、老人しかいない場所へは行きたくない」との理由で拒否されました。
まだ50代というA様にとっては受け入れられない場所なのでしょう。今までお一人で生活した経験のないB様を日中一人にすることには不安もありましたが、お母様にはしばらくショートステイをご利用していただく事にしました。
しかし、お母様が認知症になってしまったことで、B様のキーパーソンがいなくなりました。そこで、B様の弟様にご相談させていただいたところ、「お母様の支援はするが、兄とはいっさい関わらない」とおっしゃいました。
今後は、お一人での生活となるB様ですので、これまで以上に支援が必要になるケースかもしれません。
取材、文書:黒川 玲子
(株式会社ケー・アール・プランニング)