有料老人ホームの入居相談者501人アンケート報告書(総括編)その1
☆以前のアンケート報告書はこちら☆
<501人アンケート 入居者編>
■有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その1)
■有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その2)
■有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その3)
■有料老人ホームに対するみんかい入居相談者501人アンケートの報告書(その4)
<501人アンケート 相談者編>
■有料老人ホームの入居相談者501人アンケート報告書 相談者編(その1)
■有料老人ホームの入居相談者501人アンケート報告書 相談者編(その2)
■有料老人ホームの入居相談者501人アンケート報告書 相談者編(その3)
今回は、アンケート第3弾として、前々回の入居対象者レポート、前回の相談者レポートの結果を踏まえ、「老人ホームに対する入居レポート」として、総括報告をしていきます。なお、今回、アンケートを実施し、その結果をレポートすることで、改めて以下の点について考えさせられました。
アンケート結果の振り返りです。
老人ホーム探しは、親のことを大切に考えている子世代にとっては、かなり重労働であり、探している人(みんかいを主語にした場合は相談者)にとっては、かなりのストレスになっているということがわかりました。
ただし、これは当社のような対面での面談方式を採用している紹介センターに、わざわざ相談に来る相談者に限った話なのかもしれません。昨今の社会情勢を踏まえれば、老人ホーム探しは、インターネットだけでも探すことは十分に可能です。
むしろ、たくさんのホームの情報を短時間で知りたいだけであれば、ネット検索の方が手っ取り早いと思います。したがって、そのような嗜好を持つ相談者の場合は、ネット検索の情報だけでホーム選びをしているはずです。
しかし、世の中には、そうではない人もたくさんいます。今回のアンケートは、みんかいの各相談室に、わざわざ相談に来た人を対象に実施しました。つまり、情報だけでは「決めることができない」という相談者が対象のアンケートです。そして、そのアンケート結果を確認しながら、レポート形式で整理している作業の中で、前記したような感想を私は持ちました。
みんかいが、昔からひたすら対面での相談にこだわる理由も、実はそこにあります。単に、老人ホームの情報だけなら、今の時代、ネットで十分です。しかし、中には、自分の今の考え方、つまり困った親に対する対応方法に対し、第3者にも「確認したい」という相談者もいると思います。
さらには、自分の考え方はこうだが、他の人はどう考えているのだろうか?他の家族も自分たちと同じように考え、行動しているのだろうか?ということが気になる相談者もいるようです。ある意味、当たり前の感覚だと考えます。
なぜなら、多くの相談者の場合、親の老人ホームを探すという行為は、初めての経験だからです。しかもです。その探した老人ホームは、自分が入居するわけではありません。多くは、自分の親が入居するのです。
冷静に考えてみればわかるはずです。親の年金は、毎月15万円。希望地域に15万円で生活ができる老人ホームはありません。そして、良さそうだなと感じた老人ホームは18万円です。さあ、どうしましょうか?
諦めて、15万円で生活ができるホームを他の地域で探しますか?兄弟がいれば、兄弟で相談し、差額の3万円を兄弟で負担しますか?もし、兄弟がいなければ、どうするのでしょうか?自分の配偶者に相談の上、3万円を毎月親のために自身の家計から捻出しても構わないかどうかを確認しますか?もし、あなたが専業主婦だった場合、ご主人に了解を取らなければならないケースになるのでしょうか?などなど。
親の老人ホーム入居をめぐる相談者の心模様は様々です。が、共通していることは何なのか?いずれにしても、相談者にとっては、実に厄介な問題であるということなのです。何も、お金の話だけではありません。心情的、時間的な様々な問題が降って湧いてきます。しかも、それでなくても、様々なことが起きる忙しい日常生活の中でこの問題は起きています。
今回のアンケート結果からは、もちろん、今、述べたことは、直接的には見えてきません。しかし、アンケート結果を何度も確認し、レポートを作成する為にデータを見ていくと、私には、データからこのような相談者の葛藤が見えてきます。
介護の基本は「声なき声に耳を傾けること」。だから、介護の場合、よく「きく」とは、「聞く」ではなく「聴く」なのだと、はるか遠い昔、私は先輩の介護職員からそう教わりました。
みんかいに相談に来られるすべての相談者が担いでいる肩の荷物が、少しでも軽くなるように、どんよりとした相談者の心に、少しでも明るい日が差し、たとえ一時的であったとしても、安らぎの中で時間を過ごせるようにと。
この実践が、みんかいの対面式相談体制の意義だと考えております。
今回のアンケート調査に関わる一連の業務を通して、これからも、しっかりと対面での相談業務を続けていくことの必要性を改めて痛感しているところです。
考察1
入居対象者と相談者と探しているホームの所在地の関係に関する考察です。
東京23区は、多くの入居対象者の居住地になっています。しかし、相談者が23区内を希望地として探しているかというと、その多くは、23区以外で探していることがわかりました。つまり、23区内に居住している多くの高齢者は、23区以外の地域に存する老人ホームに入居することになるということになります。
理由は何なのでしょうか?一つは、相談者である子世代にとって、都合の良い市区町村に存する老人ホームへ入居するという理由です。例えば、子世代の自宅の近くであるとか、勤務先の近くであるとかという具合です。
もう一つは、入居対象者の資産状況によって、支払い可能な市区町村を探して入居するという理由です。例えば、東京都新宿区に居住している入居対象者がいるとします。年金が毎月15万円しかなく、その他、主だった資産がないような場合、毎月15万円の年金額で入居生活が可能な市区町村を探すということになります。
東京都下エリアの場合も、23区ほど顕著ではありませんが、入居対象者の人数が、相談者が希望地として都下を探している人数を上回っています。つまり、都下以外の地域で探している相談者の方が多いという結果になりました。
なお、東京23区と都下との違いは、23区の場合、居住地としては、入居対象者の方が相談者よりも多かったのに対し、都下の場合は、相談者の方が多いという点です。つまり、東京都下地域では、23区と比較して、入居対象者の自宅付近で探す傾向が強いということになります。
次に周辺エリアをみてみます。神奈川県、埼玉県、千葉県は、共に、入居対象者、相談者居住地よりも、圧倒的に相談者が希望地として探しているエリアであるということがわかりました。つまり、首都圏3県は、東京都とは「真逆の立場にある」ということです。
神奈川県、埼玉県、千葉県の老人ホームは、東京都に居住している入居対象者の受け入れ対象地になっています。
東京都から放射線状に鉄道、道路が3県に対し伸びています。その交通網を考慮し、理想を言えば、東京都内で完結したいところですが、予算に合わせ、ある人は北に、ある人は南に、ある人は東に、という具合に足を伸ばし、予算にあった周辺地域のホームを探しているということだと考えます。
つまり、本アンケートは、多くの関係者がそうみていた仮説を、立証してみせたということだと考えています。
【結論】
東京都居住の入居対象者のかなりの部分は、近隣県に存する老人ホームに入居するという実態がわかりました。理由は、相談者などキーパーソンの居住地に引き寄せられることと、考察2で詳しく触れますが、近隣3県は、東京都内よりも比較的料金が安い為、入居対象者の資産内で賄うことができるからです。
考察2
入居対象者の資産と相談者が探しているホームの予算に関する考察です。
入居対象者の年金額は、100万円以上250万円未満がボリュームゾーンであることは前回のレポートでも報告いたしました。年金額を月額に変換すると、8・3万円から21万円になります。全体の34%です。
次に、相談者が探している老人ホームの月額利用料金のボリュームゾーンは、前回報告の通り10万円以上25万円未満という結果が出ています。これは全体の61%です。この2つの数値に対し「不明」「無回答」の数値をボリュームゾーンの人たちだと仮定すると、年金は73%、月額利用料は、80%になります。
私の推論は、各々の「不明」「無回答」と回答した多くの相談者の実態は、ボリュームゾーン内の範囲にいるのではないかと考えています。つまり、ただ、具体的な数値を把握していないだけなのではないか、知らされていないだけなのではないか、ということになります。
多くの家族のケースでは、老人ホームに入居するための費用負担は、入居対象者の負担可能限度額内で検討をしています。
相談者に確認した次の回答を併せてみていきましょう。それは、老人ホームに入居するための費用は誰が負担をしますか?という質問に対する回答です。57%の相談者が、入居対象者が負担すると回答しました。これに「相談者と入居対象者が協力して」という回答を加えると、全体の70%になります。
年金のボリュームゾーンが全体の73%、月額利用料のボリュームゾーンが80%です。つまり、多くのケースでは、入居対象者の負担限度の範囲内で老人ホーム入居を検討しているということになります。
私たちは、相談業務を通して、次のような場面に立ち合います。入居対象者の資産がこれだけしかないので、この範囲の中でホームを探してください、という場面です。そしてその結果、東京に住んでいる入居対象者は、群馬県とか栃木県などの地方の都市にある老人ホームに入居していくことになります。
もちろん、これは仕方がないことです。限られた予算と時間の中で探さなければならないからです。誰もこの現象を非難することはできません。
言ってみれば、老人ホーム入居とは、入居し費用を負担する人と探す人との共同作業です。しかし、見方を変えれば、自分が入居するホームを自分では探さないということでもあります。入居対象者の立場で見た場合、人が探してきたホームに強制的に入居を命じられ、その費用は自分の年金振り込み口座から引き落としになります。
ここが、老人ホームに対する誤解や偏見が生まれる所以なのかもしれません。
多くの老人ホームを探している相談者は、当たり前ですが、限られた予算と時間の中で、最大限の努力をしているはずです。ちなみに、多くの相談者は、入居対象者の実子です。自分の責任において、親のために老人ホームを探しています。
そして、忘れてはならないことは、多くの相談者にも家族がいて、家族の生活があるという点です。仕事を持ち、学校に通い、自分たちの日常生活を維持していかなければなりません。その中で、親の老人ホームを探すという行動をしなければならないことは、想像以上に大変な行動であるということがわかります。
さらに、老人ホーム探しは、多くの人にとっては初めての行為です。まれに、老人ホーム探しに関わったのは、今回で3人目です、という人に出くわしますが、例外中の例外です。
やり慣れないことを手探りでやり、自分たちの生活も考えなくてはならないこと。自分の親のこととは言え、かなりのストレスだと想像することができます。人によっては、仕事が手につかないとか、家庭をうまく運営できないと言った事態に陥ることもあるのではないでしょうか。
【結論】
老人ホームの入居費用は、原則、入居対象者が負担します。また、中には、足りない部分を相談者(子世代)が負担するケースがあります。
したがって、老人ホームへ入居を考えている方は、今から、その為に必要な費用を把握し、自力で準備をしておくことが重要になります。その為には、「年金」「預貯金」「保険」などの金融資産をはじめ、所有不動産(持ち家)や有価証券などの価値を把握するなど、日頃より自身の「総資産総額」を確認しておくことが重要です。
さらに、子供がいるケースでは、親孝行の子供になるように教育をしていくことも高齢期のリスクヘッジとしては重要なのではないでしょうか。
元気かいみんかい編集部
(その2へ続く)
古い記事へ 新しい記事へ